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「日野町事件」第2次再審請求事件についての特別抗告棄却決定を高く評価すると共に、速やかな再審公判の審理を求める会長声明

1 最高裁判所第二小法廷(岡村和美裁判長)は、2026年(令和8年)2月24日付けで、いわゆる「日野町事件」第2次再審請求事件について、検察官の特別抗告を棄却する旨決定した(以下「本決定」という。)。これにより、大津地方裁判所が2018年(平成30年)7月にした再審開始決定が確定することとなる。

「日野町事件」の概要は、当会が2023年(令和5年)2月27日付けで会長声明を発しているとおりであり、無期懲役の有罪判決が確定した元受刑者である故阪原弘氏(以下「阪原氏」という。)について、阪原氏の死後に再審開始が認められたものである。無期懲役以上の刑が確定した事件について、元被告人の死後に再審開始が決定されたのは戦後初である。

本決定は、えん罪救済と刑事司法への信頼回復の観点から、極めて重要な意義を有するものであり、再審制度を通じて誤判を是正するという司法の責務を改めて確認したものである。当会は、本決定を高く評価すると共に、速やかな再審公判の審理を求めるものである。

2 「日野町事件」については、阪原氏が生前にした第1次再審請求が棄却され、その即時抗告の審理中に阪原氏が亡くなってしまっており、阪原氏が生前に無罪判決を受けることができなかったことが悔やまれてならない。第2次再審請求については、2018年(平成30年)7月に再審開始の決定があったが、その後検察官が不服申立てを繰り返したことにより、再審開始が確定するまでに7年半の歳月を要している。大阪高等裁判所が2023年(令和5年)2月に検察官の即時抗告を棄却しており、検察官が特別抗告を申し立てることがなければ、既に阪原氏の無罪が確定していた可能性があったといえる。本決定は、これまでの多くの再審事件についての最高裁決定と異なり、特別抗告の理由に具体的に踏み込むことなく、再審請求を認容すべきものとした大津地方裁判所の決定が結論において正当であるとした大阪高等裁判所の判断に誤りがあるとは認められない旨説示したものである。検察官の特別抗告の理由が、大阪高等裁判所の抗告審としての判断をいささかも動揺させるものでなかったことを物語っており、特別抗告の申立て自体に無理があったといえる。

このように、えん罪被害者の名誉回復が検察官の不服申立てによりいたずらに長期にわたって遅延することは、重大な人権侵害であって誠に遺憾である。

3 また、上記の大津地方裁判所による再審開始決定の大きな根拠となった新証拠は、第2次再審請求において証拠開示が行われた「警察が検察官に送致していなかった引当捜査の状況を撮影した写真のネガ」であった。確定判決が最も重視した間接事実は、引当捜査の際に阪原氏が金庫発見場所や死体発見場所を案内することができたという事実であったが、ネガが証拠開示されたことによって、その捜査報告書の写真の順番が入れ替えられていたことが判明したのである。

このような事実は、捜査機関が裁判所に提出することなく保管している証拠を再審請求後早期の段階で全面的に開示させることが、えん罪被害者を救済するために必要不可欠であることの立法事実を示している。

4 ところで、法制審議会は、法務大臣に対して、いわゆる再審法改正についての諮問に対する答申をしたが、その内容は検察官による不服申立てを禁止していない。証拠開示の点についても、再審請求の審判を開始するか否かの調査を先行しなければならない制度設計であり、職権による証拠開示を認めず、開示の範囲も限定的であるなど大きな問題を積み残した内容のものである。今回、「日野町事件」について検察官がしたように、再審開始決定に対して検察官が不服申立てをすることができる制度を変えない限り、えん罪被害者の名誉回復が遅延する事案が今後も起こり得る。

当会においても、2026年(令和8年)1月14日付けで会長声明を発しているが、えん罪被害者の速やかな救済の実現という再審法改正の原点に立ち返る必要のあることはいうまでもない。えん罪被害者のための再審法改正を早期に実現する議員連盟(超党派議連)が、先般行われた衆議院議員総選挙後初の会合を開催した旨報じられており、改めて超党派議連の再審法改正案を議員立法によって法制化するという再審法改正の実現のため、全力を尽くす決意である。

2026年(令和8年)3月17日

福岡県弁護士会

会長 上田 英友

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