福岡県弁護士会コラム(会内広報誌「月報」より)

2005年10月号 月報

英国便りNo.7 私の体験したトラブル集(2004年2月25日記)

月報記事

刑弁委員会の皆様

お元気ですか? 松井です。

こちらロンドンでは、日も随分長くなり、近所の庭の木々にも花がちらほら咲き始め、春の訪れを感じます。

さて、今回は、私がこれまで体験したトラブル(?)をいくつか報告したいと思います。

一 銀行編 その一:門前払い

英国生活をするうえでは、家賃の引落としなどのため銀行口座を開くことが必要です。そこで、引越しが終わった八月、さっそく近所の銀行(Loyds)を訪ねました。すると、行員は、「口座を開くには、あなた宛ての電話、電気、ガスなどの請求書がいります。住所を確認するためです」とのこと。仕方なく、最初の請求書が来るまで数週間待って、再び尋ねました。ところが、今度は別の行員が、「請求書は、一回分だけでなく、三か月分ないとダメです」と言うのです。三ヶ月も待ってはおられません。

困り果てて、大学の学生係に相談したら、「うちの学生を優遇してくれる支店(Natwest)が近くにあるから行ってみなさい」と、紹介状を書いてくれました。そこへ行くと、学生専用カウンターがあり、入学シーズンで忙しそうな行員が、「はい、ココとココにサインして」とせかします。英文の書面に目を通す暇もなくサインをして、不安な気持ちで待つこと一週間、ようやく口座が開設できました。

二 銀行編 その二:罰金徴収

口座ができて、さっそく家賃の自動引き落とし(毎月六日)の申込をしました。そして、一一月六日の引き落とし日に間に合うように、口座へ一一月四日に入金をして、安心していました。ところが、しばらくして銀行で口座の取引経過を確認したところ、なぜか一一月三日に自動引き落としが試みられていて、その時点で口座に十分なお金がなかったことを理由に、三〇ポンド(六〇〇〇円)の罰金が徴収されていたのです。

びっくりして銀行の行員に事情説明を求めたところ、「いつの間にか引き落とし日が三日に変更されている」との返答。私は、「変更の手続をした覚えはない」と食い下がって、ようやく、三〇ポンドを返金してもらうことができました。

三 銀行編 その三:消えた二〇〇万円

罰金事件が解決して一週間もたたないある日の夕方、キャッシュコーナーでお金を下ろした私が何気なくレシートを見ると、一万ポンド(二〇〇万円)以上あった残高が、突然数十ポンドしかなくなっていて、一瞬頭が真っ白になりました。もう銀行窓口は閉まっている時間で、私は一晩、「これは誰かの詐欺被害にあったのかも」などと悶々とし、翌朝一番で銀行へ出向きました。

一万ポンドの行方を調べてもらったところ、実は、私が知らない私名義のもう一つの口座(定期預金)があって、そこへ移っていたのです。どうやら、私が口座開設のときにサインした書面の中に、定期預金口座の開設申込もあったようです。

詐欺ではないと分かってホッとしたものの、同一人の口座とはいえ、勝手に預金を振り替えるという銀行の態度に腹が立ってきました。そして、その翌日、銀行の別の係から「あなたは普通預金口座に大金を入れていますが、資金運用上もったいないので、よかったら定期預金に振り替えませんか?」という■勧誘■の手紙が届いたのです。順序が逆だろ! と思わず叫んでしまいました。

四 電話編:電話番号乗っ取り事件

こちらの自宅では、British Telecom(日本でいうとNTTのような会社)と電話の契約をしています。ある日のこと、BTから奇怪な手紙がきました。

「ある情報によると、あなたは近日中に転居するそうですね。別の人があなたの電話番号を欲しがっているので、この手紙の日付から五日以内に連絡なき場合には、その人にあなたの電話番号をあげます」というのです。

期限の日まで二日しかなく、私はびっくりして、転居を否定するため、BTのカスタマーサービスに電話するのですが、何度電話しても話し中でつながりません。

やっと二日目の夜につながって、話をすると、「えーと、あなたの電話番号は…もう変更されていますねえ」という返事。「それは困ります! 前の番号をあらゆる人に教えているんです!」と懇願し、なんとか元に戻してもらいました。

以上のように、英国ではいろいろなことが起こるので、何事に対しても信用ができません。この種の話は、私が特別ではなく、他の留学生仲間からもよく聞きます。よくこれで、「世界の金融の中心地 ロンドン・シティ」などと豪語できるなあと思います。鉄道や地下鉄の遅れや運休も日常茶飯事だし、社会システムは、全体的に日本の方がしっかりしているように感じます。

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