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ヘイトスピーチのない社会の実現のために行動する宣言

カテゴリー:宣言
1 人種ないし民族的出身などに基づく社会的少数者に対する偏見・憎悪・嫌悪の感情等を主な内容とする差別的言動(いわゆるヘイトスピーチ)は、対象とされた人々の個人の尊厳(憲法第13条)、法の下の平等(憲法第14条)等の基本的人権を著しく侵害するものであるばかりか、これを放置すると攻撃対象とされた人々に対する社会的な差別、偏見、憎悪、暴力等を助長しかねない、絶対に許されないものである。
2 しかし、我が国では、長くヘイトスピーチに対する対応がなされておらず、その対応の不十分さについて、国際的にも批判を受けていたところである。
このような国際的な動向もあって、2016年(平成28年)6月、「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取り組みの推進に関する法律」(いわゆるヘイトスピーチ解消法)が制定された。
3 同法に対しては、その性質や限界などについて種々の批判もあるものの、ともあれ、「本邦外出身者に対する不当な差別的言動」が我が国において許されないものであることを宣言し(前文)、これを解消すべきことが国及び地方公共団体の責務であることを明らかにした点(第1条)では大きな意義のあるものであった。
しかし、遺憾なことに、同法施行後も我が国ではヘイトスピーチが続いている。間もなく同法が施行後6年となるが、状況は変わっていないばかりか、市中での街宣行動や、インターネット上でのヘイトスピーチが横行している。
4 福岡県内においても、在福岡大韓民国総領事館前、在福岡中華人民共和国総領事館前等、また、天神等の繁華街や駅前等において、ヘイトスピーチにあたりうる表現行為が平然となされ続けている。
また、インターネットの動画サイト上に、前記の街頭におけるヘイトスピーチ等を内容とする投稿が組織的になされている。
福岡県は、歴史的な諸事情やアジア諸国と近接しているという地理的な面から、異なるルーツを持つ市民が多く共生している地域であり、県内における実状に照らしてヘイトスピーチを根絶すべき要請は大きい。
5 それにもかかわらず、当会はこれまでこの問題に正面から取り組んできたとは言えず、このことは大いに反省しなければならない。
また、目を外に転じても、福岡県内には例えばヘイトスピーチに対する実効的な施策としての条例を定めている自治体は未だなく、十分な対策がなされているとは言えない実情にある。
全国的な状況を見れば、表現の自由に配慮しつつ、公の施設を利用してヘイトスピーチがなされる場合における施設利用の規制に関する条例やガイドラインを制定し、第三者機関を置くなどの取り組みを行っている自治体も存在していることを考えれば、福岡県内の自治体の取り組みの遅れは、看過できない。
6 そこで、当会は、上記反省の上に立って、次の通り宣言する。
⑴ 異なるルーツを持つ市民が、共に安心し、平穏なる生活が営めるよう、ヘイトスピーチ問題を対象とする法律相談体制をより充実させる等、ヘイトスピーチによる被害の予防・救済のための法的支援の活動を進めていく。
⑵ 福岡県内におけるヘイトスピーチを根絶するために、いかなる方策によることが実効的であるのかについて、表現の自由に配慮しつつ、具体的検討を進めていく。
⑶ 福岡県及び福岡県内の自治体に対しても、多文化共生の理念を尊重し、ヘイトスピーチを根絶するための実効的な方策をとるよう求め、その実現のために、連携した取り組みを行っていく。

2022年(令和4年)5月27日
福岡県弁護士会

宣言の理由

1 ヘイトスピーチが絶対に許されないものであること
わが国では2009年(平成21年)12月、京都朝鮮第一初級学校に隣接する児童公園を利用して上記学校に対し、「朝鮮学校を日本から叩き出せ」等の怒号をもって誹謗中傷する内容の抗議・街宣をするいわゆる「京都朝鮮第一初級学校事件」が発生した。
また、2010年(平成22年)頃以降、東京都の新大久保や大阪市の鶴橋等で頻繁に反韓デモが実施された。そこでは「韓国人は日本から出ていけ」「ゴキブリ朝鮮人を追い出せ」「韓国人を殺せ」「鶴橋大虐殺を実行しますよ」「実行される前に自国に戻ってください!」等、在日韓国人、在日朝鮮人を誹謗中傷し、嫌悪、排撃することを扇動するが如き表現が用いられた。
このように、人種ないし民族的出身などに基づく社会的少数者に対する偏見・憎悪・嫌悪の感情等を主な内容とする差別的言動(いわゆるヘイトスピーチ)は、攻撃対象とされた人々の個人の尊厳(憲法13条)、法の下の平等(憲法14条)等の基本的人権を著しく侵害するものであり、これが横行するときは攻撃対象者に対する社会的な差別、偏見、憎悪、暴力等を助長するものであり、絶対に許されないものである。
しかし、我が国では、長くヘイトスピーチに対する対応がなされてこなかった。その対応の不十分さについて、2014年(平成26年)7月に国連自由権規約委員会から、同年8月には国連人種差別撤廃委員会から勧告を受けていたところであった。
2 ヘイトスピーチ解消法(2016年)の制定
(1)制定経緯について
ヘイトスピーチが社会問題化する中で、2013年(平成25年)以降、国会においても度々議論がなされ、法制化の検討がなされていたが、2016年(平成28年)5月24日、「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」(いわゆる「ヘイトスピーチ解消法」)が成立し、同年6月3日の公布日から施行された。
同法制定の背景としては、①当時、ヘイトスピーチを伴う街頭宣伝活動が各地で公然と行われ、またその様子がインターネットで広められていたこと、②2014年(平成26年)8月に、人種差別撤廃委員会が、日本政府に対し、人種差別的ヘイトスピーチやヘイトクライムから保護する必要のある社会的弱者の権利を擁護する重要性を喚起し、増悪及び人種差別の表明、デモ・集会における人種差別的暴力及び増悪の扇動にしっかりと対処するよう等の勧告を出したこと、③京都朝鮮第一初級学校事件の民事訴訟において、同年12月9日、最高裁判所が被告らの上告を棄却し、名誉毀損と業務妨害を認めて加害者側に損害賠償を命じた判決が確定したこと等があった。
(2)問題点
もっとも、同法については、主に①対象が、「本邦外出身者」への不当な差別的言動に限定されているため、本法内出身者が含まれない点、②対象となる「本邦外出身者」も「適法に居住するもの」に限定されている点に問題があると指摘されている。
さらに、同法はいわゆる理念法であり、具体的な規制や手続について定めているものではないため、十分な対策とは言えないとの批判がなされている。
国際的にも、2018年(平成30年)8月、国連人種差別撤廃委員会は同法の施行を歓迎しつつも、同法の適用範囲が狭く、また、同法施行後も我が国でヘイトスピーチが続いていることを踏まえ、同法の改正等を内容とする勧告を行っている。
このような状況下で、全国でヘイトスピーチは続けられている。
3 福岡県内でのヘイトスピーチ問題の現状
(1)福岡県内の在留外国人数、歴史的・地理的経緯
福岡県は、アジア諸国と近接しているという地理的な面から、大陸からの文化を積極的に受け入れ、中国や朝鮮半島の人々などとの交流によって発展してきたという歴史的な経緯が存在する。
そして、2020年(令和2年)12月末の在留外国人統計によると、福岡県には8万1072人(全国の都道府県で9番目の人数)の在留外国人が暮らしており、異なるルーツを持つ市民が多く共生している。
とりわけ、同統計によると、福岡県内には1万1265人の特別永住者が暮らしており、これは大阪府、東京都、兵庫県、愛知県、京都府、神奈川県に次ぐ全国7番目の人数である。
また、同統計によると、国籍・地域別でも、福岡県内には、韓国・朝鮮の人が1万5862人暮らしており、これは、大阪府、東京都、兵庫県、愛知県、神奈川県、京都府、埼玉県、千葉県に次ぐ全国9番目の人数である。
これには、福岡県には、戦前多くの炭鉱があり、そこでは多数の朝鮮半島出身者が働いていたこと、終戦時、博多港は、在日コリアンが朝鮮半島へ引き揚げる港の一つとなっており、朝鮮半島に近いために多くの在日コリアンが集まったという経緯がある。しかも、戦後の混乱等から朝鮮半島に引き揚げず、そのまま福岡県にとどまった在日コリアンも多数存在していた。
さらに、福岡県内には、学校法人福岡朝鮮学園が設置・運営する学校として、北九州市八幡西区折尾に九州朝鮮中高級学校、北九州朝鮮初級学校、同八幡付属幼稚園が、同市小倉北区に同初級学校小倉付属幼稚園が、福岡市東区和白に朝鮮初級学校が存在し、広く九州に居住する在日コリアンの子どもに対し民族教育を実施しており、また、福岡市内には広く山口、九州(長崎を除く)、沖縄を管轄区域とする在福岡中華人民共和国総領事館、九州・沖縄を管轄区域とする在福岡大韓民国総領事館が存在している。
(2)ヘイトスピーチに関する実態調査
以上のような状況を踏まえて、2016年(平成28年)3月の平成27年度法務省委託調査研究事業によるヘイトスピーチに関する実態調査報告書を見ると、2012年(平成24年)4月から2015年(平成27年)9月までの間(42か月)に福岡県で行われたヘイトスピーチを伴うデモ・街宣活動は49件にのぼっていた。この件数は、東京都、大阪府、愛知県、北海道に次ぐ、広島県と同数で全国5番目に多い件数であった。
そのため、ヘイトスピーチ解消法の成立以前においても、福岡県議会では2014年(平成26年)12月18日に外国人等への差別助長いわゆるヘイトスピーチに対する取組の充実強化を求める意見書が、福岡市議会では2015年(平成27年)3月16日にヘイトスピーチの根絶のための早急な対策を求める意見書が、北九州市議会では同年3月11日にヘイトスピーチ対策を求める意見書がそれぞれ採択されている。
しかし、福岡県内においてヘイトスピーチに対しカウンター等の抗議活動を行っている団体によると、その後の2015年(平成27年)11月から2021年(令和3年)7月までの間(69か月)に福岡県で行われたヘイトスピーチを伴うデモ・街宣活動は78件(近隣県における件数を加えると91件)発生しており、ヘイトスピーチ解消法の施行後も福岡県内におけるヘイトスピーチが決して解消されていない状況が存在する。
2021年(令和3年)8月26日、福岡法務局は、2019年(平成31年)3月11日の九州朝鮮中高級学校近くで行われた、特定の政党の選挙演説における「おまえらは日本から出て行けと言われて当たり前」、「朝鮮人は危険です」などという発言を「ヘイトスピーチ」と認定している(但し、人権侵犯の有無は不明確とされている)。
(3)総領事館前等での抗議活動
さらに、在福岡大韓民国総領事館前はもとより、福岡市内の在福岡中華人民共和国総領事館前等においても、街宣車での大音量での抗議活動なども行われており、その言動の中にはヘイトスピーチと見られるものが含まれている。
前述のヘイトスピーチに関する実態調査報告書を見ても、2012年(平成24年)に、九州・沖縄地区において「支那人移民を一人残らず日本からたたきだせ」というテーマを掲げたデモ・街宣活動が行われたとされているところであって、中国出身者に対するヘイトスピーチも問題となっている。
全国的には、特に2020年(令和2年)、新型コロナウィルス感染症の感染拡大で社会不安が広がる中で、沖縄県では「今入国しているチャイニーズは歩く生物兵器かもしれない」などという街頭宣伝が行われたり、東京都では同年6月にデモ行進内で行われた「新型コロナウィルス、武漢菌をまき散らす支那人、今すぐ出ていけ」などの発言をヘイトスピーチと認定したりしている。
4 地方自治体における取組みの状況
(1)大阪市における取組みの状況
大阪市では、2016年(平成28年)1月18日、「大阪市ヘイトスピーチへの対処に関する条例」が施行された。
同条例は、ヘイトスピーチ解消法に先だって制定された、ヘイトスピーチに関する全国初の条例である。同条例におけるヘイトスピーチ解消法との比較による特徴は、対象が、本邦外出身者に対する言動に限定されないこと、実効性確保の措置として、拡散防止措置、氏名等の公表がなされることがあるということである。
2019年(令和元年)12月27日には、同条例に基づいてヘイトスピーチの実行者2名の氏名が全国で初めて公表された。同条例については、憲法21条1項などへの適合性が争われて住民訴訟が提起されたが、2022年(令和4年)2月15日、最高裁判所第三小法廷において、憲法21条1項に違反しない旨の判断がなされた。
(2)川崎市における取組みの状況
神奈川県川崎市では、2017年(平成29年)11月9日、「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律に基づく『公の施設』利用許可に関するガイドライン」が策定・公表された。
2018年(平成30年)5月30日、公園内行為許可申請に対し「不当な差別的言動から市民の安全と尊厳を守る」という観点から、全国初の不許可処分が行われた。その後、2019年(令和元年)12月16日、「川崎市差別のない人権尊重のまちづくり条例」が施行された。ヘイトスピーチに対する禁止規定を設けるとともに、刑事罰を科しうるとした全国初の条例である。
(3)その他の自治体における取組みの状況
上記のほか、東京都世田谷区(2018年)、東京都(2019年)、大阪府(2019年)東京都国立市(2019年)、神戸市(2020年)、宮崎県木城町(2021年)、愛知県(2022年)においてヘイトスピーチに関する条例が制定されている。なお、香川県観音寺市では、2017年6月29日、観音寺市公園条例の改正によりヘイトスピーチが禁止行為として規定され、違反した場合に5万円以下の過料を科すこととされている。
(4)福岡県内の自治体における取組みの状況
一方、福岡県内では、ヘイトスピーチ解消法施行後、啓発ポスターの作成等の活動のほか、福岡法務局による人権救済活動の一環としてのヘイトスピーチ認定等が行われたことはあるものの、条例制定等を含む実効的取り組みには未だ至っていない。
5 当会におけるヘイトスピーチ問題への取り組み状況
(1)いくつかの取り組み
翻って当会の活動を顧みると、遺憾ながらヘイトスピーチ問題に正面から取り組んできたとはいえないが、それでも、この問題に関する取り組みを全くしてこなかったというわけではない。人権擁護委員会への人権救済申立事件としてヘイトスピーチに関する問題提起がなされ、個別的に検討を行ったことは幾度かあった。また、2015年(平成27年)には当会の人権擁護委員会委員が多く参加する九州弁護士会連合会人権擁護委員会において、西南学院大学の奈須祐治教授(憲法学)、京都第一初級朝鮮学校襲撃の代理人を務めた具良鈺弁護士(大阪弁護士会)を招き、ヘイトスピーチ問題の学習会を開催したことがあった。2019年度(令和元年度)から福岡県からの委託を受けて実施している人権侵害に関する無料電話法律相談、「ふくおか人権ホットライン」においてヘイトスピーチを含む人権問題全般の相談に対応してきた。日弁連のヘイトスピーチ問題に関する全国会議にも当会からも毎年人権擁護委員会の委員が参加している。
(2)取り組みの不十分さと反省
しかし、これまで当会内にヘイトスピーチ問題の専門的検討を行う組織はなく、会としての声明等の意見を発出したことはなかったし、自治体に実効的なヘイトスピーチ対策を求める前提としての、実効的なヘイトスピーチ解消のための方策の検討もできていない。前記のふくおか人権ホットラインのほかに、ヘイトスピーチ問題に的を絞った法律相談会等を実施したこともなかった。
このように当会のヘイトスピーチ問題に対する取り組みは、基本的人権の擁護と社会正義の実現を使命とする弁護士の団体としては不十分であったと言わざるをえない。
そして、県下において前記のようなヘイトスピーチの横行を招いている現状を前に、私たちはこれまでの自らのヘイトスピーチ問題に対する対応の不十分さを反省し、真摯にその事実と向き合う必要がある。
6 反省の上に立ち、これからとるべき対応
以上の反省を踏まえ、今後はヘイトスピーチ問題の解消のため、当会は、法律家の団体として、以下述べるような具体的な取り組みを行っていく必要があることを自覚し、本宣言を行うものである。
(1)ヘイトスピーチによる被害の予防・救済のための法的支援の活動
前記のとおりヘイトスピーチは許されざる人権侵害である。
当会は、ヘイトスピーチによる被害者を救済するため、単に一般的な人権侵害に対する法律相談体制を整えるというにとどまることなく、ヘイトスピーチ問題に対する法律相談体制を整えていく必要がある。
また、人権救済申立制度におけるヘイトスピーチ被害の救済にも尽力していく必要がある。
(2)ヘイトスピーチ解消のための実効的方策の具体的検討
県内の各自治体にヘイトスピーチ解消のための実効的な方策をとるよう呼びかけて連携を図る前提として、まず、私たち自身が、行政による表現活動の過度な規制とならないよう、また、健全な表現活動に対する萎縮効果を生じさせることのないよう表現の自由に十分に配慮した上で、ヘイトスピーチ解消のための実効的方策とはどのようなものであるのかにつき、調査・研究を行い、具体的な検討を行っていく必要がある。
(3)実効的な方策実施に向けた自治体との連携した活動
そして、ヘイトスピーチ解消のための実効的な方策の具体的検討を行うだけでなく、検討結果を踏まえ、県内の各自治体と連携し、実効的な方策の実現に向けた活動を行っていくことが必要である。

以上

憲法記念日にあたっての会長談話

カテゴリー:会長談話

日本国憲法は,本日,施行から75年を迎えました。
今年2月,ロシア連邦がウクライナへの軍事侵攻を開始し,戦争によって,兵士のみならず,子どもたちを含む多くの民間人までもが犠牲になっています。
戦争は最大の人権侵害です。日本も,先の大戦において,多くの日本国民の生命,のみならず多くの世界の人々の生命が奪われるという戦争の惨禍を経験しました。その歴史を痛切に反省し,政府によって二度とこのような過ちが起こされることのないようにとの固い決意のもと,日本国憲法は,基本的人権の尊重,国民主権,恒久平和主義の三原則を基本原理としました。
日本国憲法は,武力行使を禁じ(9条1項),戦力不保持・交戦権否認を定め(同2項),徹底した恒久平和主義をとっています。前文では,「全世界の国民が,ひとしく恐怖と欠乏から免かれ,平和のうちに生存する権利を有すること」を確認しています。そして,戦争の惨禍を繰り返さないために,「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して,われらの安全と生存を保持」する方策をとることを宣言しています。武力を手段として国際紛争を解決するのではなく,対話と協調を積み重ねる外交努力によって平和を維持していく,これこそが日本国憲法が目指す国際平和のあり方です。
武力により人々の命と暮らしを奪い,肥沃な国土を焦土と化す今回のロシア連邦の軍事侵攻は,絶対に許されないものです。当会は,これに厳しく抗議し,平和の回復に向けた積極的な外交努力を日本政府に求める会長談話を,本年3月2日に発表しました。
日本国内では,2020年から続く新型コロナウイルスの感染拡大により,多くの業種や低所得者層が大きな経済的打撃を受け,貧困や格差が広がっています。多数の非正規労働者を含む解雇や雇い止めによる失業者の増加,母子世帯をはじめとする困窮世帯の生活のいっそうの貧困・困窮化や負債の増大,女性や高齢者,若年者の自死の増加,ドメスティック・バイオレンスや性暴力被害の増加など,多くの課題が浮き彫りになっています。子どもたちの教育への影響も深刻です。感染やワクチン接種に関する偏見や差別の問題も生じています。また,ロシア連邦による戦争は,今後,物価の上昇等によって,生活への打撃を加速する恐れがあります。
人々が安心して暮らせる社会であるために,憲法が保障する基本的人権,とりわけ生存権(25条),勤労の権利(27条),営業の自由(22条),平等権(14条),教育を受ける権利(26条),幸福追求権(13条)などを守るための取り組みが,いっそう重要になっていることを私たちは自覚しなければなりません。
当会は,基本的人権の擁護と社会正義の実現を使命とする弁護士の団体として,憲法の理念をふまえ,平和と人権擁護のために全力をあげて活動してまいります。

2022年(令和4年)5月3日
福岡県弁護士会
会長  野田部 哲也

外国人留学生や朝鮮大学校に通う困窮学生に対する学生支援給付金の平等な給付を再度求める会長声明

カテゴリー:声明

1 2020年(令和2年)5月19日、政府は新型コロナウイルス感染症拡大の影響で世帯収入、アルバイト収入等が激減し、経済的困窮に陥った学生に対し、「『学びの継続』のための学生支援緊急給付金」(以下「本給付金」という。)を創設した。
ところが、同制度は、①外国人留学生に対してのみ「学業成績優秀者」の要件を課し、支給要件を加重していること、②本給付金の対象学校から朝鮮大学校を除外していることから、憲法第14条の平等原則,人種差別撤廃条約5条(e)(v),社会権規約第2条第2項,第13条第1項,第2項(c)に違反する合理的理由のない差別を内容とする、看過できない問題を有するものであった。
そこで、当会は、2020年(令和2年)12月9日、「学生支援緊急給付金に関し困窮学生への平等な給付を求める会長声明」を発出し、政府に対し、以上の差別を直ちに是正すべく、外国人留学生や朝鮮大学校に通う困窮学生に対しても、他の学生と平等に給付する制度を設けた上で、速やかに給付するよう求めた。
また、同制度が差別的な内容を有しているという問題については、当会だけでなく東京弁護士会、第二東京弁護士会等全国の複数の弁護士会及び関東弁護士会連合会が、憲法の平等原則等に反するとして声明を発出し、政府に是正を求めた。
2 2021年(令和3年)11月26日、政府は、いまだ流行する新型コロナウイルス感染症による対応のため、改めて「『学びの継続』のための学生支援緊急給付金」として1人10万円を支給することを閣議決定した。
しかし、今般決定された上記制度においても、前回の制度に対して当会を含む複数の弁護士会等が是正を求めた点について、以下のとおりほとんど改善されていない。
⑴ 外国人留学生に対する支給要件がそうでない学生と比べて厳しいこと
本給付金は、①「高等教育の修学支援新制度(給付型奨学金)」の利用者であるか、②一定の困窮状況を前提として、「第一種奨学金(無利子奨学金)等の既存の制度を利用していること又は利用を予定していること」を、支給の対象の学生の要件としている。
しかし、外国人留学生はそもそも高等教育の修学支援新制度の対象になることはないため、①を満たすことはできない。
また、②についても、「学生等の学びを継続するための緊急給付金に関するQ&A(2021年(令和3年)12月20日版)」問2-6-1によれば、「既存の制度」とは、高等教育の修学支援新制度、第一種奨学金(無利子奨学金)、民間等による支援制度、大学等独自の奨学金制度、外国人留学生学習奨励費とされ、民間等による支援制度、大学等独自の奨学金制度を利用あるいは利用を予定している外国人留学生も対象になりうるとされたことは前進ではあるものの、それ以外の方法となると、外国人留学生が高等教育の修学支援新制度、第一種奨学金(無利子奨学金)を利用することはできない以上、支給の対象となるためには、外国人留学生学習奨励費を利用することしか残されていない。
そして、この外国人留学生学習奨励費の利用要件として、「前年度の成績評価係数が、大学院レベル、学部レベル、日本語教育機関とも2.30以上であり、給付期間中においてもそれを維持する見込みのある者であること。」が必要とされている。
そうすると、本給付金も構造としては、外国人留学生に対してそうでない学生と比べて厳しい学業成績要件を課しているという点では、前回の制度とほとんど変わっていない。
改めて述べるが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により経済的困窮に陥った学生に対して「学びの継続」を支援し、教育を受ける権利を保障すべき必要性は、外国人留学生であっても何ら変わることはない。
そして、「学びの継続」を支援するという本給付金の趣旨からすれば、外国人留学生に対してのみ、実質的に過重な要件を設定する合理性はない。
⑵ 給付金の対象学校から朝鮮大学校を除外していること
本給付金は、国公私立大学(大学院含む)・短大・高専・専修学校専門課程・法務省告示に指定された日本語教育機関、文科省が指定している外国大学日本校に在学する学生のみを給付金の対象としたため、各種学校である朝鮮大学校は、対象外とされた。
しかし、前回の声明でも指摘した通り、朝鮮大学校は、1998年(平成10年)に京都大学が朝鮮大学校卒業生の大学院受験を認め合格したことを契機に、1999年(平成11年)8月、文部科学省が学校教育法施行規則を改正して大学院入学資格を拡充し、外国大学日本校とともにその卒業生に大学院入学資格が認められている(学校教育法第102条第1項・同施行規則第155条第1項第8号・学校教育法施行規則の一部を改正する省令の施行等について(1999年(平成11)年8月31日文高大第320号)第一の二)。また、2012年(平成24年)には社会福祉士及び介護福祉士法施行規則が改正され、朝鮮大学校卒業生にも受験資格が認められている(社会福祉士及び介護福祉士法第7条第3号・同施行規則第1条の3第3項第3号)。
このように、他の外国大学日本校と同様に、朝鮮大学校を日本の高等教育機関として認める法制度が存在している。
そして、朝鮮大学校の学生も他の高等教育機関に在籍する学生と同様、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により経済的に困窮しているという事情は何ら変わることはない。
それにもかかわらず、各種学校の認可を受けていない外国大学日本校は本制度の対象とするのに、朝鮮大学校のみを本制度から除外する合理的理由はない。
これまでも政府は、各種学校に属する朝鮮学校に対し、高校無償化制度(2010年~)でも、幼児教育・保育無償化制度(2019年~)でも除外する方針をとってきた。
この方針の問題性については、当会の会長声明(平等な高校無償化制度の実施を求める会長声明(2010年(平成22年)3月29日)、外国人学校の幼児教育・保育施設を幼保無償化の対象とすること等を求める会長声明(2020年(令和2年)7月3日)等)のみならず、国連による勧告(子どもの権利委員会勧告(2019年(平成31年)2月7日)等)等、多くの機関から再三にわたり指摘、批判がなされている。
それにもかかわらず、政府が、改善をするどころか、同様の除外、差別政策を繰り返していることについては、当会としても、改めて強く批判せざるを得ない。
3 前述のように外国人留学生に対する支給要件の加重や朝鮮大学校の排除は、憲法第14条の平等原則、人種差別撤廃条約第5条(e)(v)、社会権規約第2条第2項、第13条第1項、第2項(c)に違反する、合理的理由のない差別である。
 よって、当会は、政府に対し、以上の差別を直ちに是正すべく、外国人留学生や朝鮮大学校に通う困窮学生に対しても、他の学生と平等に給付する制度を設けたうえ、速やかに給付することを、繰り返し求める。

2022年(令和4年)4月27日
福岡県弁護士会  
会 長  野 田 部 哲 也

旧優生保護法訴訟において国の賠償責任を認めた大阪高裁及び東京高裁違憲判決を踏まえて、被害者の全面救済を求める会長声明

カテゴリー:声明

本年2月22日、大阪高等裁判所は、旧優生保護法違憲国家賠償請求大阪訴訟について、続いて、本年3月11日、東京高等裁判所も、同東京訴訟について、いずれも一審の原告敗訴判決を変更し、請求を一部認容するという画期的な判決(以下「大阪高裁判決」、「東京高裁判決」という。)を言い渡した。
両判決とも、旧優生保護法の違憲性を明確に認め、大阪高裁判決はそのような憲法違反の法律を立法した国会議員の責任を肯定し、東京高裁判決は同法に基づいて違憲・違法な優生手術を実施せしめた厚生大臣の責任を肯定したという相違はあるものの、いずれも国の国家賠償責任を認めた。その上で、これまで一審判決が除斥期間をもって原告の請求を斥けたのに対して、そのようなことは正義・公平の理念に反するとして、除斥期間の適用を制限することとしたものである。
これまで各地の同種訴訟では旧優生保護法の明確な違憲性が肯定されながらも、除斥期間が高い壁となって、請求棄却判決が相次いでいただけに、大阪高裁判決及び東京高裁判決がこの壁を乗り越えて、被害者の願いに寄り添う判決をしたことについては、高く評価できる。
とりわけ、東京高裁判決は、憲法違反の法律に基づく施策によって生じた被害の救済を、憲法の下位規範である民法724条後段を無条件に適用することによって拒絶することは慎重であるべきで、憲法17条により保障された国家賠償請求権を実質的に損なうことがないよう留意しなければならないことにも言及している。除斥期間の適用に関して、このような憲法に立脚した法論理が語られたことは画期的である。
そこで、当会は、国に対し、旧優生保護法に基づく過酷な被害をもたらしたことを真摯に反省し、大阪高裁判決に対する上告受理の申立てを取り下げるとともに、東京高裁判決に対する上告又は上告受理の申立てを断念し、両判決を速やかに確定させた上で、旧優生保護法の問題の全面解決に向けて、両判決が示した法的な賠償責任を前提に、被害を償うに足りる十分な賠償・補償はもちろんのこと、責任の明確化と謝罪及び真相究明・恒久対策について早急に検討し、一人でも多くの被害者に被害回復の途が開かれるよう積極的な対応を行うよう求める。
当会としては、今後も、旧優生保護法の問題について、あまねく被害回復がなされるよう必要な提言を適時行っていくとともに、旧優生保護法により侵害された尊厳の回復を含む真の被害回復の実現に向けて、真摯に取り組んでいく所存である。

2022年(令和4年)3月16日
福岡県弁護士会     
会長 伊 藤 巧 示

福岡県弁護士会第二次男女共同参画基本計画 〜すべての人の幸せのために,いま,弁護士会がすべきこと〜

カテゴリー:計画

 当会では、『福岡県弁護士会 男女共同参画基本計画』(2017年(平成29年)3月22日臨時総会決議)策定から5年が経過することから、2022年(令和4年)3月9日の臨時総会において、5年間の具体的施策の取り組み状況と目標の到達状況を検証し、今後の目標および取り組むべき具体的施策を定める『福岡県弁護士会第二次男女共同参画基本計画 〜すべての人の幸せのために,いま,弁護士会がすべきこと〜』を決議しました。
 当会では、本計画に則り、弁護士会における男女共同参画の推進により一層取り組みます。
福岡県弁護士会第二次男女共同参画基本計画 〜すべての人の幸せのために,いま,弁護士会がすべきこと〜(PDF)

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