福岡県弁護士会コラム(会内広報誌「月報」より)

2014年12月号 月報

災害対策委員会報告(東北大震災関連) 福島現地視察のご報告(1)

月報記事

会 員 池 上 遊(63期)

1 はじめに

平成26年11月1日から4日まで、災害対策委員会有志(岡部史卓、吉野大輔、吉村敏幸各会員と私)で福島現地視察へ行ってきましたので、今月号・次号に亘りご報告します。平成24年11月25日から28日にかけても同様に視察を行いましたが、このときにもご案内、コーディネートいただいた「市民ネット」(当時はふくおか市民ネットワーク)の方に今回もお世話になりました。なお、前回の視察については、月報492号、493号に宮下和彦、青木歳雄各会員の報告が掲載されています。

また、今回は、広島から、避難者の支援をされている団体であるアスチカの方々、広島県弁護士会から避難者の支援をされている会員も2名参加してくださいました。

2 1日目(11月1日)

午前9時に成田空港に到着し、そこから車でいわき市内へ移動しました。いわき市は、「フラガール」で有名な「スパリゾートハワイアンズ」のある県内人口第2位の都市です。ここでは、「いわき放射能市民測定室たらちね」と「チャイルドハウス ふくまる」を視察しました。

・たらちね(写真(1)、(2))

こちらでは、市民からの要望に応え、様々な場所の線量、放射能濃度を出張で測定したり、市販の食品や学校などの土壌の放射能濃度、ホールボディカウンタによる内部被ばく量の測定などを民間で行っています。線量や放射能濃度を測定する機器類は非常に高価なものが多く、こちらでは、そうした機器類を寄付などにより購入し、測定結果についてホームページで公開するなどしています。職員の方は、この間までゴルフ場で働いていましたとおっしゃる女性の方などがいて、ごく一般の方が白衣を着て科学者のように放射線や放射能の測定についてお話をされているのに驚きました。

視察翌日に、ベータ線を測定できるよう検査室が新たに整備され、そのお披露目会が開かれていました。この整備のために約3,000万円を要したとのことでした。

・ふくまる(写真(3))

こちらは、被ばくを避けるために屋外で遊ぶことが困難な子どもたちのために、10時から16時まで、無料で開放されている遊び場です。私が子どもの頃には見たこともないような遊具が多数置いてあり、子どもたちの発育が懸念されている福島では貴重なスペースだなと感じました。

3 2日目(11月2日)
・現地視察

午前8時頃にはいわき市を出発し、国道6号線を北上して浪江町へ向かいました。6号線は、福島第一原発事故後、警戒区域(その後、帰還困難区域)に指定され、原発近辺は通行不能となっていましたが、視察の約2ヶ月前、9月15日から自動車の通行に限って許可されるようになりました。

通行中に線量を計測した方によれば、車内で窓を閉め切った状態でも5~6程度とのことでした(単位はマイクロシーベルト、μSV/h)。報道によれば、車外では10程度になる箇所もあるとのことでした。福岡市内ではおおむね0.04~0.05という数値になるところです。

私たちが視察した当時は、1号機の建屋カバーの解体工事が始まると言われていた時期でしたが、通行中に確認することはできませんでした。

浪江町の様子は、前回の視察のときとほとんど変わらず、月報492号で宮下会員が報告されているとおりのものが事故から3年半以上が経過してもそのままとなっています。「ほとんど」としたのは、復興に向けて徐々に町役場の職員などが入って、主要な道路が整備されるなどしているためです。町内あるいは町外からの廃棄物処理のため、中間貯蔵施設や焼却施設などが設置されているところもありました。

・二本松市の仮設住宅

浪江町の方々が多く入居している二本松市内の仮設住宅を訪問しました。当日は、芋煮会のあとの反省会中というタイミングでしたが、皆さんから温かく歓迎していただきました。

浪江町は原発から10~20km程度しか離れておらず、線量が高いところも多いです。来年を目途に区域指定の解除が検討されているようですが、3年半以上が経過して帰還する住民がいるのか、町外コミュニティの検討もされているようですが、復興ができるのか、どのような復興をデザインしていくのか、とても難しい課題に直面しているのではないかと感じました。

以下次号

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