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カテゴリー: 会長日記

会長日記

カテゴリー:会長日記

会長事始め
平成25年度福岡県弁護士会  会 長  橋 本 千 尋(36期)
■就任のご挨拶のための訪問
福岡県弁護士会の会長以下の役員は、関係各所に訪問して就任のご挨拶をしています。任期は1年なので、毎年、このような活動を繰り返していることになります。
訪問先の数は、各年度の会長の方針やその時点における弁護士会の抱えている課題によって異なりますが、最低でも100カ所以上のところを訪れます。
訪問させていただく先は、裁判所・検察庁などの法曹関係機関はもとよりですが、国の行政機関、自治体とその関係機関、商工会議所などの日頃から連携している各種民間団体、報道機関、政党、領事館など様々です。
■訪問するにあたっての方針
弁護士会としては、単なる儀礼的な挨拶ということではなくて、一定の獲得目標のようなものを持って臨みます。
法曹関係機関については、これから1年間の任期中の様々な折衝や協働に備えての事前のご挨拶という面が大きいと考えていますが、当然ながら今年は当会の不祥事を踏まえたお詫びや対策の説明もさせていただき、それに対する厳しいご指摘等もいただきました。
それ以外の訪問先の場合は多種多様ですが、そのうちの幾つかについて報告させていただき、それによって当会の活動の一端のご紹介とさせていただきます。
■「行政連携のお品書き」
自治体につきましては、福岡県はもとより、福岡市、北九州市をはじめとした県内の主要な市のほとんどを訪問させていただきました。そして、日程調整のつかなかったわずかな例外を除いては、首長ご本人との面談の時間をとっていただきました。
その際に所謂トップセールスという形で、行政機関と弁護士会の活動の連携の強化について協議させていただきました。「行政連携のお品書き」というリーフレットを説明に使いましたが、これは弁護士会が行っている法教育、中小企業支援、DV問題、高齢者・障がい者問題、児童虐待などなど、既に行政機関と連携して活動している分野について、連携実績のある自治体名を挙げながら分野別に分類し、且つ、網羅したものです。自治体の方々からは、どのようなことを弁護士会に依頼できるのかとか実績や連絡先などの情報もまとめられていて大変わかりやすいと好評でした。
実は、このようなスタイルのリーフレットを発案したのは大阪弁護士会であり、当会でこれを作成したのは前年度の古賀和孝会長です。大阪弁護士会の先見の明と古賀前会長のご配慮に敬意を表する次第です。
■任期付き公務員
今年の自治体に対するトップセールスはもう一つありまして、任期付き公務員についての説明もさせていただきました。任期付き公務員というのは、現役の弁護士が弁護士資格を持ったまま、一定の期間、自治体の公務員になるという制度です。既に、福岡市と古賀市で福岡県弁護士会の会員が自治体職員として働いています。仕事の内容は自治体によって様々で、福岡市の場合は児童虐待などに対応する「こども緊急支援課」に所属し弁護士としての知識や経験を生かして救済活動にあたっています。
今年の2月に任期付き公務員の普及について、日本弁護士連合会主催のシンポジウムが福岡市で開催されましたが、福岡県内はもとより九州各県から25にも及ぶ自治体が参加され、この問題に対する関心の高さがうかがわれました。
そこで、就任挨拶の際にあらためて制度の説明やシンポジウムで語られた実際の任期付き公務員である弁護士の活動ぶりなどをお伝えした次第です。
■法曹養成問題
適切な司法サービスを国民に提供するために、法曹になるための教育のあり方はどのようなものが適切かとか、法曹全体の人数を念頭にして資格を得るための司法試験合格者はどのくらいの人数が適切かといった事柄を扱うのが法曹養成問題です。
政府の法曹養成制度検討会議がこの問題を協議しており、その提言のとりまとめに向けての作業が進められています。
マスコミでも報道されていますが、2002年に閣議決定された政府の法曹養成問題に関する計画は、現在までの実施過程でいろいろと問題が発生しました。例えば、司法修習を終了して法曹資格を得た段階でそれまでの学費や生活費のため多額の借金を負う人が多いこと。裁判官、検察官が増えず弁護士だけが急増したために弁護士の就職難が生じていること。こうした現状から、法曹教育を担う法科大学院の志望者、ひいては大学の法学部の志望者が減っていること、などです。
少しでも現状を知っていただくために、問題点や実情などのご説明をしたのですが、多くの訪問先の方々が関心を持っておられました。弁護士会の役員が尋ねてきたからということもあるのでしょうが、報道機関や政党の方々はもとより、自治体の方々、民間団体の方々でもこの話題を先方から切り出されることがかなりありました。
これから制度設計の本格的見直しが始められると思われますので、この紙面でもまた取り上げたいと思っています。
■「会長」になっていく場
このようにして県内の東西南北の100箇所以上を訪問し、各機関や団体のトップの方々と面談し、幾つかのテーマで弁護士会の活動をご説明したり、意見交換させていただきましたが、これが会長となっての最初の大仕事でした。
かなり体力もいりますし、神経も使いますが、得るところは絶大です。県内各所を自分の足で回り福岡県全体の広さや各地の地域性を肌で感じることができます。各界のトップの方々とお話しすることにより、違った角度からの様々な考え方を拝聴し鋭い視点を感受して大いに啓発されます。
就任時の挨拶のための訪問がいつの時代から始まった作法なのかはわかりませんが、会長としての通過儀礼、一介の弁護士が「会長」になっていく場なのだと痛感した次第です。

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会 長 古 賀 和 孝(38期)

弁護士会館東口の直ぐ近くに春を告げる芳しい香りが漂っております。ピンクと白のコントラストが美しい沈丁花の花です。平成23年度執行部からの引継に余念がなかった昨年3月頭には沈丁花があることさえ気付かないほど、会務の円滑な引継運営という試合前に匹敵する極度の緊張感を味わっておりました。今年度試合終了のサイレンが聞こえてきたような感慨に耽り、最後の会長日記を起案しております。

4月以降、ほぼ毎日会館に出向き、様々な書類の決裁を行います。とりわけ当会の公益活動の中軸を担う各委員会から提出されます議事録については、どのような議題をどのような観点から意見集約されているか、今後の活動方針はどのようになっているのか等々記載がありますので、これを読み頭に入れてまいります。戦略、戦術を立てるための情報収集です。担当副会長から文面に表れていない議論経過を尋ねることもあります。困難な課題の解決に向けて真摯に取り組まれている様子を窺うにつけ、弁護士、弁護士会に課せられた使命を良く果たして頂いているものと感心いたします。委員会活動は良くも悪くも大方独立した活動をおこなっておりますので、所謂縦割りの弊もなくはありません。横串を刺し各委員会の連携を深め、より実効性のある対応を取るため毎週月曜日午後から平均4時間ほどを費やす執行部会議で議論を行うこともあります。勿論執行部限りで議論してもその効果を各委員会にリターンすることに不足がありますので、節目を付けるため年2回実施する委員長会議で情報共有を行います。60名ほどの委員長に参集して頂きますが、会館3階ホールを目一杯使い「ロの字」形式の会議場を作り議論します。7月の会議では活動目標の発表、委員会活性化の方策、委員会相互間の連携方法などを発表して頂きました。2月はその活動報告、次年度への課題発表などを行って貰いました。戦術会議ともいうべき、実に有意義なものであり、チームワークの重要性を認識しました。

会務運営に当たっては常議員会にお諮りし、執行部の提案を議論して頂き、その結果に従い執行方針を決めてまいります。毎月2回、3時間ほどの時間をかけますが、火だるまになる執行部提案もあり、ひどく落胆することもありましたが、常議員の皆様の鋭い意見を糧にして再提案、再々提案をしたことも度々でした。議題担当副会長にあっては屈辱に堪え、涙ながらに千本ノックを受けているような様子で再起案を行っておられることもありました。このような苦労も常議員会で承認となればクリーンヒットを打ったように、一気に吹き飛び、今後への期待、希望に変わります。可愛い副会長さん達を揉んで頂いた、手強かった鬼コーチのような常議員の方々に会長として御礼申し上げる次第です。

当会の代表として外部団体主催の対外的な会合、懇親会に出る機会も多数あり、弁護士、弁護士会に対する視座を認識することができたことも貴重な経験でした。できるだけ弁護士会の活動内容を披瀝し、当会の実力を知って頂くことに腐心いたしました。目立つよう最前列に位置することを心掛けたせいか、年度終盤に至りますと各団体の実情に関する情報収集が容易となり、また、次年度以降の連携に話が及ぶこともありました。既に、この会長日記でご報告しておりますが、釜山、大連と言った国際交流先、在福領事館関係のレセプションでは多様なお国柄にも触れることができ大いに楽しめました。今後も当会執行部は対外関係団体の会合に積極的に参加し、当会の活動を理解して貰うべきではないか、対外試合ともいうべき活動方針を採るべきではないかと実感したところです。

昨年2月に会長就任が確定した時点では全く予想しておりませんでした当会発の不祥事につきましては、正にイレギュラーな想定外の事態でした。マスコミなどから厳しい叱責が飛んできて対応に追われましたが、それもこれも当会に寄せられる期待の裏返しと認識しました。ただ絶体絶命のピンチであることに変わりはありません。報道当時の会員各位の落胆と下向きになりがちな目線を見るにつけ、弁護士、弁護士会への信頼回復は4番バッターともいうべき今年度会長の最大の役割と弁え、常議員の方々、当会会員から様々な提言、激励を受けつつ、全国に先駈け種々の防止策を講じることができました。最終的には会員各位の自覚と実践によって信頼回復は実現されるものでありますが、4番バッターの席に着かれる今年度橋本会長及び新執行部メンバーによってさらに信頼が増進されますよう期待しているところであります。ご活躍をお祈りしております。

1000名を超える規模となりました当会に関し、会員各位の繋がりが希薄となりつつあるとの指摘もありますが、頭を下げていても何も解決しません。総力戦と見立てて知恵を絞り、力の限り前進あるのみです。

今年度の試合終了のサイレンが鳴り終わったようです。最後に、体育会系の会長のもと、一年を通じ一致団結して事に当たって頂いた我が執行部チームのメンバーに対して、「全力で戦ってくれて有り難う」と感謝の言葉を述べさせていただき、バットを置くことと致します。

皆様、本当にこの一年有り難うございました。

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平成24年度福岡県弁護士会  会 長 古 賀 和 孝(38期)
皆様の手元にこの月報が届く頃は春の気配がそこかしこに溢れ、どこか心躍るところがあるのではないかと思いますが、2月上旬の本日は、朝から厳しく冷え込み、強い風にあおられて灰色の空から粉雪が舞い落ちております。
皆様ご承知のとおり、英国では弁護士自治が一部内部的な統制という面では残っているものの、外部からの監査を受けるという意味で完全な自治権は既に剥奪されるに至っております。今回は、英国の弁護士事情を研究され英国の弁護士制度に関する著作もある、第二東京弁護士会所属吉川精一弁護士による大阪弁護士会での講演記録が入手できましたので、この報告に基づき、弁護士自治について触れます。この英国の経過は我が国の弁護士自治を如何にして維持し、国民市民の権利を擁護するかという観点から大変参考になります。
英国では何故弁護士自治が剥奪されたのか、幾つかの要因があると指摘されています。まず、一つ目ですが、弁護士会内での内部対立が挙げられます。企業法務を主として行うシティファームと所謂町弁と称することができるハイストリートロイヤーとの間で法律扶助や弁護士報酬、苦情処理について深刻な内部対立が起こり、弁護士会を取り巻く問題に関し結束ができなかったこと、会の運営に関し無関心な弁護士が増加したことが挙げられております。
二つ目に、高額な報酬を巡る裁判が起こり、これに対して弁護士会が適切な対応を取らなかったこと、これに対するマスコミの批判が展開され社会を揺るがすような大問題となったことがあげられております。
三つ目は、手厚い法律扶助政策を推進し、2005年には約20億ポンド(約3,000億円)を投じられていた扶助予算が財政問題の健全化を理由として効率化の方針に転換し、大幅に削減されるに至ったこと。これまで扶助事件を扱うことによって多額の報酬を得ていた弁護士に対する批判もこの動きを後押ししたようです。
四つ目、これが最大のきっかけとされておりますが、弁護士に対する苦情が増えてこれに対する弁護士会の対応が満足すべきものではなく、弁護士側が批判を浴び、これが積もり積もって弁護士自治の廃止までに至ったということです。弁護士に対する苦情処理も完全に弁護士会から独立した第三者がおこなうということで、OLC(Office for Legal Complaints)という機関が日常的にはオンブズマンを任命して、オンブズマンが苦情処理をおこなうというシステムを作りました。メンバーは法律とは全く無縁な一般人が選任されます。このオンブズマンは調査権限もあり、文書の提出などを命じる権限があります。苦情申立に理由があると認めると報酬や費用を減らせとか損害賠償を命じるなどの措置を命ずることができます。最も重要なことは申出人の同意を条件として、オンブズマンの命令に弁護士側が異議を述べることができず、その命令が確定してしまうことです。確定した場合には裁判所の命令で執行にまで進みます。犯罪的な弁護活動に対する弁護士会の対応は比較的上手くいっているとのことですが、処理遅滞など日常的な苦情への対応には非常に問題が多いということで、それが大きな批判に繋がっていったといわれています。
従来英国では、弁護士の苦情処理や或いは懲戒手続などの費用を弁護士会費で負担していたようですが、その費用が膨大になり、先のシティファームの弁護士からは自分たちに関係ない費用負担は不合理であるとの理由で、苦情対応を弁護士会から切り離した方が良いとの判断を持つような態度が醸成されたようです。そして、弁護士自治の廃止を決めた2007年のLegal Services Act法の制定の際、弁護士会はほとんど反対の声を上げなかったようで、先に述べました弁護士会内部の亀裂が背景にあったようです。
現在英国では、ABS(Alternative Business Structures)という制度ができ、弁護士が他の職業、つまり例えば大手スーパーマーケットとパートナーシップを結び、弁護士業務に参入することができることになったそうです。正に、ビジネスの面から生き残りをかけて活動する業態があります。
その他詳細な点にまで指摘が及んでおりますが、少なくとも上記した各指摘は、私共にも直接的に、もしくは間接的に当てはまる問題点を再認識しております。弁護士自治は、国民市民の基本的人権の擁護、社会正義の実現に向けて付与されたものであって、所与の制度では一切ありません。私共は日々研鑽を積み、信頼を勝ち得る弁護活動を行う必要があります。現在執行部では相次ぐ不祥事に対して、弁護士自治の維持の観点から必要な対策を取るべく、常議員会に諸策を提案し議論を頂いているところです。残りの任期も少なくなりましたが、英国の例を反面教師として学び、最善を尽くしたいと思っております。

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平成24年度福岡県弁護士会  会 長 古 賀 和 孝(38期)
厳しい冬の合間に、時として天の恵みの如く快晴の日に降り注ぐ明るい日差しは何とも心を癒やしてくれます。皆様、新年を迎えられ心機一転今年に懸ける想いを強くされていることかと推察します。
本年度執行部も年が明けたことから次年度執行部へいかなる事項を引き継ぐのか、少し心が躍ると共に、本年度中にやり遂げなければならないことも多々あり、心を引き締めているところです。
さて、今回は司法修習生に対する給費制復活の動きについて一言させていただきます。ご存じのとおり、司法改革に伴う法曹養成制度の変革と併せ、プロセスとしての法科大学院構想が実現され、また、司法修習制度も大きな変貌を遂げております。司法修習の中身の充実はいかなる制度を構築するとしても強く要請されるところですが、修習期間中の給費が廃止となることも同時に決定されました。当時も修習生の修習生活に多大な影響を与えるところが予想されたことから強い反対論があったのですが、結局は一年実施が延期されたものの、平成23年度修習生、すなわち新65期修習生から貸与制が実施されることとなりました。しかしご存じのとおり、給費制から貸与制への変貌は法曹養成制度に看過すべからざる影響を与えております。この問題点を指摘する論点について今ここに繰り返すことは致しませんが、その中で従来あまり取り上げられていなかったボディブローのような極めて深刻な影響が生じておりますので、この点につき触れると共に、会員の皆様に今一度給費制の意義につきご理解頂き、できるかぎり復活に向けた運動にご支持を頂戴したいと考えております。
それは、法曹志願者の激減という国の統治制度を規律する三権分立の一翼を担う司法制度の人的裾野の後退というゆゆしき事態です。その理由として考えられるところは、昨今の司法試験合格者の急増に伴う弁護士の就職難、また、新規登録後の弁護士の経済的不安定さを背景に法曹に夢を持てない現状にありましょう。このような現状があるにも関わらず、法科大学院、司法修習期間中の費用の負担をしてまでも法曹を志願する理由が見いだしにくいと言う点も見逃すことはできません。法科大学院への入学者は平成16年の約6000人から昨年4月の入学者は約3000人へと減じております。本年はさらに減少するのではないかと案じられているところです。さらには、法学部自体への入学希望者も大きく減少していると指摘されております。原則として司法試験受験資格は法科大学院卒業者に与えられますが、年間100万円程度の学費は勿論のこと、勉学期間中の生活費の負担も大きいものがあります。その上、司法試験合格後法曹となるためには1年間の司法修習を終了する必要があり修習期間中の生活費の自弁は誠に過酷なものがあります。これら法科大学院勉学期間およびその後の司法修習期間中の生活費を合計すると数100万円から中には1000万円の借財を抱える法曹も出現しています。修習終了直後の段階で大きな借財を抱える法曹の存在は、これから司法制度の一翼を担う者として実に異常な事態です。これらの異常な実態の存在が広くマスコミに取り上げられる結果、法曹志願者が激減しているのです。せめて司法試験合格後の司法修習段階では生活費の憂いを持つことなく、法曹としての使命を十二分に自覚して勉学にいそしんで貰いたいと願うのは私だけではないと確信しております。修習後弁護士として高い報酬を得るような者に国の税金を投入することは国民の理解を得られないというのが、貸与制論者の反論のひとつですが、法曹の職務に関する一面的な見方という他なく司法制度自体に対する理解が十分であるとは思えません。
現在法曹養成制度検討会議、通称新フォーラムが昨年8月から始動し、今年3月には提言がまとめられる段取りになっております。給費制につきましては今月下旬に開催される第8回会合で議論されることとなっておりますが、ここで給費制復活に関する前向きな指摘がなされることなく先送りされ、貸与制を若干いじったような弥縫策が出されるだけとなった場合には前記しました、法曹志願者の激減、司法制度の脆弱化といった国民にとっても取り返しのつかない汚点を残すことになるのではないかと深く案じるところです。当会では、平成22年以来この給費制復活に向けた活動が力強く続けられておりますが、未だその実現には厳しいところがあります。当執行部としても、最大限力を注ぎたいと考えているところです。会員の皆様のご協力をお願いいたします。

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平成24年度福岡県弁護士会  会 長 古 賀 和 孝(38期)
 灰色の雲が押し潰すように空を覆い、寒風が吹きすさぶ本格的な冬が到来しました。九州場所が始まった頃は、さして厳しい冬でもなかろうと高を括っていたわけではありませんが、寒さのあまり、無意識にコートの襟を立て、身を縮めてしまいます。
 私は、6年ほど前に福岡家庭裁判所某支部からダウン症の方の後見人に選任されました。まん丸顔で丁度寒い今頃にはほっぺを赤く染める小学生のような35歳の女性です。時折とてもかわいい笑顔をみせてくれます。両親は相次いで亡くなられ、被後見人の将来を気遣い経済的支えとなる財産を残されました。後見開始前から障がい者福祉施設で生活しておりましたが、自分の身の回りの世話はある程度できることから、昨年7月末頃この障がい者施設が運営する独立したケアホームで生活をすることになりました。寮母さんのような方を含め5名の同様な障がいを持った人達と共同生活を行い、日中は郊外の授産施設で極めて軽度な作業をすることとなりました。先日、1時間ほど自家用車を走らせ様子を見に行ったのですが、どうしてどうして以前と比べ動きが活発になっております。様々な協力の手を差し延べてくれる人と出会ったこと、自分の力量に応じた作業を行うようになったことによるものでしょう。この授産施設は地産地消を地でいく所で、地元で取れた野菜類を使った総菜風の手作り料理をお客様に提供しております。心のこもった品数豊富な料理の提供だけではなく、障がい者が健常者と共に働いていることへの共感もあるのか、近所の評判を呼んでいるようです。彼女は厨房での手伝いなど裏方さんの仕事を行ったり、時には、興味を持って電話応対も行い簡単な挨拶をしているようです。また、今時でしたら、缶詰用のミカンの皮むきなどの作業を行っております。たまに自分でむいたミカンをつまみ食いするなどおちゃめなところもあるようです。お店で世話をして頂いている管理者の方と一緒に面談したのですが、最初はいつものようにはにかみ俯いているのですが、しばらくして慣れてくると澄んだ目で上目遣いに私を見やり、にやりと笑ってくれます。30分ほど面談する時間のなんと有意義なことか。私自身が今風の言葉で言えば、癒やされていることを実感します。当会においては、先般、後見監督人に就任している当会会員が被後見人の財産を詐取した事件が発生し、後見業務はもとより弁護士業務全般に大打撃を与えました。綱紀委員会に会自ら調査請求を行い、同時に、公表に踏み切りましたが、後見人、後見監督人としての生きがいに思いを致して貰えば、このような不祥事にはならなかったのではないかと思慮され、誠に残念でなりません。
 話は変わりますが、11月22日から3日間釜山地方弁護士会との交流会に臨むため釜山を訪問しました。初日午後8時ころ到着したのですが、張俊棟(ジャン・ジュンドン)会長自ら空港に花束を持って出迎えに来ておられ、恐縮してしまいました。友好協定を結び今年22年を迎える当会および釜山地方弁護士会の絆の強さを実感したところです。翌日は釜山刑務所、同地方法院(裁判所)、同地方検察庁、同地方弁護士会を順次訪問しました。前2か所では日本からの来訪者に見せるため自分たちが日頃どのような活動を行っているのか詳細にプレゼンテーションするためのビデオが作成されており、よくもまあここまで手配準備されているものだと訪問団員こぞって驚いたものです。地裁、地検はほぼ同程度の大規模建築物で、道を挟み地方弁護士会のこれまた大きな建物が位置しております。法曹三者を意識した配置と見受けました。両会交流会では後見制度について新たに法律を制定した韓国の報告がなされ、また当会岡部信政会員から日本の後見制度の運用等が発表されました。後見制度の比較法的な議論に熱が入り他にも議題があったのですが時間切れで簡潔な形でまとめられました。夕刻の晩餐会では優雅な韓国の伝統音楽の演奏に聞き惚れ、その後は大宴会となりました。多くの会員が二次会に参加し、例の瞬時にして酩酊の境地に誘う名だたるお酒、「ばくだん」(早い話がウイスキーをビールで割ったものです。)という飲み物の洗礼を受け、さらには、三次会へ。ここで若手を含む参加会員のほとんどがテーブルに突っ伏して寝てしまいました。両会会長の意気地を示すべく、私、ジャン会長、通訳さんの3人は最後まで弁護士会の在り方、友好協定の意義などにつき大いに歓談を続け、来年の再会を意識朦朧のうちに確認してやっと午前2時過ぎ頃終宴となりました。22年の交流は半端な終わり方はしません。

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