福岡県弁護士会コラム(会内広報誌「月報」より)

2007年9月 1日

【人権プレシンポ】監視カメラとまちづくり

会員  知名 健太郎定信(56期)

1. 2007年7月21日(土)午後1時30分より、福岡県弁護士会3階ホールにて、第50回人権擁護大会プレシンポジウム「監視カメラとまちづくり」が開催されました。2007年2月に福岡市、福岡県警、商店街等を構成員とする協議会において、2007年度中に中州へ監視カメラを設置することが決定されたとの新聞報道があったこともあり、当日は、弁護士のみならず多数の市民の方々の参加もあり、弁護士会3階ホールがほぼ満席となる盛況振りでした。


2. まず、第1部として、2名に研究者の方に基調講演をしていただきました。明治大学講師の清水雅彦先生からは、「治安政策としての『安全・安心まちづくり』」と題して講演をしていただきました。ここ数年の日本においては、治安が悪化している、もしく「体感治安」が悪化しているというあいまいな事実認識のもと、「安全・安心なまちづくり」のためとして急速に監視社会化が進んでいます。先生のお話を聞くことで、住民基本台帳法の改定、日本道路公団の高速通行券、クレジットカードやスーパーのポイントカード、JR東日本の「Suica」等タッチ式の定期券・乗車券、そして各所に設置されている監視カメラ、Nシステム等を通じて、目に見えないなかで、市民生活上のプライバシーが急速に制限される方向に動いていることがよく理解できました。
次に、福岡大学名誉教授である石村善治先生に「ドイツにおける監視カメラ規制の現状」と題して講演いただきました。イギリスでは400万台以上の監視カメラがあるといわれており、ロンドンでは普通に暮らしているだけで1日300回監視カメラに映るといいます。ドイツでは、そのようなイギリスの状況を踏まえながら、プライバシーの保護を重視して監視カメラの安易な設置を認めないよう立法的な措置が講じられました。その後もドイツにおいては、多くの議論が積み重ねられ判例等も蓄積されていっていることが先生のお話を聞くことでよく分かりました。
十分な議論のないままなし崩し的に監視カメラが設置されようとしている現在の日本においても、ドイツでの議論を参考にする必要があることは間違いありません。


3. 第2部では、パネリストとして九州国際大学木村俊夫法学部教授、基調講演をしていただいた清水雅彦先生、甘木朝倉青年会議所の方、そして武藤糾明弁護士に参加していただき、李博盛弁護士の司会のもと、パネルディスカッションが行なわれました。
パネルディスカッションを通じて、福岡県防犯カメラ活用検討会議が不十分な議論のままで防犯カメラの活用を推進するような結論を出していたことも浮き彫りとなりました。また、甘木朝倉青年会議所においては、福岡県警から委託をうけて、自主防犯パトロールを行なっているとのことでしたが、活動に参加されている方には、プライバシー等の侵害になるのではないかという問題意識はほとんどないようでした。実際にパトロールに参加されている方は、純粋な動機から少しでも社会のためになればと思って活動されているだけに、このような方々にも、プライバシーの重要性等について理解をしていただいたうえで、住み良い社会とはどのようなものなのかを一緒に考えていく必要があるのではないかと痛感させられました。


4. 2007年11月1日〜2日にかけて開催される第50回人権擁護大会シンポジウムにおいては、同様の問題について分科会が開催される予定となっています。市民のプライバシーの今後のあり方について、重大な影響を与えてくる問題ですので、当会の会員の皆様にもぜひとも多数ご参加いただきたいと思います。


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