法律相談センター検索 弁護士検索
カテゴリー: 声明

薬害肝炎被害の早期解決と肝炎の治療体制整備を求める会長声明

カテゴリー:声明

2006(平成18)年6月28日     
福岡県弁護士会 会長 羽田野節夫
 2006(平成18)年6月21日、全国5地裁(福岡、東京、名古屋、大阪、仙台)に係属している「薬害肝炎訴訟」の初めての判決が、大阪地方裁判所において下された。
 この薬害肝炎訴訟は、血液製剤の投与によりC型肝炎ウイルスに感染させられた原告らが国と製薬企業を被告として、血液製剤を承認し、製造・販売したことが違法であるとしてその損害賠償を求めた訴訟である。
 まず、判決は、血液製剤(フィブリノゲン製剤)の1987(昭和62)年の製造承認につき、「厚生大臣は、より一層の慎重な調査、検討をするどころか、非加熱製剤を加熱製剤に切り替えさせるという方針を立て、あらかじめ申請及び承認時期を定めた上で、極めて短期間に、いわば結論ありきの製造承認を行ったものであるから、安全確保に対する意識や配慮に著しく欠けていたといわなければならない」などと指摘して、原告5人の国に対する損害賠償請求を認容した。
 次に、判決は、1985(昭和60)年、「製薬企業が、製剤の不活化処理について、ほとんど不活化効果がなかった方法に戻し、C型肝炎感染の危険性をより一層高めた」として、原告9人の製薬企業に対する損害賠償請求を認容した。
 その上で、判決は、国及び製薬企業がフィブリノゲン製剤の危険性に関する情報を軽視した結果、原告らが「何らの落ち度がないにもかかわらず、C型肝炎ウイルスに感染し、その結果、深刻な被害を受けるに至った」ことを認めた。そして、高額な治療を受けることが容易でなく、社会の理解がいまだ不十分であるため、肝炎患者が、社会において多大な苦しみを被っていることをも指摘している。
 
 以上から、当会は、国と製薬企業が法的責任に基づき薬害の被害者である原告らを直ちに救済するとともに、全国で350万人ともいわれるウイルス性肝炎患者の被害回復のために、肝炎患者らの訴えに真摯に耳を傾けた上で、治療体制の確立・新薬の開発等の恒久対策を一刻も早く実現するよう求めるものである。

教育基本法改正法案を廃案とし,あらためて十分かつ慎重な調査と討議を求める会長声明

カテゴリー:声明

2006年(平成18年)5月11日
福岡県弁護士会 会長 羽田野節夫
 政府は、4月28日、教育基本法改正法案を閣議決定して国会に提出した。
 法案は、2003年6月に設置された「与党教育基本法改正に関する協議会」及びその下の「検討会」において、精力的な議論を重ねたうえで取りまとめられたものとされるが、この間、2004年6月に中間報告が公表されたことを除いては、全て非公開にて議論が進められており、国民に向けて開かれた議論が行われたとは言い難い。
 日本弁護士連合会は、去る2月3日、準憲法的な性格を持ち国際条約との間の整合性をも確保する必要性が高い教育基本法については、衆参両院に、教育基本法について広範かつ総合的に調査研究討議を行なう機関としての「教育基本法調査会」を設置し、同調査会のもとで、その改正の要否を含めた十分かつ慎重な調査と討議がなされるよう求める提言を行っている。
 また、当会は、2002年4月、福岡市の小学校6年生の通知表の評価項目に「国を愛する心」の文言を掲げ、愛国心という内心の問題を成績評価を通じて強制することは人権侵害のおそれが強いとして警告を発し、さらに、2003年9月13日、「教育基本法『改正』を問う」市民集会を主催し、講演とシンポジウムを通じて現行法の改正の要否を含めて法案には様々な問題点があることを明らかにしてきた。
 そもそも、教育は、本来人間の内面的価値に関する文化的な営みであって、政治的な立場や利害から中立なものでなければならない。伝えられるとおり、政府・与党内での合意のみで作成された法案であれば、国会での質疑・討論は、時の政治的な立場によって左右され、中立性が損なわれることになりかねない。このような形の法改正は、教育の憲法ともいわれる教育基本法の改正の在り方としては不適切であり、百年の計といわれる教育を根本において誤まらせることになる。
 このように準憲法的性格を有する教育基本法については、現行法の改正の要否を含めた十分かつ慎重な調査と討議を経ることが必要不可欠である。
 以上の観点から、当会は、今回の教育基本法改正法案を廃案とした上,あらためて衆参両院に「教育基本法調査会」を設置して,改正の要否を含めた十分かつ慎重な調査と討議をするよう求めるものである。
以上

少年法等「改正」法案に反対する会長声明

カテゴリー:声明

2006(平成18)5月11日
福岡県弁護士会 会長  羽田野節夫
少年法等「改正」法案が,本年2月24日に衆議院に再上程され,5月中旬から審議入りと伝えられている。当会は,昨年6月23日,会長声明を発表し,少年法「改正」法案に反対したところであるが,あらためて以下のとおり反対する。
この改正法案は,
(1)14歳未満の低年齢非行少年に対する厳罰化(少年院送致を可能に)。
(2)触法少年・ぐ犯少年に対する警察官の調査権限の付与(福祉的対応の後退)。
(3)保護観察中の遵守事項を守らない少年に対する少年院収容処分の導入。
などの点において,下記1〜3項に詳論するとおり,少年法の福祉主義の理念を後退させ,保護観察制度の根幹を揺るがす極めて問題ある内容を含むものである。このため,当会は,下記4項で述べる国選付添人制度導入の点を除いて,本法案に強く反対するものである。
              記
1  少年院送致年齢の下限(14歳)の撤廃
そもそも,本法案が想定するような,14歳未満の少年による事件の凶悪化は統計上認められず,この点を厳罰化の根拠とすることはできない。
そして,14歳未満の低年齢の少年が非行を起こす場合の多くは,心身の発達状況や家庭における生育歴などに問題を抱えている場合が多く,とりわけ,重大な事件を犯すに至った低年齢の少年ほど,被虐待体験を含む複雑な生育歴を有し,このため,人格形成が未熟で,規範を理解し受け容れる土壌が育っていないことが多い。その意味で,低年齢の触法少年に対しては,それぞれの少年が抱える問題に応じた個別の福祉的,教育的対応が不可欠であり,そのための専門の施設として児童自立支援施設における処遇が適切であって,これに対して,主として集団的で,かつ,「厳しい規律」を前提とした矯正教育を行っている少年院での処遇は適さない。
児童自立支援施設においては,低年齢の少年に対する福祉的教育的指導を行うべく多大な努力が行われ,かつ,一定の成果を修めているところであるが,仮に現状に問題があるとするなら,まずは,この児童自立支援施設の一層の専門性強化とこれに要する人的物的資源の充実が求められるところであって,性質の異なる少年院に,14歳未満の少年を収容可能とすることで,低年齢少年の非行に対処しようとするのは,本末転倒といわざるを得ない。
2 触法少年・ぐ犯少年に対する警察官の調査権限の付与
そもそも現行法上,触法少年の行為は犯罪ではない。触法少年の特徴は先に指摘したとおりであり,かつ,触法少年は表現能力も劣る。そうした少年に対する調査は,福祉的,教育的な観点から,児童福祉の専門機関である児童相談所のソーシャルワーカーや心理相談員を中心として進め,その実態に迫っていくとともに,適切なケアを図っていくべきである。こうした専門性を有しない警察官に調査権限を認めることは,教育的・福祉的対応を後退させるばかりか,少年を萎縮させ,かえって真実発見に支障を来す結果をもたらす危険が大きい。
また,ぐ犯は犯罪ではなく,一般にぐ犯に該当するか否かの判断は困難である。ところが,さらに本法案は,「ぐ犯である疑いのある者」まで調査対象とするが,そうなると,警察官の調査権限は際限なく広がり,少年に真に必要とされる教育的・福祉的対応が後退すると言わざるを得ない。
3  保護観察中の遵守事項を守らない少年に対する少年院収容処分
現行法においても,保護観察中の遵守事項違反に対しては「ぐ犯通告」制度が存在し,それで対応が十分可能であるし,むしろ,そうすべきである。
非行少年の更生は一朝一夕にはなしえない。少年を取り巻く環境が劇的に変化することも稀である。保護観察は,そうした状況を踏まえながら,少年の自ら立ち直る力を育て,更生させるため,保護観察官と保護司が少年との信頼関係に基づいて,長期的な視点から,少年に対しねばり強く働きかける制度である。そこでは,少年が不都合なことでも,また,ときに遵守事項を破った場合でも,そのことを素直に話せる関係が存在することが必要である。ところが,本法案は,「少年院送致」を威嚇の手段として遵守事項を守るよう少年に求めるものであり,そうした環境では,真実の信頼関係は育たず,かつ,保護観察制度の実質的な変容を迫るものである。
さらに,こうした制度を設けることは,一事不再理ないしは二重の危険の法理に実質的に反するばかりか,いたずらに厳罰化を図るものである。
現行の保護観察制度は相応に機能しているのであって,この制度のさらなる実効性を確保することこそが求められている。そのためには,何よりもまず保護観察官の増員や適切な保護司の確保といった方策が実施されるべきであり,制度の本質を変容させてはならない。
4  全面的な国選付添人制度の実現を
本法案は,ごく限定的ではあるが,従前の検察官関与とは切り離して国選付添人制度を導入している。これは当会が全国の弁護士会に先駆けて実践してきた身柄事件全件付添人活動がここ数年,全国に波及していく中で,これらの実績に基づいて有用性が証明され,国としてもその成果に配慮したことによるものであると確信する。その意味で,国選付添人制度の導入は,我々のこれまでの活動が実を結び,将来の全面的な国費による付添人制度への橋渡しになりうるものとして一定の評価をする。
しかし,その対象事件は極めて限られ,かつ,少年が釈放された場合には国選付添人選任の効力が失われるなど,なお著しく不十分,不適切なものにとどまっている。
我々は,さらに,全面的な国選付添人制度の実現を強く求めるとともに,今後とも,少年付添人活動の一層の充実に努めていく決意である。
以 上

共謀罪の新設に反対する会長声明

カテゴリー:声明

2006年(平成18年)5月8日
福岡県弁護士会 会 長 羽田野節夫
1 与党は、本年4月21日、「犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するために刑法等の一部を改正する法律案」(略称「刑法・組織犯罪処罰法等改正案」。以下「本法案」という)の修正案を衆議院法務委員会に提出し、今国会での成立を期し、5月9日の強行採決をも辞さない姿勢を示している。
2 福岡県弁護士会は、昨年8月31日、会長声明を発表し、本法案第6条の2に規定されている共謀罪について、以下のとおり広範な市民の人権が侵害される危険性を指摘して、その立法化に強く反対してきた。すなわち、
第一に、犯罪の実行着手前の意思形成段階に過ぎない共謀それ自体を処罰の対象とすることは、現行刑法の大原則である行為主義に真っ向から反している。
第二に、犯罪の合意そのものを処罰することにより、ひいては思想、信条の自由、表現の自由、集会・結社の自由などの憲法上の基本的人権が重大な脅威にさらされることは避けられない。
第三に、市民生活の隅々に及ぶ法律に規定されたおびただしい数の犯罪に関する「共謀」が処罰対象とされることになり市民生活は抑圧される。
第四に、「越境性」や「組織犯罪性」を要件としていない結果、いわゆる越境的組織犯罪集団とは関係のない団体もすべて取締りの対象にすることができる点で極めて危険であり、明らかに不当である。
3 このたびの与党の修正案は、?適用対象団体の活動を「その共同の目的が罪を実行することにある団体である場合に限る」とし、?共謀に加えて、「共謀に係る犯罪の実行に資する行為」を要求し、?思想良心の自由の侵害や団体の正当な活動の制限をしてはならないとの注意規定を設ける、というものである。
しかしながら、我々は、この修正案についても強く反対せざるを得ない。その理由は、
第一に、「団体」を国連条約が取締りを求める組織的犯罪集団に限定するものではない点でそもそも不当であるうえ、今回の修正案をもってしても犯罪を謀議したことを根拠に当該団体が「共同目的が罪を実行することにある」と認定される危険性は払拭されず、市民団体が際限なく適用対象となりうる点において、何らの限定にもなっていない。
第二に、「犯罪の実行に資する行為」という抽象的な概念を付加しても濫用の歯止めにはなり得ないのは明らかであり、行為主義を原則とする現行刑法体系に抵触する点で極めて不当である。
第三に、たとえ上記?の注意規定をもうけたとしても、そもそも構成要件自体が不明確なのであるから、抑止的効果は期待できない。
第四に、「共謀」の事実は関係者の供述のみで立証がなされうることから、ひとたび虚偽の供述がなされれば冤罪の発生を止めることは極めて困難で、こうした事態を我々弁護士は強く危惧せざるを得ない。
4 このように、共謀罪の新設は、人権侵害に至る危険性が極めて高く、捜査機関の権限が不当に強化されかねない点において、到底、容認することはできない。
よって、当会は再度その立法化に強く反対し、政府与党に対し、直ちにその立法化を断念するよう求める。
以上

未決拘禁法案の廃案を求める会長声明

カテゴリー:声明

2006(平成18)年4月10日
福岡県弁護士会 会長 羽田野 節夫
本年3月13日,「刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律の一部を改正する法律案」(いわゆる未決拘禁法案)が国会に提出された。
しかし,同法案には,代用監獄を存続させていること,未決拘禁者の処遇原則として「無罪推定を受ける者にふさわしい処遇」を規定していないこと,未決拘禁者と弁護人との接見や外部交通に不要な制限があること等,多くの問題がある。とりわけ,代用監獄を存続させながら,その廃止の方向性を明示していないことはきわめて重大な問題であると言わざるを得ない。
捜査と拘禁の分離は国際人権法の求めるところであり,勾留中の被疑者・被告人は,捜査機関とは分離された拘置所に拘禁されなければならない。ところが,我が国においては,拘置所の代用として警察の留置場への拘禁が長期間許されてきた。このため警察の留置場は代用監獄と呼ばれ,いまや勾留中の被疑者の98%が代用監獄に留置されている。
代用監獄には,警察の意に沿う被疑者には便宜を与え,否認している被疑者にはいつ食事にありつけるかわからない,いつ房に戻って眠れるか分からないと不安にさせる等,捜査当局が,劣悪な環境の下での身体的拘束・収容を自白強要の手段として利用する実態がある。代用監獄が虚偽自白と誤判を生み出す温床となっていることは,これまでの数多くの冤罪によっても明らかである。死刑再審無罪事件においても,すべて代用監獄において虚偽自白が強制的にとられたことが誤判の最大の原因となっている。本年3月31日に当会が主催した「代用監獄の廃止を求める市民集会」においても,無罪を主張していた被疑者が,代用監獄での長期間におよぶ拘禁期間中に,劣悪な環境の下で,連日10時間以上におよぶ取り調べを受け続け,捜査官より自白を強要された複数の事例が報告された。
このような弊害があるため,代用監獄は,国連の規約人権委員会が2度にわたり廃止に向けた勧告を行う等,国内外から厳しく批判されてきた。
しかるに,同法案は,警察内部での拘禁部門と捜査部門の分離を定めるだけにとどまり,代用監獄はそのまま存続させ,その廃止・漸減への道筋すら展望していない。警察内部において拘禁部門と捜査部門を分離しても,警察が被疑者の拘禁を執行,管理することに変わりはない。そのような方法で捜査のための拘禁の利用という代用監獄の弊害を解消することができないことは,警察庁が捜査部門と留置部門を分離したとする1980年代以降も,代用監獄での自白強要事例が後を絶たないことからして明らかである。
したがって,同法案が代用監獄をそのまま温存させ,その将来的な廃止すら展望していないことに対しては,厳しく批判せざるを得ない。
以上より,当会は,同法案には強く反対し,同法案についは廃案とした上で抜本的な見直しをするよう求めるものである。
       

福岡県弁護士会 〒810-0044 福岡市中央区六本松4丁目2番5号 TEL:092-741-6416

Copyright©2011-2025 FukuokakenBengoshikai. All rights reserved.