福岡県弁護士会コラム(会内広報誌「月報」より)

2012年6月 1日

◆憲法リレーエッセイ◆「ひまわり一座の憲法劇に参加して」

憲法リレーエッセイ

会 員 髙 木 士 郎(64期)

1 ひまわり一座とは

憲法記念日を前にした4月30日、中央市民センター大ホールにおいて、ひまわり一座による憲法劇「ぽったと原発の黒魔術」の公演が今年も行われました。

このひまわり一座、とは、弁護士が中心となって、日本国憲法を守る意義を多くの人達にわかりやすくかつ面白く伝える活動を行っている団体で、1989年の設立以来20年以上にわたって活動を続けてきました。ひまわり一座、という名前はご存じなくても一昨年の県弁主催の給費制維持市民集会で寸劇を行っていたメンバー、といえばおわかりになる方もあるかもしれません。

これまで、米軍基地問題や諫早湾干拓問題などを題材として取り上げ、身近な憲法問題についてみんなで考える劇を行ってきました。この様な長期にわたる活動の甲斐あって、現在、ひまわり一座には、演劇の専門家をはじめ会社員、学生など弁護士以外の多くの方々が、一座の活動に賛同し協力してくださっています。今年の公演でも、裏方さんまで含めると50余名の方が直接関わってくださり、そのうち4分の3は弁護士以外の方々です。


2 今年の憲法劇

今年の憲法劇は、「ぽったと原発の黒魔術」。この題名からおわかりの通り、福島第一原発の事故を題材としたお芝居です。魔法を使える魔法族と人間族が共存する社会で、魔法族の少年「ぽった」が、親友の「ろん」、「まい」とともにボランティアに向かった被災地でその被害の深刻さを知り、自分に何ができるかを模索し成長していく、というストーリーです。ですが、決して堅苦しいだけのものではなく、笑いあり涙あり、さらにはダンスもありの、楽しみながら原発にまつわる憲法問題を考えることができる内容でした。原発問題、というホットな話題が題材であったこともあってか、大ホールの客席はほぼ埋まり、立ち見が出るほどの観客の方にご来場いただくことができました。

私は、今年、ひまわり一座の公演初舞台でした。これまでお芝居などやったこともないのですが、地元に被害を与えた企業の会社員として苦悩する地元出身の青年という、演技も難しく、またストーリー上も重要な役をいきなり仰せつかりました。しかも、一つ一つの台詞が長い!ただ、役柄に難しいながらもやりがいを感じましたので、私が福島に行ったときに聞いた地元の方の話や原発で作業員として働いておられた方から聞いた話などを元に、原発の事故がもたらす被害の深刻さと置き去りにされた被災者の苦悩について考え、それが伝わってほしい、という想いで演技をしていくことにしました。

最初は、台詞も棒読みで、演技をしようとするとかえって不自然になってしまうなど全く上手くいかず、ほとんどパニック状態でしたが、共演者や演出家の方々から一緒に何度も稽古をつけてもらったおかげで、何とか本番では役を演じきることができました。客席で見ていた友人から、苦悩が伝わってくるような演技だったよ、というメールをもらったときはとてもうれしかったです。

また、公演が近づくにつれて、演技指導にも熱が入り同じ場面の共演者同士で自主練習をするなど、同じ劇を一緒に作り上げていっているのだ!という気持ちがどんどん強まっていきました。この様に、出会って間もない人達と一緒に、公演の成功という目標に向かって連帯感・一体感を持て、それを高めていくことができたことはとても有意義な経験だったと思います。

また、演技を実際にしてみて、自分の思っていること、伝えたいことを、言葉で人に伝えるには、声の大きさ、高さ、抑揚、視線、顔の向き、表情、身体の動きなど様々な点で工夫をしなければならないことを痛感しました。今後、尋問や相談など弁護士としての仕事の分野で、今回劇を通して学んだことを役立てていきたいと思います。


3 憲法講座

原発事故を題材にお芝居をするにあたり、被災地、特に福島に暮らしておられる方々がどのような状態にあるのか、どのようなことを考えておられるのか、また、原発で実際に働いておられた方々はどのような作業実態であったのか、その危険性はどのようなものだと教えられていたのか、などを学ぶための学習会を、劇の練習の合間に何度も行いました。

学習会に講師としてお招きした、福島に何度も足を運ばれ、ボランティアとして避難を希望される方と避難先との橋渡しを行っておられる方が語られたエピソードなどが脚本に盛り込まれるなど、劇を通して原発の生み出す憲法問題をより明らかで身近なものにするために学習会はとても有意義なものでした。


4 憲法劇団ひまわりサポートについて

昨年、憲法審査会が審議を始めたことに加え、今年に入ってからは主要政党が憲法改正原案を発表しました。この様な状況であるからこそ、私どもひまわり一座は、市民の方々と一緒に、芝居を通じて日本国憲法について理解を広げ、その素晴らしさを伝える活動を、よりいっそう行っていこうと考えております。

その活動の一環として、より幅広い層の市民の方々にひまわり一座に参加していただくために憲法講座をより充実させる、憲法劇を通じて憲法の意義を広く多くの市民の方々に知っていただくためにチケット販促活動にさらに力を入れるなどの点にさらなる尽力を行いたいと思っています。

これらの活動を支援するため、憲法劇を支える弁護士の会「憲法劇団ひまわりサポート」を立ち上げることになりました。福岡県弁護士会会員の皆様には、どうかこの趣旨にご賛同いただき、ご参加くださいますようお願い申し上げます。


5 終わりに

舞台をみんなで作り上げていくその高揚感、舞台を終えたときの達成感、その後の懇親会でのビールの美味さ、どれをとっても素晴らしいものです。憲法を大事にしたいと思っておられる方、演劇が大好きな方、舞台に立ってみたい方、ぜひ、ひまわり一座にご参加ください。また、裏方でのご参加も歓迎いたします。

来年も、憲法記念日の前後に公演を予定しておりますので、ぜひ観客としてもいらっしゃってください。よろしくお願いいたします。

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