福岡県弁護士会コラム(会内広報誌「月報」より)

2005年10月号 月報

ITコラム 〜“it”と私の六年半〜

月報記事

弁護士会職員 松本 寛朗

今となっては昔のことですが、一時期弁護士会のホームページを担当していた縁(だと思う)で今月号のITコラムを担当することになりました。

とはいうものの、元来不精者で一応自宅にかなり時代遅れのパソコンがあることはあるけれど、日常生活において全くといっていいほど活用していない私に書くことがあるだろうかと考えました。

現ホームページ委員会担当シスターズの言葉が頭をよぎります。

「ITについてであれば何でもいいんですよ。」

「ものすごく高尚な内容か、ものすごくおもしろい内容じゃないと承知しませんよ。」

…(汗)。

何はともあれ、まずは自宅のパソコンをおよそ一ヶ月ぶりに起動してみることにしました。

カッカッカッ…と何かがひっかかっているような不気味な音。ディスプレイに「Insert system diskette」の文字。再試行。同じ表示。再試行。同じ表示…。

この異常事態発生に、この手の問題に恐ろしく無知な私は短絡的に「壊れた! もうだめだ!」と決めつけてしまいました。元来物持ちの良い私は、今までたいして活用していなかったくせに、いざ故障! ということになると感傷的になるらしくこれまでの様々な記憶がよみがえってきました。ということで、我がパソコン、通称 it と私の歴史をひもといてみようと思います。

思い起こせば約六年半前、it は我が家の一員となりました。当時の接続はダイヤルアップで、まず、接続すればその間だけ電話代がかかり、また、深夜料金で夜一一時以降は電話代が安くなるので、その時間に利用者のアクセスが殺到するためなかなかプロバイダーにつながらない。そんな時代で、自分の部屋が寝るためだけにあるため冷暖房器具を置いていない私は、深夜、冬は毛布にくるまりながら、夏はうちわ片手にひたすら接続するのを待っていたものです。また、奇跡的に接続に成功したとしても、今思うと信じられないほど遅い通信速度でありながら、当時はそれが普通だと思っていたため苦にならず、やっとつながった喜びをかみしめながらメールやインターネットに勤しんだのも懐かしい思い出です。

しばらくすると、アクセスポイントの数も増え、前ほどには接続に時間がかからなくなったのですが、元来飽き性で貧乏性の私は、接続している間中電話代がかかるということに耐えられず、いつしか it とは、職員旅行のパンフレットや親に頼まれて町内会の会計報告を作成といったような簡単な作業や、知りたいことや気になったことをたまーにインターネットで検索したりといった、なんとも薄っぺらな関係となってしまいました。

やがて、世にADSLや光ケーブルといった通信手段が普及し始めてからしばらくたった頃、遅まきながら it もようやく ADSL一二Mの通信手段を得て生まれ変わりました。今までのダイヤルアップに比べると飛躍的な進歩です。電話代は定額だし、とにかく早い(あくまでも今までと比べると)! これを機会にはまり出したのがインターネットオークションです。元来あまり物欲がない私で利用回数こそ少ないものの、出品物(日用品から情報までとにかくありとあらゆるもの)を眺めているだけでもその種類の多様さと安さ、また中には眉つばと思える出品物の胡散臭さに驚かされます。暇さえあればこのオークションに参加しておりました。この画期的なシステムは、ルールさえきちんと守って注意を怠らなければとても有効なものですので、皆さんも利用してみてはどうでしょうか。

さて、この頃になると、約六年をかけて蓄積された情報量に it の頭脳も限界を迎えており、何をするにしてもやたらと時間を要する状態になっていました。あるアプリケーションのアイコンをクリックしてもそれが立ち上がるまで一分以上かかるのも珍しくなく、おまけに頻繁にフリーズ状態に陥ります。そんなことが続くうちに it と私の関係も月に一度アクセスすればいいほう、というなんとも冷え切った関係になっていったのでした。

そんなことを思い出しつつ、ほぼたしなむ程度のインターネットとごく表面的な能力の利用のみのために存在していた it も、天命かそれとも私の使い方がまずかったのか、診断の結果、ハードディスクの一部に損傷を受け、生命活動は継続しているものの外部との意思の疎通に障害があり、情報管理職としての能力は皆無もしくは極めて微小。見えず聞こえず書けず話せずただ回り続けるという、いわゆる脳死状態となってしまったのです。

使用者として it の能力の何%を引き出せただろう。 it としては、「我が生涯に一片の悔いなし!」とは決して言ってくれないだろうとは思いますが、ただ、最後に自らの活動停止をもって私の悩みの種を解決してくれるネタを提供してくれた it に感謝と哀悼の意を捧げつつ、このコラムをしめくくりたいと思います。

今後は、 it に大容量メモリの新たな脳を移植して復活させるのか、全く別の it を迎え入れるのかは決めていないけれど、いずれにしろもっとかまってあげないとな…。

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