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商品先物取引法における不招請勧誘禁止緩和に抗議する会長声明

カテゴリー:声明

経済産業省及び農林水産省は、2015年(平成27年)1月23日、商品先物取引法施行規則の一部を改正する省令(以下「本省令」という。)を定め、商品先物取引について不招請勧誘の禁止規定を緩和することを公表した。

本省令は、当初の公表案を若干修正し、同規則第102条の2を改正して、ハイリスク取引の経験者に対する勧誘以外に、顧客が65歳未満で、年収800万円以上又は金融資産2000万円以上を有する者について、顧客の理解度を確認し、投資上限額を設定するなどの要件を満たした場合に、訪問や電話勧誘を許容する例外規定を盛り込んでいる。

この内容は、一定の年齢や一定の年収又は金融資産を要件としているものの、その要件を満たすかどうかの確認が電話または訪問によって行われることから、結果として、電話や訪問による勧誘を無制約に許容することになる。これでは法律が禁止した不招請勧誘を解禁するに等しく、このような内容を省令で定めることは法律の委任の範囲を超えて違法なものといわざるを得ない。

また、本省令は、要件確認の方法として、顧客に対し、年収や金融資産の申告書面を差し入れさせたり、書面による問題に回答させて理解度確認を行う等の手法を示しているが、いずれも業者が顧客を誘導して事実と異なる申告をさせたり、答えを誘導するなどの行為が蔓延してきたところであって、これらの手法が委託者保護のために十分機能するとは到底いえない。

当会は、2013年(平成25年)11月20日付けで、消費者保護の観点から商品先物取引における不招請勧誘禁止の撤廃には強く反対するとの会長声明を出していた。その後、全国のすべての単位会が不招請勧誘禁止の撤廃に反対する会長声明などを表明した。このような異例ともいえる事態のなかで、本省令は、法律を改正しないままに、不招請勧誘の禁止規定の原則と例外を逆転させるものであって、消費者保護の観点から許容することができず、また、法律の委任の範囲を超えて違法であるから、直ちに改廃し、このまま施行することのないよう強く求めるものである。

2015年(平成27年)3月26日
福岡県弁護士会 会長 三浦邦俊

司法予算の拡大を求める会長声明

カテゴリー:声明

1 我が国の司法予算(裁判所関係予算)は、長年にわたって低い水準にあり、国の一般会計予算比でわずか0.3%台で推移している。諸外国と比較しても、国家予算に占める割合が著しく低いと言わざるを得ない。平成26年度の司法予算額は約3111億円(うち人件費2599億円、物件費512億円)、平成27年度のそれは約3131億円(うち人件費2628億円、物件費503億円)である。
裁判所は国の三権の一翼を担い、様々な紛争を公平かつ適正に解決する機能とともに、正義を実現し、少数者・弱者の権利擁護の最後の砦としての役割を果たす大切な組織である。紛争を解決する、権利の侵害から救済する、違法な行為から身体や財産を守るという司法の役割を十分に発揮するためには司法予算の拡大が不可欠である。
今後、刑事・少年、民事のいずれの分野でも法的扶助の抜本的拡充が必要であり、裁判官の大幅増員や裁判所支部の充実などの司法基盤整備を進めるには、司法予算を現状よりも大幅に拡大する必要がある。

2 この点は、2001年(平成13年)6月の司法制度改革審議会最終意見書においても、「本改革の実現には、これに必要とされる人員・予算の確保が不可欠であり、厳しい財政事情の中にあって相当程度の負担を伴うものであるが、政府におかれては、・・・・・・大胆かつ積極的な措置を講じられるよう、強く要望」するとされており、さらに衆議院や参議院法務委員会も同年11月、「政府は、司法制度改革を実効あるものとするために、……特段(ないし万全)の予算措置を行うように努めること」との附帯決議をしているが、これが実行されているとは、到底、評価出来ない状態にある。

3 福岡県においては、福岡高等・地方・簡易裁判所(福岡市中央区城内)や福岡家庭裁判所(同区大手門)、福岡簡裁石城町分室(同市博多区石城町)を統合し、福岡市中央区六本松に移転集約化しようとしているところ、当会は、家庭裁判所については、高等裁判所及び地方裁判所と家庭裁判所とを同一の庁舎内に併設することには重大な問題があると指摘してきた。
つまり、基本的に公開を原則とする高等裁判所及び地方裁判所で取り扱われる民事事件や成人の刑事事件と、プライバシー保護の観点からの配慮が強く必要とされる少年事件や家事事件、なかんずくプライバシー保護に加えて少年の更生の観点が必要な少年事件は、別の施設であるのが原則であり、実際、これまで家庭裁判所は、高等裁判所及び地方裁判所とは別施設とされてきたのであり、裁判所自らがそのような原則を放擲されることは問題だと指摘してきた。
しかし、裁判所は、家庭裁判所について別の庁舎とすることは困難であるとするのみならず、同一庁舎とした場合の家庭裁判所エリアの独立性の確保ということについてさえ、独立した出入口やエレベーターを設けるなどして構造的に分離独立させることをせず、来訪者のプライバシーの保護や家庭裁判所としての平穏な雰囲気を作り出せる構造を採用しようとしない。このため、本年1月から高等裁判所庁舎で実施されているような来場者に対する手荷物検査が、家庭裁判所の来場者にも一律に実施されることになりかねないとの懸念を払しょくできない。

4 その原因の一つは、総事業費約180億円といわれる裁判所移転関係費につき、現在の大手門の家庭裁判所の敷地を売却することで費用を捻出するという財政上の制約にあると思われるが、仮に財政的な理由から、少年の心理的な安定の要請や家族間の紛争を解決する機関として平穏な雰囲気が求められている家庭裁判所を統合して移転するというのであれば、それは司法の不当な矮小化である。今後、各地において、このような経済的意味での施設の統廃合が進行することを強く懸念する。
そもそも司法の人的、物的基盤の脆弱さは、圧倒的に少ない司法関係予算に問題があると言わざるを得ず、この点が、国民の裁判を受ける権利に少なくない悪影響を及ぼしていることは、明らかである。よって、最高裁判所は、司法制度基盤の人的、物的基盤整備のために、財務省に対し、相応な予算を組むように強く求めるべきであって、政府、財務省は、最高裁判所の要求に応じ必要な予算措置をとるべきである。

5 国民の裁判を受ける権利を実質的に保障するためには、司法の役割を十分に発揮させるための人的、物的基盤の整備が必要であることは明らかである。当会は、家庭裁判所の統合問題に端を発して、国民の目線からは、司法予算の拡大をおこなうことが必要不可欠であることを訴えるために本声明を発するものである。

2015年(平成27年)3月11日
福岡県弁護士会
会  長  三 浦 邦 俊

「消費者安全法改正に伴う関係内閣府令(案)及びガイドライン(案)」に関する意見書

カテゴリー:意見

2015年(平成27年)2月10日
福岡県弁護士会 会長 三浦邦俊

第1 意見の趣旨

1 消費者安全法改正に伴う関係内閣府令案について

(1) 消費者安全法施行規則(以下「施行規則」という。)第7条第1項第1号後段及び同第2項第1号後段において,それぞれ「特定非営利活動促進法第2条第2項に規定する特定非営利活動法人若しくは一般財団法人その他都道府県知事が適当と認める者であること(但し営利団体は除く)」,「特定非営利活動促進法第2条第2項に規定する特定非営利活動法人若しくは一般財団法人その他市町村長が適当と認める者であること(但し営利団体は除く)」とする内閣府令にすべきである。

(2) 施行規則第7条第1項第1号前段及び第2項前段は,「委託を受ける事務を消費者の権利の尊重及びその自立の支援の観点からみて公正かつ中立に実施できるものであって」とする内閣府令にするべきである。

 地方公共団体が消費生活相談事務を委託する場合,内閣府令において,地方公共団体内に受託者に関する苦情窓口を設置することを義務付けるべきである。

 地方公共団体が消費生活相談事務を委託する場合,内閣府令において,都道府県及び市町村に対し,消費者が相談するに先立ち,受託者が相談を受けること及び受託者に関する苦情窓口を委託者である地方自治体が受け付けていることを周知する義務を負わせるべきである。

 地方公共団体による受託者への適切な監督・監視について,消費生活相談事務を委託する場合,内閣府令において,都道府県及び市町村は,消費生活審議会等を設置し,事務の委託について,審議を経ることを義務付けるべきである。

 改正消費者安全法の実施に係る地方消費者行政ガイドライン(案)(以下「ガイドライン案」という。)Ⅱ1.(1)エ「消費者生活相談等の事務の委託」について

(1) 以下の趣旨の記載を加えるべきである。

施行規則第7条第1項第1号及び第2項第1号の基準に適合するか否かの地方自治体の判断に際しては,以下の点に留意し,実施すべきである。

  • ・法人の目的ないし活動方針に鑑み,消費者トラブルに直接的な利害関係を有する者又は有する可能性がある者であるかどうか。
  • ・過去の活動実績が消費者の権利の尊重及びその自立支援に資する者であったかどうか。
  • ・積極的にあっせんの処理を行う意思があり,かつ態勢が整っているかどうか。
  • ・委託先の選定理由を明示すること

(2) 本文中「効果的かつ効率的に事務を実施できるといった効果が期待される一方で」を削除すべきである。

(3) 消費生活相談等の事務の委託により期待される効果と問題点(13ページ)につき「(1)事務の民間委託により期待される効果」を削除すべきである。

(4) 消費生活相談等の事務の民間への委託の際の留意点(14ページ以下)につき,「(1)事務の実施に関して」において,受託団体の責任者を通じた連絡調整しか許されないとの誤解が生じない記述とするべきである。また,受託者の監視につき,利益相反の有無及び自治体との連携等,具体的な監視項目を明示すべきである。

(5) 消費生活相談等の事務の民間への委託の際の留意点につき,「(4)消費生活相談等により得られた情報の活用に関して」において,受託者が,消費生活相談事務により得られた情報を自らの業務のために利用することは,地方公共団体の了解があったとしても認めるべきではない。

第2 意見の理由

1 意見の趣旨1(1)について

施行規則第7条第1項第1号後段及び同第2項第1号後段では,団体の属性に関し,「特定非営利活動促進法第2条第2項に規定する特定非営利活動法人若しくは一般財団法人」という例示をしておきながら,「その他」として,特段何らの制限もなく,地方公共団体の首長が適当と認める者を含めており,このままでは,団体の属性に着目した基準が骨抜きにされるおそれがある。そうならないためには,地方公共団体の首長が適当と認める者の範囲について,例示の趣旨に沿うように制限を設け,これを明記しておくべきである。

そして,その範囲に関してであるが,営利団体を除外すべきと考える。

当弁護士会は,福岡市に対し,2014年(平成26年)3月12日付「消費生活相談業務についての意見書」において,消費生活相談業務の委託先については,消費生活相談業務の趣旨を理解するとともに,十分な専門知識を有し,公正かつ信頼性のある立場において業務を執行することのできる団体に限定すべきであって,少なくとも営利団体への業務委託は不適切であり,改善すべきである旨の意見を述べているところであり,施行規則第7条第1項及び第2項の基準においても,上記意見書の趣旨と同様,営利団体を委託対象から除外すべきと考える。

上記意見書でも述べているが,除外すべき理由は,次のとおりである。

消費生活相談等の事務は,本来的に収益事業として成り立つ性質のものではない。にもかかわらず,営利団体がこれを受託しようとする場合には,営利を目的とする以上,何らかの利益が得られることを前提としているはずであるが,業務の性質上,消費者からの利益は想定できない。そうすると,その利益は事業者に由来するものといわざるをえない。消費者の立場からすれば,このように事業者に由来する利益が背景に存在すると受け止めるだけで,公平性・中立性に疑念を抱かざるをえない。これは,現に業務委託を受けた営利団体がその公平性・中立性の確保にいかに努めようとも避けることができないものである。したがって,その性質上必然的に公平性・中立性の確保が不可能な営利団体は,委託する際の基準において,あらかじめ除外しておくべきである。

また,このような制限を設けることにより,特定非営利活動法人や一般財団法人といった非営利団体を例示列挙した趣旨をより一層明確にし,徹底することにもつながり,その意味でも妥当である。

2 意見の趣旨1(2)について

営利団体を除外した上でなお,施行規則第7条第1項第1号前段及び第2項前段の「公正かつ中立」という要件は,非常に重要であり,これを要件とすること自体には賛成である。ただし,このままでは抽象的すぎるので,より具体的に示すため,「委託を受ける事務を消費者の権利の尊重及びその自立の支援の観点からみて」との文言を加えるべきである。

3 意見の趣旨2について

地方公共団体が安易に消費生活相談事務を外部委託することを防止する必要があり,また委託した場合には,受託者に対する適正な監視が求められるところ,適正な監視を行うには,監視・監督する側が,受託者に関する十分な情報を入手できる仕組みが必要である。そこで,受託者に関する苦情を委託者である地方公共団体が受け付けることとし,地方公共団体自身が必要な監督を行えるようにすべきである。また,地方公共団体が,受託者に関する情報を入手・保管すれば,議会や情報公開,審議会等を通じて,後日の検証が可能になる。

4 意見の趣旨3について

消費生活相談は,類型的にプライバシーに関わる内容が含まれる。そのような通常第三者へ知られたくない情報を消費者が申告する背景には,消費生活相談事務が,中立的・公益的な地方公共団体によって運用されていること,公務員が守秘義務を負うことに対する強い信頼感が前提として存在する。

ところが,消費生活相談事務が委託された場合,一次的に消費生活相談事務を取り扱う者は,地方公共団体及び公務員であるという前提を欠くことになる。そこでこの点を消費者へ予め知らせた上で,どのような個人情報を申告するのか,決定権を与えるべきである。

5 意見の趣旨4について

消費生活相談事務の受託者の監視は,適正な事務の執行に欠かせないものとして必要性が認められるところ,委託者による受託者の監視は,慣れ合いの危険が高い。そこで,客観性を担保するために第三者によるチェックを地方公共団体に義務付けるべきである。この点,新たに第三者機関を設置することは,地方公共団体の負担が大きいことから,既に多くの自治体で設置・運用実績がある消費生活審議会の審議事項にすることで,負担の軽減を図ると同時に,委託者と受託者の慣れ合いを一定程度防止することが可能である。

6 意見の趣旨5について

(1) 施行規則第7条第1項第1号及び同第2項における委託の基準をより具体的に示すため,ガイドライン案により詳細な判断基準を記載する必要がある。

例えば,その目的や活動方針に照らし,消費生活相談の当事者となる可能性があるような法人等については,受託開始時は利益相反のおそれがなかったとしても,受託期間中に利益相反が発生するおそれがある。そして,そのような事態が発生した場合,当該案件の処理が混乱するほか,消費生活相談の中立性・公正性に疑義が生じ,消費者行政全般に大きなマイナス要因となる。したがって,このような法人等が受託することがないよう,消費生活相談業務の受託者の基準を明確に記載する必要がある。

また,業務を受託した者が,真に消費者の権利の尊重及びその自立の支援の観点から業務を行うかどうかは,過去の活動実績も含めて判断することがより適切と考えられるため,当該要素をガイドライン案に加えることが望ましい。

さらに,効率性を重視し,相談業務を形式的に行い,あっせん処理を行わない委託先もありうる。しかし,消費者の権利実現の観点からはむしろあっせん処理を原則として考えるべきであり,あっせん処理を行わない委託先が相談業務に不適当であることは明らかであるため,「積極的にあっせん処理を行う意思があり,かつその態勢が整っているかどうか」という基準をガイドライン案に加えるべきである。

(2) ガイドライン案Ⅱ1.(1)エでは,「(1)事務の民間委託により期待される効果」として「地方公共団体の公務員以外の多様な人材が事務に従事することにより,人材及びサービス内容の多様性が確保される」,「委託期間は原則として1年単位であり,業務の実施状況により受託者が変わる可能性があることから,競争性が確保され,結果として効率的な事務の実施が可能となる」と指摘している(13ページ)。しかし,前者は,消費生活相談員という専門的な資格を有する者を配置すること自体が,一般職公務員以外の専門的かつ多様な人材を確保する目的で導入された人的体制であり,民間委託によって期待される効果ではない。また,後者は,消費生活相談業務は消費者問題に関する専門的な知識と実務経験の積み重ねによって得られる技能が必要であることから,再任回数の一律の制限(いわゆる「雇い止め」)を設けることがないよう,担当大臣及び長官による通知を繰り返し発してきたことと矛盾する。

このように,民間委託については,様々な問題が懸念されているほか,委託期間の限界から消費生活相談員の地位の安定が図られないという本質的な問題も存在する。このため,国は民間委託を推奨しているかの誤解を与えるような記載を控え,地方自治体は住民に説明できる委託先の選定理由を明示するべきである。

(3) ガイドライン案Ⅱ1.(1)エにおいて,「受託者において,地方公共団体の消費者行政担当部局との連絡調整を担当する(中略)責任者から偽装請負の疑いを排除すること」との記述は,消費者行政職員と受託団体の消費生活相談員・職員との連携が受託団体の責任者を通じてのみ行うことが許されるかのように受け止められるおそれがある,したがって,このような誤解が生じないよう表記を工夫する必要がある。

また,民間への事務の委託に関して,「地方自治体による受託者への監視を適切に実施するとともに,適切な監視(モニタリング)を定期的に行うこと。」とされているが,利害相反のおそれや自治体各部署との連携等具体的な監視項目を明示すべきである。

(4) 消費生活相談等により得られた情報の活用に関しては,受託者が,PIO-NETに接続することで,全国で発生するあらゆる消費者取引に関する情報を瞬時に何らの対価を必要とせずに入手できることを十分に考慮すべきである。営利団体の場合,自らの業務とは,営利追求を意味するが,地方公共団体が行う消費生活相談事務で得られた情報を特定の団体が営利目的で利用することについて,国民的なコンセンサスが得られているとは考えられない。税金で運用される消費生活相談事務が特定の受託者の営利に用いられる可能性については,慎重に検討されるべきである。

なお,本意見は,営利団体が自己の営利事業に消費生活相談事務の受託で得られた情報を利用することを制限する趣旨であるから,内閣府令7条に定める受託先の範囲から営利団体が除外された場合には,設ける必要はない。

以 上

「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案」(いわゆる「カジノ解禁推進法案」)に反対する会長声明

カテゴリー:声明

1 国際観光産業振興議員連盟(通称「IR議連」)に所属する国会議員によって、「特定複合観光施設区域の整備に関する法律案」(以下「カジノ解禁推進法案」という。)が国会に提出され、衆議院において継続審議となっている。

カジノ解禁推進法案は、刑法第185条及び第186条で処罰の対象とされている「賭博」に該当するカジノについて、一定の条件の下に設置を認めるために必要な措置を講じるとするものである。

しかしながら、経済効果のみが喧伝され、深刻な社会に対する影響等についての検討がなされていない。また、賭博であるカジノを合法化するような正当な理由は何ら認められないため、到底容認できない。

2 そもそも、カジノが合法化されることにより、「暴力団員その他カジノ施設に対する関与が不適当な者の関与」、「犯罪の発生」、「風俗環境の悪化」、「青少年の健全育成への悪影響」、「入場者がカジノ施設を利用したことに伴い受ける悪影響」(カジノ解禁推進法案10条)等の弊害が生じることが確実に予想される。

ギャンブル依存症の問題も深刻である。ギャンブル依存症は、経済的破綻をもたらすのみならず、自らを死に追いやる危険性もある重篤な疾患である。

ギャンブルをするために借金を繰り返す者が現れることも必至であり、多重債務者問題対策が一定の効果を上げているにもかかわらず、これに逆行して、再び多重債務者が増加する可能性が極めて高く、多重債務問題と共にヤミ金問題の再然も大いに危惧されるところである。

合法的賭博が拡大することによる青少年の健全育成への悪影響も看過できない。カジノができることにより、住環境、教育環境の悪化は避けられず、賭博に対する抵抗感を喪失させることにつながりかねない。

さらに、資金源獲得を目的とする暴力団の関与を完全に排除することは極めて困難であるといわざるを得ない。

仮に、カジノ解禁推進法の成立だけを理由に、日本人のカジノ利用や規制については別の法案で定めるとの修正がなされたとしても、その内容も不明確である上に、以上の問題点が払拭されることは無い。

3 刑法が賭博を禁じている主な趣旨は、「勤労その他正当な原因によらず、単なる偶然の事情により財物を獲得しようと他人と相争うものであり、国民の射幸心を助長し、勤労の美風を害するばかりでなく、副次的な犯罪を誘発し、さらに国民経済の機能に重大な障害を与えるおそれがあることから、これを社会の風俗を害する行為として処罰すること」(第186回国会衆議院内閣委員会における政府参考人の答弁)にあるところ、カジノ推進法案が成立すれば、刑事罰をもって賭博を禁止してきた立法趣旨が損なわれ、様々な弊害が生じることは必至である。

よって、当会は、カジノ解禁推進法案に強く反対の意見を表明し、カジノ解禁推進法案の廃案を求めるものである。

2014年(平成26年)10月15日
福岡県弁護士会
会長 三浦邦俊

福岡拘置所小倉拘置支所の建て替えの予算措置等を求める要望書

カテゴリー:要望書

平成26年7月25日

内閣総理大臣     安倍 晋三 殿
法務大臣       谷垣 禎一 殿
法務省矯正局長    西田  博 殿
法務省福岡矯正管区長 竹下 正宏 殿

福岡県弁護士会
会 長 三 浦 邦 俊
福岡県弁護士会北九州部会
部会長 前 田 憲 徳

福岡拘置所小倉拘置支所の建て替えの予算措置等を求める要望書

第1 要望の趣旨

1 福岡拘置所小倉拘置支所(以下,「小倉拘置支所」という。)の建て替えのための事業費を来年度予算として計上すること,および,仮拘置所建設のための予算措置を早急に講じること

2 仮拘置所を建設するにあたっては,無罪の推定を受ける未決拘禁者の基本的人権や弁護権に最大限配慮すること

3 当会に新小倉拘置支所の設計図面等を早期に開示するとともに,開示後に当会の意見を聞くための協議の場を設置することを強く要望する。

第2 要望の理由
1 要望の趣旨1について

(1)未決拘禁者は,無罪推定の原則の適用を受ける者であり,刑事手続のために身体拘束される他は一般市民と同様の立場にあることから,拘置所内の生活においても,できる限り一般市民と同様の生活が保障されなければならない。

(2)しかしながら,小倉拘置支所は昭和35年に築造された建物であり,既に築後50年以上が経過しているため,建物の老朽化は著しく,建物の各所で塀の倒壊や外壁の落下等の危険が生じ,未決拘禁者や面会に来る市民及び小倉拘置支所職員の生命・身体への危険が生じ得る状態となっている。
また,小倉拘置支所は,昭和25年公布の旧耐震基準に基づいて建築された建築物であり,現在の耐震基準を満たしていない上,建物の駆体部分の老朽化も著しい。そのため,地震等の自然災害が発生した場合には,甚大な被害が生じる危険性が極めて高い。
さらに,給水設備については,蛇口からは赤水が出る,トイレの水の流れが弱いために排泄物がなかなか流れない等,設備使用上の不具合が生じており,未決拘禁者の生活環境は極めて劣悪な状況におかれている。未決拘禁者の収容部屋についても,雨漏りが発生する部屋が多数存在する上,室内でダニが発生する,布団から虫が出る,カビが発生する等,衛生面における問題も極めて深刻である。
この点,2014年(平成26年)年5月23日に,当会北九州部会の会員が小倉拘置支所を見学した際に,内部の状況を確認したが,未決拘禁者の劣悪な生活環境については一向に改善が見られなかった。
このように,無罪推定の原則の適用を受ける未決拘禁者が,現在の小倉拘置支所の劣悪な生活環境の下で収容されることは,未決拘禁者の基本的人権を侵害するものであり,かかる状況は一刻も早く改善されなければならない。

(3)ところが,小倉拘置支所の建て替えに必要な事業費は未だ予算化されておらず,建て替えの際に必要不可欠となる仮拘置所建設のための予算措置も未だ講じられていない。
このままでは,小倉拘置支所の建て替えが遅延することは確実な状況であり,建て替えが遅延することは,未決拘禁者の基本的人権の侵害状況が継続することを意味する。
したがって,予算措置の遅れによって,小倉拘置支所の建て替えが遅延するといった事態は絶対に避けなければならない。

(4)また,仮拘置所が完成しなければ小倉拘置支所の建て替えに着手できない以上,仮拘置所建設のための予算措置についても,小倉拘置支所の建て替えにも匹敵するほどの重要性をもっていることから,仮拘置所建設のための予算措置を早急に講じる必要がある。

(5)そこで,当会としては,小倉拘置支所の建て替えを早急に行うべく,そのための事業費を来年度予算として計上すること,および仮拘置所建設のための予算措置を早急に講じることを強く要望する次第である。

2 要望の趣旨2について

(1)小倉拘置支所の建て替えの際の仮拘置所についても,無罪の推定を受ける未決拘禁者を収容する施設である以上,新拘置所の建築が完了するまでの暫定的な施設であるからといって,未決拘禁者の基本的人権や弁護権が軽んじられるような施設や設備となることは断じて許されない。

(2)そのため,仮拘置所内においては未決拘禁者と既決囚を峻別し,未決拘禁者の生活環境にも十分に配慮した施設とすることにより,未決拘禁者の基本的人権に最大限配慮することを強く要望する。
また,弁護人接見室の数が現在の小倉拘置支所の3室より減少したり,接見室内の防音性能が低下したりすることによって,弁護権の保障が妨げられる事態のないよう配慮することも強く要望する。

3 要望の趣旨3について

(1)未決拘禁者の基本的人権に最大限配慮した拘置所を建設するためには,未決拘禁者の人権を制約する立場にある拘置所側の意見のみに基づいて設計・建築を行うのでは不十分である。
この点について,当会は,これまで,小倉拘置支所の未決拘禁者に対するアンケート調査を実施して,現在の小倉拘置支所における問題点を明らかにするとともに,未決拘禁者の基本的人権への配慮という点で高い評価を受けている大韓民国のソウル拘置所の視察を行い,未決拘禁者の基本的人権に配慮した拘置所の建設に向けた様々な活動を行ってきた実績がある。
そのため,小倉拘置支所の建て替えに際しては,この問題に恒常的に取り組んできた当会の関与を認める必要性は極めて高い。

(2)そして,当会は,2013年(平成25年)11月に小倉拘置支所建て替えに関する具体的な要望書を提出したが,新拘置所の設計や設備が当会の要望を反映し,未決拘禁者の基本的人権に最大限配慮されたものとなっているかを検証するためには,新拘置所の設計図面等の内容を確認することが必要不可欠である。
ところが,当会は,未だ新拘置所の設計図面等の開示を受けておらず,新拘置所の設計や設備が未決拘禁者の基本的人権に十分配慮されたものとなっているかを確認できていない状況にある。

(3)そこで,当会は,早期に新拘置所の設計図面等の開示を要望するとともに,設計図面等の開示を受けた後には,当会の意見を聴取するための協議の場を設けることを強く要望する次第である。

以上

福岡県弁護士会 〒810-0044 福岡市中央区六本松4丁目2番5号 TEL:092-741-6416

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