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カテゴリー: 声明

平等な高校無償化制度の実施を求める会長声明

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1 「公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律」(以下、高校無償化法案という)が衆議院で可決され、平成22年4月から施行される見通しである。
  高校無償化法案は、日本における高等学校等における教育に係る経済的負担の軽減を図り、もって日本におけるすべての子どもたちの教育の機会均等に寄与することを目的とし(1条)、制度の対象となる「高等学校等」には、「高等学校の課程に類する課程を置くものとして文部科学大臣が指定する」各種学校が含まれると規定する(2条1項)。しかしながら、朝鮮学校については政治的理由あるいは教育課程等の確認ができないなどの理由により、当面、高校無償化の対象とせず、本法2条1項の指定要件を第三者機関に検証させることとなる見込みである。
2 福岡県北九州市にある九州朝鮮中高級学校をはじめ、日本全国に10校ある朝鮮高級学校は2000人近くの生徒が学んでおり、それぞれ都道府県知事から各種学校としての認可を受け、確立されたカリキュラムにより安定した教育を長年にわたって実施している。そして、朝鮮学校の教育課程に関する情報は各種学校の認可を受ける際に必要に応じ提出され、現に日本の多くの大学が朝鮮高級学校の卒業生に対し「高等学校を卒業した者と同等以上の学力がある」として大学受験資格を認定し、実際に朝鮮高級学校の生徒は日本の国公私立大学に進学している。
  また、課外活動の分野でも、今年度の全国高校ラグビー選手権大会で大阪朝鮮高級学校ラグビー部が大阪府代表として全国3位の成績を上げる活躍だけでなく、全国高校サッカー選手権大会に複数の朝鮮高級学校が代表になるなど、朝鮮高級学校は日本社会から高等学校に準ずるものとして認知され、評価されている。
3 1998年2月及び2008年3月の日本弁護士連合会の勧告書が指摘しているように、憲法26条1項(教育を受ける権利)、同14条1項(平等権)、子どもの権利条約、人種差別撤廃条約及び国際人権規約(A規約)などにより、朝鮮学校に通う外国籍の子どもにも学習権(普通教育を受ける権利及びマイノリティ教育を受ける権利)が保障されており、その保障に関しては平等原則に違反してはならない。
  したがって、日本の私立学校や他の外国人学校と区別して、朝鮮学校のみを高校無償化制度の対象から除外することは、朝鮮籍だけでなく韓国籍、中国籍及び日本籍の朝鮮学校に通う子どもたちの学習権を侵害し、合理的理由のない差別であって、平等原則に違反する重大な人権侵害であると言わざるを得ない。
 なお、朝鮮民主主義人民共和国と同様国交のない台湾系の中華学校については、高校無償化制度の対象となることが想定されているのであるから、本国と国交のないことは朝鮮学校を対象外とする合理的理由とはならない。
4 よって、当会は内閣総理大臣及び文部科学大臣に対し、朝鮮学校を高校無償化制度から排除せず、速やかに本法2条1項の指定をするように強く求めるものである。
                            2010年3月25日                      
                           福岡県弁護士会         
                           会長  池 永   満  

ストリートビューに関する要請書

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要請書
福岡市長  殿
                    2010年(平成22年)3月10日
                      福岡県弁護士会 
                     会 長  池永 満
要請の趣旨
1 福岡市個人情報保護条例を改正し、市民の肖像などの情報が大量にインタ ーネット上に流出しない措置を講じて下さい。
2 それまでの間、個人情報保護審議会において、グーグル社のストリートビ  ューサービス等の多数の人物・家屋等を映し出すインターネット上の地図検 索に関する調査を実施するとともに、事業者に対し、不適切な市民のプライ バシーの収集・利用を行わないよう指導、是正勧告等の必要な措置(福岡市 個人情報保護条例52条)をとって下さい。
要請の理由
 当会は、2008年12月、Google(グーグル)社の「Street View(ストリートビュー)」機能サービスに対し、プライバシー権保護の観点から、問題点の抜本的解決を早急に図るよう求め、それができない場合には、このような画像の収集及びサービスの提供を中止するよう強く求める会長声明を発しました。
 それは、東京、大阪など12都市について、グーグル社のホームページ上で、事前の同意なしに広範に撮影された何万という市民の肖像が、地図情報と連動する形で突然公開されたためです。
当会は、グーグル社の行為に対し、撮影の場面において、①都市のほぼ全域にわたる広範かつ無限定の多数の市民の肖像を根こそぎ撮影していること、②高い位置からの撮影のため、撮影対象が家屋内にも及んでいること、③事前に公表目的での撮影を行うことを説明していないこと、などの問題点を指摘しました。
しかしながら、グーグル社は、これらの問題点に対処することなく、2009年12月、福岡市全域を含む福岡県の市民のプライバシー情報を公開しました。
すでに全国約40の地方議会において、これらの行為に対する対処を求める意見書が採択されています。
日本弁護士連合会も、本年2月3日に、第三者機関を設置する条例の改正や、個人情報保護審議会によるそれまでの対処を自治体に求める意見書を関係機関に送付しました。
福岡市においても、市民のプライバシー権を保護する観点から、市民情報が密かに撮影され、住宅地など、公開する必要性の乏しい地域を世界中にさらす行為を繰り返されないよう、所要の条例の改正をなされるとともに、それまでの間、個人情報保護審議会において直ちに調査に着手し、プライバシー権保護のために必要な措置を講じられるよう求めます。

改正貸金業法の早期完全施行等を求める会長声明

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改正貸金業法の早期完全施行等を求める会長声明
 
経済・生活苦での自殺者が年間7000人に達し,自己破産者も18万人を超え,多重債務者が200万人を超えるなどの深刻な多重債務問題を解決するため,2006(平成19)年12月に改正貸金業法が成立し,出資法の上限金利の引下げ,収入の3分の1を超える過剰貸付契約の禁止(総量規制)などを含む同法が2010年(平成22)年6月19日までの政令で定める日に完全施行される予定である。
改正貸金業法成立後,政府は多重債務者対策本部を設置し,同本部は①多重債務相談窓口の拡充,②セーフティネット貸付の充実,③ヤミ金融の撲滅,④金融経済教育を柱とする多重債務問題改善プログラムを策定した。そして,官民が連携して多重債務対策に取り組んできた結果,多重債務者が大幅に減少し,2008(平成20)年の自己破産者数も13万人を下回るなど,着実にその成果を上げつつある。
 他方,一部には,消費者金融の成約率が低下しており,借りたい人が借りられなくなっている,特に昨今の経済危機や一部商工ローン業者の倒産などにより,資金調達が制限された中小企業者の倒産が増加しているなどを殊更強調して,改正貸金業法の完全施行の延期や貸金業者に対する規制の緩和を求める論調がある。
 しかしながら,1990年代における山一証券,北海道拓殖銀行の破綻などに象徴されるいわゆるバブル崩壊後の経済危機の際は,貸金業者に対する不十分な規制の下に商工ローンや消費者金融が大幅に貸付を伸ばし,その結果,1998年には自殺者が3万人を超え,自己破産者も10万人を突破するなど多重債務問題が深刻化した。
改正貸金業法の完全施行の先延ばし,金利規制などの貸金業者に対する規制の緩和は,再び自殺者や自己破産者,多重債務者の急増を招きかねず許されるべきではない。今,多重債務者のために必要とされる施策は,相談体制の拡充,セーフティネット貸付の充実及びヤミ金融の撲滅などである。
そこで,今般設置される消費者庁の所管乃至共管となる地方消費者行政の充実及び多重債務問題が喫緊の課題であることも踏まえ,2006(平成18)年9月1日の当会の「例外なき金利規制を政府に強く求める会長声明」を実効化させるため、当会は国に対し,以下の施策を求める。
1 2010(平成22)年6月19日までに施行予定の改正貸金業法を早期(遅くとも本年12月まで)に完全施行すること。
2 自治体での多重債務相談体制の整備のため相談員の人件費を含む予算を十分確保するなど相談窓口の充実を支援すること。
3 個人及び中小事業者向けのセーフティネット貸付をさらに充実させること。
4 ヤミ金融を徹底的に摘発すること。
                       2009年9月9日
                       福岡県弁護士会
                       会長 池 永  満

消費者庁長官及び消費者委員会委員人事に関する会長声明

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消費者庁長官及び消費者委員会委員人事に関する会長声明
1 これまでの産業育成に重点を置いた行政から消費者・生活者の権利擁護のための行政に大きく転換をはかるべく,消費者庁関連3法が今国会で成立し消費者庁と消費者委員会がまもなく発足する運びとなっている。当会は,既に本年6月4日に消費者庁関連法成立に関し会長声明を発したところであるが,消費者庁長官及び消費者委員会委員(及び委員長)の人事は,今後の消費者行政のあり方に極めて重大な影響を及ぼすものであり,この度あらためて声明を行う次第である。
2 消費者庁は消費者問題に関する全省庁の司令塔としての役割を担う組織であり,その長官は,消費者の立場から組織の統制・指揮が期待できる人物でなければならない。また、消費者委員会は消費者庁から独立し消費者の権利擁護のために極めて強力な権限を与えられた組織である。その委員は「消費者が安心して安全で豊かな消費生活を営むことができる社会の実現に関して優れた見識を有する者のうちから」任命する(消費者庁及び消費者委員会設置法10条1項)とされている。したがって,各委員は,消費者委員会設置の趣旨を十分理解し,消費者の権利擁護のために,その強力な権限を行使することが期待できる人物でなければならない。その上,委員長は,委員の互選により選任すべきものである(同法12条1項)。
3 そこで,消費者庁長官及び消費者委員会委員について適正な人事がなされるよう,政府に対し,以下の各事項を要求する。
(1) 消費者庁長官選任にあたっては,消費者の立場から組織の統制・指揮が期待できる人物を選任すること
(2) 消費者委員会の発足にあたっては,現在の準備参与を直ちに委員に任命するべきでなく,どのような基準で同法10条にいう「見識」を有していると判断したのか,その任命基準を明確にし,その任命理由について十分な説明責任を果たすこと
(3) 消費者委員会委員の任命については,実際の消費者問題に精通し経験豊かな人物を選任すべきこと
(4) 消費者庁長官及び消費者委員会委員選任にあたっては,既に衆議院が解散され,新組織発足時には新内閣も発足しているという状況を踏まえ,慎重な人事を行なうこと
                  2009(平成21)年8月6日
                   福岡県弁護士会 会長 池   永  満

法令なしに警察の監視カメラを設置することに反対する声明

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法令なしに警察の監視カメラを設置することに反対する声明
 警察庁は、7億円の補正予算を用いて、全国15地域で、街頭監視カメラを設置するモデル事業を実施する。福岡県警は、その1事業として、2009年度中に、子どもの登下校中の防犯のためとして、福岡市中央区大名校区に25台の監視カメラを自ら設置し、地元民間団体に管理を委託するという。
 しかしながら、犯罪防止は、貧困や差別など犯罪の根本原因を取り除くための福祉施策の充実も含め、総合的な防止策を多角的に検討すべきである。
 そして、警察等による市民監視や不透明な個人情報の収集・利用は、個人のプライバシー権を侵害するばかりか、民主主義社会を支える言論・表現の自由を萎縮させる危険がある。
犯罪検挙のための警察の捜査手段は、具体的な嫌疑を前提とし、基本的人権を制約する場合には法令の根拠を必要とし、令状がなければ原則として行えないというのが憲法以下の法令の考え方である。犯罪防止のための監視が一定の場合に許されるとしても、具体的にその場所で起こり得る犯罪の軽重や蓋然性を度外視し、抽象的な「安全」や、単なる主観にすぎない「安心感」のために人権を制約することまで許されているのではない。
 警察自身による監視カメラの設置の場合は、京都府学連事件判決(最判昭44.12.24)、山谷監視ビデオ判決(東京高判昭63.4.1)、西成監視ビデオ判決(大阪地判平6.4.27)など、令状主義を重視する判決があり、これらの判決によれば、①犯罪の現在性または犯罪発生の相当高度の蓋然性、②証拠保全の必要性・緊急性、③手段の相当性がある場合を除いて、警察が自ら公道に監視カメラを設置することは認められない。
 ところが、全国的にも、福岡県下においても、犯罪は減少しており、大名校区で、特に通学路において犯罪が頻発しているとの事実は認められない。従って、その設置は、違法であるといわなければならない。
 そもそも、監視カメラの設置に関する基準をはじめ、捜査機関に市民の行動が提供されないよう、適正な手続きを定めてプライバシー権を保障する法律や条例の制定が必要不可欠である。
 当会は2007年7月21日、2008年4月1日にも同様の意見を述べているが、なんら法律や条例が制定されないまま警察主導による街頭監視カメラが増設されていることに対し強く遺憾の意を表するとともに、当該事業を撤回するよう強く求めるものである。
                    2009年(平成21年)7月31日
                  福岡県弁護士会会長 池 永   満

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