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旧姓の通称使用のみの法制化に反対し、改めて選択的夫婦別姓制度の速やかな導入を強く求める会長声明

2025年12月3日の報道で、政府は次の国会に、旧姓の通称使用を法制化するための関連法案を提出する方向で検討に入ったことが明らかとなった。さらに、同月5日、男女共同参画会議において来年度からの第6次男女共同参画基本計画の策定に向けて、「婚姻後の旧姓の通称使用について法的効力を与える制度の創設の検討」を掲げて答申をまとめた。

しかし、こうした旧姓の通称使用のみの法制化は、夫婦同姓制度の維持を前提とするものであり、正式な名称である「戸籍姓」が別に存在することに変わりはない。旧姓はあくまでも「通称」の位置付けにとどまり、根本的な問題は解消されないばかりか、国内的にも国際的にもさらなる混乱を生じさせる恐れがあるため、旧姓の通称使用のみの法制化には反対である。

そもそも、氏名は個人の識別機能を有するだけではなく、個人の人格の象徴であり、氏名の変更を強制されない自由も憲法13条の人格権として保障される。

しかし、民法750条は、「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する」と定め、婚姻後の夫婦同氏を義務付けている(夫婦同姓制度)。

そして、同制度の下で、現実には法律婚をする夫婦の約94%において、女性が姓を変えている。すなわち、事実上、多くの女性に改姓を強制し、その姓の選択の機会を奪うという点で、婚姻に際して一方当事者に姓の変更を強制する民法750条は、憲法13条、憲法14条、憲法24条にも反するものである。

国連の女性差別撤廃委員会からも繰り返し別姓を選択できるよう勧告がなされ、日本は夫婦同姓を強制する唯一の国となっている。

当会はこれまで、民法750条が憲法に違反することを繰り返し指摘して、選択的夫婦別姓制度への改正を求めてきた(2010年4月22日会長声明、2015年5月27日総会決議、2015年12月17日会長声明、2021年7月7日会長声明、2024年12月5日会長声明)。

婚姻後も同姓か別姓のいずれかを選択できるようにする制度(選択的夫婦別姓制度)は、互いに旧姓を保持することを希望する者同士が法律上婚姻することを可能とし、かつ、双方が戸籍姓のみで社会生活を送ることができるのであり、これこそ人格的利益及び両性の本質的平等を維持することにつながる。同姓を希望する者は従前通りに選択できるのであり、これらの者の人権侵害や不利益は問題とならないことは当然である。

2025年の通常国会では、28年ぶりに選択的夫婦別姓制度の導入に向けた法案が衆議院法務委員会で審議入りし、法案は継続審議となり、一歩前進かと思われた。しかし、2026年1月23日に招集された通常国会で衆議院が解散されて廃案となった。

旧姓の通称使用の法制化は、一見すると、旧姓を法的に使用できる機会が増え、現行制度下での不便が解消されるようにも思われる。

しかし、婚姻に際して夫婦の一方が改姓を強いられるという人格権侵害や両性の本質的平等違反は残り、憲法に違反する人権侵害の解消にはならない。加えて、「戸籍姓」と「通称姓」との法的なダブルネームという社会全体のシステムを変更する新たな制度が誕生することになり、社会生活に混乱を来たす恐れがある。例えば、金融機関におけるマネーロンダリング対策のための審査に耐えられない恐れがある。また、パスポートの表面上に旧姓のみが記載されても、国際規格上ICチップには戸籍姓のみが記録されることになっており、ビザや航空券は旧姓では取得できず、海外渡航や海外生活においてパスポート上の旧姓と戸籍上の姓が異なることのリスク等がある。

このダブルネームの危険性については、従前より指摘されているところである。例えば、法務省パンフレット「選択的夫婦別氏制度について」(1996年) では「社会からみてその人が誰かということが分からなくなり、混乱を招くおそれがあります」と記載され、2015年12月16日最高裁大法廷判決の木内裁判官による「通称を法制化するとすれば、全く新たな性格の氏を誕生させることとなる」との意見 、2021年6月23日最高裁大法廷決定の宮崎裁判官・宇賀裁判官による「ダブルネームである限り人格的利益の喪失がなかったことになるわけではない」との反対意見などがある。日本経済団体連合会(経団連)も、2024年、「通称姓の使用はビジネス上のリスクとなり得る」として、選択的夫婦別姓の早期実現を提言している。

 当会は、夫婦同姓制度を維持したままで旧姓の通称使用のみの法制化を進めることには反対であり、国に対し、憲法に違反する人権侵害を解消し両性の本質的平等を追求するべく速やかに選択的夫婦別姓制度の導入を実現するよう、改めて強く求める。

以上

2026年(令和8年)2月24日

福岡県弁護士会 

 会長 上田英友

福岡県弁護士会 〒810-0044 福岡市中央区六本松4丁目2番5号 TEL:092-741-6416

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