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「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案」(いわゆる「カジノ解禁推進法案」)に反対する会長声明

カテゴリー:声明

1 国際観光産業振興議員連盟(通称「IR議連」)に所属する国会議員によって、「特定複合観光施設区域の整備に関する法律案」(以下「カジノ解禁推進法案」という。)が国会に提出され、衆議院において継続審議となっている。

カジノ解禁推進法案は、刑法第185条及び第186条で処罰の対象とされている「賭博」に該当するカジノについて、一定の条件の下に設置を認めるために必要な措置を講じるとするものである。

しかしながら、経済効果のみが喧伝され、深刻な社会に対する影響等についての検討がなされていない。また、賭博であるカジノを合法化するような正当な理由は何ら認められないため、到底容認できない。

2 そもそも、カジノが合法化されることにより、「暴力団員その他カジノ施設に対する関与が不適当な者の関与」、「犯罪の発生」、「風俗環境の悪化」、「青少年の健全育成への悪影響」、「入場者がカジノ施設を利用したことに伴い受ける悪影響」(カジノ解禁推進法案10条)等の弊害が生じることが確実に予想される。

ギャンブル依存症の問題も深刻である。ギャンブル依存症は、経済的破綻をもたらすのみならず、自らを死に追いやる危険性もある重篤な疾患である。

ギャンブルをするために借金を繰り返す者が現れることも必至であり、多重債務者問題対策が一定の効果を上げているにもかかわらず、これに逆行して、再び多重債務者が増加する可能性が極めて高く、多重債務問題と共にヤミ金問題の再然も大いに危惧されるところである。

合法的賭博が拡大することによる青少年の健全育成への悪影響も看過できない。カジノができることにより、住環境、教育環境の悪化は避けられず、賭博に対する抵抗感を喪失させることにつながりかねない。

さらに、資金源獲得を目的とする暴力団の関与を完全に排除することは極めて困難であるといわざるを得ない。

仮に、カジノ解禁推進法の成立だけを理由に、日本人のカジノ利用や規制については別の法案で定めるとの修正がなされたとしても、その内容も不明確である上に、以上の問題点が払拭されることは無い。

3 刑法が賭博を禁じている主な趣旨は、「勤労その他正当な原因によらず、単なる偶然の事情により財物を獲得しようと他人と相争うものであり、国民の射幸心を助長し、勤労の美風を害するばかりでなく、副次的な犯罪を誘発し、さらに国民経済の機能に重大な障害を与えるおそれがあることから、これを社会の風俗を害する行為として処罰すること」(第186回国会衆議院内閣委員会における政府参考人の答弁)にあるところ、カジノ推進法案が成立すれば、刑事罰をもって賭博を禁止してきた立法趣旨が損なわれ、様々な弊害が生じることは必至である。

よって、当会は、カジノ解禁推進法案に強く反対の意見を表明し、カジノ解禁推進法案の廃案を求めるものである。

2014年(平成26年)10月15日
福岡県弁護士会
会長 三浦邦俊

福岡刑務所尿道カテーテル事件控訴審判決に対する会長声明

カテゴリー:声明

2014年(平成26年)9月19日、福岡高等裁判所は、2010年(平成22年)4月当時福岡刑務所の受刑者であった控訴人が、腰痛の訴えに対して尿道カテーテルを挿入・留置されたことを理由として国に損害賠償を求めた裁判において、国に慰謝料等の支払いを命ずる判決を言い渡した。
一審の福岡地方裁判所は、強い腰痛の訴え等当時の状況に照らし、一時的安静・転倒防止のために尿道カテーテルを挿入・留置した医師の判断には合理性があるとして請求を棄却していたが、このたびの控訴審判決は、刑事施設内における医療も、社会一般の医療水準に照らして適切なものであるべきことを前提として、①医師の腰痛に対する診療が医療水準にしたがったものとはいえないこと、②本件は尿道カテーテル使用に関するCDCガイドラインの適応条件を充たさないこと、③福岡刑務所以外の刑事施設では腰痛患者に対して尿道カテーテルを使用することなく他の方法で対応していることを指摘し、一審判決を取り消し、本件カテーテル使用の違法性を認めたものである。
当会は、福岡刑務所における本件同様のカテーテル使用につき、控訴人を含む福岡刑務所内の受刑者6名からの人権侵犯救済申し立てを受け、2010年(平成22年)9月、福岡刑務所長に対し、腰痛患者に対する尿道カテーテル留置が憲法13条及び刑事被収容者処遇法56条に違反する重大な人権侵害であり、この侵害行為に関与した医師らに厳正な措置を採るとともに再発の防止を徹底すべき旨の警告を、また法務大臣に対し、刑事収容施設内における診療体制の強化やそれに必要な予算の構築も含めた適切な再発防止策を講ずべき旨の勧告を発している。
福岡刑務所は、当会の警告に対して、「医療措置に問題なし」とコメントし、国は本件訴訟においても尿道カテーテル使用の正当性を主張し続けてきた。今回の福岡高裁判決はそのような考え方に理由がないことを明らかにしたものであり、刑事施設被収容者の基本的人権の擁護の観点から高い評価に値する。
国に対しては、この高裁判決を重く受け止め、自ら非を認めて上告を断念するとともに、改めて、当会の警告及び勧告に沿った再発防止策を実現するよう強く求めるものである。
                         
                    2014年(平成26年)10月1日
                              福岡県弁護士会
                             会長 三浦 邦俊

死刑執行に関する会長声明

カテゴリー:声明

1 本日、東京拘置所、仙台拘置支所において、それぞれ1名の死刑確定者に対して死刑が執行された。
死刑執行は、本年(平成26年)6月26日に1名の死刑執行がなされたばかりであり、今後も新たな執行がなされることが懸念される。
2 本年(2014年(平成26年))3月に、1966年(昭和41年)にみそ製造会社の専務一家4名を殺害したとして強盗殺人罪などで死刑が確定した元プロボクサーの袴田巌氏(以下「袴田氏」と略。)に対する再審開始決定がなされ、刑事司法が無謬ではないという認識が世間一般に改めて広く共有されたところである。万一、袴田氏に対する死刑が執行されていたことを想像すると震撼させられるのを禁じ得ない。
そもそも、死刑という刑罰は、日本弁護士連合会の2011年(平成23年)10月7日の人権擁護大会の宣言でも触れられているとおり、①生命を奪う非人道的なものであり、②受刑者の更生し社会復帰する可能性を奪うものである点に根本的問題を内包している。そして、③人の生命を奪う点において、いかなる執行方法であっても、その残虐性は否定できない。
それ故、死刑の廃止は国際的な揺るぎない潮流となっているのである。
また、我が国では、死刑に直面している者に対して、被疑者・被告人段階あるいは再審請求の段階に至るまで十分な弁護権、防御権が保障されていない。執行の段階でも死刑確定者の人権保障の面で多くの問題を抱えている。
3 当会は政府に対し強く抗議の意思を表明するとともに、今後、死刑制度の存廃を含む抜本的な検討がなされ、それに基づいた施策が実施されるまで、一切の死刑執行を停止することを強く要請するものである。
以上

2014年(平成26年)8月29日
福岡県弁護士会会長 三浦邦俊

福岡拘置所小倉拘置支所の建て替えの予算措置等を求める要望書

カテゴリー:要望書

平成26年7月25日

内閣総理大臣     安倍 晋三 殿
法務大臣       谷垣 禎一 殿
法務省矯正局長    西田  博 殿
法務省福岡矯正管区長 竹下 正宏 殿

福岡県弁護士会
会 長 三 浦 邦 俊
福岡県弁護士会北九州部会
部会長 前 田 憲 徳

福岡拘置所小倉拘置支所の建て替えの予算措置等を求める要望書

第1 要望の趣旨

1 福岡拘置所小倉拘置支所(以下,「小倉拘置支所」という。)の建て替えのための事業費を来年度予算として計上すること,および,仮拘置所建設のための予算措置を早急に講じること

2 仮拘置所を建設するにあたっては,無罪の推定を受ける未決拘禁者の基本的人権や弁護権に最大限配慮すること

3 当会に新小倉拘置支所の設計図面等を早期に開示するとともに,開示後に当会の意見を聞くための協議の場を設置することを強く要望する。

第2 要望の理由
1 要望の趣旨1について

(1)未決拘禁者は,無罪推定の原則の適用を受ける者であり,刑事手続のために身体拘束される他は一般市民と同様の立場にあることから,拘置所内の生活においても,できる限り一般市民と同様の生活が保障されなければならない。

(2)しかしながら,小倉拘置支所は昭和35年に築造された建物であり,既に築後50年以上が経過しているため,建物の老朽化は著しく,建物の各所で塀の倒壊や外壁の落下等の危険が生じ,未決拘禁者や面会に来る市民及び小倉拘置支所職員の生命・身体への危険が生じ得る状態となっている。
また,小倉拘置支所は,昭和25年公布の旧耐震基準に基づいて建築された建築物であり,現在の耐震基準を満たしていない上,建物の駆体部分の老朽化も著しい。そのため,地震等の自然災害が発生した場合には,甚大な被害が生じる危険性が極めて高い。
さらに,給水設備については,蛇口からは赤水が出る,トイレの水の流れが弱いために排泄物がなかなか流れない等,設備使用上の不具合が生じており,未決拘禁者の生活環境は極めて劣悪な状況におかれている。未決拘禁者の収容部屋についても,雨漏りが発生する部屋が多数存在する上,室内でダニが発生する,布団から虫が出る,カビが発生する等,衛生面における問題も極めて深刻である。
この点,2014年(平成26年)年5月23日に,当会北九州部会の会員が小倉拘置支所を見学した際に,内部の状況を確認したが,未決拘禁者の劣悪な生活環境については一向に改善が見られなかった。
このように,無罪推定の原則の適用を受ける未決拘禁者が,現在の小倉拘置支所の劣悪な生活環境の下で収容されることは,未決拘禁者の基本的人権を侵害するものであり,かかる状況は一刻も早く改善されなければならない。

(3)ところが,小倉拘置支所の建て替えに必要な事業費は未だ予算化されておらず,建て替えの際に必要不可欠となる仮拘置所建設のための予算措置も未だ講じられていない。
このままでは,小倉拘置支所の建て替えが遅延することは確実な状況であり,建て替えが遅延することは,未決拘禁者の基本的人権の侵害状況が継続することを意味する。
したがって,予算措置の遅れによって,小倉拘置支所の建て替えが遅延するといった事態は絶対に避けなければならない。

(4)また,仮拘置所が完成しなければ小倉拘置支所の建て替えに着手できない以上,仮拘置所建設のための予算措置についても,小倉拘置支所の建て替えにも匹敵するほどの重要性をもっていることから,仮拘置所建設のための予算措置を早急に講じる必要がある。

(5)そこで,当会としては,小倉拘置支所の建て替えを早急に行うべく,そのための事業費を来年度予算として計上すること,および仮拘置所建設のための予算措置を早急に講じることを強く要望する次第である。

2 要望の趣旨2について

(1)小倉拘置支所の建て替えの際の仮拘置所についても,無罪の推定を受ける未決拘禁者を収容する施設である以上,新拘置所の建築が完了するまでの暫定的な施設であるからといって,未決拘禁者の基本的人権や弁護権が軽んじられるような施設や設備となることは断じて許されない。

(2)そのため,仮拘置所内においては未決拘禁者と既決囚を峻別し,未決拘禁者の生活環境にも十分に配慮した施設とすることにより,未決拘禁者の基本的人権に最大限配慮することを強く要望する。
また,弁護人接見室の数が現在の小倉拘置支所の3室より減少したり,接見室内の防音性能が低下したりすることによって,弁護権の保障が妨げられる事態のないよう配慮することも強く要望する。

3 要望の趣旨3について

(1)未決拘禁者の基本的人権に最大限配慮した拘置所を建設するためには,未決拘禁者の人権を制約する立場にある拘置所側の意見のみに基づいて設計・建築を行うのでは不十分である。
この点について,当会は,これまで,小倉拘置支所の未決拘禁者に対するアンケート調査を実施して,現在の小倉拘置支所における問題点を明らかにするとともに,未決拘禁者の基本的人権への配慮という点で高い評価を受けている大韓民国のソウル拘置所の視察を行い,未決拘禁者の基本的人権に配慮した拘置所の建設に向けた様々な活動を行ってきた実績がある。
そのため,小倉拘置支所の建て替えに際しては,この問題に恒常的に取り組んできた当会の関与を認める必要性は極めて高い。

(2)そして,当会は,2013年(平成25年)11月に小倉拘置支所建て替えに関する具体的な要望書を提出したが,新拘置所の設計や設備が当会の要望を反映し,未決拘禁者の基本的人権に最大限配慮されたものとなっているかを検証するためには,新拘置所の設計図面等の内容を確認することが必要不可欠である。
ところが,当会は,未だ新拘置所の設計図面等の開示を受けておらず,新拘置所の設計や設備が未決拘禁者の基本的人権に十分配慮されたものとなっているかを確認できていない状況にある。

(3)そこで,当会は,早期に新拘置所の設計図面等の開示を要望するとともに,設計図面等の開示を受けた後には,当会の意見を聴取するための協議の場を設けることを強く要望する次第である。

以上

集団的自衛権の行使等を可能とする閣議決定に抗議し撤回を求める会長声明

カテゴリー:声明

 本年7月1日、安倍内閣は、多くの国民の反対を押し切って、国会における議論も、国民的議論も尽くさないまま、従来の政府の憲法解釈を変更し、集団的自衛権の行使等を可能とする閣議決定を強行しました。
 集団的自衛権は、わが国が直接攻撃されていないのにもかかわらず、他国のために武力を行使するもので、その行使は憲法第9条によって禁じられています。この憲法解釈は、これまでの政府答弁(1981年5月29日政府答弁書等)や国会決議(1954年6月2日参議院本会議決議)等の積み重ねによって確立しています。
 日本弁護士連合会と当会をふくむ全国の弁護士会が一致して指摘するとおり、このたびの閣議決定は、それ自体が憲法第9条に反し、また、憲法によって政治権力の濫用を抑制する立憲主義に反するものです。 
 このたびの閣議決定は、「わが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合」に「必要最小限度の実力を行使する」としています。しかし、これらの文言は極めて曖昧で、時々の政府の判断により都合良く解釈して運用されかねず、歯止めにはなり得ません。
 さらに、閣議決定について政府が説明用に作成した想定問答集においては、集団安全保障に基づく武力行使への参加に道を開く回答がなされています。集団安全保障は、国連が侵略国などへの制裁として多国間の枠組みで対応する措置ですが、その措置の中には武力行使も想定されています。そのような事柄を、国民的議論がほとんどなされていないなかで準備をすることは、立憲主義の破壊、民主主義の破壊に等しく、到底許すことはできません。
 このたびの閣議決定はまた、「わが国を取り巻く安全保障環境は根本的に変容」し、「アジア太平洋地域において問題や緊張が生み出さ」れていることをも集団的自衛権の根拠としています。仮にそうだとしても、そのような「問題」を解決し、「緊張」を緩和するよう、外交努力を強化することこそ政府の責務のはずです。
 当会は、これまで、韓国の釜山地方弁護士会、中国の大連市律師協会等と親善交流を深め、相互の信頼関係を築いてきました。このような草の根の交流の蓄積を踏まえて、今後より一層、平和外交を進めることが平和国家として歩むべき道だと、確信するところです。
 憲法違反の閣議決定に引き続く自衛隊法等の法改正も、憲法に違反するものとして許されるものではありません。
 当会は、集団的自衛権の行使等を可能とする閣議決定に対して強く抗議し、その撤回を求め、今後予定される関係法の改正等に断固として反対するものです。
2014年(平成26年)7月16日
                      福岡県弁護士会
会長 三 浦  邦 俊

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