福岡県弁護士会コラム(会内広報誌「月報」より)

2010年2月 1日

法律事務所のエコ(その2)

会 員 後 藤 富 和(55期)

1 弁護士がCO2排出削減に取り組むこと 昨年の月報10月号に「法律事務所のエコ(その1)」を掲載させていただきましたが、今回は、その続きで環境マネジメントシステム(EMS)について、私が所属する大橋法律事務所が昨年12月に「エコアクション21」の認証を受けた経験を交えて報告いたします。 昨年の第52回人権大会において、日弁連は「地球温暖化の危険から将来世代を守る宣言」を採択し自らCO2等温室効果ガスの排出削減に取り組むことを宣言しました。その結果、各都道府県の弁護士会はもちろんのこと私たちひとりひとりの弁護士のCO2削減の取り組みが大きな課題となってきました。 法律事務所のCO2削減の取り組みとして、前回の「その1」では、・現状のCO2排出量を知ること、・エアコンの設定温度の調整や自転車の利用などの削減努力、・カーボンオフセットやグリーン電力の導入などをご紹介しました。 ただ、これらの取り組みはあくまで自主的なものであり、面倒なことなしたくないという人間の本性に従うならCO2削減の取り組みは遅々として進まないでしょうし、何より人は「飴」の部分がないと取り組みのモチベーションが湧かないものです。 そこで、自主的取り組みに第三者のチェックを導入し客観性と推進力を付与し、取組の御褒美として「認証」を与えることによって企業の社会的責任(CSR)の面でプラスに評価し経営者に取組へのモチベーションを与えるものとして、環境マネジメントシステムがあります。

2 環境マネジメントシステムの意義 組織や事業者が、その運営や経営の中で自主的に環境保全に関する取組を進めるにあたり、環境に関する方針や目標を自ら設定し、これらの達成に向けて取り組んでいくことを「環境管理」又は「環境マネジメント」といい、このための工場や事業所内の体制・手続きの仕組みを「環境マネジメントシステム(EMS)」と言います。 環境マネジメントシステムには、環境省が策定した「エコアクション21」や国際規格の「ISO14001」、NPOが策定した「KES」などがあります。 上記の通り、環境マネジメントシステムを導入することは、それまで自主的な取り組みであった企業の環境負荷軽減に対し第三者の客観的なチェックを入れることで、取組の積極性を加速させることや、対外的に「環境にやさしい企業」であることをアピールすることでビジネスメリットにつなげ、それによって企業の環境保護へのモチベーションを高めるという意義があります。さらに、省資源や省エネルギーの取組によって大幅な経費削減効果を得ることもできます。

3 弁護士会や法律事務所の先進例 法律事務所では、2006年5月に大阪弁護士会の弁護士法人赤津法律事務所がエコアクション21の認証を受けています。また、弁護士会では、2006年12月に京都弁護士会が、2008年8月に日弁連が、2009年10月に第二東京弁護士会が、それぞれKESの認証をうけており、現在、大阪弁護士会と兵庫県弁護士会がエコアクション21の認証に向けた取組を開始しています。 そして、福岡県弁護士会では、昨年12月、大橋法律事務所がエコアクション21の認証を受けました。

4 環境マネジメントシステム導入 環境マネジメントシステムの導入について、大橋法律事務所を例に報告します。 まず、大橋法律事務所では2009年1月に「大橋法律事務所環境方針」を策定し「環境保全への行動指針」を定めるとともに、所内の実施体制を確定しました。 その後、1月から4月までの4カ月間、大橋法律事務所の事業活動で排出されるCO2等温室効果ガスの量を把握し(環境負荷の自己チェック)、そのデータをもとに事務所の環境への取組を○△×でチェックしました(環境への取組の自己チェック)。この4カ月間のデータに基づいて、具体的な環境目標と環境活動計画を立案し、同年5月から7月までの3カ月間、試験的に運用を行いました。この試用期間内の環境負荷を把握し環境目標と環境活動計画を達成できたかをチェックします。達成できていない項目については、なぜ達成できなかったのか、原因を徹底的に追求し、計画の更なる見直しをします。この一連の取組を環境活動レポートにまとめ、ホームページにアップし市民に公開します。 その後、書類審査の上、10月に審査人による現地審査を受けました。現地審査は午前9時から午後5時まで実施され、施設など現況の確認の他に、弁護士や事務員への個別のヒアリングなど(まるで口述試験のよう)も行われ、ディスカッションを通じて、さらに目標と計画を見直します。 現地審査で指摘された点を踏まえて見直した環境目標や環境活動計画等について地方と中央のそれぞれの判定委員による審査を受け、12月24日にエコアクション21の認証を受けることができました。

5 エコアクション21の認証を受けての雑感 弁護士個人が環境負荷の削減に取り組もうと思っても、その取組が効果の薄い独りよがりのものであったり、また、日々の雑務の中でモチベーションが保てなかったりするものです。弁護士のモチベーションを高め、環境負荷削減の取組を効率的にするためには、やはりエコアクション21などの環境マネジメントシステムの導入が効果的だと感じました。この1年の大橋法律事務所の取組を振り返っても、とても私一人の自主性のみでは達成できなかったと思います。 ぜひ、福岡県弁護士会の会員の皆様も、そして、福岡県弁護士会でも、環境マネジメントシステムを導入して、効率的に環境負荷の削減、地球温暖化防止に取り組んでみてはいかがでしょうか。

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