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少年法「改正」法案に反対する会長声明

カテゴリー:声明

法制審議会少年法(犯罪被害者関係)部会は、本年2月13日、少年法「改正」要綱(骨子)を採択し,さらに,3月7日少年法「改正」案が閣議決定され国会に上程された。
この「改正」案は,?犯罪被害者等による少年審判の傍聴規定を新設するとともに,?犯罪被害者等による記録の閲覧及び謄写を認める要件を緩和しているが,以下の理由により,当会は,同法案に強く反対する。
1 法案は,少年審判における犯罪被害者等の権利利益の一層の保護を図ることを理由に,審判の傍聴規定の新設を提案する。当然ながら,犯罪被害者等の権利利益の保護が図られなければならないことは言うまでもない。
しかしながら,そもそも少年審判に関しては,少年の健全な育成を目的とするという少年法の理念(少年法1条)の下,懇切を旨として和やかに行わなければならないと定められる(同法22条)など,裁判官,調査官,付添人ら関係者が少年に対して何よりも受容的に接したうえ,教育的・福祉的な働きかけを行うことにより,少年がその犯した非行事実に真摯に向き合い内省を深める場となることが強く期待されている。その場合,少年の率直な発言をきっかけに,少年の持つ問題性を浮き彫りしに,その未熟さを自覚させ,真の健全育成のための働きかけを行っていくことが重要である。
ところが,こうした審判を被害者等が傍聴するということになれば,精神的に未成熟な少年は,事実に関する自己の率直な意見や心情,気持ちをそのまま発言することに躊躇を覚え,必然的に被害者を意識した建前の発言に終始し,結果として,審判に関わる関係者からの少年の問題に迫った更生への働きかけができなくなるおそれがあるだけでなく,真実の発見にも悪影響を及ぼすことも危惧される。
また,非行の原因や少年の処分は,少年の家庭生育環境や生い立ちなどに遡って総合的に考えることが必要であるところ,被害者等の傍聴が許されるならば,プライバシーの観点から,こうした部分を審判において明らかにすることが躊躇され,非行の原因を十分に掘り下げることができず,かつ,適切な処分を選択することができなくなる。
さらに,多くの場合,審判は,刑事事件に比べても事件発生から間もない時期に開かれるため、少年のみならず、被害者にとっても、心理的な動揺が収まっていない状況で開かれることが多い。にもかかわらず、被害者が少年審判を傍聴することになれば、当該審判廷は必然的に非常に緊張度の高いものとなり、上記少年法の理念に基づく審判の実践はおよそ困難となる。
加えて,犯罪被害者等による少年審判の傍聴については,現行制度においても,少年審判規則第29条に基づき,裁判所が認める範囲で審判への在席が認められる場合があるのであるから,この規定に加えて「改正」案のような規定を設ける必要性は認められない。
2 同様に,犯罪被害者等の権利利益の一層の保護を図るという理由から,記録の閲覧・謄写を認める要件を緩和する点については,その対象範囲を法律記録の少年の身上経歴などプライバシーに関する部分についてまで拡大することになるが,少年の更生に対して悪影響を及ぼすおそれも懸念されるところであり,この拡大は認めるべきではない。
3 犯罪被害者等の権利利益の一層の保護を図るという理由から,今なすべきことは,各関係機関が被害者等に対し,2000(平成12)年少年法「改正」で導入された,被害者等による記録の閲覧・謄写(少年法第5条の2),被害者等の意見聴取(少年法第9条の2),審判の結果通知(少年法第31条の2)の各規定の存在をさらに丁寧に知らせ,これを被害者等が活用する支援体制を整備すること,さらには,より抜本的に犯罪被害者に対する早期の経済的、精神的支援の制度を拡充することである。
以上
2008(平成20)年3月26日
福岡県弁護士会
会 長  福  島  康  夫

捜査機関の違法捜査に抗議し代用監獄の廃止等を求める声明

カテゴリー:声明

2008年(平成20年)3月11日
最高検察庁 検事総長  但木敬一 殿
福岡県弁護士会 会長  福島康夫
 福岡地方裁判所小倉支部は,2004年(平成16年)3月24日に福岡県北九州市八幡西区で起きた殺人・放火事件について,いわゆる代用監獄における身柄拘束を濫用した相当性を欠く捜査手法があったなどとして,本年3月5日,被告人に無罪判決を言い渡した。
 すでに無罪が確定した佐賀北方事件,鹿児島志布志事件,富山氷見事件に引き続き,またしても捜査機関の違法・不当な捜査が裁判で明らかにされた。
 本件では,検察官は,代用監獄において同房者が被告人の犯行告白を聞いたということを理由として被告人を起訴した。
 これに対し,裁判所は次のように判断した。
? 捜査機関は,同房者を通じて捜査情報を得る目的で,意図的に被告人と同房者を同房状態にしたと  いうことができ,代用監獄への身柄拘束を捜査に利用したとの謗りを免れない。
? 同房者は,捜査官に伝えることを隠して,被告人から話を聞き出しており,被告人は,房内で,知ら  ない間に同房者を介して取調べを受けさせられていたのと同様の状態にあったということができ,本来 取調べと区別されるべき房内での身柄留置が犯罪捜査のために濫用された。
? 本件における事情聴取は,単なる参考聴取の域を超え,同房者を通じて被告人の供述を得ようとす るもので,虚偽供述を誘発しかねない不当な方法であり,被告人の犯行告白が任意になされたものと はいえない。身柄留置を犯罪捜査に濫用するもので捜査手法の相当性を欠いており,適正手続確保  のためにも,証拠能力を肯定することはできない。
 本件は,代用監獄における身柄拘束を捜査機関が組織的・計画的に利用すれば,どのような捜査でもできることを示している。警察庁は,本年1月24日,都道府県警察本部と全警察署に取調べ監督担当を捜査部門とは別の総務又は警務部門に置き取調べ状況をチェックすることなどを内容とする「取調べの適正化指針」をまとめたが,身内によるチェックでは違法・不当な捜査を防止できないことは本件をみても明らかである。
 当会は,これまでも,代用監獄は冤罪・人権侵害の温床になることを指摘して代用監獄は廃止されるべきであることを主張し続けてきた。
 国連拷問禁止委員会も,昨年5月に日本政府に対し,“法を改正し捜査と拘禁を完全に分離すること”を勧告している。
 当会は,現在,捜査機関の違法・不当な取調べを防止するために,捜査機関における取調べの全過程の可視化(録画)の実現を求めて運動を続けているが,捜査機関の違法・不当な捜査を防止するためには,取調べの可視化に加えて代用監獄の廃止が実現されなければならない。本件は,その必要性を強く裏付けている。
 わが国では,来年5月までに裁判員裁判が始まることになっているが,捜査機関による違法・不当な捜査が今後も続き,それが裁判で延々と争われることになると,およそ裁判員裁判は成り立たない。裁判員裁判実施を間近に控えた今こそ,取調べの可視化と代用監獄の廃止を実現されるべきである。
 当会は,本件における捜査機関の違法・不当な捜査に強く抗議するとともに,違法な取調べを防止するために取調べの全過程の可視化の実現と代用監獄の廃止を求めるものである。

福岡県弁護士会会長日記

カテゴリー:会長日記

                        会 長  福 島 康 夫(30期)
1 福岡県弁護士会の女性会員が今年ちょうど100人に達した。
私たちの大先輩の湯川久子会員が5月の日弁連定期総会で50年表彰を受けられ、12月の福岡部会の忘年会でお祝いをした。そして、ちょうど節目の50年の年に当会の女性会員がちょうど100人に達した。まずは新年早々おめでたい。湯川先生は九州の女性弁護士第1号であり、まさに日本の女性弁護士の先駆者である。登録されてからこれまでの50年の間には女性弁護士の先駆けとして多くのご苦労がおありになったと思うが、そんな気配は微塵も見せられない。私自身駆け出しの頃、法律扶助協会の審査委員会で長らく御指導頂いた。湯川先生はいつも素晴らしい姿勢である。これも「能」をされているためと思うが、いつまでも若々しく元気で頑張っていただきたい。
日弁連は昨年、男女共同推進参画本部を設置し、男女共同参画社会をめざす活動を始めた。福岡では759名中の100名であるので13%以上となった。現在、常議員30名の中で女性会員は内田常議員と安部常議員の2人だが、男女比から考えても、もっと女性会員が常議員になる必要がある。男女共同参画施策基本大綱では政府目標と同様に2020年までに弁護士会の役員にも30%以上を目指すことになっている。そして、日弁連理事会では私と河辺副会長と同じ机に並んでいる滋賀の元永会長が頑張ってよく発言している。40期の女性会員である。
ところで、現在新設予定の総務委員会に弁護士会の職員関係のセクハラ窓口を設けるべく、常議員会で審議中である。この問題の中心は主には執行部と職員間の関係でということになるが、今後設置しただけで開店休業になるはずである。そうでなければ大問題である。なお、両性の平等委員会では弁護士と事務所の事務員さん、弁護士と弁護士のセクハラ窓口設置を検討中とのことである。
2 互いに顔のわかる弁護士会であるために、茶話会幹事に感謝。
12月20日付けで新60期の17名の新入会員が当会に登録し、当会の会員は現在759名となった。今年4月時点から56名増加したことになる。互いに顔のわかる弁護士会であるための一層の工夫が必要である。会員限定の写真付き会員名簿は今年度以降も毎年発刊する必要がある。
そして、今年度特に茶話会幹事の活躍はめざましいものがあった。
福岡では4月の花見に始まり、納涼船、3庁のボーリング大会、秋のバーベキュー大会、新人弁護士歓迎会、忘年会、新年会と2ヶ月に1回以上の割合での催しである。知名代表幹事をはじめとする茶話会幹事の献身的な活動に大いに感謝したい。
互いの顔のわかる弁護士会であるために、また茶話会幹事の労苦に報いるためにも会員各位の参加を是非ともお願いしたい。特に、若手会員は先輩会員と知り合う絶好の機会である。大いに参加をして盛り上げていただきたい。
3 福岡地裁別館の新築
福岡地裁本庁に新館が建設されることになった。空き地は1カ所しかない。裁判所の西側の駐車場とテニスコートだった場所である。今年3月に着工し9月には完成予定とのことである。新館は2階建てで裁判員裁判用の合議法廷が2つ、単独の法廷が2つ増設されるということである。接見室も2つ設置の予定とのことである。接見室については昨年11月の1審協刑事部会で討議している。なお小倉支部は1つ法廷を増設するとのことである。この新館建築で裁判所の並々ならぬ決意を感じた。いよいよ、裁判員制度の開始まで秒読みとなった。
4 裁判員制度研修
1月12日から14日まで、早稲田大学法科大学院の模擬法廷を使用して、法廷弁護指導者養成プログラムの研修が開催された。当会から徳永響業務事務局長と甲木会員が参加した。裁判員裁判用の尋問技術、弁論技術をアメリカの全米法廷弁護協会所属の弁護士4名からまる3日間研修を受けるというものである。研修の模様はテレビでライブ放送がされたが、私も2日間県弁会館でテレビで見た。非常に参考になると思う。徳永業務事務局長と甲木会員が今後当会に新しい風を巻き起こすことを大いに期待したい。
弁護士会はこれまで裁判員裁判対策が遅れているのではないかといわれていたようであるが、これを契機に一挙に進んでいきたいものである。残すところ1年。待ったなしである。今回の研修は早稲田大学法科大学院の裁判員法廷を利用してなされたが、日弁連には模擬法廷がない。ところで、1月の日弁連理事会では大阪弁護士会館の中に日弁連の資金で裁判員用模擬法廷を設置することが承認された。この模擬法廷は西日本の拠点になる見込みである。
5 弁護士会の贖罪寄付が大幅減の危機
弁護士会の贖罪寄付が危機的な状況である。当会には例年1,000万円以上の贖罪寄付が寄せられていたが、今年度は全国で3億7,000万円以上の贖罪寄付が集められているにもかかわらず当会の贖罪寄付は全額で130万円程度でしかない。例年の10%程度の落ち込みの原因は全国で寄付を集めるようになったために、モティべーションが下がったのであろうか。弁護士会の贖罪寄付は被疑者弁護人援助制度、少年付添人援助制度の重要な財源であり、当会の財政にも直接関係している。なお、他に、法テラスの贖罪寄付の制度はあるが、弁護士会の財政、自主事業の財政に関係しているのは弁護士会の贖罪寄付である。法テラスの贖罪寄付制度は、自主事業の財源になっていないことを留意していただき、あえて付言する次第である。昨年までの当会の被疑者弁護人援助制度の事件はざっと年間1000件、少年付添人援助制度の事件はざっと年間800件。今年度はどちらもさらに増えそうである。このままでは自主事業の財源である弁護士会の贖罪寄付は逼迫し、財政は破綻してしまう。弁護士会の贖罪寄付の制度については裁判所、検察庁にも説明をし、理解を求めている。今年度は残り少ない、弁護士会の贖罪寄付が増加するよう会員各位のご理解をお願いしたい。

経済産業省産業構造審議会割賦販売分科会基本問題小委員会の割賦販売法改正に関する最終報告に対する会長声明

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1 経済産業省産業構造審議会割賦販売分科会基本問題小委員会において2007年11月29日付で割賦販売法改正についての報告書が取りまとめられた(以下「報告書」という)。
 これまで福岡県弁護士会は、悪質商法を助長するクレジットが深刻な消費者被害をもたらすことから、その救済と安全なクレジット社会の実現に向けて、割賦販売法改正を求め、シンポジウムの開催、意見書の提出、請願署名活動等に取り組んできた。
 今回の報告書は、(1)個品割賦購入あっせん業者取引において、特定商取引法類型の取引を行う販売業者が与信契約に関する重要事項について不実の告知を行った場合、あるいは、与信契約の締結を必要とする事情または与信契約締結の判断に影響を及ぼすことになる重要なものについて不実の告知を行った場合、購入者は与信契約を取り消すことができるよう措置を講ずるとして、その範囲で過失を要件としない既払金の返還を認めた点、(2)すべての割賦購入あっせん業者に一般的義務として悪質な加盟店を排除し適正与信義務を負うこととした点、(3)特商法適用取引の場合の個品割賦購入あっせん業者に加盟店の勧誘販売方法等に関する調査義務を課し、その調査結果に基づく適正与信義務を負うものとした点、(4)すべての割賦購入あっせん業者に対し、一般的過剰与信防止義務と信用情報機関の利用義務を定め、支払い能力を超える与信を行わない点の義務違反の場合には行政処分の対象にするとした点、(5)特商法適用取引の場合の個品割賦購入あっせん業者には収入、資産等の支払い能力、販売数量や過去の購入履歴、購入意思などについて個別具体的な調査義務を課し、その場合における信用情報機関の利用義務及び調査結果の信用情報機関への登録義務を定めた点、このほか、(6)現行法の割賦要件を撤廃して、1回払い・2回払いのクレジット契約も適用対象とした点、(7)指定商品・指定役務制を廃止した点、(8)個品割賦購入あっせん業者に対し登録制を導入、(9)個品割賦購入あっせん業者に契約書面交付義務と、訪問販売に伴う個品式クレジット契約にクーリング・オフを導入した点、など従来我々が求めてきた消費者保護の観点に立つ重要な制度の策定であり、画期的な内容であると評価できる。
 しかしながら、報告書の意見にはなお不十分な部分があるので、改正の趣旨をさらに徹底させる見地から、福岡県弁護士会は割賦販売法改正の国会審議にあたり、以下の点を強く求めて意見を述べるものである。
2 悪質な販売業者が個品割賦購入あっせん取引を利用して不適正な販売方法により被害を生じさせる場合は、特定商取引法適用の訪問販売等の取引に限らず店舗取引においても大規模な被害が発生している(ココ山岡事件)。また、そもそも個品割賦購入あっせん取引は、販売業者がクレジット業者から代金の一括立替払いを受け、クレジット業者が購入者に割賦代金の支払い請求を行う構造なので、自ら代金回収の努力をしない販売業者の悪質商法に利用されやすい。また、購入者が販売契約の詐欺や債務不履行などに遭い契約の無効、取消、解除を訴え契約関係を解消しても、既に支払った代金を回収できず、あるいはトラブルの交渉の間も支払い請求を受けるので、悪質商法被害の負担は消費者にかかる。しかし、クレジット業者は加盟店管理を通じて販売業者の履行体制を調査・確認できる体制にあり、かつ、クレジットシステムを提供して加盟店との提携の利益を得る地位にあるので、クレジット契約のトラブルに関し加盟店のもたらすリスクを負担すべきは消費者ではなくクレジット業者であるべきである。さらに、特定商取引法適用に限定して店舗取引を除外すると、実態は訪問販売と異ならない販売方法を店舗販売に用いて脱法的な行為を助長することになり、規制の趣旨が潜脱されるおそれがある。
 したがって、クレジットシステムから生じる被害の防止義務、救済措置は、特定商取引法適用取引以外の取引についても要請され、報告書のように限定すべきではない。
 同様に、加盟店調査等の管理を適正に行なう適正与信義務についても、店舗取引被害が生じている実態や店舗取引に詐欺行為などの悪質商法があった場合には課されないのは狭すぎることから、特定商取引法適用取引に限るべきではなく広く適正与信義務を導入すべきである。
 報告書は過剰与信防止についての義務に関し、何が過剰与信かの判断を一律に決めず、具体的な調査義務を課すことにしている。しかし実効的な過剰与信防止のためには明確な基準が必要であり、具体的数値を設けるか、具体的数値を盛り込んだ詳しいガイドラインを策定すべきである。
3 福岡県弁護士会は、今後国会での割賦販売法改正案審議にあたり、以下の点を強 く求めるものである。

  (1) 個品割賦購入あっせん取引において、販売契約の取消・無効・債務不履行による解除事由がある場合は、クレジット事業者に対し、既払い金の返還を求めることができるよう特定商取引法適用取引に限らず対象を個品割賦購入あっせん全体に拡大すべきである。
  (2) 適正与信を行うための具体的な加盟店調査義務、契約締結過程の調査義務は、適用対象を店舗取引・通信販売を含む個品割賦購入あっせん全体に拡大すべきである。
  (3) 過剰与信に当たるか否かの具体的な判断基準が必要であり、年収基準などのわかりやすい基準を設けるべきである。
                           
2008年1月24日
                     福岡県弁護士会 会 長 福島康夫

福岡県弁護士会会長日記

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                       会長 福島 康夫(30期)
1 年の初めにあたって
以前ならば執行部の実質の仕事は忘年会で終わりという感があったが,年々忙しくなっていき,今年は最後まで忙しそうである。自ら忙しくしているのではないかという声も聞こえそうであるが,断じてそうではないことをお断りしたい。
全国から公募した2007年の世相を表す漢字は「偽」ということである。昨年はミートホープの偽挽き肉,白い恋人,不二家,赤福,船場吉兆等大手や老舗の度重なる食品偽装問題,年金記録,政治資金を巡る偽装,橋梁の強度偽装等,ありとあらゆる偽装が発覚した。あまりに多いので鈍感になった感があるが,1年間の世相を表す漢字であることは認めざるを得ない。しかし,今年はマイナスイメージの漢字はもうたくさんである。
いよいよ裁判員制度のスタートまで1年となった。が国民の司法参加という観点から大きく司法制度が転換する要素を含んだ重要な制度であるが,取調の可視化が裁判員制度実施の上で必要不可欠である。裁判員になった市民が冤罪を生み出すことがないよう,制度を作っておかなければ市民の方に申し訳ない。また来年は被疑者国選制度が対象事件を10倍に拡大する。重大な制度開始まで残すところは1年。もし失敗でもすれば司法に対する市民の信頼は完全に失墜してしまう。失敗は許されない。今年は弁護士会にとって正念場である。
2 弁護士会館問題―大阪,広島との3会交流での感想
11月17日昨年オープンした大阪弁護士会館で大阪弁護士会,広島弁護士会との3会交流を行った。噂には聞いていたが,大阪弁護士会の執行部の先生方から会館の1階から最上階の14階まで案内していただいた。会館は敷地面積1500坪,建物は地上14階,地下2階建,延べ床面積5000坪。土地の取得費を含めた総費用78億円。2階には800人収容の大ホールを備え,規模の大きさに圧倒された。今や日弁連会館よりも豪華な会館であり,5月の日弁連定期総会はこの大阪弁護士会館で開催されることになっている。 1階の一部と地下(ただし採光が行き届いた半地下である)に法テラスが業務を行っており,親密な関係を保っている。また,市民に開かれた会館を象徴するように,オープン時には大阪フィルハーモニーが大ホールでコンサートを開き,2ヶ月に1回はロビーでクラシックコンサートが開催されている。会館のコンセプトは「市民に開かれた会館」「リーガルサービスの拠点」。建物は大阪の弁護士の夢が実現した,そういう感じの弁護士会館だった。大阪弁護士会は現在会員数が3000人を超えているが,将来,会員登録が5000人になっても大丈夫なようにレターケースを準備しているとのことである。一方,私たちの会館はおそらく弁護士会館の中で最も老朽化しているのではないか。今のところ平成25年には福岡県弁護士会は九大六本松跡地に移転し,新会館がオープンする予定となっている。当会の会員数は現在752名だから,大阪と比べること自体笑われそうであるが,大阪のように会館でコンサートができれば素晴らしいことである。各人が会館の夢を持ちあって,夢を実現したいものである。
ところで,昨年の会館問題は福岡市が設置した九大跡地利用計画策定委員会が利用計画をデザインして以降,表だった動きはなかった。移転時期は平成25年までになっており,今年は大きな動きがありそうである。
夢と言えば,当会が全国で初めて(待機制)当番弁護士制度を創設したのが1990年12月であった。被疑者国(公)選弁護士制度の夢を実現すべく当会は先頭を切って立ち上がった。資金はなかったが夢があった。今それが実現する一歩手前にきている。私も是非とも夢の実現のためにもう一頑張りをしたい。皆さんにももう一頑張りをお願いしたい。
3 拠点事務所問題
12月6日日弁連臨時総会において弁護士偏在解消のための経済的支援策が承認された。
偏在問題の解消は「法の支配を社会の隅々に」という目的を実現するものであり,被疑者国選弁護対応体制の確立と密接に関係している。経済的支援策では各ブロックに拠点事務所が設置されブロックの偏在問題の解消を図ることが期待されている。そこで,九弁連は離島を抱え実質ゼロワン地域が16もあり,北海道,東北と同様に過疎偏在の地域である。
当会は11月7日の常議員会で拠点事務所問題検討プロジェクトチームを設置し,この問題を検討している。現在検討中の内容は次のとおりである。
(1) 指導弁護士の人材確保等の問題から福岡市内に拠点事務所を設置する。
(2) 拠点事務所の主体は九弁連とする。
(3) 福岡県弁護士会は技術的支援をする。
一番問題になる費用についてシュミレーションを策定すべく準備中である。この点を早急に詰める必要がある。プロジェクトチームの結論は2月には出る予定である。当会として,拠点事務所設置に向けて,早急に,かつ前向きな結論を出したい。
いずれにしても,北海道弁連は「すずらん基金法律事務所」を,東北弁連は「やまびこ基金法律事務所」を既に拠点事務所として設置している。日弁連の経済的支援策を契機として,九弁連において,過疎偏在問題解消のための拠点事務所設置が今後の緊急かつ重要課題である。
4 法律相談事業及び弁護士過疎対策に関する九州ブロック協議会イン石垣島(12月1日・2日)
石垣島は台湾の東にあり緯度は変わらない。気温は25度。さすがに暑い。
リゾート気分のルンルンの観光客を横目にしながら4時間の会議はもったいないが,仕方がない。会議では九州各地の偏在過疎問題が議題となった。福岡では柳川支部に弁護士がいないことが問題になった。柳川は全国に3カ所しかないゼロ地域ということで早急に解消するように迫られた。筑後部会からはゼロ地域の解消に向けて鋭意努力中とのことである。今年早々には朗報がくることを期待したい。
2日間の会議の後のわずかな時間を利用して星の砂で有名な竹富島を観光した。竹富島は石垣島からわずかに船で10分のところにあるが,海は青々と澄んでおり,ゆったりとした時間を感じさせる島だった。暑かったが,いっぺんに気に入ってしまった。島の人口は356人。猫51匹,犬29匹,水牛20頭,山羊24頭,牛400頭,ニワトリ10羽と正確に調査がなされていたのにはおかしかった。まさに顔の見える平和な島である。しばしの休息を楽しんだ。
5 日本弁護士政治連盟(弁政連)九州支部設立の件
近時,弁護士会の問題は政治家との折衝が多いということである。確かに以前は法曹三者での協議に任せるという慣習があったが,規制緩和の動き等の中で司法制度改革審議会が設立された前後頃から政府や国会で決めていくことばかりである。法曹人口問題しかりである。それだけに弁護士会の運動を支える超党派の弁護士政治連盟の必要性が高い。特に,司法書士会,行政書士会の総会,懇親会に出席すると,運動に支援をされている多くの政治家が出席されていた。司法書士会,行政書士会の政治力の強さ,それに比べて弁護士会の政治力のなさを実感することが度々であった。日本弁護士政治連盟本部は東京であり,今般九州支部が設立されることになった。弁護士会の運動を強化する意味で喜ばしい限りである。
ところで,2009年から被疑者国選弁護制度は現在の10倍に対象事件が拡大するが,現在のような低額報酬では私たち弁護士の犠牲も限界である。2009年には報酬改善をして適正な報酬でなければ国選弁護のモチベーションはあがらない。来年の予算審議の中で報酬の大幅増額を獲得しなければならないし,この機を逃せば国選弁護報酬を適正化することはできないのではないかと思える。さらには,また,現在,取調べの可視化問題は民主党が参議院に可視化法案を提出し,次年度の通常国会で本格的な審議がなされる可能性が高いとのことである。私たちの弁護士会の理想を追い求め,運動を結実させるためには,超党派の弁政連の活動は必須不可欠である。弁政連九州支部設立総会は1月19日午後5時からである。多くの会員の結集をお願いしたい。
6 私たち執行部の任期は残すところ3ヶ月を切ってしまったが,新年を迎え心機一転全力で会務の舵取りをしたい。これまでの会員の皆さんのご理解とご支援に心から感謝すると共に,残った任期中のご支援をお願いしたい。

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