福岡県弁護士会コラム(会内広報誌「月報」より)

2017年3月号 月報

給費制維持緊急対策本部だより 「修習給付金」制度、閣議決定される

月報記事

司法修習費用給費制復活緊急対策本部 本部長代行 市丸 信敏(35期)

■ ご高承のとおり、さる2月3日、司法修習生に国が「修習給付金」を支給する新制度を設ける内容の裁判所法改正案が閣議決定されました。

同法案によれば、修習給付金は、司法修習生の全員に支給する「基本給付金」、自ら住宅を借り受けている修習生に対する「住居給付金」、修習に伴い引っ越しを必要とする修習生に対する「移転給付金」の三種類とされています。具体的な金額は、それぞれ最高裁判所規則で定めることとされていますが、これまでの折衝等で合意されている金額は、基本給付金13.5万円、住居給付金3.5万円の合計17万円です。

また、本改正案では同時に、現行の貸与制が変更され、「修習専念資金」として、修習給付金では足りない者に対して一定額を無利息で貸し付ける制度も設けられることになりました。

因みに、同改正案では、司法修習生の非行について、現行の「罷免」に加えて、新たに「修習停止」、「戒告」の制度も新設されることとされました。

改正法の施行日は本年11月1日とされ(附則)、第71期司法修習生から適用される予定です。

法案は、本年2月中旬頃には国会に提出され、同3月中には、成立が見込まれています。

■ 給付金の金額については、もう少し上を目指してきていたので率直に言って若干の残念感も否定できませんが、国家財政の危機的状況の下、日弁連会長自らも精力的に各方面に働きかける等したうえでのギリギリの到達点であること、日弁連が実施した修習生の生活実態調査(アンケート)から浮かび上がっていた必要生活費額ともほぼ符合する金額水準でもあること等から、さしあたりはやむを得ないものと受け止めています。

■ 平成22年4月、日弁連及び当会を含む全国の弁護士会が立ち上がって給費制の維持を求めて精力的な運動に取り組み始めてから7年、ついに悲願であった給費制の事実上の復活まであと一歩のところまでこぎ着けることができました。「一度廃止された制度が数年で復活するというのは、あり得ない」(某国会議員)ことが実現しつつあるのは、この間の、当会会員の皆さまの深いご理解、熱いご支援のおかげに他ならないものと篤く感謝致しております。そもそも市民にとって全く縁遠いこの課題が、市民ほか各界各層に広くご理解とご支援を仰ぐことができて、その結果としてここに至ることができたのは、当会会員の皆さまの長年に及ぶ日ごろからの地道で幅広い各種公益活動をはじめ、弁護士・弁護士会に対する信頼と理解があったからこそであると、運動を通じて強く実感しているところです。ただ、一方で、新しい法曹養成制度のもと、残念ながら法曹志願者が毎年減少し続けるという窮状が顕著となり、その大きな要因の一つと考えられる経済的負担を軽減する必要への理解が進んだこともあります。そして、この間の歴代執行部のご理解、何よりも、自ら無給制(貸与制)のもとで体験した苦労や不条理を踏まえ、後輩たちに同じ思いをさせてはならないとして、運動の絶望的状況の中でも決してあきらめずに、足を棒にして数え切れないほどの各種団体や国会議員回り、街頭行動や幾度もの市民集会開催等々の地道でねばり強い活動に身を投じ続けてくれた若手会員の皆さんの力に負うところが大です。この場を借りて、篤く御礼申し上げます。

■ 司法修習生に対して、いわば特別待遇をすることに対する異論はいまだ根強く残っていることも事実です。私たちは、戦後一貫して国民の負担で修習中の生活を保障してもらって法曹としての養成を受けてきたこと、また、今般、再びその在り方に戻すこととされたことの意義に思いを致し、改めて、深く胸に刻み込む必要があることは言うまでもありません。

無事に法改正が叶った暁には、この間、無給制(貸与制)で耐えてきてくれた65期生から70期生の皆さん、この運動の原動力でもあった彼らを、如何にして救済するかが、残された大きな課題です。引き続き、会員の皆さまのご理解とご支援をお願い申し上げます。(平成29年2月14日記)

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