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死刑執行に関する会長声明

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死刑執行に関する会長声明
1 本年7月28日,大阪拘置所において2名,東京拘置所において1名の合計3名の死刑確定者に対して死刑が執行された。
これは昨年の15名,本年1月の4名に対する執行に引き続き,森英介法務大臣の就任後3度目の死刑執行である。このように短期間に,連続して多数の死刑執行がなされていることに対し,当会は,厳しく抗議するものである。
2 我が国では,過去において,4つの死刑確定事件(いわゆる免田事件,財田川事件,松山事件,島田事件)について再審無罪が確定している。また,本年6月にも,無期懲役刑が確定した受刑者に対する再審開始決定がなされ(足利事件),これを契機に精度の低いDNA鑑定に依拠した裁判の問題点が指摘されるという事態も生じている。これらの過去の実例が示すとおり,死刑判決を含む重大事件においても誤判が存在することは客観的な事実である。
3 しかも,我が国の死刑確定者は,国際人権(自由権)規約,国連決議に違反した状態におかれているというべきであり,特に,過酷な面会・通信の制限は,死刑確定者の再審請求,恩赦出願などの権利行使にとって大きな妨げとなっている。この間,2007年(平成19年),刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律が施行されたが,未だに死刑確定者と再審弁護人との接見に施設職員の立ち会いが付されるなど,死刑確定者の権利行使が十分に保障されているとは言い難く,このような状況の下で死刑が執行されることには大きな問題があるといわなければならない。
4 国際的にも,1989年(平成元年)に国連総会で死刑廃止条約が採択されて以来,死刑廃止が国際的な潮流となっている。1990年当時,死刑存置国は96か国で死刑廃止国は80か国だったのが,昨年(2008年)現在では,死刑存置国は59か国で死刑廃止国及び死刑停止国は138か国となっている。さらに,昨年12月18日には,国連総会において,すべての死刑存置国に対して死刑執行の停止を求める決議案が採択された。また,2007年(平成19年)5月18日に示された,国連の拷問禁止委員会による日本政府報告書に対する最終見解・勧告においては,我が国の死刑制度の問題が端的に示された。すなわち,死刑確定者の拘禁状態はもとより,その法的保障措置の不十分さについて,弁護人との秘密交通に関して課せられた制限をはじめとして深刻な懸念が示された上で,死刑の執行を速やかに停止すること,死刑を減刑するための措置を考慮すべきこと,恩赦を含む手続的改革を行うべきこと,すべての死刑事件において上訴が必要的とされるべきこと,死刑の実施が遅延した場合には減刑をなし得ることを確実に法律で規定すべきこと,すべての死刑確定者が条約に規定された保護を与えられるようにすべきことが勧告されたのである。しかも,昨年10月には,国際人権(自由権)規約委員会により,我が国の人権状況に関する審査が行われ,我が国の死刑制度の問題点を指摘するともに制度の抜本的見直しを求める勧告がなされた。
5 このような中で,我が国の死刑制度の抱える問題点について何ら改革が講じられることなく,今回の死刑執行が行われたことは極めて遺憾であり,当会としてはここに政府に対し強く抗議の意思を表明するとともに,今後,死刑制度の存廃を含む抜本的な検討がなされ,それに基づいた施策が実施されるまで,一切の死刑執行を停止することを強く要請するものである。
20009年(平成21年)7月30日
福岡県弁護士会
会長 池永 満

生活保護「母子加算」制度の復活を求める会長声明

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      生活保護「母子加算」制度の復活を求める会長声明
 生活保護における「母子加算」(削減前の月額は都市部で2万3,260円、支給要件は15歳以下の児童を養育していること)は、厚生労働省告示により、段階的削減を経て本年4月1日に完全に廃止され、約10万世帯のひとり親世帯、約18万人の子どもが影響を受けることとなった。母子加算の廃止による収入減のために、十分な医療を受けることができなかったり、高等学校の入学に際しての費用や学費が支払えず、進学や通学を断念したり、また、修学旅行や部活動への参加が不可能となったりする子どもたちが続出することが懸念される。かかる事態は子どもの生存権・成長発達権・教育を受ける権利の保障の観点から看過することができない。
 母子加算廃止の論拠として、「一般母子世帯の消費生活水準との均衡」、すなわち、母子加算を受給している世帯の消費生活水準が生活保護を受けていない一般母子世帯の消費生活水準を上回ることが挙げられている。
しかしながら、一般母子世帯の8割以上は働いているにもかかわらず、その年間の就労収入は、平均171万円に過ぎず、本来、生活保護の受給が可能でありながら受給できていないのがその実態である。生活保護基準以下の生活を強いられている一般母子世帯が多数存在することは、母子加算を廃止する根拠とはなりえず、母子加算は廃止すべきではなかったと言わざるを得ない。
 当会会員が多数訴訟代理人を務めたいわゆる生活保護学資保険裁判の最高裁判決は、2004年3月16日、高校修学が生活保護制度で保障されていない当時の状況下で、「近時においては、ほとんどの者が高等学校に進学する状況であり、高等学校に進学することが自立のために有用であるとも考えられるところであって、生活保護の実務においても、前記のとおり、世帯内修学を認める運用がされるようになってきているというのであるから、被保護世帯において、最低限度の生活を維持しつつ、子弟の高等学校修学のための費用を蓄える努力をすることは、同法の趣旨目的に反するものではないというべきである」と判示し、高校修学の有用性を宣言した。これを受け、2005年度から、生活保護制度において生業扶助として高校修学費用の一部が支給されることともなった。ただ、この支給の基本額は月額5,300円程度であり、修学旅行積立金・課外活動費等を含む毎月の修学費を賄える金額ではない。そのために、これまで、ほとんどの母子世帯は、支給される加算の一部をきりつめ子どもの高校修学費用に充てたり、そのために蓄えたりしてきた。母子加算が無くなると、それが著しく困難になる。母子加算の廃止は、保護世帯の高校修学の有用性を宣言した先の最高裁判決の趣旨を踏みにじるものである。
 当会は、わが国の社会において、貧困と失業が拡大し続け、国民の生存権が重大な危機に瀕している現状の中で、本年度、「生存権の擁護と支援のための緊急対策本部」を設置し、2009年5月25日の定期総会において、「すべての人が尊厳をもって生きる権利の実現をめざす宣言」を行った。弁護士会として、生活保護受給を求める申請代理人の活動等による法的緊急支援サービスに取組み、社会的セーフティ・ネットを再構築するために、できうる限りの活動を推進することを宣言するとともに、国及び地方自治体に対し、社会保障費の抑制方針を改め、また、ホームレスの人も含め社会的弱者が社会保険や生活保護の利用から排除されないように、社会保障制度の抜本的改善を図り、セーフティネットを強化すべきという呼びかけを行った。
 また、以前から、当会は、2007年10月29日には「生活保護基準の引き下げについて慎重な検討を求める声明」、同年12月5日には「生活保護基準の引き下げに反対する声明」を発出し、生活保護基準に関する議論は、公開の場で広く市民に意見を求めた上、生活保護利用者の声を十分に聴取して十分に時間をかけて慎重になされるべきである旨の意見をその都度表明してきたところである。
 当会は、母子家庭の子どもたちが尊厳をもって成長し、貧困が次世代へ再生産されることのないよう、国会において、母子加算を従前の保護基準に戻し、かつこれを法律で定めるよう強く要請するものである。
  2009年(平成21)7月9日
  
                      福岡県弁護士会
                      会 長  池  永   満

海賊対処法に反対する会長声明

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海賊対処法に反対する会長声明
1 今国会に上程されていた「海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律」案は,6月19日,参議院で否決されたにもかかわらず,同日,衆議院の特別多数決で再可決するという形で成立した。しかし,同法は,以下に述べるとおり,日本国憲法に違反するおそれが極めて強いものである。したがって,当会はこの法律の制定に強い遺憾の意を表明するものである。
                       記
① 自衛隊の海外活動に関する憲法上の制約への違反
同法は,海上保安庁が海賊行為へ対処することに加えて,自衛隊が海賊対処行動を行うことや一定の場合に自衛官が武器を使用することができる旨を規定する一方,その活動地域や保護対象となる船舶について何らの限定も加えていない。しかも,同法は緊急な事態に対処する特別措置法ではなく,恒久的な対応法として位置づけられている。しがたって,同法によれば,自衛隊が,領海の公共秩序を維持する目的の範囲(自衛隊法3条1項)を大きく超えた全世界の公海上で,全ての国籍の船舶に対する海賊行為に対処し,一定の場合には武器使用まで行うことを可能にすることになる。
しかしながら,日本国憲法は,恒久平和主義の精神に立ち,その第9条は武力による威嚇又は武力の行使を放棄し一切の戦力不保持,戦争放棄を宣言しているのであるから,本来,自衛隊の海外活動については,憲法上大きな制約が課されていると解されるところであり,同法はこの憲法上の重大な制約に違反するおそれが極めて大きい。
② 恣意的な武器使用につながる危険が大きいこと
しかも,同法では,自衛官が船体射撃(海賊船の機関部をめがけての射撃)や危害射撃(人に危害を与える射撃)を行う要件が,「他に手段がないと信ずるに足りる相当な理由」(同法6条)など,きわめて曖昧な規定内容となっているため,恣意的な判断の下に安易な武器使用がなされる危険性を否定できない。このような権限を自衛官に与えることは,一切の武力行使を禁止した憲法9条に違反するおそれが極めて大きい。
③ 民主的統制の観点からも重大な問題が存すること
さらに,同法は,自衛隊の海賊対処行動の判断は,内閣総理大臣の承認のもと防衛大臣が行うものとし,内閣総理大臣は国会に事後的な報告をすれば足りると規定しており,国会は承認機関ですらない。そして,海賊対処行動が急を要する場合には,内閣総理大臣の承認すら不要としている。このように同法は,海賊対処行動の権限を防衛大臣に集中させた内容となっており,民主的統制の観点からも重大な問題を有すると言わざるを得ない。
2 結論
現に海賊行為が行われているソマリア沖の問題を解決するために我国を含めた国際協力が必要であることは言うまでもない。しかしながら,武力を放棄し恒久平和主義を宣言した日本国憲法を有する我が国がとるべき国際協力の方法は,自衛隊の海外派遣という手段ではなく,無政府状態を原因とする貧困状態の解消に向けた支援活動など非軍事的国際協力によるべきである。したがって,海賊対処法は執行することなく,速やかにその廃止の手続きが執られるべきである。
以上
2009年6月25日
福岡県弁護士会 会長 池 永  満

福岡県弁護士会会長日記

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福岡県弁護士会会長日記
その1 予定者から会長就任10日間まで
平成21年度 会 長
池 永  満(29期)
はじめに
月報原稿〆切の関係上、「会長就任挨拶」を掲載していただいているはずの4月号月報も未だ手にしていないのに、早くも5月号掲載予定の原稿を提出しなければならないということで、何を、どのように書くべきものか、いささか戸惑いがあります。(ちなみに、この原稿の締切日は4月10日)
しかし、せっかく貴重な紙面を使わせていただけるのですから、会員の皆さんがこの記事を読まれる段階では事態が進行し時期遅れになっているかも知れませんが、これから1年、皆さんの協力をいただきながら円滑な会務運営をすすめていくためにも、会長としての日々の行動や思いを率直に語らせていただく形で「会長日記」を綴っていきたいと思います。
重点課題の設定作業と役員就任挨拶回り日程の調整
私が会長立候補を決断した直後に田邉前会長から聞いたことは、3月下旬から4月中旬にかけて行われる役員就任挨拶回りが大変過重であり、5月の県弁総会にむけて弁護士会としての基本方針の策定や予算組み等に十分な時間と力を割くことが出来なかったということでした。
そこで私たちは無投票当選確定直後の2月9日(月曜日)から毎週1回正副会長予定者による定例会議(4月からは執行部会議に移行)を行うこととし、前執行部からの引継を受けての合宿(2月28日)や各委員会委員長や次期予定者からの重点課題等に関する意見聴取等の集約を進めて、4月4日の第1回常議員会には重点課題に関する執行部の「所信表明」を提出することができました。
また、重点課題の具体化を検討していただくための関連委員会協議会や担当委員会の対応体制強化等について協議する日程を確保するために、就任挨拶回り日程を大胆に調整し、法科大学院や北九州司法記者クラブなど今年度新たに追加した6団体を加えても前年度から半減(約180を90に)させることにしました。削減の基準としては、・県レベルのものを基本とし、市区レベルのものについては拠点に限り、それ以外は各部会での挨拶回りをお願いする。・就任挨拶目的に限定し、提携業務等の依頼については担当副会長において別途そのための訪問等を行うことにする、というものです。
ゆとりを持った訪問日程にしたため、相手方にあわせて当方で検討中の重点課題について紹介することが出来、相手方からも弁護士会活動に対する多様な意見をお聞きできて良かったと思います。まだ後1日分の日程が残っていますが、それほど疲労感もなく就任挨拶回りを終えることが出来そうです。但し、就任挨拶では失礼した相手方に対する今後のフォローについては忘れないようにしたいと思います。
なお、就任挨拶回りに併行して、弁護士会館や地域における弁護士会の顔である相談センター職員との懇親会を設定し、また各地の相談センターも全て訪問することにしました。そこで浮かび上がった設備上の課題等の改善に関して相談センター運営委員会や各部会での検討依頼を行いました。
委員委嘱を巡る苦行の遂行
私は立候補にあたり、多重会務を解消し「全員野球の弁護士会」をつくりたいと所信を表明しました。
その所信を実行するために、委員委嘱に関しては本人希望と委員長推薦を基本とするが多重会務になる場合には本人希望を優先して調整すること、仮に希望を出さない場合でも1つ以上の委嘱はおこなうこと、従って多くの会員の皆さんに希望調査票を提出していただくために前執行部に無理なお願いをして第2次希望調査表の配布を行ってもらい、その際には希望調査の対象委員会も可能な限り拡大いたしました。 
そうした方針に関しては、前執行部が招集して2月16日に開催された委員長会議においても表明し、委員会が必要な人材については是非本人から希望調査票が提出されるよう手配いただきたいとお願いしました。
委員長会議においては、委員会の必要な人材については委嘱してほしいと言う委員長としては当然の意見も多く出されましたが、会員数が急速に拡大している今こそ多重会務を解消するチャンスだとか、それが実現すれば画期的なことだと思うとして、私の方針の成否を見守ろうとする意見も出されました。私はこの声に勇気百倍の思いでした。多重会務をなくす努力は過去の執行部においても何度か試みられましたが、年々委員会の縦割りが進行し執行部自身が新たに発生した課題に対応するために新委員会やPTを立ち上げざるを得ないということから多重会務者をみずから生み出していくという悪循環から脱出する試みは、挫折の歴史でもありました。
予定者会議でも数度にわたり議論を重ね、今年度においては新たな課題が発生しても安易に新委員会やPTは立ち上げず、既存の委員会や関連委員会の協議により対応すること、むしろ委員会の統廃合を進めて力の結集をはかること等を組織的な重点課題の一つとして取り組むことを確認した上で、前述の委嘱方針にもとづいて相島業務事務局長の大変な作業に依拠しながら委員委嘱作業を進めました。
変化をもたらそうとする以上は色んなリアクションが予想される中で、会長として最終責任を取るためにも私自身がこの作業に全面的に関わることにしました。その副産物と言っては何ですが、それぞれの委員会活動を支えている構造とその特徴や力持ちの配置状況などが会務から遠ざかっていた私の頭にもよく入り、また多重会務の会員とも直接話をすることが出来ました。各部会による県弁委員会に対するスタンスの違いもわかりました。この作業も明日あさっての週末で基本的に完了します。この作業を通じて得たデータや執行部としての認識、出された色んなご意見等を含めて委員長会議や機構財務委員会等にも資料提供し、数年後には1,000名規模になろうとしている公法人としての弁護士会活動における継続性の担保の仕方や委員会活動における世代交替や活性化、委員会の統廃合などをテーマにした会内議論を本格的に進めていきたいと思います。

消費者庁関連法成立に関する会長声明

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 2009年(平成21年)5月29日,消費者庁及び消費者委員会設置法,並びに同法関連法案が参議院本会議において全会一致で可決成立しました。
 これらの法律は,これまでの産業育成の行政から消費者のための行政に大きく転換し,また従来の縦割り行政を打破して,消費者行政全般を司る司令塔としての役割を果たす消費者庁を設置するものです。しかも,当初の政府案に対し,衆議院での超党派の修正により,内閣府に独自の組織として消費者委員会が設置され,その独立と権限が強化されています。
 この消費者庁及び消費者委員会は,国の仕組みの変革の基点となるものであり,このような極めて重要な国の組織変更を超党派の合意により断行したことは極めて画期的なことであり,高く評価します。
 当会は,2008年(平成20年)6月18日に強力な消費者行政を一元的に担う組織を造ること,地方消費者行政をより充実させること,違法収益のはく奪等に関する実効的な法制度を導入すること等を求める「消費者行政の一元化と地方の相談体制強化を求める会長声明」を発表しています。今回,会長声明で求めた事項につき,その実現に向けた大きな第一歩が踏み出されたことは,繰り返されてきた消費者被害の防止と救済のための大きな前進であって,心より歓迎します。
 同時に,当会は,消費者庁及び消費者委員会設置法の附則並びに衆議院と参議院の附帯決議で,今後の検討課題とされた、地方消費者行政の充実のために多くの弁護士が相談員の方々とともによりよい解決に向けて努力すること,市民の手による消費者被害の防止のための重要な制度である適格消費者団体の福岡県での設立を支援すること,悪質業者が得ている違法な利益を被害者に回復させることなどの課題について,消費者の権利擁護の立場から積極的に努力を続けていく所存です。
2009年(平成21年)6月4日
福岡県弁護士会
会 長  池永 満

福岡県弁護士会 〒810-0044 福岡市中央区六本松4丁目2番5号 TEL:092-741-6416

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