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共謀罪の新設に反対する会長声明

カテゴリー:声明

2006年(平成18年)5月8日
福岡県弁護士会 会 長 羽田野節夫
1 与党は、本年4月21日、「犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するために刑法等の一部を改正する法律案」(略称「刑法・組織犯罪処罰法等改正案」。以下「本法案」という)の修正案を衆議院法務委員会に提出し、今国会での成立を期し、5月9日の強行採決をも辞さない姿勢を示している。
2 福岡県弁護士会は、昨年8月31日、会長声明を発表し、本法案第6条の2に規定されている共謀罪について、以下のとおり広範な市民の人権が侵害される危険性を指摘して、その立法化に強く反対してきた。すなわち、
第一に、犯罪の実行着手前の意思形成段階に過ぎない共謀それ自体を処罰の対象とすることは、現行刑法の大原則である行為主義に真っ向から反している。
第二に、犯罪の合意そのものを処罰することにより、ひいては思想、信条の自由、表現の自由、集会・結社の自由などの憲法上の基本的人権が重大な脅威にさらされることは避けられない。
第三に、市民生活の隅々に及ぶ法律に規定されたおびただしい数の犯罪に関する「共謀」が処罰対象とされることになり市民生活は抑圧される。
第四に、「越境性」や「組織犯罪性」を要件としていない結果、いわゆる越境的組織犯罪集団とは関係のない団体もすべて取締りの対象にすることができる点で極めて危険であり、明らかに不当である。
3 このたびの与党の修正案は、?適用対象団体の活動を「その共同の目的が罪を実行することにある団体である場合に限る」とし、?共謀に加えて、「共謀に係る犯罪の実行に資する行為」を要求し、?思想良心の自由の侵害や団体の正当な活動の制限をしてはならないとの注意規定を設ける、というものである。
しかしながら、我々は、この修正案についても強く反対せざるを得ない。その理由は、
第一に、「団体」を国連条約が取締りを求める組織的犯罪集団に限定するものではない点でそもそも不当であるうえ、今回の修正案をもってしても犯罪を謀議したことを根拠に当該団体が「共同目的が罪を実行することにある」と認定される危険性は払拭されず、市民団体が際限なく適用対象となりうる点において、何らの限定にもなっていない。
第二に、「犯罪の実行に資する行為」という抽象的な概念を付加しても濫用の歯止めにはなり得ないのは明らかであり、行為主義を原則とする現行刑法体系に抵触する点で極めて不当である。
第三に、たとえ上記?の注意規定をもうけたとしても、そもそも構成要件自体が不明確なのであるから、抑止的効果は期待できない。
第四に、「共謀」の事実は関係者の供述のみで立証がなされうることから、ひとたび虚偽の供述がなされれば冤罪の発生を止めることは極めて困難で、こうした事態を我々弁護士は強く危惧せざるを得ない。
4 このように、共謀罪の新設は、人権侵害に至る危険性が極めて高く、捜査機関の権限が不当に強化されかねない点において、到底、容認することはできない。
よって、当会は再度その立法化に強く反対し、政府与党に対し、直ちにその立法化を断念するよう求める。
以上

憲法改正国民投票法案に反対する会長声明

カテゴリー:声明

2005(平成17)年10月4日
福岡県弁護士会 会長 川副正敏
1 2005年9月22日、衆議院に憲法調査特別委員会を設置することが決議された。その設置趣旨は、憲法改正手続きについての国民投票法案を審議することにあるとされている。
与党自由民主党と公明党は、すでに2001年11月に発表された憲法調査推進議員連盟の日本国憲法改正国民投票法案に若干の修正を加えた法案骨子に合意しており、これをもとにした法案が提案されると考えられる。\n  憲法は国家体制の基本秩序を定める最高法規であると共に、国家権力から国民の権利・自由を保障することをその本質としている。同時に、憲法改正手続きは国民の主権行使の最も重要な場面である。従って、改正手続きにおいては十分な議論を保証しさらに国民の意思が適正に反映されなければならないことは言うまでもない。\n2 しかるに、法案骨子には以下の問題がある。
(1)第1に、憲法の複数の条項について改正案が発議される場合、各発議毎に投票方法を定めることとされており、各条項毎に投票する制度が保証されていない。仮に異なる条項について一括して賛否を投票する場合、一部賛成や一部反対の有権者は投票が困難となり、有権者の意思を正確に反映させることができない。従って、投票においては、改正点について個別に賛否の表明ができる方法にするよう、法で定めるべきである。\n(2)第2に、法案骨子は国民投票運動について、公務員・教育者の運動制限、外国人の運動の全面禁止、予想投票公表\禁止、メディアに対する報道制限など広範な禁止規定を定めこれを罰則によって担保している。
本来憲法改正にあたっては、できる限り有権者に情報が提供され活発な議論がなされるべきであり、そのためには表現の自由が最大限尊重されなければならない。従って、その規制には十\分な必要性と合理性が求められるべきであるが、上記規制は公選法の制限規定を無批判に取り入れたに等しい。当選人と職務の関係で利害関係が生じかねない選挙と憲法改正の是非を問う国民投票では全く異なる性格のものであることを考えると、公選法の規制が国民投票にも妥当するとはとうていいえないのである。
国民投票運動においては、公務員の政治活動の制限の適用除外等こそ検討され規制緩和をはかるべきであるにもかかわらず、定住者を含めた外国人の運動をすべて禁止するなど、公選法より厳しい規制も含まれており、重大な問題である。
(3)第3に投票の効果については、有効投票総数の二分の一を超える賛成があれば当該憲法改正について国民の承認があったものとするとされている。
しかし、無効票となったものは、少なくとも賛成票とは見なされなかったものであるし、憲法改正について何らかの意思を表示したものであるから、投票しなかったものと同様には考えられない。また、無効票が多い場合は少数の賛成で憲法改正が承認されたと見なされる可能\性もある。
国民投票は国の最高法規たる憲法を改正するか否かを問うものであるから、少なくとも有効投票総数ではなく、投票総数の過半数が賛成を投じたと判断されなければ国民の承認があったと見なされるべきではない。
また、投票率に関する規程がなく低い投票率で憲法改正が実現する可能性があることも問題である。\n(4)第4に、法案骨子では、発議から投票までの期間を30日から90日としているが、これは余りにも短く憲法改正を国民が議論する期間としては不十分と言わざるを得ない。憲法改正の発議について国会で議論される期間があるとしても、最終的な改正案は国会の議決によって確定するのであり、国民はこれについて十\分な議論を行う必要がある。議連案ではこの期間は60日から90日とされており、それでも短すぎるとの意見が出されていたところ、法案骨子ではさらに30日に短縮されており、十分な議論がないまま投票を余儀なくされる可能\性がある。
(5)第5に、国民投票無効訴訟について、投票結果の告示から30日以内に東京高等裁判所にのみ提起できるとすることも問題である。
憲法改正という重要な事項についての提訴期間としては短すぎるし、管轄を東京高裁に限るという点も、広く国民が司法審査を受ける権利を阻害するもので、慎重な検討を要する。
3 以上のとおり、与党の国民投票法案骨子には重大な問題を多く含んでいる。
そもそも憲法改正そのものについても、その最高法規制から憲法の基本原則について改正の対象になりうるかの議論すらあるところ、今回の法案骨子ではその点には全く触れない上、手続き上の規定に含まれる問題点は、国民投票により国民の真摯に国民の意思を問う姿勢で提案されているのか疑念を持たざるを得ないような内容である。
このような重大な欠陥を有する法案骨子をもとにした憲法改正国民投票法案の国会上程には強く反対するものである。
以上

取調べの録音・録画実現とその試験的な導入を求める声明

カテゴリー:声明

2005(平成17)年10月4日
福岡県弁護士会 会長 川副正敏
当会は、さる9月17日、福岡市において、一般市民の参加を得て「密室での取調べをあばく ― 取調べの録音・録画実現に向けて ―\」と題するシンポジウムを開催しました。そこでの内容は、国税還付金詐取事件で無罪判決を勝ち取った前杷木町長による警察や検察庁での自白強要のための取調べの実体験報告、取調べの可視化を試験的に開始している韓国の視察報告、取調べの可視化をテーマにしたパネルディスカッションが行われました。
これらを通して、密室における取調べは、自白獲得のための長時間にわたる過酷な追及とそこでの暴行・脅迫・人格誹謗などといったさまざまな人権侵害の温床となり、虚偽の自白を生む危険性が極めて大きく、現にそのような実例が後を絶たないこと、諸外国では取調べの可視化が大きな流れとなって進められていることが改めて浮き彫りになりました。\n そして、これを踏まえて、シンポジウムの最後に、集会参加者一同で下記のとおりの提言を全員一致で採択しました。
よって、当会は、関係各機関が一刻も早く、取調べの全過程の録音・録画実施に向けて行動をとられるよう要望し、当面、その試験的な導入を求めるとともに、当会としてもその実現を図るため最大限の努力を尽くす所存です。
以上のとおり声明いたします。

〔提   言〕
弁護士会は、えん罪や不当な取調べによる人権侵害を防止するため、被疑者の取調べ過程の可視化(録音・録画)を強く求めてきました。
そして、今回のシンポジウムで?かかる弊害に対して取調べには人権侵害やえん罪を生み出すなどの様々な弊害があること、?かかる弊害に対して取調べの可視化が有効な対処法であること、?隣国韓国をはじめ諸外国では、被疑者取調べの可視化が広く実施されていること、が確認されました。
また、2009年5月までに導入される裁判員制度のもとでは、これまでの刑事裁判のように被告人の自白の任意性・信用性をめぐって証人尋問がくり返され長期化することは裁判員の負担を加重するばかりか、裁判員の判断を困難にし、裁判そのものの存続を危ぶまれるような事態が憂慮されます。
そのような事態を避けるためにも、取調べの全過程の可視化によって自白の任意性・信用性を判断できるようにしておかなければなりませんが、いますぐに取調べの可視化を試験的に導入しておかなければ4年足らずで始まる制度開始には間に合いません。
現在までに法務省や警察・検察の現場からは取調べの録音・録画が捜査過程に悪影響を及ぼすと、さまざまな理由を述べていますが、そのような反対論が果たして合理的といえるのかは想像の域をでていません。
すでに取調べの可視化について抽象的な功罪を論ずる段階は終わり、試験的に取調べの可視化を導入したうえで、弊害の有無を検証し、よりよい制度設計を目指すべき段階に至っています。
そこで、私たちは、
取調べのすべての過程を録音・録画する制度の実現に向けて、すみやかに試験的な録音録画を導入し、順次運用を開始することを提言いたします。

以上

有明海における干拓事業漁業被害原因裁定申請事件の裁定に関する声明

カテゴリー:声明

2005(平成17)年9月28日
福岡県弁護士会会長  川 副 正 敏
諫早湾干拓事業による有明海の漁業被害問題につき、当会は本年7月13日、ノリ養殖の被害実態を生産量だけの検討で否定して原審仮処分決定を取り消した福岡高等裁判所決定を批判し、国に対して速やかに中・長期開門調査を実施するよう求める旨の声明を発表したところである。\n この問題に関して、福岡県・佐賀県・長崎県・熊本県の有明海沿岸4県の漁民は2003年4月16日、福岡県有明海漁業協同組合連合会は同年5月30日、いずれも「有明海の異変による漁業被害の原因は諫早湾干拓事業にある」として、公害等調整委員会に被害原因の裁定申請を行った。これについて、同裁定委員会は本年8月30日、「有明海におけるノリ養殖、タイラギ漁等について、申\請人らの被害(不漁、不作)は部分的には認め得るものの、それらと諫早湾干拓事業との因果関係は、高度の蓋然性をもって認めるには足りない」として、諫早湾干拓事業と漁業被害との法的因果関係を認めず、これらの申請を棄却した(以下「本裁定」という)。\n 本裁定は、その理由中で、因果関係の判断基準に関し、「経験則に照らし全証拠を総合的に検討し、高度の蓋然性を証明すればよい」との一般論を示している。ところが、本件への具体的な適用では一転して、「成層度の強化等の環境変化の可能性は否めないものの、これを裏付ける客観的データがなく、赤潮の発生・増殖機構\等の科学的解明が十分に行われていないなど、本件の因果関係に関わる重要な論点について、客観的な証拠資料や科学的知見が乏しいという状況下で認定判断を行わざるを得ず、漁業被害と諫早湾干拓事業の因果関係を高度の蓋然性をもって肯定するに至らなかった」と結論付けている。\n しかし、干拓事業と漁業被害の法的因果関係の認定のあり方として、本裁定のように客観的なデータの蓄積や自然現象の発生機構の科学的解明を要求することは、言葉の上で「高度の蓋然性の証明」という表\現を用いながらも、実質的には、自然科学的因果関係の厳格な「証明」まで要求するのに等しいものであって、前段に述べている一般論とは明らかに齟齬している。これは、公害紛争の迅速・適正な解決を図る目的で設けられた専門的裁判外紛争処理機関としての公害等調整委員会のあるべき役割を自ら著しく減殺する態度と言わざるを得ない。
他方で、公害等調整委員会は本裁定を出すに際し、「事業が漁業環境に影響を及ぼした可能性を否定するものではない」、「今後、有明海を巡る環境問題について、国を始めとして、更なる調査・研究が進められて、的確な対策が実現され、かつてのような豊かな有明海の再生が図られることを念願するものである」との異例の委員長談話を発表\した。その趣旨からすれば、公害等調整委員会として、国に対し正面から「客観的証拠資料」の提示ないしそのために必要かつ十分な調査を求めてしかるべきであった。\nいずれにしても、かかる資料不足の原因が国による事前調査の不十分さにあることは、本裁定によって一層明白になったのであり、諫早湾干拓事業が有明海の漁業環境に影響を与えたかどうかについては、国において積極的に調査する責務があると言うべきである。\n 具体的には、周辺漁民らを代表する福岡・佐賀・熊本の三県漁連が要求し続け、当会もかねてより指摘してきたように、中・長期の開門調査以外にデータ集積のための適切な方法はない。\nよって、当会は、今回の公害等調整委員会の裁定に遺憾の意を表明するとともに、国に対し、原因探究のための中・長期開門調査を早急に実施するよう重ねて求めるものである。
以 上

北九州矯正センター構想に反対し、少年鑑別所の適地への移転を求める声明

カテゴリー:声明

2005(平成17)年9月22日
福岡県弁護士会 会 長  川 副 正 敏

当会は、2004(平成16)年5月26日開催の定期総会において、小倉刑務所跡地に医療刑務所・小倉少年鑑別所・福岡拘置所小倉支所の3施設を移転させるという「北九州矯正センター構想に反対し、少年鑑別所の適地への移転を求める決議」を採択し、対策本部を設置して、その実現のための活動を展開してきた。\n 他方、本年度の国の予算において、小倉少年鑑別所を小倉刑務所跡地に移転するための費用が計上され、法務省は同跡地の付近住民にこの移転計画の説明を行ったが、住民が強く反対したことから、当初の予\定は変更を余儀なくされたものの、法務省はあくまでもこれを実施するとの前提のもとに、当会を含め、引き続き関係各方面への働きかけを行っている状況にある。
 確かに、現在の少年鑑別所施設が老朽化しているうえ、近隣高層住宅から俯瞰されるなど、少年の人権上も問題があることから、移転・建替の必要があること自体は理解できる。しかし、そのことのゆえに少年鑑別所を刑務所と同一敷地内等に移転させることは到底容認できないとの当会の立場に何ら変わりはない。その理由は以下のとおりである。
 第1に、少年の健全な育成を理念とする少年法の趣旨からすれば、少年鑑別所は刑務所などの成人に関する施設とは隔絶して設置されるべきものである。
 第2に、同じ少年に対する施設であっても、少年鑑別所は少年に対する処遇決定のためにその資質等を調査鑑別する施設であり、教育的な更生を目的とする少年院とも明らかにその性格を異にするものである。もとより刑に処せられた者を拘禁する施設である刑務所とは全く別個の目的を持つ施設である。したがって、これらの施設とは画然と区別すべきものである。
 第3に、少年鑑別所を刑務所と同一敷地内に隣接設置させることは、少年鑑別所に収容される少年に多大な悪影響を与え、あるいはそのような偏見を助長する事態が生じる可能性が大きい。\nしたがって、法務省は少年鑑別所の小倉刑務所跡地への移転計画を撤回し、それ以外の適切な移転先を早急に確保すべきである。
 当会としては、今後とも、小倉少年鑑別所の小倉刑務所跡地への移転に強く反対し、引き続き適地への移転を求める運動を行う決意である。

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