福岡県弁護士会コラム(会内広報誌「月報」より)

2013年2月 1日

◆憲法リレーエッセイ◆ 憲法とわたし

憲法リレーエッセイ

会 員 平 山 博 久(57期)

1 はじめに

この度、憲法リレーエッセイの依頼をいただきました。

憲法・・・思い返せば、司法試験を受験していた当時、一番苦手な科目でした。

理由は規定の仕方が一番曖昧だと感じたからです。

憲法を実体化する主体は国民であり、国民が現行憲法内容を決めたことを学んでも、憲法の曖昧さは納得できないものでした。

他には憲法に関する最高裁判例を見ても読み進めて、ドキドキ・ワクワクするものが少ない(と当時は思っていた)ことも一つの理由だと思います。


2 憲法と向き合った事件

さて、そんな私が、弁護士登録をして、最初に憲法と向き合った事件が中国残留孤児国家賠償請求事件でした。

現行憲法制定前の事実から現在に至る一連の事実につき、現行憲法下での違憲・違法を問う、この部分だけ取り上げても同事件がいかに壮大且つ困難な事件であるかを理解いただけるのではないでしょうか。

さて、私は、その弁護団活動を通じて、実務的な憲法の重要性を学びました。

事実を調べ、事実を評価し、法律を調べ、法律を適用し、そして憲法に戻って、事実の位置づけや評価はそれで良いのか再評価を行う。これらをどのような順序で考えていたかは、はっきりとは覚えておりません。

ただ、とにかく憲法を頂点とする法規範を意識して、事実を見て、評価し、争点に位置づけることを何回も繰り返した弁護団でした。

その弁護団活動を通じて、憲法に始まり、憲法に終わる、あらゆる事件で憲法を意識しようと思ったわけですが・・・・残留孤児の「訴訟」が終わり、今年は登録して10年目に入る年になり、憲法的な物の考え方ができなくなっていたことに気付かされます。

今回の憲法リレーエッセイの話をいただいた時に、「憲法・・・・しばらくしっかり向き合って考えてないなぁ・・」と思ったのです。

確認するまでもなく憲法は「最高規範」です。

その最高規範を意識することを怠り、事案に直接的または間接的に適用がある下位規範を頼りに業務を行っていたことに気付かされ、とても恥ずかしく思いました。

そこで、大学時代に使っていた基本書を取り出して読んでみましたが、改めて憲法とは面白い規範だと思いました。

現在、北九州において写真撮影に関する接見国賠訴訟の弁護団活動をしていますが、同事件はまさに憲法的視点が要求される事件といえます。

これから腰を据えて憲法と向き合い、勝訴に向けて努力していこうと思います。


3 ところで、この度、憲法リレーエッセイを書くことになりましたが、きっかけは私の事務所の事務所だよりでした。

私は、本年1月の黒崎合同法律事務所の事務所だよりにて、暇があれば、自然風景等の写真を撮るために、散歩等をしているという話を書きました。

すると、私の写真を見た弁護士から、(自然や写真が)「どう憲法と結びつくかわかりませんが、これを憲法と結び付け」てエッセイを書いてくれとの依頼が来たのです。

本来、自然と憲法について書くのであれば、原発や産廃処分場関連のエッセイを書くのがすっきりするとは思います。

ただ、今回のご依頼を受け、最高位の視点である憲法的視点を日常業務において持っていないことに気付かされたことがあまりにショックであったため、自戒の意味を込めて、憲法とわたしという内容で書きました。

今後は、日常業務においても、最高法規たる憲法的視点を常に意識した上で、業務に取り組んでいこうと思います。

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