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「政治家の思想・言論の自由を封殺する一切のテロ行為を断固として許さない」会長声明

カテゴリー:声明

2006年(平成18)年9月13日
福岡県弁護士会 会長 羽田野節夫
1、本年8月15日早朝、小泉首相は、国の内外から反対の声が強かった靖国神社への参拝を全国民注視の中で、実行した。
自民党の元幹事長で山形県選出の衆議院議員加藤紘一氏は、かねてより小泉首相の靖国神社への参拝を批判し、終戦記念日の参拝に反対し、当日の小泉首相の行動に対し、マスコミを通じ批判していた。
加藤紘一議員が自己の信念に基づき小泉首相の言動を批判するのは、思想、言論の自由が保障されている現代社会において、政治家として当然のことである。
2、然るに、本年8月15日夕刻、山形県鶴岡市に所在する、加藤紘一議員の実家と事務所が放火により全焼するという事件が発生した。新聞報道によれば、この放火事件は、小泉首相の靖国神社参拝についての加藤紘一議員の批判発言に対して、放火という暴力行為によって抗議しようとした、右翼団体に所属する男性の「政治的テロ行為」であることが明らかになった。
このような政治家の身辺に対するテロ、暴力行為は、それによって、他の政治家や他の諸団体、更には、国民の言論の自由や、政治活動の自由をも牽制し、健全な批判精神は元より、自由な意見発表などの言論活動を萎縮させる効果をもたらし、ひいては、マスコミの報道の自由に対してさえも著しく悪影響を与えるおそれがある。
3、とくに、今や、自民党の総裁が交代し、新政権の発足が予定され、憲法改正が具体的政治日程にのぼっている頃である。
当然ながら、憲法改正問題は、民主主義国家としての我が国最大の政治課題である。
今後、憲法改正の是非が国民の間で自由に、徹底的に論議されなければならない。
このような時にこそ、政治家に対してはもちろん、国民も、マスコミも、等しく、思想、言論、表現、報道の各自由が保障されるべきことは言うまでもない。自由で徹底的な議論や論争によってしか、真に国民の自由と権利を守る憲法は誕生しえないからである。
4、今回のような、政治家の言論をテロ、暴力によって封殺するような行為を断固として許してはならない。
福岡県弁護士会会員一同は、我が国の民主主義を守るためには、憲法で保障された思想、言論の自由、そして、政治活動の自由を絶対に保障すべきものと考える。
今後、再び、思想、言論の自由を封殺する一切のテロ行為を断固として許さない意思を内外に明らかにし、この声明によって、思想、言論の自由、及び政治活動の自由の大切さを強く表明するものである。
以上

福岡県弁会長日記〜6月中旬から7月中旬の会務活動

カテゴリー:会長日記

会 長  羽田野 節 夫
1.6月中旬より、第60期司法修習生を迎えて!
去る6月23日、第60期司法修習生(103人の修習生合同開始式が開催された。
従来60人位だった修習生がついに100人の大台を超えた。
福岡地裁簑田所長、福岡地検絹川検事正についで、福岡県弁会長として概略次のような話をした。
(1) 諸君のこれからの1年数ヶ月は、まさに実務修習という習いごとをする時期である。
習いごとと言えば、世阿弥が開いた「能」という芸能の世界で「守」「破」「離」という言葉がある。
・守は、型を守ること
・破は、型を破ること
・離は、型から離れて、独自の境地を作ること
今、諸君は、「守、破、離」の守の時を過していることとなる。
守の型を守るということは、我々法律の世界で言えば、基本となる原理原則をしっかりマスターすることである。そのためには、最初が肝心。人との接し方、礼儀作法が大切です。我々法曹、とりわけ弁護士は、人との信頼関係を構築して、初めて、有利不利を問わず全ての事実を明らかにしてもらえることとなる。初対面の方に、無礼、無作法に及んだり、尊大に振舞えば、依頼者との信頼関係が築けない。どうか礼儀を弁えることを肝に銘じて欲しい。
(2) 何事にも好奇心を持つことが大切。
昔、私共が学生時代に、「ベトナムに平和を市民連合」の代表者だった作家の小田実氏は、若い頃、「何でも見てやろう」という気持でいろんなことに好奇心をかきたて、それが肥やしになったとのことでした。
(3) 最後に、諸君は「何故法曹になりたいのか」という動機付け(モチベーション)を今一度考えなおして欲しい。そのモチベーションを高めて、高い志を持続させることが、諸君を大成させることとなる。
その後、7月7日、当会主催の修習開始式を経て、修習生歓迎会を開催したところ、総勢200人を超える会員らが集まり、盛況だったが、個々の修習生の顔が見えなくなる嫌いがある。
2.裁判員模擬裁判を傍聴!
(1) 7月1日(土)、福岡のロースクール生を対象とした裁判員模擬裁判が福岡高裁裁判官を中心として開かれた。なるべく多数の裁判員に関与させる趣旨で、裁判の合議体を三班作り、各々裁判長を高裁の刑事部総括が勤めた。事案は、これまでも何度か題材となった、スナック入口前の殺人未遂事件。橋山弁護人の活躍も空しく、三班とも有罪となった。終了後の座談会の席上、ロースクール生に対し「裁判員になれと言われたらなりたいですか?」との質問に15人中13人が「なりたくない」と答えたため、龍岡高裁長官はショックを受けたと感想を述べておられた。
(2) 7月4日(火)〜6日(木)と三庁合同の裁判員模擬裁判が新しい事件(共犯者による強盗傷害事件)によって実施された。弁護人役は3人。安武雄一郎会員と中原昌孝会員(新人)と裁判官による3人の弁護体制だった。
事案は、刑訴法321条1項2号書面の所謂、特信性が問題となる事案で、裁判員には少し難しかったと思われる。安武主任弁護人の無罪主張は、前掲書面が採用された時点で終えた。
終了後の座談会では、裁判員の服装が問題となり、裁判終了後、裁判員の顔が特定されないためにも裁判員用の何らかの法衣があった方が良いのではとの意見が出されていたのが印象的である。
3.健康がなにより!
会務活動は、膨大な資料に眼を通す必要があり、勢い、読み残しを資料としてカバンに詰め込み、事務所と会館を往来する。資料が多くなるにつれカバンも大きくふくらみ重くなる。重いカバンを持って私の事務所から会館まで往復するのが苦痛となり、ついつい車で通勤することとなり、運動不足となる。夕方は、何かと、やれ歓迎会だ、懇親会だと宴会が重なり、ついつい度が過ぎて健康を害する悪循環を積み重ねる。
この原稿を書いている頃(7月10日夕方頃)、訃報を受け、衝撃が走った。日弁連事務次長の矢澤昌司弁護士(41期)が享年49歳の若さで、くも膜下出血で逝去された。あまりにも痛ましく悲しい知らせである。同氏は、木上勝征先生の下で勤務され、修習時代を含め5年間福岡にいたので、存知あげていただけに悲しみは大きい。今年5月26日岡山で開催された日弁連定期大会での活躍振りが眼に焼き付いている。また、6月上旬頃に御逝去された吉田保徳先生(享年66歳)も一人娘を残して旅立たれてさぞかし無念だったでしょう。
いずれにしても、健康のありがたさを思い知らされる。不健康のスパイラル生活を送っている私自身、矢澤先生や吉田先生の死を無駄にしてはならないと自覚する。 合掌

福岡県弁会長日記

カテゴリー:会長日記

会 長  羽 田 野 節 夫
会長就任後4月16日から5月15日までの活動と思索について報告します。
1 部会集会について
福岡県弁護士会は、4つの部会に分かれ、各々の部会に自治制度があることは、全国的に珍しい制度です。先にFニュースでも紹介されたことです。明治時代、幕藩体制の名残がある中で出発した代言人組合が、昭和8年、旧弁護士法の制定と共に歴史的事情を考慮して4つの部会(福岡、小倉、久留米、飯塚)に引き継がれています。
4月中旬以降は、その部会集会のラッシュです。
(1)4月20日(木)作間部会長の招集に基づき福岡部会集会が開催され、参加者は僅か19人でした。昨年も同様でした。
部会集会の参加者が少ないこともあって、特に集会でもめることもなく平成17年度決算及び平成18年度予算が承認されました。参加者が少ないことに作間部会長は意気消沈。
(2)4月21日(金)飯塚部会集会。会員10名。私は、県弁の重要委員会(刑事弁護センター運営委員会)への出席のため部会集会には参加できず、その後の懇親会に小宮、作間両副会長と多川、古賀両事務局長と共に参加しました。中村博則部会長を中心に若い会員が力を発揮しています。
(3)4月27日(木)筑後部会集会。会員は木下隆一部会長以下48名。3月末に寺澤真由美会員が弁護士任官のため、名古屋地裁へ赴任し会員1名減。しかし、部会集会には、25名が参加し質疑応答もあって盛況でした。
集会後の懇親会には、事務職員全員と県弁執行部4名(私、作間、増永、多川)が参加し盛会でした。
(4)4月28日(金)北九州部会集会。午後1時から始まった執行部会議で、5月の常議員会と県弁の総会通知の内容確定に時間がかかり、北九州部会集会に少し遅れて参加しました。集会には、福田玄祥元会長や80を超えてなおお元気な岩成重義先生のお顔を久し振りに拝見しました。集会の参加者は50名と盛況で本庁昇格運動にも気合が入っていました。懇親会には、県弁執行部から4名(私、増永、作間、古賀(克))が参加し、事務職員も含め60名を越える人数となり壮感でした。懇親会の席上、県弁の委員会に北九州部会員の参加が少ないことについて、配川前部会長と話をした際、北九州部会員は、部会で独自に開催する県弁の委員会と別途県弁の委員会に参加することが二重の負担となる旨の話がありました。そうであれば、北九州部会独自の委員会の議事内容を県弁の委員会に議事録として提出し、県弁としての一体感と知識の共有化をはかって欲しいと願います。
2 福岡部会集会対策
それにしても、福岡部会を除く他の3部会は、いずれも、会員数に比して4〜5割の会員を集めているが、福岡部会はどうしてこんなに参加者が少ないのか。作間部会長と協議したところこんな実態が判りました。
4月20日福岡部会集会当日、県弁会館には部会集会の時間帯に他の委員会が同時開催されており、会館内には、約60人近くの会員が参集していました。委員会の日程は、前年度の委員会が4月の予定まで決めるが、部会集会は4月に入って決めることからダブルブッキング状態が起こっていたのです。そこで、今後は、来年の福岡部会集会は予め日程を固定しておき、その日の部会集会の時間帯の会館の使用は禁止する方策を来年のために執りました。これで、福岡部会の来年の集会には、人が多数参加できる状態にあります。来年、部会長に立候補を予定している方は平成19年4月20日を福岡部会集会の日と定めましたのでそのつもりでいてください。
3 常議員会の公開について
去る4月19日の常議員会において、常議員会は、県弁会員に対し原則公開とすることを可決承認しました。常議員会の議題については、既に、県弁会員に対し、Fニュース等のメールで事前配信されていましたが、議事内容について常議員会で意見の応酬を聞くためには、常議員会の議長に傍聴許可の事前承認手続きが必要でした。しかし、この手続きは煩わしく、これを県弁会員に限って包括承認し、原則として傍聴名簿に署名すれば会議を傍聴でき、資料も閲覧することが可能としました。勿論、会議自体を非公開とすべき議題については傍聴は許されません。早速、5月10日(水)に開かれた常議員においては、5名の会員が傍聴されました。少しでも福岡県弁活動の活性化につながれば幸いです。
4 どんたく参加について
去る5月3日午後4時頃、明治通りを「裁判員制度を支える司法ネットワーク福岡どんたく隊」がどんたくパレードに参加しました。参加者は、県弁の執行部を中心とした弁護士有志(15名)及び検察庁有志(絹川検事正を筆頭に約50名)、弁護士が家族や友人等で集めた約30人、そして市民団体が集めた約40人、そして西南学園高等学校のブラスバンド部員60人の総勢約200名。五月晴れの福博の町を川端から福岡市役所まで約1.5kmを約40分近くかけて練り歩きました。3年後に始まる裁判員制度に対し、市民が関心を寄せてもらうための広報宣伝活動と同制度の司法ネットワークを構築しようとの試みでした。パレードの影響かどうかは定かでありませんが、どんたく報道の後は、新聞各紙で「裁判員制度」の特集が組まれたようです。沿道の市民の注目を浴びてのパレードもいいものですよ!
5 4本の会長声明
執行部発足後、既に4本の会長声明を発しました。一つ目は、4月10日代用監獄を恒常化させる刑事未決拘禁法案反対に関する会長声明。
二つ目は、5月8日、共謀罪新設反対の会長声明。
三つ目、四つ目は、5月11日、「教育基本法の廃案と慎重審議を求める会長声明」及び「少年法改正反対の会長声明」。
いずれも、私と担当副会長が司法記者クラブに赴き、担当副会長が会長声明を読み上げるや会長のコメントを求められることが多く、その内容をよく理解する必要があり、少しも気が抜けません。会長声明後に個別にインタビューを受け、顔写真付きで全国版に掲載されるなどしたため、いよいよ身を引き締めなくてはと思っています。
6 司法支援センターその他
司法支援センターが4月に発足したものの、まだまだ不透明な部分があります。しかし、10月に発足する被疑者国選制を充分に対応するために当番弁護士名簿と被疑者国選弁護名簿を連携させるべきではないかと考えています。
会員各位には、是非従前通り当番弁護士名簿と国選弁護人名簿に御登載願えますように御協力の程を願います。

福岡県弁護士会役員就任披露宴ごあいさつ

カテゴリー:会長日記

2006年(平成18年)5月24日
福岡県弁護士会 会長 羽田野節夫
1.(序) 只今御紹介に預かりました、福岡県弁護士会会長の羽田野節夫です。
本日は、皆様には、公私共に御多用の中を、福岡高等裁判所長官龍岡資(すけ)晃(あき)様や福岡高等検察庁検事長佐(さ)渡(ど)賢(けん)一(いち)様、福岡市長山崎広太郎様を初めとして、福岡県弁護士会と関係の深い、各界各層の方々に御出席を賜わり、誠にありがとう存じます。
本日は、当会の過去の活動を検証し、更に今後の活動を皆様に御紹介し、御理解を願って、皆様から忌憚のない御意見や、御忠告を戴く場として、本日のような宴を催す次第です。皆様におかれましては、当会の役員に対しては元より当会の若い会員に対して苦言、提言又は暖かい励ましのお言葉をかけて下されば幸いでございます。
2.福岡県弁護士会の構成員と
弁護士会の組織について若干御紹介します。弁護士会は、強制加入団体であって、どのような政治信条を有するかにかかわらず、どこかの単位会に所属すべきこととされています。
福岡県弁護士会は、伝統的に4つの部会制をとっており、4つの部会は、純粋に独立対等の関係でございます。
各々の部会と構成員数は、前方の画面に表示されたとおりです。
また、九州ブロックには8県・8単位会が存在し、九州弁護士会連合会を組織し、九州内の共通の問題を協議しています。
日本全国には52単位会があり、個々の弁護士と全国の単位会とを構成員とする日本弁護士連合会(所謂、日弁連)という組織を作っています。
(1) 弁護士の自治
各弁護士会は、自治権があり、所属する個々の弁護士を監督し、更に日弁連が監督する関係にあります。しかし個々の弁護士の日常業務を弁護士会が監督する立場にはありません。個々の弁護士の不祥事に対し、弁護士会が懲戒権を発動し、当該弁護士を懲戒処分することによって、自浄作用を発揮します。
この弁護士自治制度は、司法権の独立のための制度的保障であり、市民にとっても重要かつ重大な制度です。もし、弁護士や弁護士会が特定の国家機関の統制下にあるとするならば、市民の為に弁護活動をする弁護士に対して個別の圧力が容易に加わり、司法作用がいびつとなり、司法の独立が保てません。
(2) 弁護士の警察に対する依頼者密告制度法案反対特別決議
本日の定期総会におきまして、皆様のお手元に配布しました「弁護士による警察等に対する依頼者密告制度」(ゲートキーパー問題)法案反対特別決議」がなされました。この制度は、依頼者との話の中で疑わしい取引があれば密告しなさいというものです。これは、弁護士と依頼者との信頼関係を根底からくつがえさせる、とんでもない法案です。いかにテロ予防対策とはいえ、テロの被害国アメリカやその隣国カナダも真っ向からこの法案に反対しています。当会が、政府が作ろうとしている法案に対して堂々として反対意見を申し上げることができるのも、弁護士自治制度があるからです。
本日御列席の皆様も、弁護士の自治を守ることがゆくゆくは市民の基本的人権を守り、社会正義の実現につながること、そして弁護士自治制度は、市民の権利を守るために必要不可欠な制度であることを御理解下さいますようにお願いします。
3.福岡県弁護士会の特徴
(1) 当会は、熱心な会員による委員会活動を中心として、弁護士会の会務活動が実践されています。
(2) 各種当番弁護士制度の発足と関係機関の連携
当会は、全国に先駆けて、平成2年当番弁護士制度を創設し、逮捕直後から、弁護士が被疑者のところに駆けつけ、被疑者の権利擁護に努めてきました。その後、全国に広がった当番弁護士制度は、16年の歳月を経て、ようやく今年の10月より、重大事件という限定的ながら、被疑者弁護人国選制度を実らせました。
(3) 当会は、その後も各種委員会が活発な活動をつづけ、常に日弁連をリードしてきました。全国に先駆けて、?刑事の当番弁護士制度のみならず、?精神保健付添当番弁護士制度、?福祉の当番弁護士制度、?少年事件全件当番付添人制度の各々の導入を実現しました。又、当会は、国際委員会による国際交流も盛んです。すでに15年前より始まった韓国釜山地方弁護士会との交流、そして中国大連市の法律家との国際交流も継続されています。私は、このような活発な委員会活動を展開してきた当会の先達の精神に学び、そして、福祉の当番弁護士などの活動を通じて培われた、行政、医療、福祉施設等々の関係機関との連携を大切にして、更に新たな視点で、市民のための司法改革を実践したいと考えています。
4.司法改革と当会の実践目標について述べます。
平成2年の日弁連・司法改革宣言に始まった市民のための司法改革は、いよいよ実践段階に差し掛かっています。ここで、司法改革の主要課題と当会の実践目標について御紹介します。
(1) 法科大学院と法化社会
(2) 日本司法支援センターの発足
今年4月から、独立行政法人「日本司法支援センター」が発足しました。10月からは、その業務が開始され、短期1年以上に該当する重大事件のみ、逮捕後勾留されたときから、被疑者に対し国選弁護人を選任します。この弁護人の選任作業を司法支援センターが担当し、弁護活動そのものは、各単位会の弁護士が担当します。
(3) 裁判員制度と法教育
司法改革の主要課題の一つである裁判員制度は、今から3年後の平成21年5月までに実施されます。憲法が国民主権を謳いながらも、市民が司法の分野に直接関わることはありませんでした。そこで、市民が裁判に直接参加することによって市民の感覚を裁判に反映させようとして実施されるのが裁判員制度です。
今から3年後に実施が予定されていながら果たしてどれだけの市民がその仕組みを知っているのでしょうか?
今後、当会は、種々の機会を利用して、法曹三者一体となって、市民に対し、広報活動を展開する所存です。
去る5月3日のどんたくに際しては、検察庁、弁護士有志や市民やく200人が、裁判員制度の広報宣伝のために、パレードに参加しました。
又、学校教育現場において、法律の背景にある基本的な価値観(正義や公平)や社会のルールを認識理解させ、そのような価値観に基づき問題を解決する能力を育成する「法教育」が必要です。当会は、中学・高校の社会の授業において、「法教育」を学んで貰うため、講師派遣出前授業を展開しています。これによって、中高生が将来の裁判員制度の担い手として成長して下されば幸いです。
(4) 高齢者・障害者支援センター(あいゆう)の法人化と福祉の当番弁護士の全国展開
平成12年4月から高齢者の介護保険制度と成年後見制度が導入されると同時に、当会は高齢者・障害者支援センター(あいゆう)を設立しました。
今や「あいゆう」の活動は、平成12年9月から実施された福祉の当番弁護士制度と相まって、行政や医療機関、施設関係者に絶大なる信頼と支持を獲ち得たと自負しています。
当会は、現在「あいゆう」の法人化を検討しています。
併せて、福祉の当番弁護士制度を刑事の当番弁護士同様、全九州並びに全国に展開したいと考えています。
(5) 弁護士過疎地対策と法律相談センターの拡充
司法改革の重要課題のもう一つに、弁護士過疎地対策があります。我が県内にも弁護士が存在しない地域があります。
私は、弁護士過疎地対策の一つは、法律相談センターの拡充ではないかと考えています。当会の法律相談センターは、昭和60年4月に発足し、現在の天神の法律相談センターを開設して20周年を迎えます。
現在では、福岡県内に法律相談センターが19ヶ所存在します。法律相談センターの数としては、東京の弁護士会に劣らず全国第1位です。当会は、福岡県民のために、「いつでも、どこでも、誰でも」容易に司法にアクセスできる体制を作っていきたいと思います。
5.行動の基本指針
ところで、昨今の商道徳や、行為規範を逸脱した幾多の社会現象(例えば、耐震偽造問題、ライブドアの粉飾決算、公共工事の談合、架空請求、オレオレ詐欺等の事件)は、一体何が原因なのでしょうか?
企業は、その活動に際して、所謂、社是、綱領といったその会社の行動の基本指針があったはずです。それが、規制緩和というお題目の下で、従来のタガがはずれた感が否めないのが、作今の情勢です。国家行動の基本指針は、所謂、国是といわれ、日本国憲法がそれに該当します。今、基本的人権の尊重と恒久平和を目標とする日本国憲法が改正されようとしています。国家の綱領ともいうべき憲法の改正については、慎重にあるべきだと考えます。国家のタガとも言うべき、憲法を軽々しく緩めるべきではありません。
先日、ある明治時代創業の某商事会社にあいさつに伺ったところ、九州支社長室には、会社の綱領が掲げてありました。
?所期奉公  ?処事光明  ?立業貿易
という三つの言葉です。企業活動は営利を目的とするのは、当然です。しかし、企業活動の基本は、公に奉仕するという精神が大切であるとその会社は昔から考えてきたのです。明治時代に創業者が考えたこの会社の行動の基本指針は、今も普遍の光を放って輝いています。
6.座右の銘
我々弁護士の行動の指針は、弁護士法1条の「基本的人権の擁護と社会正義の実現」であることは言うまでもありません。
さて、私が個人的に行動の指針又は座右の銘としているものは、「積誠動人」という言葉です。私の修猷館高等学校時代の恩師小柳陽太郎先生から戴いた言葉です。これは、『誠を積んで人を動かす』とよみます。孟子の言葉、「至誠人をも動かす」と同じ意味です。金を積んで人を動かす方もおられますが、最後に人の心を動かすものは、誠心、誠意であると確信しています。私は、今後これらの言葉を行動の指針としつつ、皆様を始めとする関係者各位と連携しながら、福岡の県民、市民のために真に役立つ弁護士会活動を展開して参りたいと思います。どうか、本日御列席の皆様には、当会の活動をよく御理解のうえで、御支援、御協力を下さいますようにお願いいたします。
終わりに、本日は、粗酒粗肴ではありますが、本日の宴が、お互いの交流の契機となり、実り多いものになりますように祈念申し上げて、ごあいさつとさせて戴きます。
本日はどうもありがとうございます。
以上
(於ホテルオークラ福岡)

共謀罪の新設に反対する会長声明

カテゴリー:声明

2006年(平成18年)5月8日
福岡県弁護士会 会 長 羽田野節夫
1 与党は、本年4月21日、「犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するために刑法等の一部を改正する法律案」(略称「刑法・組織犯罪処罰法等改正案」。以下「本法案」という)の修正案を衆議院法務委員会に提出し、今国会での成立を期し、5月9日の強行採決をも辞さない姿勢を示している。
2 福岡県弁護士会は、昨年8月31日、会長声明を発表し、本法案第6条の2に規定されている共謀罪について、以下のとおり広範な市民の人権が侵害される危険性を指摘して、その立法化に強く反対してきた。すなわち、
第一に、犯罪の実行着手前の意思形成段階に過ぎない共謀それ自体を処罰の対象とすることは、現行刑法の大原則である行為主義に真っ向から反している。
第二に、犯罪の合意そのものを処罰することにより、ひいては思想、信条の自由、表現の自由、集会・結社の自由などの憲法上の基本的人権が重大な脅威にさらされることは避けられない。
第三に、市民生活の隅々に及ぶ法律に規定されたおびただしい数の犯罪に関する「共謀」が処罰対象とされることになり市民生活は抑圧される。
第四に、「越境性」や「組織犯罪性」を要件としていない結果、いわゆる越境的組織犯罪集団とは関係のない団体もすべて取締りの対象にすることができる点で極めて危険であり、明らかに不当である。
3 このたびの与党の修正案は、?適用対象団体の活動を「その共同の目的が罪を実行することにある団体である場合に限る」とし、?共謀に加えて、「共謀に係る犯罪の実行に資する行為」を要求し、?思想良心の自由の侵害や団体の正当な活動の制限をしてはならないとの注意規定を設ける、というものである。
しかしながら、我々は、この修正案についても強く反対せざるを得ない。その理由は、
第一に、「団体」を国連条約が取締りを求める組織的犯罪集団に限定するものではない点でそもそも不当であるうえ、今回の修正案をもってしても犯罪を謀議したことを根拠に当該団体が「共同目的が罪を実行することにある」と認定される危険性は払拭されず、市民団体が際限なく適用対象となりうる点において、何らの限定にもなっていない。
第二に、「犯罪の実行に資する行為」という抽象的な概念を付加しても濫用の歯止めにはなり得ないのは明らかであり、行為主義を原則とする現行刑法体系に抵触する点で極めて不当である。
第三に、たとえ上記?の注意規定をもうけたとしても、そもそも構成要件自体が不明確なのであるから、抑止的効果は期待できない。
第四に、「共謀」の事実は関係者の供述のみで立証がなされうることから、ひとたび虚偽の供述がなされれば冤罪の発生を止めることは極めて困難で、こうした事態を我々弁護士は強く危惧せざるを得ない。
4 このように、共謀罪の新設は、人権侵害に至る危険性が極めて高く、捜査機関の権限が不当に強化されかねない点において、到底、容認することはできない。
よって、当会は再度その立法化に強く反対し、政府与党に対し、直ちにその立法化を断念するよう求める。
以上

福岡県弁護士会 〒810-0044 福岡市中央区六本松4丁目2番5号 TEL:092-741-6416

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