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「住基カードの導入見送り等に関する要請」

カテゴリー:宣言

福岡県の各市町村長・福岡県の各市町村議会議長殿へ陳情書
2003年6月12日   福岡県弁護士会 会長 前田 豊
 陳情の趣旨
 住民のプライバシー権・自己情報コントロール権を保障するための十分に実効性のある「所要の措置」(住民基本台帳法附則1条2項)が採られるまでの間、また少なくとも住基ネット管理の安全性が確認されるまでの間、住基ネットの稼働を一時停止し、併せて住基カードの導入を見送られるよう陳情いたします。\n 仮に、やむを得ず住基カードを導入される場合にも、住民基本情報以外の個人情報を盛り込まれないよう陳情いたします。
 陳情の理由
1 個人情報保護法制度の成立は、「所要の措置」とは言えず、住基ネット管理の安全性は確認されていない 2002年8月5日に、住民基本台帳ネットワークシステムが稼働しました。その結果、全国民の個人情報が、全市町村、都道府県及び地方自治情報センターのコンピューターの下に管理され、国の行政機関が全国民の個人情報にアクセスすることが可能になりました。\n しかしながら、このような情報の集約及びネットワークによる結合は、技術的あるいは人為的な情報漏えい、情報の乱用の危険性を飛躍的に増大させ、個人の尊厳を大きく傷つけるおそれがあります。そのため、住基ネットの施行の前提として、技術的な情報漏えいを防ぐための万全なセキュリティー体制の確保とともに、人為的な情報漏えい、情報の乱用を防ぐための万全な法整備が不可欠です。それによって初めて国民のプライバシー権・自己情報コントロール権が保障されます。
 住民基本台帳法附則1条2項にも、「この法の施行にあたっては、政府は、個人情報の保護に万全を期するため、速やかに所要の措置を講ずるものとする」と規定されています。
 このような観点から、当会は、住基ネット稼動に伴うセキュリティー基本法の制定を求めるとともに、国民のプライバシー権・自己情報コントロール権を保障する個人情報保護法制の整備、各市町村における個人情報保護条例の整備を求めてきました。
 しかるに、本年5月23日に成立した行政機関個人情報保護法及び個人情報保護法については、以下の通りの根本的な欠陥が存在し、国民のプライバシー権・自己情報コントロール権を保障する法律とはとうてい評価できません。
 行政機関個人情報保護法には、(1)思想、信条等の差別につながるセンシティブ情報に関する収集禁止規定が存在せず、(2)行政機関の判断による利用目的の変更(3条3項)、目的外利用、外部提供(8条2項)を広く認めており、行政機関が「相当な理由」があると判断すれば、個人情報の目的外利用や他の機関への提供ができるなど、個人情報の流用を広く認めており、「保護」法というよりも個人情報「利用」法とでも呼ぶべき内容となっています。
 昨年、個人の身元・思想信条等を含む個人情報リストを違法に作成し利用した防衛庁が、先般、住基情報ばかりか、親族情報や健康情報まで網羅的に収集し、それを管理していたことが報道されましたが、これらの法律は、このような個人情報の名寄せを正当化する根拠となりかねません。
 また、個人情報保護法は、名簿業者や、信用情報取扱業者に対する規制が不十分であり、国民の個人情報のデータベース化や商業利用を十\分に防止できません。現に、本年2月15日には、全国銀行協会に加盟する一部の金融機関が、住民基本台帳法で禁止されているにもかかわらず、住基コードを本人確認に利用していたことが判明しています。
 しかも、セキュリティー基本法が存在しないために、個々の地方自治体がセキュリティーに努めても、住民の個人情報が他の自治体や国の行政機関等予期せぬ機関から漏えいしたり、き損される危険が今なお存在しています。\n 総務省は、本年5月12日に「住民基本台帳ネットワークシステム及びそれに接続している既設ネットワークに関する調査票(全国の市町村を対象に本年1,2月実施)による点検結果」を公表しましたが、セキュリティ対策の体制・規定の整備や必要な管理について、「1割程度の市町村においては、必ずしも十\分な対応がなされていない」としています。また、長野県本人確認情報保護審議会は、本年5月28日、第1次報告をとりまとめていますが、長野県下120自治体の調査結果として、27自治体で住基ネットとインターネットが物理的に接続されており、長野県下の自治体に内外からインターネット経由でアクセスが殺到し、情報が流出する恐れがある、と報告しています。さらに、「長野県の実情は、決して長野県に特異なものではない」とも指摘していますが、この点は総務省の前記調査結果からも推認できるところです。コンピュータネットワークで繋がっている全ての自治体において、万全のセキュリティ対策を講じなければ、住民の個人情報は容易に流出することになりますが、現状は住基ネット管理の安全性に深刻な危惧が存在していると言わざるを得ません。
 国民のプライバシー権・自己情報コントロール権を十分保障しないまま、また住基ネット管理の安全性が確認されないまま、住基ネットを稼働させることは、憲法13条が保障するこれらの基本的人権を侵害する不測の事態を生じさせる虞れがあります。\n 住民基本台帳法36条の2第1項には、「市町村長は、…住民票又は戸籍の附票に記載されている事項の漏えい、滅失及びき損の防止その他…適切な管理のために必要な措置を講じなければならない」と規定されています。
 住民の個人情報を保護すべき責務を負う市町村にあっては、このような不測の事態が生ずることを避けるためにも、「適切な管理のために必要な措置」、「所要の措置」としてのセキュリティー基本法の制定、セキュリティー対策の整備及び個人情報保護法制の見直しまで、また少なくとも住基ネット管理の安全性が確認されるまで、住基ネットの稼働を一時停止されるよう陳情いたします。
2 住基カードの問題点
 本年8月からは、住基カードの交付による住基ネットの2次稼働が予定されています。\n 住基カードは、住民票の広域交付等の前提となるものであり、その交付は、全市町村から県を通して国の行政機関に住民情報が集約されるという縦の情報集約から、各市町村相互の住民情報の融通という横の情報流通をさせる機能を有しており、住基ネットを完成させ技術的あるいは人為的な情報漏えい、情報の乱用の危険性を飛躍的に高めるものです。\n 総務省は、住基カードの利便性を高めるため、その中に図書館の利用情報や、商店街での購買情報等の生活情報等を例示して各自治体に情報の集積を勧めています。しかしながら、例えば、その導入時には使用目的が限定されていたアメリカの社会保障番号が、今や買い物の際にもそれが記載されたカードの提示が不可欠となるなど、事実上携行を余儀なくされる事態となっているように、住基カードも、無限定に使途を拡大すれば、将来、希望しないものもその利用を余儀なくされる危険があります。
 しかも、総務省及び経済産業省は、住基カードに集積された個人情報が第三者によって不正に読みとられないようにする防護策の検討を、本年5月25日に始めたばかりであり、現時点における住基カードのセキュリティー対策はまだ不十分なものといわざるを得ません。\n また、行政機関における個人情報の不当な収集や名寄せが行われ、それを防止するための「所要の措置」が存在しない現状において、住基カードの交付が行われることは、住基ネットに対し、国民総背番号制の機能を与える危険性が極めて高いものです。\n 従って、国民のプライバシー権・自己情報コントロール権を保障するため十分に実効性のあると住民基本台帳法附則1条2項の「所要の措置」が採られるまでの間、住民基本台帳法36条の2第1項の「適切な管理のために必要な措置」として住基カードの導入を見送られるよう陳情いたします。また、仮にやむを得ずこれを導入される場合にも、市町村の管理する個人情報が不当な収集や名寄せ、あるいは情報漏えいにあうことのないよう、住民基本情報以外の個人情報を集積されないよう陳情いたします。\n

「『国を愛する心情』等の評価項目を定めた通知表を採用しないことを求める会長声明

カテゴリー:声明

福岡県弁護士会 会長  前田 豊
 平成15年(2003年)6月6日
 本年6月3日、「福岡市小学校公簿等研究委員会」は、今年度の通知表案として6案を示し、希望校への配布を開始した。そのうちの1案には、小学校6年生の社会科の「関心・意欲・態度」を評価する項目で、「我が国の歴史や伝統を大切にし、国を愛する心情を持つとともに、平和を願う日本人として世界の国々の人々と共に生きていくことが大切であることの自覚をもとうとする」との観点の趣旨が示され,これに「学習状況」と「評定」の欄において1,2,3の評価をすることになっている。\n 当会は昨年度、上記の観点の趣旨とほとんど同様の表記であった昨年度福岡市立小学校6年生の通知表\について、市民団体からの人権救済申立を受け、当会の人権擁護委員会において調査・審議をし、常議員会において承認をしたうえ、本年2月26日、「『国を愛する心情』『日本人としての自覚』といったものは個人の思想・良心に関わるものであり、こうしたものを児童の学習到達度を評価する通知表\に規定することは、公教育の現場において特定の思想・良心を児童に強制する結果をもたらすおそれがあり、とりわけ在日韓国人らの人権を侵害するおそれが高い」として、当該評価項目を削除し改めるよう、当該通知表採用校の福岡市立堤丘小学校校長に警告し、福岡市教育委員会に勧告した。\n ところが、6案中の1案とはいえ、再び本年度の通知表案において昨年と同様の評価項目が示されたことはまことに遺憾であり、当会は、通知表\案採否の決定権を持つ福岡市立の各小学校校長に対し、この通知表案を採用しないよう求めるものである。\n すなわち、上記の評価項目は、一部「世界の国々の人々と共に生きていくことが大切であること」との文言が挿入・付加され若干の修正が施されてはいるが、他は昨年の通知表と同文であり、当会の上記警告書及び勧告書に述べたことがそのまま当てはまるものである。それは、教員による評価を通じて、児童に対し、「国を愛する心情」を持つこと、及び「平和を願う日本人として世界の人々と共に生きていくことの大切さを自覚する」ことを求めるものであって、公教育の現場において特定の思想・良心を児童に強制する結果をもたらすおそれがあるものである。特に、我が国で共に学び生活する外国籍の児童の思想・良心の自由を侵害し、子どもの権利に関する条約29条に定めた「多文化共生教育」の要請にも反するものであり、加えて、児童の国籍の如何を問わず、同条約12条に定められた「子どもの意見を表\明する権利」の趣旨にも反するといわなければならない。
 また,児童が一生懸命考えているのに「国を愛する心情」がないと評価されたり、児童が教員からよい評価を得るため気持ちを曲げて「国を愛する心情」を表現したりするときには、当該児童に対する教育効果のうえでも大きな問題が残るのではないかと懸念される。\n 本年度の通知表案は、「福岡市小学校公簿等研究委員会」という任意団体が作成し、各小学校の校長が採用するか否かの決定権を持っているとされている。\n そこで、当会は、福岡市立の小学校校長に対し、憲法上も子どもの権利に関する条約上も重大な違反の疑いがある、「国を愛する心情」等を評価項目に定めた通知表を採用しないよう求めるものである。\n

取調の全過程の録画・録音による取調の可視化を求める決議

カテゴリー:決議

 2003年5月27日   福岡県弁護士会 会長 前田 豊
 日本国憲法及び刑事訴訟法は、被疑者・被告人に黙秘権を保障し、自白の強要を禁止している。しかし、実際の取調べは、密室で行われ、暴力、脅迫、利益誘導等によって被疑者・被告人の権利が侵害・形骸化され、様々な冤罪事件や誤判事件の温床となってきたことは周知の事実である。また、現行の刑事訴訟法が、伝聞法則を徹底していないために、密室での取調べによって作成された自白調書の任意性・信用性をめぐって、刑事裁判の長期化が生じている。\n
 このような弊害を排除するためには、伝聞証拠の排除を徹底する必要があり、また自白偏重・自白強要を排し捜査を適正化するためには、その過程を容易に検証できるように、取調べの全過程を録画・録音する、いわゆる取調べの可視化が必要不可欠である。
 イギリスでは、17年前から取調べ状況を録音する取調べの可視化が法制化されている。また、国連の規約人権委員会(自由権)は日本政府に対し、代用監獄における被疑者取調について「電気的手段により記録されるべきことを勧告」している。
 現在ではCD、DVD等の記録媒体の急速な進歩により、大量の情報を記録して保存することが可能となっており、そのためのコストも安価なものとなっている。この意味でも取調べ過程の可視化はより実現性の高い制度である。これが実現すれば、取調べ等の適正化、裁判の充実・迅速化に大きく寄与することは明らかである。\n
 また、今国会では「裁判迅速化に関する法律案」が提出されている。さらに、司法制度改革審議会では、市民が刑事裁判に参加する裁判員制度が議論されている。裁判の迅速化の促進は当然であるが、審理の充実が損なわれてはならないこともまた当然である。市民にわかりやすい裁判を迅速かつ充実して行うためには、争点に応じた集中的な審理が求められ、事件の実体判断にこそ、より集中した審理が尽くされるべきであるが、そのためにも、取調べ過程の可視化は不可欠の要請である。
 以上のように、憲法・刑事訴訟法の基本理念である人権の擁護と迅速かつ充実した裁判の実現のためにも、警察官・検察官による取調べの全過程を録画・録音することが制度化されるべきであり、当会はその実現を強く求めるものである。

有事法制に反対する会長声明

カテゴリー:声明

福岡県弁護士会 会長  前田 豊
 平成15年(2003年)5月21日
 有事法制法案が5月15日衆議院を通過し、現在参議院で審理中である。
 この法案は、当初の政府案を修正したものであるが、「武力攻撃予測事態」の定義や範囲はなお曖昧である。また、「武力攻撃予\測事態」と周辺事態法でいう「周辺事態」の異同や、武力攻撃事態対処法と周辺事態法がどう連動するのかは依然として不明確であり、周辺事態法又はテロ特措法との連動いかんによっては、憲法が認めていない集団的自衛権と同様の結果となることも懸念される。さらに、有事認定の客観性も十分に担保されているとはいえず、国会による事前の民主的コントロールも確保されているとはいえない。有事における首相の地方公共団体や指定公共機関に対する指示権・代執行権は当面凍結されたものの何ら変更がなく、有事において民主的な統治機構\や地方自治を維持することができるのかという疑問は払拭されていない。民間放送局を含むメディアが有事に政府の統制下におかれる危険性も完全には排除されていない。しかも、国民的な議論が尽くされたものとは言いがたく、衆議院における徹底した議論も行われていない。
 いうまでもなく、この法案は、わが国の進路を決定し、国民の生命と安全そして憲法と基本的人権に関わる重要な法案である。当会は、このような憲法原理に関わる重要法案について、十分な国民的議論も国会審議もないままに、そのまま参議院において可決され成立することには反対せざるを得ない。\n この法案は、以上のとおり、平和主義、基本的人権の尊重、国民主権主義という憲法原理に抵触する重大な疑念が存在するものであり、当会は、その廃案を求めるものである。

朝鮮学校に通う子どもたちへの嫌がらせ等に関する会長声明

カテゴリー:声明

福岡県弁護士会 会長  前田 豊
 平成15年(2003年)4月24日
  朝鮮民主主義人民共和国は、2002年9月17日の日朝首脳会談で日本人拉致事件を公式に認めるに至った。
 その日を境にして日本各地において朝鮮学校に通う子ども及び朝鮮学校に対する嫌がらせが顕著になってきている。福岡もその例外ではない。
 調査の結果、「拉致されるぞ」「朝鮮に帰れ」「死ね」等の暴言、追いかけられる、石を投げられる等の被害が多数にのぼっていることが判明した。\n また朝鮮学校も、学校のホームページの掲示板に「人殺し」「恥を知れ」等の嫌がらせの言葉が書き込まれ、掲示板を閉鎖せざるを得なくなったり、子どもへの危害を避けるためスクールバスに書かれていた学校名を消したり、チマチョゴリでの通学を一時取りやめるという措置を執らざるを得なかった。また一時的に休校せざるを得なかった学校もある。
 これらの嫌がらせは在日コリアン(在日韓国・朝鮮人)の子どもの心を深く傷つけ、生命・身体の安全と自由を脅かし、教育を受ける権利を侵害している。
 同時にこれらの行為は、憲法13条及び世界人権宣言第1条・第2条・第3条をはじめ、国際人権規約、人種差別撤廃条約、子どもの権利条約などにおける個人の尊厳の保障及び人種差別禁止の理念及び規定に反する。
  拉致事件が重大な人権侵害であることは当然のことであるが、これは朝鮮学校に通う子どもには全く責任のないことである。拉致事件に無関係の子どもに対して嫌がらせを行うことも決して許されることのない人権侵害である。
  これらの嫌がらせは、在日コリアンの子どもに対する不当な偏見に基づくものである。当会は、国及び地方自治体に対しこの偏見を取り除く対策を直ちに講じ、在日コリアンの子どもが安全・平穏に生きる権利を保障することを要請する。
 さらに当会は、国籍や人種の違いを超えてお互い思いやりを持って共生することができる社会が実現することを切に訴え、それに向けての活動を積極的に取り組む決意である。

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