福岡県弁護士会コラム(会内広報誌「月報」より)

2016年10月号 月報

「実務に役立つLGBT連続講座」第2回/LGBTに関する世の中の動き

月報記事

両性の平等委員会・LGBT小委員会 井上 敦史(62期)

先月から連載が始まった「実務に役立つLGBT連続講座」。

祝・第2回!!今月はLGBTに関する世の中の動きについて、ご紹介させていただきます。

1 地方自治体における取り組みの広がり

2015年4月1日、東京都渋谷区で渋谷区男女平等及び多様性を尊重する社会を推進する条例が施行され、同性パートナーを結婚に相当する関係と認める同性パートナーシップ証明書が発行されるようになりました。

その後、東京都世田谷区、三重県伊賀市(実は産まれ故郷)では、兵庫県宝塚市、沖縄県那覇市でも同性パートナーシップ制度が創設されました。

渋谷区では、パートナーシップ証明書を発行してもらうにあたり、公正証書の作成が必要なため時間と費用がかかってしまいますが、世田谷区や伊賀市、宝塚市、那覇市では、条例ではなく要綱という形で制度化されたため、申請手続きが簡素化され、よりパートナーシップ宣誓書受領証(ただし、那覇市では「登録証明書」)の交付が得やすくなりました。

また、同性パートナーシップ証明書や、同性パートナーシップ宣誓書受領証の発行だけではなく、東京都文京区や多摩市などでは男女共同参画の条例にLGBTに関することが盛り込まれたり、大阪市淀川区、沖縄県那覇市、和歌山県橋本市、岐阜県関市では、首長が「LGBT支援宣言」を出したりするなど、地方自治体におけるLGBTへの取り組みが広がってきています。

2 国における取り組みの広がり

2015年4月30日には、文部科学省から、LGBTの子どもについて配慮を求める通知が全国の国公私立の小中高校などに出されました。

この通知には、子どもが相談しやすくするために、教員がLGBTについての心のない言動を慎むことや、子どもの服装や髪形について否定したり、からかったりしないよう明記されています。

また、学校側は、原則として生徒の事情に応じた対応をすべきとして、複数の教員や教育委員会、医療機関と連携して対応するよう求め、サポートチームの設置なども推奨されています。

さらに、学校での支援策として、「生徒が自認する性別の制服を認める」、「着替えの際に皆とは別に保健室の利用を認める」、「修学旅行で入浴時間をずらす」等、具体的なものが示されています。

そして2016年6月27日には、厚生労働省が職場におけるLGBTへの差別的な言動がセクハラに該当することを発表し、男女雇用機会均等法に基づく事業主向けのセクハラ指針に、「性的指向、性自認によらず対象」という文言が明記され、2017年1月から施行されることとなりました。

このように国におけるLGBTへの取り組みも広がってきています。

3 企業における取り組みの広がり

企業におけるLGBTへの取り組みも広がってきています。

渋谷区や世田谷区の取り組みを受け、ライフネット生命保険は、2015年11月4日から、死亡保険金受取人の指定範囲を拡大し、同性のパートナーを受取人に指定することをできるようにしました。

また、携帯電話大手3キャリアと言われているSoftbank、au、NTTdocomoにおいて、同性パートナーに対しても家族割引の適用がされるようになりました。

他にも、トヨタや日産、ソニーといった大会社においても、LGBTに対する雇用機会均等ポリシーの策定や、同性パートナーへの福利厚生の適用、トランスジェンダーに必要な医療の保険適用を認めるなど、様々な企業において、LGBTへの取り組みが広がっています。

4 これからの課題

このように、LGBTに対する理解を広げ、平等な社会を作り上げていこうとする意識が高まり、様々な場面においてLGBTへの取り組みが広がっていますが、まだまだ偏見や差別の問題等課題が残っています。

誰しもが苦しまずに生活を送ることができる社会を作り上げていくために、これから支援の輪を広げ、取り組みを拡大していく必要があると思います。

さて、次号からはより実践的なお話となります。次号が待ち遠しいですね!!

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