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憲法記念日にあたっての会長談話

カテゴリー:会長談話

日本国憲法は,本日,施行から75年を迎えました。
今年2月,ロシア連邦がウクライナへの軍事侵攻を開始し,戦争によって,兵士のみならず,子どもたちを含む多くの民間人までもが犠牲になっています。
戦争は最大の人権侵害です。日本も,先の大戦において,多くの日本国民の生命,のみならず多くの世界の人々の生命が奪われるという戦争の惨禍を経験しました。その歴史を痛切に反省し,政府によって二度とこのような過ちが起こされることのないようにとの固い決意のもと,日本国憲法は,基本的人権の尊重,国民主権,恒久平和主義の三原則を基本原理としました。
日本国憲法は,武力行使を禁じ(9条1項),戦力不保持・交戦権否認を定め(同2項),徹底した恒久平和主義をとっています。前文では,「全世界の国民が,ひとしく恐怖と欠乏から免かれ,平和のうちに生存する権利を有すること」を確認しています。そして,戦争の惨禍を繰り返さないために,「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して,われらの安全と生存を保持」する方策をとることを宣言しています。武力を手段として国際紛争を解決するのではなく,対話と協調を積み重ねる外交努力によって平和を維持していく,これこそが日本国憲法が目指す国際平和のあり方です。
武力により人々の命と暮らしを奪い,肥沃な国土を焦土と化す今回のロシア連邦の軍事侵攻は,絶対に許されないものです。当会は,これに厳しく抗議し,平和の回復に向けた積極的な外交努力を日本政府に求める会長談話を,本年3月2日に発表しました。
日本国内では,2020年から続く新型コロナウイルスの感染拡大により,多くの業種や低所得者層が大きな経済的打撃を受け,貧困や格差が広がっています。多数の非正規労働者を含む解雇や雇い止めによる失業者の増加,母子世帯をはじめとする困窮世帯の生活のいっそうの貧困・困窮化や負債の増大,女性や高齢者,若年者の自死の増加,ドメスティック・バイオレンスや性暴力被害の増加など,多くの課題が浮き彫りになっています。子どもたちの教育への影響も深刻です。感染やワクチン接種に関する偏見や差別の問題も生じています。また,ロシア連邦による戦争は,今後,物価の上昇等によって,生活への打撃を加速する恐れがあります。
人々が安心して暮らせる社会であるために,憲法が保障する基本的人権,とりわけ生存権(25条),勤労の権利(27条),営業の自由(22条),平等権(14条),教育を受ける権利(26条),幸福追求権(13条)などを守るための取り組みが,いっそう重要になっていることを私たちは自覚しなければなりません。
当会は,基本的人権の擁護と社会正義の実現を使命とする弁護士の団体として,憲法の理念をふまえ,平和と人権擁護のために全力をあげて活動してまいります。

2022年(令和4年)5月3日
福岡県弁護士会
会長  野田部 哲也

外国人留学生や朝鮮大学校に通う困窮学生に対する学生支援給付金の平等な給付を再度求める会長声明

カテゴリー:声明

1 2020年(令和2年)5月19日、政府は新型コロナウイルス感染症拡大の影響で世帯収入、アルバイト収入等が激減し、経済的困窮に陥った学生に対し、「『学びの継続』のための学生支援緊急給付金」(以下「本給付金」という。)を創設した。
ところが、同制度は、①外国人留学生に対してのみ「学業成績優秀者」の要件を課し、支給要件を加重していること、②本給付金の対象学校から朝鮮大学校を除外していることから、憲法第14条の平等原則,人種差別撤廃条約5条(e)(v),社会権規約第2条第2項,第13条第1項,第2項(c)に違反する合理的理由のない差別を内容とする、看過できない問題を有するものであった。
そこで、当会は、2020年(令和2年)12月9日、「学生支援緊急給付金に関し困窮学生への平等な給付を求める会長声明」を発出し、政府に対し、以上の差別を直ちに是正すべく、外国人留学生や朝鮮大学校に通う困窮学生に対しても、他の学生と平等に給付する制度を設けた上で、速やかに給付するよう求めた。
また、同制度が差別的な内容を有しているという問題については、当会だけでなく東京弁護士会、第二東京弁護士会等全国の複数の弁護士会及び関東弁護士会連合会が、憲法の平等原則等に反するとして声明を発出し、政府に是正を求めた。
2 2021年(令和3年)11月26日、政府は、いまだ流行する新型コロナウイルス感染症による対応のため、改めて「『学びの継続』のための学生支援緊急給付金」として1人10万円を支給することを閣議決定した。
しかし、今般決定された上記制度においても、前回の制度に対して当会を含む複数の弁護士会等が是正を求めた点について、以下のとおりほとんど改善されていない。
⑴ 外国人留学生に対する支給要件がそうでない学生と比べて厳しいこと
本給付金は、①「高等教育の修学支援新制度(給付型奨学金)」の利用者であるか、②一定の困窮状況を前提として、「第一種奨学金(無利子奨学金)等の既存の制度を利用していること又は利用を予定していること」を、支給の対象の学生の要件としている。
しかし、外国人留学生はそもそも高等教育の修学支援新制度の対象になることはないため、①を満たすことはできない。
また、②についても、「学生等の学びを継続するための緊急給付金に関するQ&A(2021年(令和3年)12月20日版)」問2-6-1によれば、「既存の制度」とは、高等教育の修学支援新制度、第一種奨学金(無利子奨学金)、民間等による支援制度、大学等独自の奨学金制度、外国人留学生学習奨励費とされ、民間等による支援制度、大学等独自の奨学金制度を利用あるいは利用を予定している外国人留学生も対象になりうるとされたことは前進ではあるものの、それ以外の方法となると、外国人留学生が高等教育の修学支援新制度、第一種奨学金(無利子奨学金)を利用することはできない以上、支給の対象となるためには、外国人留学生学習奨励費を利用することしか残されていない。
そして、この外国人留学生学習奨励費の利用要件として、「前年度の成績評価係数が、大学院レベル、学部レベル、日本語教育機関とも2.30以上であり、給付期間中においてもそれを維持する見込みのある者であること。」が必要とされている。
そうすると、本給付金も構造としては、外国人留学生に対してそうでない学生と比べて厳しい学業成績要件を課しているという点では、前回の制度とほとんど変わっていない。
改めて述べるが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により経済的困窮に陥った学生に対して「学びの継続」を支援し、教育を受ける権利を保障すべき必要性は、外国人留学生であっても何ら変わることはない。
そして、「学びの継続」を支援するという本給付金の趣旨からすれば、外国人留学生に対してのみ、実質的に過重な要件を設定する合理性はない。
⑵ 給付金の対象学校から朝鮮大学校を除外していること
本給付金は、国公私立大学(大学院含む)・短大・高専・専修学校専門課程・法務省告示に指定された日本語教育機関、文科省が指定している外国大学日本校に在学する学生のみを給付金の対象としたため、各種学校である朝鮮大学校は、対象外とされた。
しかし、前回の声明でも指摘した通り、朝鮮大学校は、1998年(平成10年)に京都大学が朝鮮大学校卒業生の大学院受験を認め合格したことを契機に、1999年(平成11年)8月、文部科学省が学校教育法施行規則を改正して大学院入学資格を拡充し、外国大学日本校とともにその卒業生に大学院入学資格が認められている(学校教育法第102条第1項・同施行規則第155条第1項第8号・学校教育法施行規則の一部を改正する省令の施行等について(1999年(平成11)年8月31日文高大第320号)第一の二)。また、2012年(平成24年)には社会福祉士及び介護福祉士法施行規則が改正され、朝鮮大学校卒業生にも受験資格が認められている(社会福祉士及び介護福祉士法第7条第3号・同施行規則第1条の3第3項第3号)。
このように、他の外国大学日本校と同様に、朝鮮大学校を日本の高等教育機関として認める法制度が存在している。
そして、朝鮮大学校の学生も他の高等教育機関に在籍する学生と同様、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により経済的に困窮しているという事情は何ら変わることはない。
それにもかかわらず、各種学校の認可を受けていない外国大学日本校は本制度の対象とするのに、朝鮮大学校のみを本制度から除外する合理的理由はない。
これまでも政府は、各種学校に属する朝鮮学校に対し、高校無償化制度(2010年~)でも、幼児教育・保育無償化制度(2019年~)でも除外する方針をとってきた。
この方針の問題性については、当会の会長声明(平等な高校無償化制度の実施を求める会長声明(2010年(平成22年)3月29日)、外国人学校の幼児教育・保育施設を幼保無償化の対象とすること等を求める会長声明(2020年(令和2年)7月3日)等)のみならず、国連による勧告(子どもの権利委員会勧告(2019年(平成31年)2月7日)等)等、多くの機関から再三にわたり指摘、批判がなされている。
それにもかかわらず、政府が、改善をするどころか、同様の除外、差別政策を繰り返していることについては、当会としても、改めて強く批判せざるを得ない。
3 前述のように外国人留学生に対する支給要件の加重や朝鮮大学校の排除は、憲法第14条の平等原則、人種差別撤廃条約第5条(e)(v)、社会権規約第2条第2項、第13条第1項、第2項(c)に違反する、合理的理由のない差別である。
 よって、当会は、政府に対し、以上の差別を直ちに是正すべく、外国人留学生や朝鮮大学校に通う困窮学生に対しても、他の学生と平等に給付する制度を設けたうえ、速やかに給付することを、繰り返し求める。

2022年(令和4年)4月27日
福岡県弁護士会  
会 長  野 田 部 哲 也

旧優生保護法訴訟において国の賠償責任を認めた大阪高裁及び東京高裁違憲判決を踏まえて、被害者の全面救済を求める会長声明

カテゴリー:声明

本年2月22日、大阪高等裁判所は、旧優生保護法違憲国家賠償請求大阪訴訟について、続いて、本年3月11日、東京高等裁判所も、同東京訴訟について、いずれも一審の原告敗訴判決を変更し、請求を一部認容するという画期的な判決(以下「大阪高裁判決」、「東京高裁判決」という。)を言い渡した。
両判決とも、旧優生保護法の違憲性を明確に認め、大阪高裁判決はそのような憲法違反の法律を立法した国会議員の責任を肯定し、東京高裁判決は同法に基づいて違憲・違法な優生手術を実施せしめた厚生大臣の責任を肯定したという相違はあるものの、いずれも国の国家賠償責任を認めた。その上で、これまで一審判決が除斥期間をもって原告の請求を斥けたのに対して、そのようなことは正義・公平の理念に反するとして、除斥期間の適用を制限することとしたものである。
これまで各地の同種訴訟では旧優生保護法の明確な違憲性が肯定されながらも、除斥期間が高い壁となって、請求棄却判決が相次いでいただけに、大阪高裁判決及び東京高裁判決がこの壁を乗り越えて、被害者の願いに寄り添う判決をしたことについては、高く評価できる。
とりわけ、東京高裁判決は、憲法違反の法律に基づく施策によって生じた被害の救済を、憲法の下位規範である民法724条後段を無条件に適用することによって拒絶することは慎重であるべきで、憲法17条により保障された国家賠償請求権を実質的に損なうことがないよう留意しなければならないことにも言及している。除斥期間の適用に関して、このような憲法に立脚した法論理が語られたことは画期的である。
そこで、当会は、国に対し、旧優生保護法に基づく過酷な被害をもたらしたことを真摯に反省し、大阪高裁判決に対する上告受理の申立てを取り下げるとともに、東京高裁判決に対する上告又は上告受理の申立てを断念し、両判決を速やかに確定させた上で、旧優生保護法の問題の全面解決に向けて、両判決が示した法的な賠償責任を前提に、被害を償うに足りる十分な賠償・補償はもちろんのこと、責任の明確化と謝罪及び真相究明・恒久対策について早急に検討し、一人でも多くの被害者に被害回復の途が開かれるよう積極的な対応を行うよう求める。
当会としては、今後も、旧優生保護法の問題について、あまねく被害回復がなされるよう必要な提言を適時行っていくとともに、旧優生保護法により侵害された尊厳の回復を含む真の被害回復の実現に向けて、真摯に取り組んでいく所存である。

2022年(令和4年)3月16日
福岡県弁護士会     
会長 伊 藤 巧 示

福岡県弁護士会第二次男女共同参画基本計画 〜すべての人の幸せのために,いま,弁護士会がすべきこと〜

カテゴリー:計画

 当会では、『福岡県弁護士会 男女共同参画基本計画』(2017年(平成29年)3月22日臨時総会決議)策定から5年が経過することから、2022年(令和4年)3月9日の臨時総会において、5年間の具体的施策の取り組み状況と目標の到達状況を検証し、今後の目標および取り組むべき具体的施策を定める『福岡県弁護士会第二次男女共同参画基本計画 〜すべての人の幸せのために,いま,弁護士会がすべきこと〜』を決議しました。
 当会では、本計画に則り、弁護士会における男女共同参画の推進により一層取り組みます。
福岡県弁護士会第二次男女共同参画基本計画 〜すべての人の幸せのために,いま,弁護士会がすべきこと〜(PDF)

死刑執行に抗議する会長声明

カテゴリー:声明

 本日,国内において3名の死刑確定者に対して死刑が執行された。
 日本における死刑執行は,今世紀に入ってから,2011年を除いて毎年行われていたが2019年12月から今回の死刑執行まで2年間なされていなかった。今回の執行により,今世紀において合計94人もの死刑確定者が,国家刑罰権の発動としての死刑執行により生命を奪われていることになる。
 たしかに,突然に不条理な犯罪の被害にあい,大切な人を奪われた状況において,被害者の遺族が厳罰を望むことはごく自然な心情である。しかも,日本においては,犯罪被害者及び被害者遺族に対する精神的・経済的・社会的支援がまだまだ不十分であり,十分な支援を行うことは社会全体の責務である。
 しかし,そもそも,死刑は,生命を剥奪するという重大かつ深刻な人権侵害行為であること,誤判・えん罪により死刑を執行した場合には取り返しがつかないことなど様々な問題を内包している。
 人権意識の国際的高まりとともに,世界で死刑を廃止または停止する国はこの数十年の間に飛躍的に増加し,法律上及び事実上の死刑廃止国は,2019年12月31日時点で,国連加盟国193か国のうち142か国にのぼる。2018年12月17日には,国連総会本会議において,史上最多の支持(121か国)を得て死刑廃止を視野に入れた死刑執行の停止を求める決議案が可決され,本年7月1日には,米国連邦政府において,司法長官が連邦レベルでの死刑執行の一時停止を司法省職員に指示する通知を公表した。このように死刑廃止は世界的な潮流という状況にある。
 当会においても,1996年以降,死刑執行に対しこれに抗議する会長声明を発出してきたほか,2020年9月18日に死刑制度の廃止を求める決議を採択し,本年8月25日には「米国における連邦レベルでの死刑の執行停止を受け,日本における死刑制度の廃止に向けて,死刑執行の停止を求める会長声明」を発出している。
 そこで、当会は,今回の死刑執行について強く抗議の意思を表明するとともに,日本が,基本的人権の尊重,特に生命権の不可侵性の価値観を共有できる社会を目指そうとしている国際社会と協調し,国連加盟国の責務を果たせるよう,あらためて死刑の執行を停止することを強く要請するものである。

2021年(令和3年)12月21日
福岡県弁護士会会長 伊藤 巧示

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