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福岡県弁護士会役員就任披露宴ごあいさつ

カテゴリー:会長日記

2006年(平成18年)5月24日
福岡県弁護士会 会長 羽田野節夫
1.(序) 只今御紹介に預かりました、福岡県弁護士会会長の羽田野節夫です。
本日は、皆様には、公私共に御多用の中を、福岡高等裁判所長官龍岡資(すけ)晃(あき)様や福岡高等検察庁検事長佐(さ)渡(ど)賢(けん)一(いち)様、福岡市長山崎広太郎様を初めとして、福岡県弁護士会と関係の深い、各界各層の方々に御出席を賜わり、誠にありがとう存じます。
本日は、当会の過去の活動を検証し、更に今後の活動を皆様に御紹介し、御理解を願って、皆様から忌憚のない御意見や、御忠告を戴く場として、本日のような宴を催す次第です。皆様におかれましては、当会の役員に対しては元より当会の若い会員に対して苦言、提言又は暖かい励ましのお言葉をかけて下されば幸いでございます。
2.福岡県弁護士会の構成員と
弁護士会の組織について若干御紹介します。弁護士会は、強制加入団体であって、どのような政治信条を有するかにかかわらず、どこかの単位会に所属すべきこととされています。
福岡県弁護士会は、伝統的に4つの部会制をとっており、4つの部会は、純粋に独立対等の関係でございます。
各々の部会と構成員数は、前方の画面に表示されたとおりです。
また、九州ブロックには8県・8単位会が存在し、九州弁護士会連合会を組織し、九州内の共通の問題を協議しています。
日本全国には52単位会があり、個々の弁護士と全国の単位会とを構成員とする日本弁護士連合会(所謂、日弁連)という組織を作っています。
(1) 弁護士の自治
各弁護士会は、自治権があり、所属する個々の弁護士を監督し、更に日弁連が監督する関係にあります。しかし個々の弁護士の日常業務を弁護士会が監督する立場にはありません。個々の弁護士の不祥事に対し、弁護士会が懲戒権を発動し、当該弁護士を懲戒処分することによって、自浄作用を発揮します。
この弁護士自治制度は、司法権の独立のための制度的保障であり、市民にとっても重要かつ重大な制度です。もし、弁護士や弁護士会が特定の国家機関の統制下にあるとするならば、市民の為に弁護活動をする弁護士に対して個別の圧力が容易に加わり、司法作用がいびつとなり、司法の独立が保てません。
(2) 弁護士の警察に対する依頼者密告制度法案反対特別決議
本日の定期総会におきまして、皆様のお手元に配布しました「弁護士による警察等に対する依頼者密告制度」(ゲートキーパー問題)法案反対特別決議」がなされました。この制度は、依頼者との話の中で疑わしい取引があれば密告しなさいというものです。これは、弁護士と依頼者との信頼関係を根底からくつがえさせる、とんでもない法案です。いかにテロ予防対策とはいえ、テロの被害国アメリカやその隣国カナダも真っ向からこの法案に反対しています。当会が、政府が作ろうとしている法案に対して堂々として反対意見を申し上げることができるのも、弁護士自治制度があるからです。
本日御列席の皆様も、弁護士の自治を守ることがゆくゆくは市民の基本的人権を守り、社会正義の実現につながること、そして弁護士自治制度は、市民の権利を守るために必要不可欠な制度であることを御理解下さいますようにお願いします。
3.福岡県弁護士会の特徴
(1) 当会は、熱心な会員による委員会活動を中心として、弁護士会の会務活動が実践されています。
(2) 各種当番弁護士制度の発足と関係機関の連携
当会は、全国に先駆けて、平成2年当番弁護士制度を創設し、逮捕直後から、弁護士が被疑者のところに駆けつけ、被疑者の権利擁護に努めてきました。その後、全国に広がった当番弁護士制度は、16年の歳月を経て、ようやく今年の10月より、重大事件という限定的ながら、被疑者弁護人国選制度を実らせました。
(3) 当会は、その後も各種委員会が活発な活動をつづけ、常に日弁連をリードしてきました。全国に先駆けて、?刑事の当番弁護士制度のみならず、?精神保健付添当番弁護士制度、?福祉の当番弁護士制度、?少年事件全件当番付添人制度の各々の導入を実現しました。又、当会は、国際委員会による国際交流も盛んです。すでに15年前より始まった韓国釜山地方弁護士会との交流、そして中国大連市の法律家との国際交流も継続されています。私は、このような活発な委員会活動を展開してきた当会の先達の精神に学び、そして、福祉の当番弁護士などの活動を通じて培われた、行政、医療、福祉施設等々の関係機関との連携を大切にして、更に新たな視点で、市民のための司法改革を実践したいと考えています。
4.司法改革と当会の実践目標について述べます。
平成2年の日弁連・司法改革宣言に始まった市民のための司法改革は、いよいよ実践段階に差し掛かっています。ここで、司法改革の主要課題と当会の実践目標について御紹介します。
(1) 法科大学院と法化社会
(2) 日本司法支援センターの発足
今年4月から、独立行政法人「日本司法支援センター」が発足しました。10月からは、その業務が開始され、短期1年以上に該当する重大事件のみ、逮捕後勾留されたときから、被疑者に対し国選弁護人を選任します。この弁護人の選任作業を司法支援センターが担当し、弁護活動そのものは、各単位会の弁護士が担当します。
(3) 裁判員制度と法教育
司法改革の主要課題の一つである裁判員制度は、今から3年後の平成21年5月までに実施されます。憲法が国民主権を謳いながらも、市民が司法の分野に直接関わることはありませんでした。そこで、市民が裁判に直接参加することによって市民の感覚を裁判に反映させようとして実施されるのが裁判員制度です。
今から3年後に実施が予定されていながら果たしてどれだけの市民がその仕組みを知っているのでしょうか?
今後、当会は、種々の機会を利用して、法曹三者一体となって、市民に対し、広報活動を展開する所存です。
去る5月3日のどんたくに際しては、検察庁、弁護士有志や市民やく200人が、裁判員制度の広報宣伝のために、パレードに参加しました。
又、学校教育現場において、法律の背景にある基本的な価値観(正義や公平)や社会のルールを認識理解させ、そのような価値観に基づき問題を解決する能力を育成する「法教育」が必要です。当会は、中学・高校の社会の授業において、「法教育」を学んで貰うため、講師派遣出前授業を展開しています。これによって、中高生が将来の裁判員制度の担い手として成長して下されば幸いです。
(4) 高齢者・障害者支援センター(あいゆう)の法人化と福祉の当番弁護士の全国展開
平成12年4月から高齢者の介護保険制度と成年後見制度が導入されると同時に、当会は高齢者・障害者支援センター(あいゆう)を設立しました。
今や「あいゆう」の活動は、平成12年9月から実施された福祉の当番弁護士制度と相まって、行政や医療機関、施設関係者に絶大なる信頼と支持を獲ち得たと自負しています。
当会は、現在「あいゆう」の法人化を検討しています。
併せて、福祉の当番弁護士制度を刑事の当番弁護士同様、全九州並びに全国に展開したいと考えています。
(5) 弁護士過疎地対策と法律相談センターの拡充
司法改革の重要課題のもう一つに、弁護士過疎地対策があります。我が県内にも弁護士が存在しない地域があります。
私は、弁護士過疎地対策の一つは、法律相談センターの拡充ではないかと考えています。当会の法律相談センターは、昭和60年4月に発足し、現在の天神の法律相談センターを開設して20周年を迎えます。
現在では、福岡県内に法律相談センターが19ヶ所存在します。法律相談センターの数としては、東京の弁護士会に劣らず全国第1位です。当会は、福岡県民のために、「いつでも、どこでも、誰でも」容易に司法にアクセスできる体制を作っていきたいと思います。
5.行動の基本指針
ところで、昨今の商道徳や、行為規範を逸脱した幾多の社会現象(例えば、耐震偽造問題、ライブドアの粉飾決算、公共工事の談合、架空請求、オレオレ詐欺等の事件)は、一体何が原因なのでしょうか?
企業は、その活動に際して、所謂、社是、綱領といったその会社の行動の基本指針があったはずです。それが、規制緩和というお題目の下で、従来のタガがはずれた感が否めないのが、作今の情勢です。国家行動の基本指針は、所謂、国是といわれ、日本国憲法がそれに該当します。今、基本的人権の尊重と恒久平和を目標とする日本国憲法が改正されようとしています。国家の綱領ともいうべき憲法の改正については、慎重にあるべきだと考えます。国家のタガとも言うべき、憲法を軽々しく緩めるべきではありません。
先日、ある明治時代創業の某商事会社にあいさつに伺ったところ、九州支社長室には、会社の綱領が掲げてありました。
?所期奉公  ?処事光明  ?立業貿易
という三つの言葉です。企業活動は営利を目的とするのは、当然です。しかし、企業活動の基本は、公に奉仕するという精神が大切であるとその会社は昔から考えてきたのです。明治時代に創業者が考えたこの会社の行動の基本指針は、今も普遍の光を放って輝いています。
6.座右の銘
我々弁護士の行動の指針は、弁護士法1条の「基本的人権の擁護と社会正義の実現」であることは言うまでもありません。
さて、私が個人的に行動の指針又は座右の銘としているものは、「積誠動人」という言葉です。私の修猷館高等学校時代の恩師小柳陽太郎先生から戴いた言葉です。これは、『誠を積んで人を動かす』とよみます。孟子の言葉、「至誠人をも動かす」と同じ意味です。金を積んで人を動かす方もおられますが、最後に人の心を動かすものは、誠心、誠意であると確信しています。私は、今後これらの言葉を行動の指針としつつ、皆様を始めとする関係者各位と連携しながら、福岡の県民、市民のために真に役立つ弁護士会活動を展開して参りたいと思います。どうか、本日御列席の皆様には、当会の活動をよく御理解のうえで、御支援、御協力を下さいますようにお願いいたします。
終わりに、本日は、粗酒粗肴ではありますが、本日の宴が、お互いの交流の契機となり、実り多いものになりますように祈念申し上げて、ごあいさつとさせて戴きます。
本日はどうもありがとうございます。
以上
(於ホテルオークラ福岡)

共謀罪の新設に反対する会長声明

カテゴリー:声明

2006年(平成18年)5月8日
福岡県弁護士会 会 長 羽田野節夫
1 与党は、本年4月21日、「犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するために刑法等の一部を改正する法律案」(略称「刑法・組織犯罪処罰法等改正案」。以下「本法案」という)の修正案を衆議院法務委員会に提出し、今国会での成立を期し、5月9日の強行採決をも辞さない姿勢を示している。
2 福岡県弁護士会は、昨年8月31日、会長声明を発表し、本法案第6条の2に規定されている共謀罪について、以下のとおり広範な市民の人権が侵害される危険性を指摘して、その立法化に強く反対してきた。すなわち、
第一に、犯罪の実行着手前の意思形成段階に過ぎない共謀それ自体を処罰の対象とすることは、現行刑法の大原則である行為主義に真っ向から反している。
第二に、犯罪の合意そのものを処罰することにより、ひいては思想、信条の自由、表現の自由、集会・結社の自由などの憲法上の基本的人権が重大な脅威にさらされることは避けられない。
第三に、市民生活の隅々に及ぶ法律に規定されたおびただしい数の犯罪に関する「共謀」が処罰対象とされることになり市民生活は抑圧される。
第四に、「越境性」や「組織犯罪性」を要件としていない結果、いわゆる越境的組織犯罪集団とは関係のない団体もすべて取締りの対象にすることができる点で極めて危険であり、明らかに不当である。
3 このたびの与党の修正案は、?適用対象団体の活動を「その共同の目的が罪を実行することにある団体である場合に限る」とし、?共謀に加えて、「共謀に係る犯罪の実行に資する行為」を要求し、?思想良心の自由の侵害や団体の正当な活動の制限をしてはならないとの注意規定を設ける、というものである。
しかしながら、我々は、この修正案についても強く反対せざるを得ない。その理由は、
第一に、「団体」を国連条約が取締りを求める組織的犯罪集団に限定するものではない点でそもそも不当であるうえ、今回の修正案をもってしても犯罪を謀議したことを根拠に当該団体が「共同目的が罪を実行することにある」と認定される危険性は払拭されず、市民団体が際限なく適用対象となりうる点において、何らの限定にもなっていない。
第二に、「犯罪の実行に資する行為」という抽象的な概念を付加しても濫用の歯止めにはなり得ないのは明らかであり、行為主義を原則とする現行刑法体系に抵触する点で極めて不当である。
第三に、たとえ上記?の注意規定をもうけたとしても、そもそも構成要件自体が不明確なのであるから、抑止的効果は期待できない。
第四に、「共謀」の事実は関係者の供述のみで立証がなされうることから、ひとたび虚偽の供述がなされれば冤罪の発生を止めることは極めて困難で、こうした事態を我々弁護士は強く危惧せざるを得ない。
4 このように、共謀罪の新設は、人権侵害に至る危険性が極めて高く、捜査機関の権限が不当に強化されかねない点において、到底、容認することはできない。
よって、当会は再度その立法化に強く反対し、政府与党に対し、直ちにその立法化を断念するよう求める。
以上

憲法改正国民投票法案に反対する会長声明

カテゴリー:声明

2005(平成17)年10月4日
福岡県弁護士会 会長 川副正敏
1 2005年9月22日、衆議院に憲法調査特別委員会を設置することが決議された。その設置趣旨は、憲法改正手続きについての国民投票法案を審議することにあるとされている。
与党自由民主党と公明党は、すでに2001年11月に発表された憲法調査推進議員連盟の日本国憲法改正国民投票法案に若干の修正を加えた法案骨子に合意しており、これをもとにした法案が提案されると考えられる。\n  憲法は国家体制の基本秩序を定める最高法規であると共に、国家権力から国民の権利・自由を保障することをその本質としている。同時に、憲法改正手続きは国民の主権行使の最も重要な場面である。従って、改正手続きにおいては十分な議論を保証しさらに国民の意思が適正に反映されなければならないことは言うまでもない。\n2 しかるに、法案骨子には以下の問題がある。
(1)第1に、憲法の複数の条項について改正案が発議される場合、各発議毎に投票方法を定めることとされており、各条項毎に投票する制度が保証されていない。仮に異なる条項について一括して賛否を投票する場合、一部賛成や一部反対の有権者は投票が困難となり、有権者の意思を正確に反映させることができない。従って、投票においては、改正点について個別に賛否の表明ができる方法にするよう、法で定めるべきである。\n(2)第2に、法案骨子は国民投票運動について、公務員・教育者の運動制限、外国人の運動の全面禁止、予想投票公表\禁止、メディアに対する報道制限など広範な禁止規定を定めこれを罰則によって担保している。
本来憲法改正にあたっては、できる限り有権者に情報が提供され活発な議論がなされるべきであり、そのためには表現の自由が最大限尊重されなければならない。従って、その規制には十\分な必要性と合理性が求められるべきであるが、上記規制は公選法の制限規定を無批判に取り入れたに等しい。当選人と職務の関係で利害関係が生じかねない選挙と憲法改正の是非を問う国民投票では全く異なる性格のものであることを考えると、公選法の規制が国民投票にも妥当するとはとうていいえないのである。
国民投票運動においては、公務員の政治活動の制限の適用除外等こそ検討され規制緩和をはかるべきであるにもかかわらず、定住者を含めた外国人の運動をすべて禁止するなど、公選法より厳しい規制も含まれており、重大な問題である。
(3)第3に投票の効果については、有効投票総数の二分の一を超える賛成があれば当該憲法改正について国民の承認があったものとするとされている。
しかし、無効票となったものは、少なくとも賛成票とは見なされなかったものであるし、憲法改正について何らかの意思を表示したものであるから、投票しなかったものと同様には考えられない。また、無効票が多い場合は少数の賛成で憲法改正が承認されたと見なされる可能\性もある。
国民投票は国の最高法規たる憲法を改正するか否かを問うものであるから、少なくとも有効投票総数ではなく、投票総数の過半数が賛成を投じたと判断されなければ国民の承認があったと見なされるべきではない。
また、投票率に関する規程がなく低い投票率で憲法改正が実現する可能性があることも問題である。\n(4)第4に、法案骨子では、発議から投票までの期間を30日から90日としているが、これは余りにも短く憲法改正を国民が議論する期間としては不十分と言わざるを得ない。憲法改正の発議について国会で議論される期間があるとしても、最終的な改正案は国会の議決によって確定するのであり、国民はこれについて十\分な議論を行う必要がある。議連案ではこの期間は60日から90日とされており、それでも短すぎるとの意見が出されていたところ、法案骨子ではさらに30日に短縮されており、十分な議論がないまま投票を余儀なくされる可能\性がある。
(5)第5に、国民投票無効訴訟について、投票結果の告示から30日以内に東京高等裁判所にのみ提起できるとすることも問題である。
憲法改正という重要な事項についての提訴期間としては短すぎるし、管轄を東京高裁に限るという点も、広く国民が司法審査を受ける権利を阻害するもので、慎重な検討を要する。
3 以上のとおり、与党の国民投票法案骨子には重大な問題を多く含んでいる。
そもそも憲法改正そのものについても、その最高法規制から憲法の基本原則について改正の対象になりうるかの議論すらあるところ、今回の法案骨子ではその点には全く触れない上、手続き上の規定に含まれる問題点は、国民投票により国民の真摯に国民の意思を問う姿勢で提案されているのか疑念を持たざるを得ないような内容である。
このような重大な欠陥を有する法案骨子をもとにした憲法改正国民投票法案の国会上程には強く反対するものである。
以上

取調べの録音・録画実現とその試験的な導入を求める声明

カテゴリー:声明

2005(平成17)年10月4日
福岡県弁護士会 会長 川副正敏
当会は、さる9月17日、福岡市において、一般市民の参加を得て「密室での取調べをあばく ― 取調べの録音・録画実現に向けて ―\」と題するシンポジウムを開催しました。そこでの内容は、国税還付金詐取事件で無罪判決を勝ち取った前杷木町長による警察や検察庁での自白強要のための取調べの実体験報告、取調べの可視化を試験的に開始している韓国の視察報告、取調べの可視化をテーマにしたパネルディスカッションが行われました。
これらを通して、密室における取調べは、自白獲得のための長時間にわたる過酷な追及とそこでの暴行・脅迫・人格誹謗などといったさまざまな人権侵害の温床となり、虚偽の自白を生む危険性が極めて大きく、現にそのような実例が後を絶たないこと、諸外国では取調べの可視化が大きな流れとなって進められていることが改めて浮き彫りになりました。\n そして、これを踏まえて、シンポジウムの最後に、集会参加者一同で下記のとおりの提言を全員一致で採択しました。
よって、当会は、関係各機関が一刻も早く、取調べの全過程の録音・録画実施に向けて行動をとられるよう要望し、当面、その試験的な導入を求めるとともに、当会としてもその実現を図るため最大限の努力を尽くす所存です。
以上のとおり声明いたします。

〔提   言〕
弁護士会は、えん罪や不当な取調べによる人権侵害を防止するため、被疑者の取調べ過程の可視化(録音・録画)を強く求めてきました。
そして、今回のシンポジウムで?かかる弊害に対して取調べには人権侵害やえん罪を生み出すなどの様々な弊害があること、?かかる弊害に対して取調べの可視化が有効な対処法であること、?隣国韓国をはじめ諸外国では、被疑者取調べの可視化が広く実施されていること、が確認されました。
また、2009年5月までに導入される裁判員制度のもとでは、これまでの刑事裁判のように被告人の自白の任意性・信用性をめぐって証人尋問がくり返され長期化することは裁判員の負担を加重するばかりか、裁判員の判断を困難にし、裁判そのものの存続を危ぶまれるような事態が憂慮されます。
そのような事態を避けるためにも、取調べの全過程の可視化によって自白の任意性・信用性を判断できるようにしておかなければなりませんが、いますぐに取調べの可視化を試験的に導入しておかなければ4年足らずで始まる制度開始には間に合いません。
現在までに法務省や警察・検察の現場からは取調べの録音・録画が捜査過程に悪影響を及ぼすと、さまざまな理由を述べていますが、そのような反対論が果たして合理的といえるのかは想像の域をでていません。
すでに取調べの可視化について抽象的な功罪を論ずる段階は終わり、試験的に取調べの可視化を導入したうえで、弊害の有無を検証し、よりよい制度設計を目指すべき段階に至っています。
そこで、私たちは、
取調べのすべての過程を録音・録画する制度の実現に向けて、すみやかに試験的な録音録画を導入し、順次運用を開始することを提言いたします。

以上

有明海における干拓事業漁業被害原因裁定申請事件の裁定に関する声明

カテゴリー:声明

2005(平成17)年9月28日
福岡県弁護士会会長  川 副 正 敏
諫早湾干拓事業による有明海の漁業被害問題につき、当会は本年7月13日、ノリ養殖の被害実態を生産量だけの検討で否定して原審仮処分決定を取り消した福岡高等裁判所決定を批判し、国に対して速やかに中・長期開門調査を実施するよう求める旨の声明を発表したところである。\n この問題に関して、福岡県・佐賀県・長崎県・熊本県の有明海沿岸4県の漁民は2003年4月16日、福岡県有明海漁業協同組合連合会は同年5月30日、いずれも「有明海の異変による漁業被害の原因は諫早湾干拓事業にある」として、公害等調整委員会に被害原因の裁定申請を行った。これについて、同裁定委員会は本年8月30日、「有明海におけるノリ養殖、タイラギ漁等について、申\請人らの被害(不漁、不作)は部分的には認め得るものの、それらと諫早湾干拓事業との因果関係は、高度の蓋然性をもって認めるには足りない」として、諫早湾干拓事業と漁業被害との法的因果関係を認めず、これらの申請を棄却した(以下「本裁定」という)。\n 本裁定は、その理由中で、因果関係の判断基準に関し、「経験則に照らし全証拠を総合的に検討し、高度の蓋然性を証明すればよい」との一般論を示している。ところが、本件への具体的な適用では一転して、「成層度の強化等の環境変化の可能性は否めないものの、これを裏付ける客観的データがなく、赤潮の発生・増殖機構\等の科学的解明が十分に行われていないなど、本件の因果関係に関わる重要な論点について、客観的な証拠資料や科学的知見が乏しいという状況下で認定判断を行わざるを得ず、漁業被害と諫早湾干拓事業の因果関係を高度の蓋然性をもって肯定するに至らなかった」と結論付けている。\n しかし、干拓事業と漁業被害の法的因果関係の認定のあり方として、本裁定のように客観的なデータの蓄積や自然現象の発生機構の科学的解明を要求することは、言葉の上で「高度の蓋然性の証明」という表\現を用いながらも、実質的には、自然科学的因果関係の厳格な「証明」まで要求するのに等しいものであって、前段に述べている一般論とは明らかに齟齬している。これは、公害紛争の迅速・適正な解決を図る目的で設けられた専門的裁判外紛争処理機関としての公害等調整委員会のあるべき役割を自ら著しく減殺する態度と言わざるを得ない。
他方で、公害等調整委員会は本裁定を出すに際し、「事業が漁業環境に影響を及ぼした可能性を否定するものではない」、「今後、有明海を巡る環境問題について、国を始めとして、更なる調査・研究が進められて、的確な対策が実現され、かつてのような豊かな有明海の再生が図られることを念願するものである」との異例の委員長談話を発表\した。その趣旨からすれば、公害等調整委員会として、国に対し正面から「客観的証拠資料」の提示ないしそのために必要かつ十分な調査を求めてしかるべきであった。\nいずれにしても、かかる資料不足の原因が国による事前調査の不十分さにあることは、本裁定によって一層明白になったのであり、諫早湾干拓事業が有明海の漁業環境に影響を与えたかどうかについては、国において積極的に調査する責務があると言うべきである。\n 具体的には、周辺漁民らを代表する福岡・佐賀・熊本の三県漁連が要求し続け、当会もかねてより指摘してきたように、中・長期の開門調査以外にデータ集積のための適切な方法はない。\nよって、当会は、今回の公害等調整委員会の裁定に遺憾の意を表明するとともに、国に対し、原因探究のための中・長期開門調査を早急に実施するよう重ねて求めるものである。
以 上

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