福岡県弁護士会コラム(会内広報誌「月報」より)

2003年10月号 月報

「弁護士報酬の敗訴者負担」に反対する署名3517人分集まる   

月報記事

安部 千春

1 黒崎合同法律事務所では、依頼者や相談者に年賀と暑中お見舞いの「事務所だより」を発送し、31号になります。

内容の一は裁判の報告で、今回は東敦子弁護士が麻生知事に1億円の支払いを命じた県同教の裁判を、内容の一は「法律相談シリーズ」を田邊匡彦弁護士が、内容の一は政治に関するもので「有事法制三法案と日本の未来」を横光幸雄弁護士が書きました。

これだけでは面白くないので、もう一つは何か依頼者や相談者が面白く読んでくれるようなもの、例えば弁護士宅訪問や子ども時代の思いでなどを書いています。田邊匡彦弁護士の「私の双子時代」というのは評判がよかった。

田邊弁護士は一卵性双生児で2人とも弁護士です。幼稚園、小学校、中学、高校、大学と同じで、いつも比較され続け、匡彦弁護士の最大のライバルは弟だったそうです。弁護士になりたてのころはよく知らない人から声をかけられたが、今は体型が違って双子時代は終わったとまとめてありました。

弟君から「安部先生、兄が事務所ニュースは私のことを書いて面白かったといわれるが、私は読んでいませんので送って下さい」と頼まれて送った。

「事務所ニュース」は、4人の弁護士がそれぞれ書いており、今回は私が面白い記事として2003年憲法集会を書いたが、あまりこんな報告文は面白くなかった。やむなく、もう一本「行列のできる法律事務所の北村晴男弁護士、交渉のために黒崎合同法律事務所に来る」を書いた。こっちはまあまあでした。

2 今回、この事務所ニュースに「弁護士報酬の敗訴者負担」に反対する署名を同封し、返信をお願いしたところ、587人から3517人分の署名が集まりました。私が書いたお願いの文章を参考のためにお知らせします。

『私達の事務所では、筑豊じん肺訴訟や過労死認定訴訟、オンブズマン訴訟など、国や北九州市を相手にした訴訟や、新日鉄などの大企業を相手にした配転無効、出向無効の裁判をしています。

通常の訴訟では、依頼者から着手金をいただいて裁判を始めますが、これらの訴訟は手弁当で行っています。それは、依頼者に着手金を支払う資力がなく、その裁判は人権を守るために私達が弁護士としてやらなければならないと考えたからです。

これらの裁判は、勝か負けるかやってみなければわかりません。大変難しい裁判です。 筑豊じん肺訴訟では、一審では国に敗訴し、控訴審では勝訴しました。

弁護士報酬の敗訴者負担が決まれば、私達は「この裁判を私達は、勝つために必死に闘いますが、敗訴することも考えなければなりません。私達の着手金はいりませんが、敗訴したときには相手の弁護士報酬を支払わなければなりません。」と説明しなければなりません。

こんなことを説明したら、私達に弁護を頼む人がいるでしょうか。

通常の事件でも、敗訴したときには相手の弁護士報酬を支払わなければならない場合に、それでも私達に依頼する人がいるでしょうか。

弁護士報酬敗訴者負担は、結果として国民が国や県や北九州市を被告とする裁判や、医療過誤や労働裁判など被告の方が圧倒的に資力がある裁判ができにくくします。市民を裁判からしめ出すことになります。

日本弁護士連合会では反対署名に取り組んでおります。

お忙しいこととは存じますが、ご家族、友人、知人、ご親戚の方々に反対署名をしていただいて、同封の返信用封筒にて事務所までご返送下さい(できましたら8月末日を目処に)。他の方にご依頼できない方は、自分の分だけでも結構です。

ご協力お願い致します。』

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