福岡県弁護士会コラム(会内広報誌「月報」より)

2013年10月号 月報

シンポジウム「福祉における弁護士とケアマネジャーの連携体制の構築に向けて」報告

月報記事

会 員 市 丸 健太郎(63期)

1 はじめに

去る平成25年8月10日(土)にパピヨン24ガスホールにて、シンポジウム「福祉における弁護士とケアマネジャーの連携体制の構築に向けて」を開催しました。

本シンポジウムは、その名前のとおり、弁護士とケアマネジャー(以下「ケアマネ」と呼びます。ちなみに、正式名称は「介護支援専門員」です)の連携を模索するもので、おそらく全国初の取り組みになるということでした。

本シンポジウムには、総勢363名(ケアマネ281名、弁護士52名、その他30名)もの参加者があり、休日だったにもかかわらず、写真のとおりほぼ満席の状態でした。

自分は田代知愛先生と一緒に総合司会を務めさせて頂きましたが、人の多さに最初はだいぶ緊張してしまいました。参加された方にはお聞き苦しいところがあったところをここでお詫び申し上げます。

2 内容

当日は、午前にプレ合同研修、午後にシンポジウムを行う二部構成をとりました。

プレ合同研修では、長野ケアマネから弁護士に向けて「ケアプランの作成方法」について、篠木先生からケアマネに向けて「1時間でマスターする成年後見制度」について、それぞれ研修を行って頂きました。短い枠での研修でしたが、小気味のいいテンポで要所を押さえた説明をして頂き、受講者の評判も大変よかったです。

シンポジウムでは、両業種の組織、業務内容について簡単に紹介をした後、パネルディスカッションを行いました。司会は篠木先生、パネリストは岩城和代先生、和智大助先生及び福岡県介護支援専門員協会の中心メンバーである3名のケアマネという強力な布陣で、「ケアマネなどの専門職を支援し連携する際の視点」、「ケアマネが遭遇する諸問題と弁護士による支援の可能性と課題」、「成年後見分野での連携の可能性」、「今後の両業種の連携と課題」など、実に8つのテーマについて検討を行いました。

とにかく活発な議論をしようということで、パネリスト、司会、総合司会で事前に何度も打合せを行ったのですが、その甲斐もあり、とても活発で、かつ、会場のみなさんにお互いにもっと連携を深めていこうという思いを抱いてもらえる内容になったと思います。

3 印象的だったこと

パネルディスカッションの中で特に印象的だったのは、弁護士は困っている法律問題を解決することだけに目線が行きがちというケアマネからの指摘でした。ケアマネは利用者を継続的に全人的に支援するように常に心掛けているということであり、福祉の分野に携わる際には、弁護士もそのような視点を持つことが大切であると感じました。

また、ケアマネとしては、法的支援を要請したことで本人と家族、又は家族とケアマネの関係が壊れてしまうことにつき、強い危惧があるということでした。具体的には、本人が遺言書の作成を望んでいる場合が分かり易いのですが、遺言書を作成することによって不利益を被る家族が憤慨して、本人への支援が中断されてしまうことや、余計なことをしたとしてケアマネ自身が攻撃の対象になるリスクがあるので、法的支援を要請することを躊躇してしまうことがあるということでした。この点、弁護士からは、本人の権利擁護という視点から、そのようなリスクがあっても介入しなければいけないときもあるのではないかという指摘がありましたが、その一方、弁護士としても、ケアマネがそのような懸念を持っていることについて十分配慮しながら支援をしていく必要があることを感じました。

4 今後の連携に向けて

本当に多くのケアマネに参加して頂いたことからも分かるとおり、ケアマネはその業務を行う中で、法的問題を抱えて悩んでいる利用者をたくさん知っており、法的問題に強い関心を持っています。そして、法的ニーズを把握しているケアマネと連携すれば、法的支援が必要な方に適切な支援をできる可能性があります。

しかしながら、ケアマネを含む福祉職の方には「弁護士は敷居が高い」(費用が高い、顔が見えない、相談場所で待っているだけで利用者のところまできてくれない等)というイメージを持っている方が多く、なかなか連携が進んでいないのが実情です。

本シンポジウムではアンケートをとりましたが、「弁護士を身近に感じることができた」、「弁護士ともっと連携を深めていきたい」、「利用者が抱えている問題について弁護士に相談してみようと思った」という声をたくさん頂きました。その意味でも、本シンポジウムは大成功に終わったと言えます。
本シンポジウムのパネルディスカッションでは、今後の連携策として、「相談窓口を作る」、「勉強会を行う」、「メーリングリストを作成する」、「懇親会を開催する」など様々な連携案を具体的に検討しました。既にいくつかの試みについては具体的に動き始めているところですが、今後も、一担当者として、積極的にケアマネとの連携を進めていきたいと思います。

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