福岡県弁護士会コラム(弁護士会Blog)

2002年5月号 月報

NHK「クローズアップ現代」放映される。 

月報記事

池田耕一郎

1 はじめに

NHKで特集が組まれるという話が出たのが1年あまり前。前日弁連副会長春山九州男先生(平成12年度県弁会長)から指示を受け,子どもの権利委員会内でNHK対策チームを立ち上げたのが昨年10月。その後,委員が手分けして,扶助付添人の報告書として保管されていた珠玉の付添人活動事案から選りすぐり,事件を担当された先生方に委員が取材にうかがい,さらに,その取材結果を持ち寄り,委員会において議論を戦わせました。取材にご協力いただいた先生方,ありがとうございました。この場を借りてお礼申し上げます。

2 番組の内容

番組では,福岡県弁護士会の迫田登紀子会員が担当した事例と大谷辰雄会員が担当した事例とが取り上げられました。

少年は,当初,自分の彼女に対し,「何でオレが逮捕されとーとかいな。」と書いた手紙を送っていましたが,審判直前には,自分の両親に対して,「悪い流れから抜け出せず,何度も同じ結果を招いた自分に腹が立っています。僕は,今,人生の途中で大きな岐路に直面しているようです。」と書いて送るようになりました。

少年は,少年院送致(短期処遇)となりましたが,迫田会員を,「自分自身が変わるためのきっかけになってくれた。」と語る少年の姿に,付添人活動が大きな形となって実を結ぶさまを目の当たりにしました。

また,大谷会員の担当した事例は,19歳の少年が,自動車を運転中,他のドライバーとけんかになり傷害で逮捕されたというもので,付添人の大谷会員との交流の中で,被害者の傷害の程度を知らされ,自らのわずかな収入の中から少しずつ被害弁償金を捻出して大谷会員に預ける姿があり,そこには付添人がいなければ実現しなかったであろう,真摯に「被害者」という存在を受け止めていく少年の姿が現れていました。

大谷会員が担当したもう一つの事例では,傷害,恐喝で逮捕された17歳の少年が,数ヶ月間の試験観察の過程で,大谷会員と対話をしていく中で,次第に心を開き,自分自身を見つめ直していく姿が描き出されていました。

少年事件に弁護士が関わるという事実だけから,「少年に甘くなるのではないか。」という反発が聞こえそうですが(実際に,番組内でもこの点が指摘されました。),番組では,弁護士付添人=少年に対する甘やかし,という図式ではなく,少年の改善・更生を図る上で,少年の処遇を決定する過程にさまざまな人々が関わっていくプロセスの重要性,付添人の存在によって少年の処遇に関する選択の幅が広がることの意味が的確に指摘されていました。これにより,付添人の存在意義が市民にわかりやすく伝わったのではないかと思います。実際,番組視聴者からのモニターリポートの結果にも,そのことが裏付けられています。

3 制作現場における真摯な取り組み

NHK福岡放送局の加治記者は,借り物の知識・理解ではなく,少年自身・事件そのものにぶつかっていこうとされました。ある日の未明,少年の保護者から加治記者の携帯電話に,少年が事件を起こしたとの一報が入ったのですが,これも,加治記者が,「一人の人間」として番組制作に取り組まれたことを象徴するエピソードといえましょう。藤吉記者は,全件付添人制度発足前から福岡県弁護士会の取り組みに注目されていた方で,今回の番組制作にあたっても,各方面にきめ細やかな対応をされました。さらに,黄木副部長の鋭い洞察と英断,ここぞというときの行動力,宮城ディレクターの編集のご苦労がなければ,番組は実現しなかったであろうという経緯を,春山九州男先生主催による番組「祝勝会」で感慨深く聞きました。

4 家裁,鑑別所の絶大なご協力

番組が成るにあたっては,川本隆前所長をはじめとする福岡家庭裁判所の方々,福岡少年鑑別所の方々に,福岡県弁護士会の取り組みをご理解いただき,実に積極的にご協力いただきました。心から感謝申し上げます。

その多大なご協力がなければこれだけ深い感銘を与える番組は成立しなかったでしょう。そのことは,番組内にちりばめられた貴重な映像をご覧いただけば,おわかりいただけるはずです。

5 結 語

付添人活動をしていく中で,ふと,「付添人は何のために存在するのだろう。」とか,「付添人は少年とどのように接していくべきなのだろう。」と,実に単純でありながら,難解な疑問にぶつかるときがありますが,この番組を観れば,目の前の霧が晴れていくような心持ちになるでしょう。

番組の中で,東京経済大学教授(元裁判官)の守屋克彦先生から,「全件付添人制度の試みは,ほぼ弁護士の手弁当で行われているが,福岡県弁護士会の積み重ねが将来の制度改正につながってくれれば,各弁護士の熱意も通じることになるのではないか。」とのお言葉がありました。

福岡県弁護士会での制度開始から1年を経て,全国でも少しずつ,制度を実施に移す単位会が出てきました(福岡県の制度よりも規模を縮小した形ではありますが。)。しかし,依然として,東京,大阪,名古屋など,多数の会員を抱える地域で,いまだ制度が実現されていない現実があります。

このような状況の中,今回の番組は,マスメディアを通じて世論に訴え,制度を全国に広め,ひいては,被疑者国公選と共に,「国公選付添人制度」を実現するため大きな意味をもつものでした。

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クリーンパーク臨海、和白干潟視察報告

月報記事

武藤糾明

たいへんまじめかつ熱心な委員会として広く知られている公害環境委員会は、2001年度の活動の締めくくりとして、3月22日に、貝塚のクリーンパーク臨海と、和白干潟の視察を行いました(参加者は、堀、藤井、高橋(謙)、日野、吉野、長戸、黒木、武藤の各委員と、修習生)。

1 クリーンパーク臨海

今回訪れたクリーンパーク臨海は、貝塚の近く、博多湾に臨んだ地点に位置する2001年4月に稼働を開始したばかりの大型焼却施設を中心とする施設です。福岡市環境局施設部臨海工場の工場長である、真藤正明さんの御案内で施設を見学し、お話を伺いました。

福岡市及びその周辺地域の家庭から出る可燃ゴミは、4つの焼却施設で焼却処理されています。この施設はそのうちの一つで、24時間連続運転のストーカ炉で、1日300トンの焼却能力を持つ炉が3基という、巨大な焼却場です。

クリーンパークという名称は、焼却施設を中心として、リサイクルプラザや、焼却により発生する余熱を利用する施設(タラソ福岡)などの付帯施設を包括する構\想に基づくものだそうです。

搬入された可燃ゴミは、ゴミピットにいれられ、ゴミクレーンにより攪拌され、ゴミ質の均質化が図られます。その後、焼却炉のホッパに投入され、1時間ほど乾燥された後、焼却炉に入ります。ここでは、ストーカと呼ばれる、可燃ゴミを少しずつ前に押しやっていく装置により、燃焼を続けながら、可燃ゴミは焼却炉の下部にゆっくりと押されて行きます。燃焼ガスはボイラに入り、その熱は発電にも利用されながら、減温装置、バグフィルター、排ガス洗浄装置、再加熱器、触媒脱臭装置を通って煙突から排出されます。

焼却施設の見学については、小学4年生向けの内容とはいえ、施設の内容や、見学の順路を明らかにしてゆくハイテク技術を駆使したシステムにより、分かりやすく行われました。ただ、肝心の焼却炉や、その後の排ガスの処理システムについての見学がほとんどなかったのが残念でした。

ダイオキシン類の排出基準(0.1ng-TEQ/Nm3)を守る設計ということなので、ゴミ問題に重大な関心を持つ委員から次々に質問が出て、たいへん活発な質疑応答がなされました。

3基ある焼却炉ですが、炉ごとに1年に1回、1か月ないし1.5か月定期修理を行い、1年に半月は全炉を止めて点検を行うそうで、2基を常時運転させるというのが原則だということでした。

ゴミ質は、30%ないし40%が水分で、35%程度が紙ゴミ、15ないし20%がプラスチック、10ないし15%が生ゴミです。

一番難しいのがゴミの均質化で、水分が多かったり、プラスチックが少ないと、燃焼が不均質になり、ゴミ投入により燃焼温度が下がりすぎるそうです。クレーンによるゴミの攪拌により、焼却に適したゴミを「作る」のだ、という説明がなされました。

焼却炉の燃焼室の温度を850℃以上に保つための手段として、ストーカの下から吹き込む空気の量を調節したり、ストーカがゴミを送る速度を調節したりするということでした。

ボイラ出口の排ガス温度は300℃であり、エコノマイザの部位に来てようやく200℃になるということでした。

本件施設では、排ガス洗浄という処理過程(塩酸や硫黄酸化物などをとる湿式のシステム)が少し変わった処理ではないかと思います。

質疑の中で特におもしろいと思われるのは、以下のやりとりです(少しマニアックですが)。

  1. ガス化溶融炉を採用しなかったのはなぜですか?−実績がないからです。
  2. 立ち上げ、立ち下げ時は、850℃にしてからゴミを投入するなどの方法をとっているのですか?−いいえ。バーナーで400℃にしてからゴミを入れ始めます。すると徐々に温度が850℃に達していきます。立ち上げ、立ち下げ時の低温下はやむを得ないと考えています。

なお、T委員は、リサイクルプラザで販売していた古書をたくさん購入し、資源循環の取り組みを実践しておられました。

2 和白干潟

4600億円をかけて遂行されている人工島埋め立て事業では、異例にも知事の意見書として「環境に与える影響を懸念」する内容であったほど、和白干潟に対する大きな打撃が予想されています。

現地は、渡り鳥の2通りの渡りのルートが交差しているところで、極めて多様な生物が観察される貴重な干潟です。堀委員長の熱い説明と、双眼鏡の先のツクシガモ、オナガガモ、ミヤコドリなどを見ながら、これらの生物は、誰の利益のためにその生活環境を奪われるのだろうか、ということを考えざるを得ませんでした。

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