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カテゴリー: 声明

刑事弁護における弁護人の責務についての理解と弁護活動の自由の確保を求める声明

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広島高等裁判所に係属中の殺人事件(いわゆる「光市母子殺害事件」)に関して、先日、日本弁護士連合会宛に「元少年(被告人)を死刑に出来ぬなら、元少年を助けようとする弁護士たちを処刑する」などと記載された脅迫文書が届き、さらに同様の脅迫文書が新聞各社にも届いたとのことである。
 憲法第37条3項は「刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる」とし、国連の「弁護士の役割に関する基本原則」(以下「基本原則」という)も、「すべて人は、自己の権利を保護、確立し、刑事手続きのあらゆる段階で自己を防御するために、自ら選任した弁護士の援助を受ける権利を有する」(第1条)と定めている。このような被告人の権利は、刑事裁判において被告人に十分に防御の機会を与えることによって被告人に対し適正な裁判を受ける権利を保障するものであって、歴史的に確立されてきた大原則である。
 弁護人は、被告人のこのような権利を守るために最大限の努力をする責務を負っている。
 ところが、今回の日本弁護士連合会や弁護人に対する脅迫行為は、被告人が弁護人の援助を受ける権利を否定し憲法の保障する適正手続きを根幹から揺るがす行為である。
 基本原則16条も「政府は、弁護士が脅迫、妨害、困惑あるいは不当な干渉を受けることなく、その専門的職務をすべて果たし得ること、自国内及び国外において、自由に移動し、依頼者と相談し得ること、確立された職務上の義務、基準、倫理に則った行為について、弁護士が、起訴、あるいは行政的、経済的その他の制裁を受けたり、そのような脅威にさらされないことを保障するものとする」と定めている。
 当会は、今回の脅迫行為に強く抗議する。
 さらに、当会は、こうした弁護士や弁護活動への妨害や脅迫行為が、被告人の弁護人の援助を受ける権利を否定し適正手続きを保障した憲法の理念に反するという認識を広く市民と共有できるよう最大の努力をするとともに、刑事弁護における弁護人の責務について理解を求め弁護活動の自由を確保するために、全力を尽くす決意である。
2007年(平成19年)7月18日
              福岡県弁護士会
              会  長  福  島  康  夫

生活保護の適正な運用を求める声明

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 本年7月10日、北九州市小倉北区で52歳の男性が自宅で死後1ヶ月経った状態で発見された。新聞報道によれば、この男性は、昨年12月26日から生活保護を受給していたものの、本人から「辞退届」が出されたということで本年4月10日に保護廃止となったとのことであり、2ヶ月後には孤独死したことになる。
 当会では、昨年、日本弁護士連合会において採択された「貧困の連鎖を断ち切り、すべての人の尊厳に値する生存を実現することを求める決議」を受けて、生活保護をめぐる相談・援助体制を構築するためのプロジェクトチームを発足させるなど、生活保護の運用が適法・適正に行われるよう求める活動に取り組んでいるところである。
 ところが、北九州市では、生活保護申請が認められなかった人が孤独死する事件が相次ぎ、本年5月に生活保護行政検証委員会(第三者機関)が設置され、検証・審議が進められているのであるが、今回またしても救済できたはずの人命を孤独死に至らしめたことは極めて遺憾である。また、新聞報道によれば、北九州市に限らず、「辞退届」を提出させ、保護を打ち切るという運用が全国的に蔓延していることも指摘されているが、生活保護法上、廃止を行いうる場面は限定されていることからして、非常に問題のある運用と言わざるを得ない。
 生活保護はあらゆる社会保障制度の中でも最後の砦ともいうべき制度であり、対象者の生命にかかわる問題であるから、一度は要保護性が認められた者の保護を廃止するにあたっては、特に慎重な調査が要求されることは言うまでもない。
 すなわち、たとえ「辞退届」なる書面が提出されたとしても、それが任意かつ真しな意思に基づくものでなければ、生活保護を廃止する理由とはなり得ない。広島高裁(2006(平成18)年9月27日判決)も、要保護状態が解消したのか否かについて必要な調査を行わないまま自立の目途があるとして提出させた辞退届は錯誤によるもので無効であるとした上で、廃止は保護受給権を侵害するとして東広島市の不法行為責任を認めている。
 新聞報道によれば、男性は「働けないのに働けと言われた」等と日記に記していたとのことであり、「辞退届」が真意に基づくものでなかった可能性が強く、小倉北福祉事務所が、男性に自立するための仕事や収入源があるか否かについて慎重な調査確認を行ったとは考えられない。
 報道が事実であるとすれば、このような運用は、人の生きる権利を奪うものであって、生存権を保障する憲法25条に照らしても、絶対に容認できるものではない。
 当会は、北九州市に対し、再びこのような事件が起きることのないよう、早急に徹底的な真相解明を行うよう求めるとともに、生活保護制度の適法・適正な運用のための具体的な改善策を直ちに講じることを強く求めるものである。
2007(平成19)年7月18日
                 福岡県弁護士会
                   会 長   福  島  康  夫

犯罪被害者刑事手続参加制度に関する法律成立に抗議する声明

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2007年(平成19年)6月21日
                  
福岡県弁護士会 会長 福島康夫
 昨日、国会において「犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事訴訟法等の一部を改正する法律」が成立した。この法律は、裁判員裁判対象事件や業務上過失致死傷等の事件について、裁判所に参加を申し出た被害者やその遺族に対し、公判への出席、情状に関する事項についての証人に対する尋問、被告人質問、証拠調べ終了後の求刑を含む弁論としての意見陳述を認める制度であるが、当会は、本年3月8日及び同6月6日の二度にわたって、この創設に反対する会長声明を発した。
 にもかかわらず、同法が成立したことは誠に遺憾であり、強く抗議の意を表明する。
 同法に定められた犯罪被害者参加制度には、
 (1)真実の発見に支障をきたす
 (2)法廷を報復の場にしてしまうのみならず無罪推定の大原則を根本的にゆるがし近代刑事司法の基本構造を根底からくつがえす
 (3)被告人の防御権の行使を困難にする
 (4)少年の刑事事件ではさらに深刻な萎縮効果を及ぼし適正手続きに反する事態を生じる
 (5)事実認定に悪影響を及ぼし裁判員制度が円滑に機能しなくなるおそれもある
などの重大な問題があり、この制度は、我国の刑事裁判に対し、看過し得ない重大な悪影響を及ぼすものである。
 当会は、今後、政府及び国会におかれて、以上のような同法の重大な問題点を徹底的に究明され、裁判員裁判が実施される前に同法の抜本的な改正がなされることを強く求めるものである。

被害者の参加制度関連法案衆議院可決にあたっての声明

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2007年(平成19年)6月6日
                 
福岡県弁護士会 会長 福島康夫
 衆議院は、2007年(平成19年)6月1日、「犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事訴訟法等の一部を改正する法律案」(以下「法案」という)を可決し、参議院に送付した。
 この法案は、裁判員裁判対象事件や業務上過失致死傷等の事件について、裁判所に参加を申し出た被害者やその遺族に対し、公判への出席、情状に関する事項についての証人に対する尋問、被告人質問、証拠調べ終了後の求刑を含む弁論としての意見陳述を認めるものであるが、当会は、この法案の定める犯罪被害者等の刑事手続参加制度(以下「被害者参加制度」という)には、次のような問題があり、その創設に反対するものである。
(1)法廷を報復の場にしてしまい近代刑事司法の基本構造を根底からくつがえすことになる。
  わが国では、検察官が訴訟遂行を独占する仕組みをとっている。これは、犯罪被害者やその遺族(以下「被害者等」という)による私的報復を禁止し国家が加害者を処罰することによって、被害者等と加害者との報復の連鎖を防いで社会秩序の安定を図ろうとするものである。それによって、被害者等は加害者の再報復から守られることにもなる。
  したがって、現行法上、被害者等の意見や処罰感情等は、公益的立場である検察官を通じて理性的に訴訟手続に反映させることが予定されている。
  ところが、今回衆議院で可決された法案は、刑事訴訟手続の場に私的復讐を持ち込み、報復の連鎖を招く危険性が高い。
  このことは、無罪推定原則に基づき裁判官の予断と偏見を可能な限り排除しようとする近代刑事司法の原則にも反することになる。
(2)被告人の防御権の行使を困難にし真実の発見に支障をきたす。
  近代刑事司法は、被告人に十分な防御の機会を保障することによって、真実を発見し適正な量刑を行なおうとするものである。
  ところが、被害者等が被告人と法廷で対峙し被告人が被害者側からの感情も交えた厳しい追及にさらされることになれば、被告人は萎縮してしまい自らの正当な反論もできなくなる可能性がある。
  さらに、被害者等が不意打ち的な訴訟遂行を行うことも予想され、被告人側は、これら全てに対して防御することを余儀なくされ、防御すべき対象、争点の拡大がもたらされる可能性もある。
  このような事態は、被告人の防御活動を著しく困難にし真実の発見と適正な量刑にも支障をきたすことになる。
(3)少年の刑事事件ではさらに深刻な萎縮効果を及ぼし適正手続きに反する事態を生じる。
  上記のような事態は、被告人が、心身ともに成長過程にあって精神的・心理的に未発達な少年の場合には、さらに深刻である。
(4)裁判員制度に悪影響を及ぼすおそれもある。
  以上のような事態は、2009年(平成21年)から実施が予定されている裁判員裁判にも重大な悪影響を及ぼす可能性がある。
  すなわち、被害者等を訴訟に参加させ感情的な訴訟活動を法廷に持ち込めば、市民たる裁判員は目の前の被害者等の感情的な訴訟活動に混乱し、過度に影響を受けて冷静かつ理性的な事実認定が困難になり、かつ、量刑においても過度に重罰化に傾くことは容易に予想される。
 以上のように、被害者参加制度は、刑事裁判に対し、その本質に照らし看過し得ない悪影響を及ぼすものである。そのため、犯罪被害者等の中にも「被告人から落ち度を指摘されたり、その場限りの謝罪を受けたりして被害者が傷つく」「声を上げられない被害者が見落とされる」「法廷が復讐の場になれば憎悪の気持ち、苦しみも増すだけ」などという意見が出されている。
 このように刑事裁判の根幹に関わる重要な制度改革をわずか2週間程度の審議で決定するのはあまりに拙速過ぎ、慎重さを欠いている。
 なお、この法案には3年後に見直すとの条項が盛り込まれはしたが、法案に含まれる根本的な問題は単なる見直しでは解消できるものではない。
 当会は、犯罪被害者等の支援が重要であることを十分に認識し、これまでもそのような活動に取り組んできたし今後も取り組む所存である。しかし、以上のような問題をもった被害者参加制度の創設についてはこれを認めることはできない。
 当会は、本年3月8日に被害者参加制度の創設に反対する会長声明を発したところであるが、今回、衆議院において慎重さを欠いた法案の可決がなされたことは誠に遺憾であり強く抗議する。参議院におかれては、法案の問題性を十分に認識したうえで慎重に審議されるよう求めるものである。

少年法等「改正」法案に反対する会長声明

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 本年4月19日,衆議院において,少年法「改正」法案(与党修正案)が可決され,現在,参議院において,審議が進められている。与党修正前の少年法「改正」法案に対して,当会は,平成17年以来,2度にわたって会長声明を発表し,少年法「改正」法案に反対したところであるが,以下の1から3までに記載のとおり重大な問題があり,あらためて,この「改正」法案(与党修正案)に対して反対するものである。
1 おおむね12歳以上という下限を示しながらも,14歳未満の低年齢非行少年の少年院送致を可能にするという厳罰化を定めていること
  そもそも,少年院は,一定の人格形成がなされていることを前提とし,主として集団的で,かつ,「厳しい規律」を前提とした矯正教育を行う施設である。ところが,14歳未満の低年齢の少年が非行を起こす場合の多くは,心身の発達状況や家庭における生育歴などに問題を抱えている場合が多く,とりわけ,重大な事件を犯すに至った低年齢の少年ほど,被虐待体験を含む複雑な生育歴を有し,このため,人格形成が未熟で,規範を理解し受け容れる土壌が育っていないことが多い。このような低年齢の触法少年に対しては,それぞれの少年が抱える問題に応じた個別の福祉的,教育的対応が可能な児童自立支援施設における処遇が適切である。
  少年院送致の年齢の引き下げよりも,児童自立支援施設の一層の専門性強化とこれに要する人的物的資源の充実が求められるところである。
2 触法少年に対する警察官の調査権限を付与していること
  そもそも現行法上,触法少年の行為は犯罪ではなく,警察官による調査になじむものではない。
  触法少年の特徴は先に指摘したとおりであり,そうした少年に対する調査は,福祉的,教育的な観点から,児童福祉の専門機関である児童相談所のソーシャルワーカーや心理相談員を中心として進め,その実態に迫っていくとともに,適切なケアを図っていくべきである。
3 保護観察中の遵守事項を守らない少年に対する少年院収容処分を導入していること  現行法においても,保護観察中の遵守事項違反に対しては「ぐ犯通告」制度が存在し,現行の保護観察制度は相応に機能している。
  ところが,本法案は,「少年院送致」を威嚇の手段として遵守事項を守るよう少年に求めるものであり,そうした環境では,真実の信頼関係は育たず,かつ,保護観察制度の実質的な変容を迫るものである。
  むしろ,保護観察官の増員や適切な保護司の確保といった現行の保護観察制度の充実をはかるべきである。
4 なお,本法案は,ごく限定的ではあるが,従前の検察官関与とは切り離して国選付添人制度を導入し,少年が釈放されたときにも国選付添人選任の効力が失われなくなったとの修正が入ったことは評価できる。  これは,当会が全国の弁護士会に先駆けて実践してきた身柄事件全件付添人活動が,ここ数年,全国に波及していく中で,これらの実績に基づいて有用性が証明され,国としてもその成果に配慮したことによるものであると確信する。その意味で,国選付添人制度の導入は,我々のこれまでの活動が実を結び,将来の全面的な国費による付添人制度への橋渡しになりうるものとして一定の評価をする。
  我々は,さらに,全面的な国選付添人制度の実現を強く求めるとともに,今後とも,少年付添人活動の一層の充実に努めていく決意である。
2007(平成19)年5月16日
福岡県弁護士会 会長  福島 康夫

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