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カテゴリー: 声明

「特定複合観光施設区域整備法案」(いわゆる「カジノ解禁実施法案」)に反対し,廃案を求める会長声明

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2018年(平成30年)4月27日に,「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律」(平成28年法律第115号)を実施するための法案(「特定複合観光施設区域整備法案」,いわゆる「カジノ解禁実施法案」)が閣議決定され,国会に上程されている。
当会は,2014年(平成26年)10月15日及び2016年(平成28年)12月13日の会長声明において,暴力団員その他カジノ施設に対する関与が不適当な者の関与,犯罪の発生,風俗環境の悪化,青少年の健全育成への悪影響,ギャンブル依存症の拡大,多重債務問題再燃の危険性等,様々な問題があることを理由に,カジノ解禁に強く反対してきた。
カジノ解禁には,地域経済の振興への寄与などが目的として掲げられているが,例えば,唯一内国人が入場可能なカジノが誘致された韓国の広原(カンウォン)ランドでは,地元への経済効果が見込めないばかりか,ギャンブル依存症患者が増えて,カジノ導入時点で25,000人だった人口が,その後12,000人まで減少するなど,かえって悪影響を及ぼしている(九弁連第69回定期大会シンポジウム「ギャンブル依存症のない社会をめざして」報告書(増補版)184頁)。
今回提出されたカジノ解禁実施法案では,ギャンブル依存症の対策のための措置がとられてはいるものの,極めて不十分である。例えば,ギャンブル依存症対策として,入場回数制限を「7日間で3回,28日間で10回まで」とし,入場料を「6,000円」と定めている。しかし,7日間で3回も入場していれば,既にカジノに依存しているともいえるし,入場料を支払えばカジノに入場できるのであるから,これらの制限によりカジノ依存が抑止されるとは言えない。
さらに,カジノ解禁実施法案では,「特定資金貸付業務」として,顧客に金銭を貸し付ける業務が認められているところ,そこでは,一定の金額を預け入れた顧客に対しては,カジノ事業者が直接カジノ資金を貸し付けることが予定されている。しかも,年収の3分の1を超える貸付を禁止する貸金業法の総量規制が適用されることもないのであって,顧客をギャンブル依存に陥らせる危険性は極めて高いと言わざるを得ない。
さらに,2018年(平成30年)5月25日には,ギャンブル等依存症対策基本法案が衆議院で可決されたところ,同法案の提案理由として,「ギャンブル等依存症がこれを有する者等及びその家族の日常生活及び社会生活に様々な問題を生じさせるおそれのある疾患」であるために,「ギャンブル等依存症対策を総合的かつ計画的に推進する必要がある」ことが掲げられている。このように,ギャンブル依存症の予防及びギャンブル依存症を有する者の回復を,社会的な取組みとして図ろうとしている時期に,カジノを解禁して,依存症発生のリスクを高めることは妥当ではない。
そして,昨年8月に実施された意見募集(パブリックコメント)でも,提出された1,234件のうち,829件がカジノに反対するという意見であって,カジノ解禁に対して国民の理解が得られたという状況にはない。
よって,当会は,カジノ解禁実施法案に反対し,その廃案を求めるものである。

2018年(平成30年)6月7日
福岡県弁護士会
会長 上 田 英 友

「消費者契約法の一部を改正する法律案」にかかる会長声明

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2018年(平成30年)3月2日,「消費者契約法の一部を改正する法律案」が閣議決定され,消費者契約法改正案(以下,「本改正案」という。)が国会に提出された。本改正案は,内閣府消費者委員会答申(以下,「委員会答申」という。)を受けたものであり,多発する消費者被害の防止及び救済を図るため,国会における速やかな審議及び可決に向けた取り組みがされることを望むものであるが,必ずしも委員会答申の趣旨を十分に踏まえたものではない。

当会は,2017年(平成29年)9月13日,「消費者契約法の改正に係る意見」(以下,「当会意見書」という)を公表しているところ,今後の本改正案の審議にあたって,以下のとおり,委員会答申及び当会の意見の趣旨を十分に踏まえた所要の修正がなされることを求める。

1 困惑類型の追加

本改正案においては,いわゆる「つけ込み型」勧誘行為における消費者の取消権が設けられていない。

委員会答申は,「合理的な判断をすることができない事情を利用して契約を締結させるいわゆる『つけ込み型』勧誘の類型につき,特に,高齢者・若年成人・障害者等の知識・経験・判断力の不足を不当に利用し過大な不利益をもたらす契約の勧誘が行われた場合における消費者の取消権」について,早急に検討し明らかにすべき喫緊の課題としていた。当会意見書も,「合理的な判断をすることができない事情の利用にかかる困惑類型(法第4条第3項)につき,年齢又は障害などによる消費者の判断力の不足に乗じた勧誘行為を追加すべきである。」ことを提言していた。

したがって,「つけ込み型」勧誘行為に対する消費者の取消権を追加するべきである。

2 「社会生活上の経験が乏しいこと」という要件の修正

本改正案は,契約締結過程に関する規律における困惑類型として,消費者が抱いている不安(本改正案第4条第3項第3号)又は勧誘者に対する恋愛感情等(同項第4号)につけ込んだ勧誘を理由とする取消権を設けたが,その取消しの要件として,「社会生活上の経験が乏しいこと」という要件を加えている。

この要件が付け加えられた結果,霊感商法など高齢者に対する勧誘がこの取消権の対象から除外されるおそれがある。

今回の消費者契約法改正は,若年者だけではなく高齢者など社会的経験・知識・判断力の不十分な者にかかる消費者被害の防止及び救済を図ることにその目的の一つがあるのであって,かかる困惑類型の対象から高齢者など判断力の不十分な者を除外すべきではない。

本改正案については,「社会生活上の経験が乏しいこと」との文言は削除すべきであり,あるいは少なくとも「社会生活上の経験又は判断力が乏しいこと」との文言に修正されるべきである。

3 「平均的な損害の額」の立証について

本改正案は,消費者契約法第9条第1号の「平均的な損害の額」に関して,消費者の立証責任軽減のための推定規定を導入していない。

判例(最判平成18年11月27日民集60巻9号3437頁)の立場によれば,「平均的な損害の額」の主張立証責任は消費者にあるとされているところ,この算定に必要な資料が事業者の元にあることから,消費者にとって,その主張立証はきわめて困難なものである。

そこで,委員会答申は,消費者の立証困難性を緩和し,消費者が「事業の内容が類似する同種の事業者に生ずべき平均的な損害の額」を立証した場合において,その額が「当該事業者に生ずべき平均的な損害の額」と推定される旨の規定を設けるべきことを提言していた。当会意見書では,かかる推定規定にとどまらず,さらに進んで,「平均的な損害の額」にかかる立証責任を事業者に転換する旨を法律上規定すべきことを提言した。法9条の1号の規定を実効化するためには必要不可欠なものであるから,かかる推定規定を設けないのは,委員会答申の趣旨を大きく損なうものである。

本改正案においては,推定規定を導入すべきである。

2018年(平成30年)3月23日
福岡県弁護士会 会長 作間 功

生活保護基準のさらなる引下げを行わないよう求める会長声明

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政府は,2017年12月22日,生活保護基準を引き下げ,年間160億円を削減することを含む次年度予算案を閣議決定した。今回の基準改定では,毎日の生活費に相当する生活扶助基準が最大5%,母子加算が約20%削減される予定となっている。基準改定によって基準額が上がる世帯も存在するものの,全体では約70%の世帯が基準引き下げの対象となり,特に都市部の子どものいる世帯や高齢世帯において大幅な引き下げになることが見込まれている。
生活保護基準については,すでに2013年から3年間かけて生活扶助基準の引下げ(平均6.5%,最大10%)が実施されており,2015年からは住宅扶助基準や冬季加算の削減も行われてきたところである。これらに続くさらなる生活保護基準の引下げは,我が国全体の貧困化を促すことになりかねないと危惧される。
今回の引下げは,生活保護基準を第1・十分位層(所得階層を10に分けた最も下位10%の階層)の消費水準に合わせるという考え方の基づくものである。しかし,そもそも我が国における生活保護の捕捉率(生活保護基準未満の世帯のうち実際に生活保護を利用している世帯が占める割合)は,厚生労働省が公表した資料(2010年4月9日付厚生労働省「生活保護基準未満の低所得世帯数の推計について」)によっても15%から32%程度と推測されているところであり,第1・十分位層の中には生活保護の利用が可能であるもののこれを利用することなく,生活保護基準未満の所得のみでの苦しい生活を余儀なくされている人たちが多数含まれている。この層の消費水準を比較対象とすれば,必然的に生活保護基準を最も貧困な水準に至るまで引下げ続けることにならざるを得ず,合理性がないことは明らかである。
生活保護基準は,憲法25条が保障する「健康で文化的な最低限度の生活」の基準であるのみならず,住民税の非課税基準,国民健康保険料の減免基準,介護保険の保険料・利用料や障害者総合支援法による利用料の減免基準,就学援助の給付対象基準,最低賃金等の多様な施策にも直接,間接の影響を及ぼすものである。すなわち,生活保護基準の引下げは,生活保護利用世帯の生存権を直接脅かすとともに,生活保護を利用していない市民生活全般にも多大な影響を及ぼすのである。
今回の生活保護基準のさらなる引下げは,すでに度重なる引下げを実施されている生活保護利用者をさらに追い詰めるだけでなく,市民生活全般の地盤沈下をもたらすものであり,容認できないものである。
よって,当会は,政府に対し,生活保護基準のさらなる引下げを行わないよう強く求めるものである。
                    2018年(平成30年)3月9日
                           福岡県弁護士会  
                             会長 作間 功

死刑執行に抗議する会長声明

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 2017年(平成29年)12月19日,東京拘置所において2名の死刑が執行された。2名ともに弁護人による再審請求が裁判所に係属している中であり,うち一人は犯行時19歳と未成年であった。この度の死刑執行は,政府において弁護人を付した再審請求中であっても,また,犯行時未成年であっても,死刑を執行するとの強い意志を示したものと言える。
 しかし,再審は,刑事裁判手続の誤謬を是正し,無実の者を誤判冤罪から救済するための最後の砦というべき制度であるところ,いったん死刑が執行されれば,失われた生命を取り戻すすべはない。再審請求に理由があるか否かは司法府(裁判所)が判断すべきことであり行政府(法務大臣)が判断できるものではないことからすれば,再審請求中に死刑を執行することは,行政府の判断によって生命を奪い去ることとなる結果を発生させるものであって,問題が大きい。
また,犯行時未成年であった者に対して死刑を執行することは極めて慎重であるべきである。未成年者は,生育環境の影響を受けやすく,完成された人格とは言いがたい。その一方で,大きな可塑性を有し,将来の更生が期待できる存在である。そのような犯行時未成年者であった者に対し,死刑を執行することは,刑罰のあり方として公正・適正と言えるのかという点から疑問である。
さらに,国連は,死刑は人の生命を剥奪する非人道的行為であるとの観点から,1966年に人権自由権規約(B規約)において,「生命に対する権利」を保障し,次いで1989年には,「死刑の廃止が人間の尊厳の向上と人権の漸進的発展に寄与する」とする第二選択議定書(死刑廃止条約)を採択している。国連は,国連総会決議及び国連人権自由権規約委員会の勧告を通じて,日本を含むすべての死刑存置国に対し,死刑廃止に向けての行動と死刑の執行停止を求め続けている。この国連の要請を受け,EUを中心とする世界の約3分の2の国々が死刑を廃止又は停止し,死刑存置国とされているアメリカ合衆国においても2017年6月の時点で19州が死刑廃止を,4州が死刑モラトリアム(執行停止)を宣言するなど,多くの国連加盟国(アメリカは州)は国連の理念に協調しようとしている。
ところが,政府は,国際社会からの死刑廃止に向けた勧告に対し,「死刑制度については,国民の多数が極めて悪質,凶悪な犯罪について死刑はやむを得ないと考えており,特別に議論する場所を設けることは現在のところ考えていない。」との政府見解を表明し,国連からの勧告に背を向け,日本における死刑の存置と執行を正当化している(UPR第2回日本政府審査・勧告に対する日本政府の対応)。
政府は,かかる態度をとる理由は国民世論にあると説明する。しかし,2014年(平成26年)の内閣府世論調査結果を子細にみると,死刑もやむを得ない(80.3%)と回答した者の中の40.5%は状況が変われば将来は死刑を廃止して良いとする考えに賛成であり,「死刑存置」の意見に賛成する者と「死刑廃止または廃止の可能性を認める」の意見に賛成する者は,おおよそ10:9の割合で拮抗しているのであって,国民世論の圧倒的多数が積極的に死刑に賛成している訳ではない。
誤判,冤罪によって理不尽に生命・自由が奪われるということへの危惧は,机上のものではない。そのことは,4件の死刑再審無罪判決(免田・財田川・松山・島田各事件),再審開始決定が出された袴田事件,そして,死刑求刑事件ではないものの,比較的近年の事件である東住吉事件,東電OL事件,氷見事件などから明らかである。冤罪による無辜の処罰は,過去の例外的事例として葬り去ることはできない。我々は,死刑制度が無実の者の生命を奪う危険性のある制度であることを十分に踏まえ,その上で,死刑を存置させるのか廃止させるのかを議論を尽くす必要がある。
政府は,国連の死刑廃止に向けた要請を真摯に受け止め,積極的・能動的に,日本国民に対し,自由と平等と平和を維持するために採択した人権自由権規約(B規約)の中核にある人間の尊厳・生存権を奪うことのできない権利とする価値観・理念の普遍化に努めるべきである。
 日本弁護士連合会は,2016年(平成28年)10月7日の第59回人権擁護大会において「死刑廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言」を採択し,日本において国連犯罪防止刑事司法会議が開催される2020年までに死刑廃止を含む刑罰制度改革を目指すべきことを政府に求めた。
当会は,日本弁護士連合会の前記宣言の趣旨を踏まえ,2016年11月11日当会会長声明を発出して,死刑執行に抗議を行っている。当会は,改めて,本件死刑執行について,ここに強く抗議の意思を表明するとともに,死刑制度についての全社会的議論を求め,死刑廃止に向けた議論が尽くされるまでの間,すべての死刑の執行を停止することを強く要請する。
2018年(平成30年)3月 1日
                 福岡県弁護士会会長  作 間  功

犯罪報道において、犯罪被害者や遺族の名誉、プライバシー、平穏な生活を送る権利を尊重することを求める会長声明

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 2017年(平成29年)10月,神奈川県座間市のアパートから9名の方の遺体が発見されるという事件が発生した。その後,被害者の方の身元が判明すると,被害者の遺族が被害者の実名や顔写真を公表しないよう報道機関に対して要請していたにもかかわらず,被害者の実名と顔写真が新聞,雑誌,テレビ等に掲載されるという事態が生じた。しかも,被害者の生活状況,家族構成,被害者に自殺願望があった可能性や凄惨な被害状況までもが仔細に報道され続けた。
 およそ犯罪被害者や遺族は,犯罪そのものによって容易に回復し難い深刻な被害を受けている。それに加えて,公表されることを望まない情報が報道されると,犯罪被害者や遺族は,さらなる精神的苦痛を受け,二重の苦しみを蒙ることになる。犯罪報道は,そのあり方如何によっては,犯罪被害者や遺族の名誉,プライバシーと平穏な生活を送る権利を著しく侵害するもので,さきの座間市の事件における事態は,看過できないものであった。
 確かに,報道の自由は,国民の知る権利に奉仕するための憲法上重要な権利であり,そのための取材の自由も尊重されるべきことは言うまでもない。犯罪報道も,一般に公共の利害に関することと考えられており,被害の影響を広く訴えることによって社会を変革するという大きな意義を有するものであること,また,犯罪被害者の実名報道についても捜査の事後的な検証を可能にするという意義もあることは承知している。
 しかし,そのような報道の意義は,果たして匿名報道によっても達成できないのか,名誉・プライバシーという,現代社会において最大限に守られるべき重要な人権との関係において,事案ごとに慎重な吟味・検討が必要と考える。犯罪被害者や遺族は,犯罪被害に遭わなければ普通の市民生活を送っていたはずであり,実名報道をすべき公共の利害に関するものと言えるかは,慎重に検討されなければならない。まして実名報道の上に被害者のプライバシーを白日のもとに曝す詳細な報道については一層慎重な検討が必要である。しかも,現代のインターネット社会では,いったん情報が報道されれば,その情報は半永久的に残存することとなり,一度侵害された犯罪被害者とその遺族の権利の回復は,もはや不可能である。
 そこで,当会は,報道機関に対し,犯罪被害者に関する情報を報道するにあたっては,犯罪被害者や遺族の名誉,プライバシー,平穏な生活を送る権利を尊重し,厳密な検討を加え,慎重な判断に基づく適切な報道を行うことを求める。
                 
                 2018年(平成30年)2月26日
                       福岡県弁護士会 会長 作間 功

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