福岡県弁護士会コラム(会内広報誌「月報」より)

2016年3月号 月報

「成年後見の実務」研修 ~新規登録会員や若手会員対象として~

月報記事

会 員 吉 原 育 子(64期)

1 はじめに

平成28年1月27日、「成年後見の実務」研修が行われましたので、ご報告いたします。参加者は65期から68期の方が多かったようです。

2 最高裁判所企画・作成のDVDの放映

最初にDVDを放映しました。40分弱のDVDです。後見制度支援信託についての説明もあり、コンパクトで大変分かりやすかったです。同じ内容ものが、最高裁のHPから動画で閲覧できますのでお勧めです。

3 「成年後見の実務~申立手続編~」(永田一志先生ご講義)

後見・保佐・補助のどの類型に該当するかの判断ですが、福岡家庭裁判所のHP「診断書付票」の書式の説明が非常に分かりやすいとのことでした。もっとも、最終的にはお医者様の診断書に基づくことになります。また、昨今、申立件数が増加してきています。早めに審問の予約をすることが肝要です。

後見相当の方の「本人申立」をする際ですが、永田先生が個人的に使っておられる判断の物差しは、「後見制度」は理解できないが、(1)誰かに助けてもらいたいということは分かる(2)委任状に名前が書ける(3)申立代理人である弁護士のことは分かる、の3点で判断されているとのことでした。なお、後見相当の方の「本人申立」をされる際は、法テラスとの契約能力との関係で民事扶助制度が利用できません。この点も注意です。

4 「成年後見の実務」~成年後見就任後の職務等~(岡田武志先生ご講義)

折しも、福岡で数十年ぶりの大雪が降って数日後の研修でした。冒頭に岡田先生より、お住まいの地域が断水になったお話、そのお話の流れから、後見人の職務は生活に関わる内容も多いので、いきいきセンター、役所、ケアマネージャー等とこまめに連絡を取ることが大事であるとのお話がありました。

就任後は、財産管理や裁判所への財産報告を行うことがメインになってくるとのことで、やはりこの辺りのお話が一番耳に止まりました。日々の出納については、「後見人業務経過表」などと題してエクセルで適宜つけておくことが大事とのことです。新たに口座を作る場合でも、口座の名義は絶対に後見人の個人の名前では作らないように、口座を作った場合は福岡県弁護士会の預かり金規定に従い届け出るようにとのことです。現在の家裁の運用では、流動資産が一定額ある場合(1200万円以上が目安)は、原則として、後見制度支援信託の利用が検討される事案となりますので依頼者の方へのご説明にも注意が必要です。
いざ就任してみると判断に迷うこともあります。処理に迷うときは家裁のHPのQ&Aを見たり、先輩弁護士に相談しましょう!とのことです。盛りだくさんで大変勉強になった研修でした。

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