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カテゴリー: 声明

監視カメラを法律なしに設置・運用しないよう求める声明

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 警察庁は、福岡市の中洲地区に犯罪防止効果の検証を目的に42台の監視カメラを設置し、本年1月から福岡県警が常時録画する運用を開始した。
 しかしながら、警察の捜査活動でさえ、具体的な嫌疑を前提として許されるものであり、その場合にも、人権保障を図る観点から、基本的人権を制約する場合には法令の根拠を必要とし(強制処分法定主義)、令状がなければ原則として行えないというのが憲法以下の法令の考え方である。
現在では、監視カメラで撮影された膨大な集積画像の中から、顔認識システム(被写体から人の顔の部分を抽出し、目・耳・鼻などの位置関係等を瞬時に数値化し、あらかじめデータベースに登録された特定人物の顔データベースと自動的に照合するもの)を使って、特定人物の検索・照合することも可能となっている。具体的な法益侵害の行われていないはるか前段階で、警察が市民全体を対象とする監視を行い、地引き網のように市民の行動履歴を収集することは、個人のプライバシー権を侵害するばかりか、民主主義社会における市民の自由を萎縮させる危険が大きい。
 警察自身による監視カメラの設置は、京都府学連事件判決(最判昭44.12.24)、山谷監視カメラ判決(東京高判昭63.4.1)などによれば、①犯罪の現在性または犯罪発生の相当高度の蓋然性、②証拠保全の必要性・緊急性、③手段の相当性がある場合を除いて、警察が自ら公道に監視カメラを設置することは認められない。
 西成監視カメラ判決(大阪地判平6.4.27)では、「特段の事情がない限り、犯罪予防目的での録画は許されないというべきである。」として、犯罪予防目的での監視カメラの設置を明示的に禁止している。
 中洲地区は必ずしも犯罪多発地帯ということが証明されているわけではく、県警は、想定される犯罪として客引きを挙げつつも、当会の聴き取りに対し、「その実態はよく分からない」と回答するなど、監視カメラ設置の必要性に乏しく、他方で、歓楽街におけるプライバシー権制約の程度は大きいことからすれば、犯罪予防目的での撮影や録画が許容されるべき特段の事情はない。
 そもそも、プライバシー権を保障するために監視カメラの設置・運用を規制する法律の制定が必要不可欠である。
 当会は2007年以降、同様の意見を述べているが、なんら法律が制定されないまま警察主導で街頭監視カメラが増設されていることに対し強く遺憾の意を表するとともに、適切な法律が制定されるまでの間は、中洲地区における監視カメラの設置・運用を中止するよう強く求める。
         
               2012年(平成24年)2月9日
                 福岡県弁護士会会長 吉 村 敏 幸

当会会員に対する有罪判決に関する会長声明

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 本日当会会員である渡邉和也弁護士に対する業務上横領事件における判決がなされました。裁判所の認定した事実は、概略以下の内容です。
 「裁判所から相続財産管理人として選任されていた渡邊会員が、平成18年から同21年にかけて、自ら管理していた被相続人名義の預金口座から合計13回にわたり現金を引き出し、他事件において自らその支払義務を負担していた清算金の支払原資や事務所経費、生活費等に費消するなどし、合計金1945万円を横領した。」
上記事実に対する判決内容は5年間の執行猶予付きの懲役3年(未決算入30日)の有罪判決でした。
このように有罪判決が言い渡され、量刑理由において金銭管理の杜撰さや行為の悪質性が指摘されたたことについて、当会といたしましては、弁護士に寄せられた社会の信頼を損ねたことに対する裁判所の厳しい判断として重く受け止めております。また、関係者及び市民の皆さまにご迷惑やご心配をおかけしたことについて、同会員の所属弁護士会として、深くお詫び申し上げます。
 なお、渡邉会員については、当会においても平成23年3月4日に弁護士会として懲戒申立を行い、本年8月18日、綱紀委員会で懲戒相当との議決を経て、同会員は現在懲戒手続中であります。
当会としては、各会員において本件事件の重みを肝に命じてもらう一方、倫理研修のより一層の充実を図りつつ、会として与えられた権限の適切な行使を通じて、今後こうした事犯の再発を防ぎ、市民の方々の信頼・信用を保持することができるよう努めてまいりたいと思います。
                                         以上
              平成23年10月18日
               福岡県弁護士会 会長 吉 村 敏 幸

「君が代」斉唱時に起立斉唱を強制しないよう求める会長声明

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1 本年7月14日,最高裁判所第一小法廷は,北九州市立学校の教職員らが,卒業式又は入学式における「君が代」斉唱の際に起立して歌うよう命じた校長の職務命令に反したとして課せられた懲戒処分をめぐる訴訟及び東京都における同種の訴訟の判決において,校長の職務命令は憲法19条に違反しないと判示した。
  これらは,本年5月30日以降,最高裁判所の各小法廷が言い渡してきた同種訴訟の判決における判断を踏襲したものである。
  一連の最高裁判決は,自らの歴史観や世界観との関係で,国旗及び国歌に対する敬意表明に応じ難いと考える者に対して起立・斉唱行為を求めることは,その者の思想及び良心の自由に対する「間接的な制約」となる面があるとしつつ,起立・斉唱行為は,「慣例上の儀礼的な所作」であり,かかる行為を命ずる職務命令は,その目的及び内容,制約の態様等に照らすと許容できるとしている。
2 しかしながら,「君が代」斉唱時の起立・斉唱行為は,「君が代」に対する敬意の表明と不可分であるから,単なる「慣例上の儀礼的所作」とは言えない。「君が代」を是とするか否かは,各個人にとって自己の信条や信仰に深くかかわる問題である。卒業式・入学式における「君が代」斉唱指導が教職員の職務上の義務であるとしても,教職員が自己の信条や信仰を理由として単に起立斉唱しないという行為に対して,懲戒処分という重大な制裁をもって臨むことは,憲法上保障された当該教職員の思想良心の自由ないし内面的信仰の自由の核心部分を直接的に侵害するのであり,憲法19条に違反すると言うべきである。
かかる観点から,当会は,今回の最高裁判決の当事者である北九州市立学校の教職員らの一部による人権救済申立てを受けて,2000年6月28日,北九州市教育委員会に対し,懲戒処分を再考し,以後,同様の懲戒処分をもって教職員に対して「君が代」斉唱時の起立を強制するという運用を改めるよう,警告を発している。
また,国旗及び国歌に関する法律が,国会審議の過程で,同法の制定によって国旗国歌を強制し,義務づけるものではないとの政府答弁がなされた上で可決成立したものであったことをも踏まえれば,上記最高裁判決の結論は容認できるものではない。
3 上記最高裁の各判決を通じては,宮川光治裁判官(第一小法廷),田原睦夫裁判官(第三小法廷)が反対意見を述べ,補足意見も7の多数に上った。このことは,最高裁内部の判断が,決して一様ではなかったことを示している。
殊に,宮川光治裁判官の反対意見が,「憲法は少数者の思想及び良心を多数者のそれと等しく尊重し,その思想及び良心の核心に反する行為を強制することは許容していないと考えられる」とし,厳格な違憲審査基準によって判断すべき旨を述べたことは重要である。
反対意見の外にも,多くの補足意見が,「君が代」の起立斉唱の強制について,慎重な配慮を求めている。
4 本年6月3日,「大阪府の施設における国旗の掲揚及び教職員による国歌の斉唱に関する条例」が制定されたことにみられるように,今後教育行政が教職員に対し学校行事等での「君が代」斉唱時における起立・斉唱を強制する動きが強まることが懸念されている。
  教育現場においては,「能力を伸ばし,創造性を培い,自主及び自立の精神を養う」(教育基本法2条)ことが肝要であり,そのためには教職員の自主性及び自由はきわめて尊重されなければならないものである。
  当会は,思想及び良心の自由の重要性をふまえ,教育行政に対し,教職員に対する「君が代」斉唱時の起立・斉唱を強制することがないよう,また,起立・斉唱をしない者への懲戒処分等の不利益取扱いを行うことがないよう,ここに改めて強く要請する。
                        2011年(平成23年)8月4日     
     
                         福岡県弁護士会            
                         会長  吉 村 敏 幸   

福岡県弁護士会会長声明~秘密交通権侵害に関する福岡高裁国賠判決について~

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 福岡高等裁判所は,本年7月1日,秘密交通権の侵害を理由とする国家賠償請求事件において,検察官が被疑者と弁護人の接見内容を聴取し,その供述調書を証拠として公判で請求したことが,弁護人の秘密交通権を侵害する違法な行為であること認め,佐賀地方裁判所の請求棄却判決を変更し,国に55万円の支払を命ずる判決を言い渡した。
 原審である佐賀地方裁判所は,秘密交通権の権利性を一応は認めたものの,それは捜査機関の捜査権に優越するものではないとし,検察官が接見内容を聴取することが違法かどうかは,「聴取の目的の正当性,聴取の必要性,聴取した接見内容の範囲,聴取態様等諸般の事情を考慮して」判断すべきであると判示した上で,結論において検察官の行為は違法ではない,という結論を導いた。
 これに対し,本判決は,秘密交通権は被疑者の権利であるだけではなく,弁護人の固有権でもあり,そのことは,身体を拘束され取調べを受ける被疑者の防御にとって不可欠な弁護人の援助を実質的に確保する目的によるものだと指摘した。さらに本判決は,取調べで被疑者が接見内容を話し始めたときは,捜査機関は、これを漫然と聴取してはならず,接見内容を話す必要がないことを被疑者に告知するなどして秘密交通権に配慮すべき法的義務も認めた。このように、本判決は,秘密交通権の優先的固有権性を認めた志布志事件の鹿児島地裁判決の延長線上にあるものであり,捜査機関による接見内容の聴取を違法とした高裁レベルの初めての判断として重要な意義がある。
 他方で,本判決は,弁護人が報道機関に対して被疑者の供述の一部を公表したからといって,供述過程を含む秘密交通権が放棄されたとは認められないとしつつも,そのような供述を被疑者がした事実自体の秘密性は消失したとして,検察官が被疑者に対し,報道された供述を弁護人にした事実の有無やそのような供述を弁護人にした理由を尋ねた行為に限っては違法ではないと判示した。
 しかし,被疑者の供述に関する報道機関の情報源が捜査機関の発表に限られており,捜査機関が報道内容を事実上コントロールしている現状のもと,これに対抗して正しい事実を報道機関に公表することは、事件に対する誤った認識を是正するために必要な弁護活動であるところ,本判決の「秘密性の消失」論によれば,報道機関への公表が捜査機関の秘密交通権への介入の口実を与えてしまうことになるため、今後このような弁護活動の委縮を招く事態が懸念されるという問題が残った。
 とはいえ、本件は,佐賀県弁護士会の弁護士が刑事事件の弁護人となり,その弁護活動の過程で秘密交通権を侵害されたことを理由として国家賠償請求訴訟を起こしたものであって,当会を含む九州弁護士会連合会が支援してきた事件であり,ここに、優先的固有権としての接見交通権の重要性を高裁に認めさせるという大きな成果を得た。
 当会は,被疑者・被告人と弁護人との秘密交通権については,「いつでも自由になされ,かつ秘密が絶対的に保障される」ことが必要不可欠であり,この保障があってはじめて被疑者・被告人は安心して弁護人に相談できるものとして,これまでも秘密交通権の確立を訴えてきた。そして,この判決を契機として,検察庁その他の捜査機関に対し,この判決を真摯に受け止め,被疑者・被告人と弁護人との秘密交通権が憲法の保障に由来する最も重要な権利の一つであることを十分に認識し,秘密交通権の侵害が再び繰り返されることのないように強く求めるものである。
2011年(平成23年)7月7日
                        福岡県弁護士会
                        会長 吉 村 敏 幸

布川事件再審判決についての会長声明

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 本日、水戸地方裁判所土浦支部は、1967年に茨城県で発生した強盗殺人事件、いわゆる布川事件について2人の被告人両名に対して無罪判決を言い渡した。
 本件は、別件逮捕から始まった被疑者段階での自白が証拠とされ、公判では2人とも否認に転じ争ったものの、1970年に同支部での第1審で無期懲役とされ、1973年の東京高等裁判所での控訴棄却、1978年の最高裁判所での上告棄却により1審判決が確定し、その後、2度にわたる再審請求の末、2005年にようやく同支部で再審開始が決定され、2009年に最高裁判所もこれを支持し、再審が行われていた事件である。
 本日の判決において、水戸地方裁判所土浦支部は、本件について被告人両名と本件強盗殺人とを結びつける客観的証拠が存在しないことを確認し、事件当日に現場近くで被告人らを見かけたという目撃証言の信用性を否定した。そして、犯人性を証明しうる唯一の証拠である被告人両名の捜査段階の自白についても、内容が不自然であるうえ「捜査官らの誘導等により作成されたものである可能性を否定することはできない」として、その信用性および任意性に疑いがあると述べて、被告人両名に対して無罪を言い渡した。
 また、本件では、取調べの一部が録音されており、その録音テープが再審請求を通じて検察側から証拠開示され、再審公判の過程で同テープを鑑定したところ十カ所以上もの編集痕が存在することが判明した。
 このことは取調べの一部分だけが録画・録音されることの危険性を明確に示している。捜査機関が自由に録画・録音する範囲を決めることを許せば、捜査機関が都合のいい部分だけを録画・録音し、裁判官や裁判員に真実とは異なる印象を与えてしまう証拠が作出されるおそれがあると言うべきである。
 現在、法務省等で取調べの録画・録音制度を導入する場合の、対象事件や録画・録音の範囲などについて検討がなされているが、本件のように不幸な冤罪被害者を生み出さないためにも、取調べの一部だけを録画・録音すること、さらには録画・録音する対象事件を捜査機関の判断に任せることだけは、絶対に避けなければならない。
 よって、当会は、本件無罪判決を受けて改めて、国に対して、取調べの全過程を録画する制度の導入に向けて早急に法律を整備することを求めるとともに、その制度設計にあたって、録画対象事件については全ての取調べの全過程を録画するようにすること、また対象事件について捜査機関の自由な判断ではなく法律によって明確に対象事件を定めるように求めるものである。
                 2011年(平成23年)5月24日
                福岡県弁護士会 会長 吉村敏幸

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