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福岡県弁護士会会長日記

カテゴリー:会長日記

                        会 長  福 島 康 夫(30期)
自主事業に関する意見書提出(7月5日)
法律扶助協会が解散して、被疑者弁護援助制度、少年付添人援助制度、精神保健当番弁護士制度等法律扶助協会福岡県支部等各地で行ってきた9つの自主事業が10月から法テラスに委託されることになった。将来的には国の制度とするための方策である。これで国選少年付添人制度の実現に向けての第1段階が確保できたし、そのための財政基盤も安定的といえるところまできた。
当会では会員に対する報酬は従来どおり被疑者弁護援助制度の事件で1件7万円、少年付添人事件で1件10万円が支給されることになる。ただし、今後は財政的に安定し報酬減額の危険性はなくなったし、件数制限という事態もなくなった。
死刑、無期、短期2年以上の法定刑が対象であるが、国選付添人制度も11月から始まることになる。対象事件は福岡県内で年間40乃至50件程度と少ないが、今後国選付添人制度の対象事件が拡大する可能性を持っている。11月1日に浜松で開催される人権大会のシンポジウムの第2分科会では国選付添人制度がテーマとして意見交換がされることになっている。多数の参加を期待したい。
ところで、日弁連は3月になり、自主事業の方法について地方の意見を全く聞かないまま、いわば一方的に運用や書式を決めて実施するよう要請してきた。そのためにこれまでの当会の知恵とノウハウが全く生かされず、ギクシャクした4ヵ月であった。使い勝手の悪い運用は変えなければならない。当会はこれまでの当会が工夫をしてきた運用等を今後も継続するため、6月28日に日弁連に意見書を提出した。意見がとおらなければ当会の自主事業が発展できるかどうか疑問となる。その後、7月5日に私と斉藤副会長の2人で日弁連に赴き、日弁連の山田庸男担当副会長他3名の日弁連の自主事業に関する責任者と協議をした。短時間で日弁連執行部を説得しなければならない。私は真剣勝負という気持ちで臨んだ。当会としてはこれまで十数年以上にわたって工夫を重ねて育ててきた各自主事業のやり方を尊重するように要請をし、上から一方的に押しつけられた状態では会員には不満感が強いこと等を訴えた。当会が全国3600件の付添人事件の内の800件を付添人として受任し、全国8000件の内の1000件の被疑者弁護人援助制度事件を受任しているという実績も説明した。当日用意していた日弁連の最初の回答は殆ど全部がノーということであったが、福岡の意図や実情がわかったので再度検討するということであった。結局、協議の時間は1時間40分以上に及んだ。
更に、その後7月11日には補充の要望書を提出し、7月13日の日弁連理事会でも私が意見の趣旨を説明した。そして、8月25日の日弁連理事会で日弁連と法テラスの本部で検討した結果の説明がなされ、最終的には被疑者に負担させることがあるという条項をなくした書式を使用できる等基本的にはこれまでの福岡の方式を継続することができるようになった。
日弁連では事前の周到な準備なしに提案や発言をしても受け入れられないと思う。日弁連の内部で検討されている早い段階から、事前に県弁の意見を書面で提出し、更に口頭で説得するということをすれば、意見が採り入れられる可能性が十分にあることを実感した。今後は何よりも用意周到な準備が必要であると思った次第である。
  
2弁、札幌との3庁交流会(7月7日)
当会は国内、海外あわせて毎年4つの交流会に参加している。
2弁、札幌との3会交流会、大阪、広島との3会交流会、横浜、名古屋との三会交流会釜山地方弁護士会との交流会である。出席者はいずれも執行部、議題を決めて率直な意見交換をすることにしており、これまで開催したどの交流会も活発な意見を交換できた。
2弁、札幌との交流会は7月7日、札幌弁護士会館で開催された。一昨年までは2弁との交流だけであったが、昨年からは札幌を交えての3会交流となった。場所は札幌弁護士会会館。裁判所のすぐ近くに建つ自前の7階建ての立派な会館である(羨ましい!)。
今回の議題は多重債務問題、都市型公設事務所、拠点事務所等についてザックバランな意見交換をした。多重債務問題では当会のTVCMを見てもらった。釜山地方弁護士会との交流でもTVCMを活用したが、今年はありとあらゆる機会にこの多重債務TVCMを活用することにしている。
九弁連合宿(8月3日)
恒例の九弁連合宿を8月3日に当会の会館で実施した。参加者は九弁連の理事と主任約50名。
テーマは法曹人口問題と取り調べの可視化の2つに絞った。
法曹人口問題は今年の宮崎の九弁連大会のシンポジウムが弁護士過疎、偏在問題という関係から選んだテーマであり、講師は当会の永尾広久会員と前田豊会員。そして、宮崎の後藤好成会員から現在までのシンポジウムでの検討状況の報告がなされた。今回の法曹人口問題のテーマは九弁連大会のシンポジウムに反映される予定である。
取り調べの可視化の講師は鹿児島志布志事件の弁護人の野平康博九弁連理事と佐賀北方事件の一審の弁護人の浜田愃九弁連理事。九州の2つの代表的な冤罪事件の弁護人が九弁連の理事であるという点で全く偶然であり幸いであった。両事件とも裁判の審理期間は2年半から3年半に達しており、この大半が取り調べ状況の内容の審理であった。両弁護士は期せずしていずれの事件でも取り調べ状況を録画していたら起訴はされなかったはずであると話されていたのが印象的であり、生の事件を題材にして現実の裁判の問題点が明確になった。裁判員裁判で、市民の裁判員を巻き込んで今後も延々と長期間の審理をするのであろうか。裁判員裁判の実施は残すところ1年8ヵ月に迫っている。
本年度はシンポジウムが花盛り
当会の委員会活動は活発である。そのため5月からは対外的なシンポジウムの開催が目白押しの状態である。今後の予定を加えるとざっと次のとおりとなる。本年度はこれに6月22日に第22回司法シンポジウムが大々的に開催されており、シンポジウム花盛りの年である。シンポジウムの準備段階から関係していただいた会員各位の献身的な活動に感謝したい。
5〜6月 憲法市民連続講座
6月9日 
クレジットシンポジウム「悪質商法とクレジットがもたらす深刻な消費者被害〜消費者が保護される安全なクレジット社会」
7月21日 
人権擁護大会プレシンポジウム「監視カメラとまちづくり」
7月27日 
民暴拡大協議会プレシンポジウム「企業内対象暴力〜21世紀の企業防衛のあり方」
8月25日 
憲法シンポジウム「今なぜ、何が問題か?〜憲法改正問題を考える」
9月1日 
取調べの可視化シンポジウム「密室からの叫び!〜取調べの全過程の録画実現を目指して〜」
9月15日 
人権擁護大会プレシンポジウム「すべての非行少年に弁護士付添人を!非行少年の実態を踏まえて〜国選付添人の全面的な実現を目指して〜」
9〜10月 憲法市民連続講座
11月16日 民暴拡大協議会
これまで全部のシンポジウムに出席したが、いずれもレベルが高く短時間で要点を掴んだ内容であり、勉強になった。これまでは余り関係のなかった分野でシンポジウムに出席することは刺激的であり新鮮である。
会員の皆さんにも時間の許すかぎり出席することをお勧めしたい。必ずや有意義な時間を持つことができること間違いない。
シンポジウムの内容等については弁護士会ニュースや月報、ホームページ、Fニュース等でチェックして頂きたい。

死刑執行に関する会長声明

カテゴリー:声明

2007年(平成19年)8月23日
福岡県弁護士会 会長 福島康夫
1 本日、東京拘置所及び名古屋拘置所において3名の死刑が執行された。
  今回の死刑執行は、昨年12月の4名、本年4月27日の3名に続くものである。
2 我が国では、過去において、4つの死刑確定事件(いわゆる免田事件、財田川事件、松山事件、島田事件)について再審無罪が確定している。また、本年4月にも、佐賀県内で3名の女性が殺害されたとされる事件(いわゆる北方事件)で死刑求刑された被告人に対する無罪判決が確定した。このような実例は、死刑事件についても誤判や誤った訴追があることを明確に示している。
  また、死刑と無期刑の選択についても、裁判所の判断が分かれる事例が相次いで出されており明確な基準が存在しない。
  我が国の死刑確定者は、国際人権(自由権)規約、国連決議に違反した状態におかれ、特に過酷な面会・通信の制限は、死刑確定者の再審請求、恩赦出願などの権利行使にとって大きな妨げとなって来た。今般、刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律が施行されたが、未だに死刑確定者と再審弁護人との接見に施設職員の立ち会いが付されるなど、死刑確定者の権利行使が十分に保障されているとは言い難い。
  このような状況のもとで、今回死刑が執行されたことには重大な問題があると言わざるを得ない。
3 国際的にも、1989年(平成元年)に国連総会で採択された死刑廃止条約が1991年(平成3年)7月に発効して以来、死刑廃止が国際的な潮流となっている。すなわち、すでに死刑制度を全面的に廃止した欧州地域をはじめとし死刑廃止国が130か国であるのに対し、死刑存置国は67か国(本年7月31日現在)である。そのような潮流の中で、国連規約人権委員会は、1993年(平成5年)11月4日及び1998年(平成10年)11月5日の2回にわたり、日本政府に対し、死刑廃止に向けた措置をとるよう勧告している。
  国内的にも、1993年(平成5年)9月21日の最高裁判決中の大野正男裁判官の補足意見では、死刑の廃止に向かいつつある国際的動向とその存続を支持するわが国民の意識の整合を図るための立法施策が考えられるべきであるとの指摘がなされている。
4 このような国際的な潮流と国内的な状況を踏まえて、日本弁護士連合会も、死刑制度の存廃につき国民的議論を尽くし、また死刑制度に関する改善を行うまでの一定期間、死刑確定者に対する死刑執行を停止する旨の時限立法(死刑執行停止法)の制定を提唱している。
  当会も、これまで、死刑確定者からの処遇改善や再審援助要請といった人権救済申立事件処理を通じて、死刑制度の存廃を含めた問題に積極的に取組み、死刑が執行されるたびに、会長声明において、死刑執行は極めて遺憾であるとの意を表明し、法務大臣に対し、死刑の執行を差し控えるべきであることの要望も重ねてきた。
5 さらに、2007年(平成19年)5月18日に示された、国連の拷問禁止委員会による日本政府報告書に対する最終見解・勧告においては、我が国の死刑制度の問題が端的に示された。すなわち、死刑確定者の拘禁状態はもとより、その法的保障措置の不十分さについて、弁護人との秘密交通に関して課せられた制限をはじめとして深刻な懸念が示された上で、死刑の執行を速やかに停止すること、死刑を減刑するための措置を考慮すべきこと、恩赦を含む手続的改革を行うべきこと、すべての死刑事件において上訴が必要的とされるべきこと、死刑の実施が遅延した場合には減刑をなし得ることを確実に法律で規定すべきこと、すべての死刑確定者が条約に規定された保護を与えられるようにすべきことが勧告されたのである。我が国の死刑確定者が、同条約上の保護を与えられていないことが明確に指摘され、それゆえ、勧告の筆頭に死刑執行の速やかな停止が掲げられているのであって、その意義は極めて重い。
6 以上述べたように国内的にも国際的にも、日本の死刑制度に対する非難が高まった状況下において断行された今回の死刑執行は、我が国が批准した条約を尊重しないことを国際社会に宣言するに等しい。
7 当会は、今回の死刑執行に関して、法務大臣に対し、極めて遺憾であるとの抗議の意を表明するとともに、更なる死刑の執行を停止するよう強く要請する。

割賦販売法改正についての会長声明

カテゴリー:声明

産業構造審議会割賦販売分科会基本問題小委員会が本年6月19日に中間整理案を発表した。
この整理案では,従来からの加盟店管理を求める行政指導や業界の自主的取組にもかかわらず,悪質販売業者による高齢者等を狙った強引又は詐欺的な勧誘による被害が多発し,それにクレジット会社が安易に与信をして救済が十分なされないケースが相変わらず発生しているという現状が指摘され,このようなクレジットトラブルの背景にはクレジットシステムの構造的危険性があり,クレジットシステム提供者として一定の責務があるという認識を示している点は十分評価できる。
この整理案で議論されている論点のうち,このようなクレジット被害救済や防止に不可欠な不適正与信の防止,過剰与信防止の2つの論点では複数の意見が併記された形になっており,今後の議論次第ではどのような結論になるのか予断を許さない状況になっている。
当会は,本年6月9日に九州弁護士会連合会との共催でクレジットシンポジウムを開催し,アピールを採択したところであるが,改めてクレジットトラブルを真に救済し防止できるような制度改正が是非とも必要であると考え,この中間整理案の2つの論点について以下のような意見を述べる。
1,不適正与信の防止について
中間整理案で,不適正与信を行ったクレジット事業者に対して経済的不利益をもたらすような何らかの民事ルールが必要であると指摘している点はその通りである。しかしながら,その方策として信義則を拠り所にした過失「損害賠償責任」説と,日弁連が提唱する無過失「共同責任」説が両方紹介されている点については,前者は妥当でなく,あくまで後者こそが妥当であると考える。
  まず,同整理案がクレジットシステムの構造的危険性を指摘し,システム提供者の責務を議論しているところからすると,それで利益を得ているクレジット事業者には被害防止の責任を負わせるべきことが当然導かれるものと考える。
  そして,悪質商法と結びついたクレジット被害の予防・救済の見地からは,現行の抗弁対抗規定(割賦販売法30条の4)だけでは,クレジット事業者が加盟店への与信を適正に行う動機付けとしては不十分であり,既払金の返還という法的効果を定めるべきである。
  その際,消費者側がクレジット会社と加盟店との間の内部事情を知ることは極めて困難であることから,既払金返還に伴ってクレジット会社の故意・過失の証明 を要求すると現実の救済には繋がらないことは明らかであり,過失損害賠償責任説は妥当とは思われない。
  よって,実効的な被害の予防・救済のため,クレジット会社の無過失の共同責任を定めることが不可欠である。
2,過剰与信の禁止について
中間整理案が次々販売等による過剰与信を防止する責務があると指摘している点,信用情報調査による支払能力の調査及びその結果による信用情報機関への登録を義務づけるべきとの指摘はその通りである。
 しかし,現在多発している次々販売等の過剰与信被害を予防するためには,ク レジット会社の明確な過剰与信基準を法律で定めた上で,これに違反したクレジ ット会社に対しては厳しいペナルティを課す必要があると考える。過剰与信基準については,顧客の債務額が一定の基準を超える場合はそれ以上クレジットの利用ができないよう厳しい審査を求めるとともに,販売信用の特性に見合った基準を設けることでバランスをとるべきである。
  また,個々の販売行為が詐欺や特商法違反などに当たらなくとも,高齢者等を狙った著しい過剰与信被害が発生している現状からして,このようなケースを救済するためには,クレジット会社の請求権制限等の民事的効果を明文で定めるべきものと考える。
  当会は,このような割賦販売法の改正が実現されて初めてクレジット被害が根絶され,消費者が真に保護される安全なクレジット社会を構築できるものと考える。その結果として,消費者とクレジット業界双方に利益がもたらされることになり,健全なクレジット社会の発展が実現できると確信する。
3,結論
  以上をふまえ,当会は,割賦販売法の改正においては,下記の制度を設けることを要望する。

 ? 不適正与信による被害の予防・救済のため,クレジット会社の無過失の共同責任を定めること。
 ? 過剰与信による被害を防止するため,クレジット会社の明確な過剰与信基準を定め,かつ,これに違反した場合には,請求権制限等の民事的効果を定めること。
  
                2007年(平成19年)8月8日
                      福岡県弁護士会
                       会 長  福 島  康 夫

死刑執行の停止を求める声明

カテゴリー:声明

2007年(平成19年)8月7日
                 
福岡県弁護士会 会長 福島康夫
1 我が国では、過去において、4つの死刑確定事件(いわゆる免田事件、財田川事件、松山事件、島田事件)について再審無罪が確定している。また、本年4月にも、佐賀県内で3名の女性が殺害されたとされる事件(いわゆる北方事件)で死刑求刑された被告人に対する無罪判決が確定した。このような実例は、死刑事件についても誤判や誤った訴追があることを明確に示している。
  また、死刑と無期刑の選択についても、裁判所の判断が分かれる事例が相次いで出されており明確な基準が存在しない。
  我が国の死刑確定者は、国際人権(自由権)規約、国連決議に違反した状態におかれ、特に過酷な面会・通信の制限は、死刑確定者の再審請求、恩赦出願などの権利行使にとって大きな妨げとなって来た。今般、刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律が施行されたが、未だに死刑確定者と再審弁護人との接見に施設職員の立ち会いが付されるなど、死刑確定者の権利行使が十分に保障されているとは言い難い。
  このような状況のもとで直ちに死刑が執行されることは重大な問題があると言わざるを得ない。
2 国際的にも、1989年(平成元年)に国連総会で採択された死刑廃止条約が、1991年(平成3年)7月に発効して以来、死刑廃止が国際的な潮流となっている。すなわち、すでに死刑制度を全面的に廃止した欧州地域をはじめとし死刑廃止国が130か国であるのに対し死刑存置国は67か国(本年7月31日現在)である。そのような潮流の中で、国連規約人権委員会は、1993年(平成5年)11月4日及び1998年(平成10年)11月5日の2回にわたり、日本政府に対し、死刑廃止に向けた措置をとるよう勧告している。
  国内的にも、1993年(平成5年)9月21日の最高裁判決中の大野正男裁判官の補足意見では、死刑の廃止に向かいつつある国際的動向とその存続を支持するわが国民の意識の整合を図るための立法施策が考えられるべきであるとの指摘がなされている。
3 このような国際的な潮流と国内的な状況を踏まえて、日本弁護士連合会も、死刑制度の存廃につき国民的議論を尽くし、また死刑制度に関する改善を行うまでの一定期間、死刑確定者に対する死刑執行を停止する旨の時限立法(死刑執行停止法)の制定を提唱している。
  当会も、これまで、死刑確定者からの処遇改善や再審援助要請といった人権救済申立事件処理を通じて、死刑制度の存廃を含めた問題に積極的に取組み、死刑が執行されるたびに、会長声明において、死刑執行は極めて遺憾であるとの意を表明し、法務大臣に対し、死刑の執行を差し控えるべきであることの要望も重ねてきた。
4 しかし、日弁連や当会の度重なる要請にもかかわらず、死刑執行が繰り返されて来たが、最近の社会の重罰化傾向も反映してか死刑確定者数が100名を超える事態を迎え、死刑執行が急がれているとの印象も免れない。
  長勢甚遠法務大臣は、就任後の記者会見で「確定した裁判の執行は厳正に行われるべきものである」から「法の規定に沿って判断して行きたい」と発言し、昨年12月には4名、本年4月27日には3名の死刑執行を行った。
5 2007年(平成19年)5月18日に示された、国連の拷問禁止委員会による日本政府報告書に対する最終見解・勧告においては、我が国の死刑制度の問題が端的に示された。すなわち、死刑確定者の拘禁状態はもとより、その法的保障措置の不十分さについて、弁護人との秘密交通に関して課せられた制限をはじめとして深刻な懸念が示された上で、死刑の執行を速やかに停止すること、死刑を減刑するための措置を考慮すべきこと、恩赦を含む手続的改革を行うべきこと、すべての死刑事件において上訴が必要的とされるべきこと、死刑の実施が遅延した場合には減刑をなし得ることを確実に法律で規定すべきこと、すべての死刑確定者が条約に規定された保護を与えられるようにすべきことが勧告されたのである。我が国の死刑確定者が、同条約上の保護を与えられていないことが明確に指摘され、それゆえ、勧告の筆頭に死刑執行の速やかな停止が掲げられているのであって、その意義は極めて重い。
  参議院選挙を終えて、今また、新たな死刑執行が危惧されるが、死刑の執行は、我が国が批准した条約を尊重しないことを国際社会に宣言するに等しい。
6 このような状況を踏まえ、当会は、法務大臣に対し、死刑確定者106名(本年8月2日現在)に死刑が執行されないよう強く要請する。

福岡県弁護士会会長日記

カテゴリー:会長日記

                         会長 福 島 康 夫(30期)
1 日弁連第22回司法シンポジウム(6月22日)
 今年の最大のイベントである日弁連第22回司法シンポジウムが福岡市のJALシーホークアンドリゾートホテルで開催された。当日の参加者は1243名。これまでのシンポジウムの中で最大規模の参加者になった。参加していただいた当会の会員の皆さんに大いに感謝したい。
 当日の全体会の冒頭の平山正剛日弁連会長の挨拶の後で地元会を代表して私が挨拶に立つことになった。
 ところで,私の挨拶の中に,多重債務者救済対策本部の春山本部長代行の強い勧めで多重債務のテレビCMを会場に流すことにした。「弁護士会は変わる,福岡県弁護士会は先頭きって大きく変わる」ということを視覚的にアピールしようとしたものである。
 テレビCMは挨拶の途中と最後に流したがどうだったであろうか。会場の反応が心配であったが,何とか失敗はせずにすんだようである(なお,このCMは現在,当会のホームページでも動画で見ることができる。ご覧頂いていない方は是非とも参考にご覧頂きたい)。
 今回のシンポジウムは「市民のための弁護士をめざして いま,弁護士,弁護士会に求められるもの」というテーマであり,法の支配を全国津々浦々に及ぼすために,是非とも議論をしておかなければならない問題である。さらに,今年から弁護士の大量増員が始まる中で,私達弁護士自身のアイデンティティーについて議論することは極めて重要である。
 当日のシンポジウムでは,これまで紛争がなく弁護士なんて必要ないと思われていた地域が実は弁護士が着任して以降依頼が急増している報告がなされ,過疎地域のひまわり基金法律事務所の若い弁護士や法テラスのスタッフ弁護士の溌剌とした活躍ぶりが紹介された。偏在,過疎問題といえば,ともすれば空中戦といった感があったが,全国に活躍する若い弁護士の姿は感動的であり,エネルギーを注入された感じがした。
 しかし,他方で弁護士数は増加しているにもかかわらず,それが偏在解消にはつながっていないことも明確になった。成り行き任せでは偏在問題は解消しないことが共通の認識となったと思う。
 弁護士偏在問題は2009年に始まる被疑者国選弁護制度の対応態勢の確立と密接に関係しており,弁護士の大量増員問題とも密接に関係している。その意味で弁護士偏在問題対策はこの2年で目処をたてなければならない緊急課題である。
2 弁護士偏在問題解消のための経済的支援策の試行について
    (7月12,13日)

 7月12,13日の日弁連理事会において,弁護士偏在解消促進のための経済的支援策の試行に関する実施要綱が承認された。弁護士の偏在問題を早急に解消するためにあらゆる形で経済的支援をするというものであり,偏在問題の解消は際限のない弁護士増員要求に対する歯止めになるはずである。もし,本格的に実施するとすれば10億円を超える大事業となるが,これまで眠っていた特別会計を改組すれば会員からの新たな会費負担を求める必要はないという説明であった。今後,この経済的支援策の本格的実施をする場合日弁連臨時総会に付議されることになり詳細についても説明がなされることになると思う。経済的支援策は偏在問題解決のためのメニューの一つである。大きな構想だけに日弁連執行部の意気込みを感じた。
 九弁連管内の偏在問題,当会の中での偏在問題について,大いに意見を交換して早急に対策を立てる必要がある。この1,2年の重要課題である。
3 あらためて2009年問題について思う
 2009年には裁判員制度が実施され,被疑者国選弁護制度が10倍にまで拡大される。裁判員制度も被疑者国選弁護制度もどちらも刑事分野での司法制度改革に関する問題であるが,単に刑事の問題だけではなく,この問題は司法の将来,弁護士会の将来を左右する問題であると思う。裁判員制度が真の意味での市民のための司法になるかどうかはまだまだこれからの問題である。取調べの可視化を含め克服すべき課題は多い。
 また,被疑者国選弁護制度は2009(平成21)年には対象事件は今の10倍以上,年間10万件にも達することになる。しかし,現在のように偏在問題が解消できない限りは被疑者国選弁護制度の対応は不可能である。偏在問題の解消は特に,被疑者国選弁護制度の対応態勢が確立できるかどうかという問題と密接に関係している。この被疑者国選弁護事件をやりとげることができて,初めて弁護士大量増員問題にも堂々と意見がいえることになると思う。
 今,2009年に向けて全力をあげて準備をすることが最大かつ緊急の課題である。残すところ2年足らずである。精一杯行動するしかないが,やりがいもあると考えたい。これから2009年まで,日弁連全体にとってターニングポイントの年である。
4 情報の共有化のために工夫していること
 本年度の会務執行方針の一つとして情報の共有化を掲げた。700名を超える大きな会となった当会としては,特に会員全員の情報の共有化が不可欠である。そこで,従来からの月報の他に,ホームページ(大石副会長担当)週1回発信のFニュース(吉岡副会長,徳永響業務事務局長担当)でなるべく多くの弁護士会の情報を頻繁に発信することにしている。
 また,執行部内部でも情報の共有化を重要視し,このために執行部全員が工夫している。
 執行部会議は毎週月曜日の午後2時から5時30分頃まで何十という議題について意見を交換し結論を出している。常議員会のある日は別途執行部会議を12時から午後3時迄している。毎月輪番制で副会長が司会をすることになっている。執行部会議の議事録は大神,徳永響両事務局長が1,2日のうちに作成している。 担当副会長,事務局長は担当の部門の情報について日常はメーリングリストを活用しどんな些細なことでも報告をし,日常的な細かい問題はメールの交換で解決を図っている(現在までのメールは1620通)。
 対外的な折衝については執行部では複数で対応し慎重を期している。一見非効率ではあるが,複数で対応することによって折衝内容をより正確に分析することができると考えているためである。
 常議員会は2ヵ月に3回の割合で午後3時から6時までの予定で開催している。川副常議員会議長の手際の良い進行のお蔭で,密度の濃い議論をしながらこれまでのところ時間厳守を励行している。
常議員会の内容は月報の他に毎回常議員会の直後にFニュースでメール配信をし,ホームページの会員のページに出しているので,チエックしていただきたい。
 また,常議員会は日弁連の理事会の直後に開催するようにして,最新の日弁連の情報を常議員会に反映できるようにしている。日弁連理事会は2日間にわたる12時間以上のマラソン会議であるが,河辺副会長が常議員会で日弁連の動きについての簡にして要を得た報告をしている。月報に掲載しているので是非とも一読頂きたい。

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