福岡県弁護士会コラム(会内広報誌「月報」より)

2006年6月号 月報

ITコラム

月報記事

会員  松井 仁

 私は、ワープロからパソコンに替えるのもケータイを買うのも人より遅く、概して「IT」には疎かったのであるが、二年間の英国留学では、ITの世話になりっぱなしであった。

 まず、大学選びや入学手続はほとんどインターネットで行った。各大学のウェブサイトにアクセスして、教えられている科目や入学条件などをチェックし、出願校を決めたら、願書をプリントアウトする。私が出願した五つの大学のうち、二つについてはオンライン出願もできた。画面上で必要事項を入力し、「Submit」(提出)をクリックしておしまいである。あとは、成績証明書や推薦状などを郵送で追完すればよい。地球の反対側にいるのに、あっという間に簡単に手続ができることに驚いた。願書を出したら、メールで受付の知らせが来て、その後の願書の審査状況は、ウェブサイトでチェックできる。ただし、合格通知はちゃんとサイン入りの手紙が郵送されてくる。ビザ申請にはこの原本が必要なのである。

 さて、大学での授業が始まると、並行して、図書館のスタッフによるIT講座が連続して開かれる。学生は年間を通じて、大量の予習をこなし、何本も論文を書かなければならないので、いかに効率よく文献や資料を探せるかが、授業についていけるかどうかを左右する。IT講座は、図書館(他の大学の図書館も含む)のオンラインカタログの使い方に始まり、各種データベース(論文や判例など)の紹介と情報検索のコツまで、実際にパソコンの画面をスクリーンに映し出しながら丁寧に教えてくれるのである。

 実際、私もロンドン大学LLMコースで、授業の前に読んでおくように言われる論文や英国の国内裁判所の判例を、WestlawやLexisNexisといった法律・文献・判例データベースを使って検索し、要旨をプリントアウトして読んでいた。これらは、本来は高額な契約費用のかかる有料データベースであるが、大学が一括契約しているため、学生はタダで自由にアクセスできるのである(コース終了後、学生の身分がなくなってアクセスが拒否されたときには、本当に残念だった)。他方で、国連やヨーロッパ人権裁判所のウェブサイトなど、無料で誰でもアクセスできるデータ-ベースの使い方も教えてもらったので、今後日本で人権に関する仕事をしていくうえで、たまには役に立つかも知れない。

 パワーポイントの使い方の講座もあっていた。博士課程の学生や教員のプレゼンテーションのためのものだと思い、私は参加しなかったが、(法廷でのパワーポイント使用も始まった)今になって思えば惜しいことをしたと思う。

 インターネットは、私生活でも大いに役に立った。何といっても、日本のニュースがリアルタイムで見られるのがよかった。英国の報道からは、日本の情報はほとんど得ることができない。たとえばアテネオリンピックの時も、テレビや新聞では英国選手団の結果しか分からないので、日本のニュースサイトで日本選手の活躍を毎日チェックしていた。ホークスが優勝したときも、KBCラジオのホークス中継をパソコンで聞いて、夫婦で盛り上がっていた。

 日本に帰ってきてからは、逆に、いつも聞いていたBBCラジオが懐かしくなり、インターネットで時々聞いている(http://www.bbc.co.uk/radio/)。英語を勉強されている方には、美しいブリティッシュイングリッシュが聞けるので、是非お薦めしたい。特にBBCラジオ4のニュースや評論は、世界的にも質の高さが認められている。

 ところで、留学を終えて仕事に復帰してみると、弁護士会のIT化がさらに進んでいた。特に、日弁連での各種講演会が、ライブ中継で見られるのは、二年のギャップを取戻さねばならない私にとって大変助かった。福岡県弁護士会のウェブサイトも相当に充実した情報源となっているようである。

もし、ホームページ委員会で「弁護士業務に役立つウェブサイト利用術」のような講座をしていただければ、是非とも参加してみたいと思う(既に行われているかも知れませんね)。

  • URL

カテゴリー

Backnumber

最近のエントリー