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カテゴリー: 声明

「『弁護士報酬敗訴者負担』法案に反対する声明

カテゴリー:声明

福岡県弁護士会 会長  松? 隆
平成16年(2004年)9月15日
 弁護士報酬敗訴者負担制度の導入を目的として、本年3月2日に「民事訴訟費用等に関する法律の一部を改正する法律案」が国会に上程され、現在継続審議となっており、次期国会で審議される予定になっている。\n 当会は、弁護士報酬敗訴者負担制度の一般的導入は「市民が利用しやすい司法の実現」という司法制度改革の理念と憲法32条が保障する国民の裁判を受ける権利を損いかねないとして、それに強く反対して来た。
 今回の法案は、司法制度改革推進本部の司法アクセス検討会がその一般的導入に対する国民の反対のなかで、2003年12月に至って、原則各自負担という従来の制度を維持しながらも、訴訟提起後に双方の当事者に訴訟代理人がついて敗訴者負担の合意の上、裁判所に共同の申立がなされた場合に限って弁護士報酬の一部を訴訟費用とするという、合意による敗訴者負担制度導入の意見をとりまとめ、法案化したものである。\n しかし、司法アクセス検討会では、裁判外の私的契約に敗訴者負担条項が入っている場合には、その条項に基づいて、今回の法案の内容とは別途に、勝訴者は敗訴者に弁護士報酬を請求できると議論されている。
 このような状況の下で合意による敗訴者負担制度が導入されれば、消費者、労働者、中小零細業者など社会的経済的に弱い立場にある者は、私的契約や約款などに敗訴者負担条項が存在する場合、敗訴した時の費用負担を恐れて訴訟を提起することも受けて立つことも躊躇することになり、結果として市民の司法へのアクセスに重大な萎縮効果を及ぼすことになる。本法案は、社会的経済的弱者の裁判を受ける権利を侵害し、司法による人権救済の途を狭めるものである。
 従って、当会は次の立法上の措置がなされない限り、本法案を廃案とするよう強く求める。
? 消費者契約、労働契約(労働協約、就業規則を含む)、一方が優越的地位にある当事者間の契約などに盛り込まれた敗訴者負担の定めは無効とすること。
? 消費者訴訟、労働訴訟、一方が優越的地位にある当事者間の訴訟などにおいては、訴訟上の合意による敗訴者負担制度を適用しないこと。

司法修習生の給費制維持を求める声明

カテゴリー:声明

福岡県弁護士会 会長  松? 隆
 平成16年(2004年)6月1日
  現在、司法修習生の給費制度を廃止し、貸与制に移行しようとする動きが急速に強まっている。司法制度改革推進本部の法曹養成検討会において、給費制の廃止と貸与制への移行が決められる事態が強く懸念される状況にある。
  日本弁護士連合会及び当会を始めとする多くの単位会は、法曹養成検討会で給費制問題が急展開した昨年8月より、給費制維持を求める声明を次々に発表した。\n
  司法修習生の給費制維持を強く求める主たる理由は、以下にある。
 すなわち、法曹は基本的人権の擁護と社会正義の実現とを使命とする極めて公共性の強い職種である。かかる法曹に対しては、国民より、基本的人権の擁護と社会正義の実現のために質・量ともに十分な各種法的サービスを提供することが期待されている。と同時に、当然のことながらその担い手である人材もまた、質・量ともに十\分に供給し続けることが求められている。
 この人的供給の充実という要求は、21世紀における司法の役割の増大に応じて、いっそう高まっている。そこで、質・量ともに21世紀の法曹界を担うにふさわしい人材を確保するため、一連の司法制度改革の中で、法科大学院を中核とする法曹養成制度が創設された。しかし、司法修習制度自体は、これまでの実務修習制度の有用性に鑑み、この新養成制度のもとにおいても従来どおり実施されることとなった。
 未来の法曹の担い手である司法修習生に対しては、己が基本的人権の擁護と社会正義の実現の担い手であることの自覚を促し、それにふさわしい知識・素養を身に付けさせる必要がある。前記法曹の公益性及び重要性から見て、これもまた国及び社会にとって、極めて公共性・公益性の高い重要事項である。この観点から現在司法修習制は給費制である。そしてその観点は、新法曹養成制度のもとにおいても何ら変わることはない。
 新法曹養成制度においては、司法修習生になる前に2年ないし3年の法科大学院に在学することになり、その間に多額の学資や生活資金が必要となる。これに加えて司法修習生の給費制が廃止され、貸与制などに変更された場合、司法修習生の経済的負担は一層増大し、更なる経済的打撃を与える。その結果、生活費を得るために貴重な時間を取られ、司法修習生に必要な知識・素養を身に付けることがおざなりになる危険がある。あるいは逆に、経済的負担を危惧して有用な人材が法曹を断念する危険もある。いずれにおいても、質・量ともに十分な人材を供給できなくなる結果をもたらし、社会的に大きな損失である。\n よって司法修習生の給費制は強く維持されるべきものである。
  かかる理由から、上記のとおり、日本弁護士連合会及び各単位会は、昨年相次いで給費制維持の声明を発表したのである。司法修習生の給費制は、上記のとおり、法曹が真に、国民の基本的人権の擁護と社会正義の実現という使命を果たすために不可欠のものであり、これらの声明は、国民の要望に沿ったものである。\n それにもかかわらず、法曹養成検討会で貸与制への移行が論議され、早ければ今秋にも改正案が国会に提出されるという。これは、国民の基本的人権の擁護と社会正義の実現のために質・量ともにふさわしい法的サービス・法的人材を提供するという法曹の本質に明らかに反している。また、司法修習ないし修習専念義務の本質、貸与制に切り替えた場合の司法修習に対する影響等の重要な問題について、法曹養成検討会で十分な議論が尽くされているとは評価できない。\n なお、貸与制導入を前提に議論されている一定の条件の下での返還免除制度は、事実上の任官者免除制度につながるものであれば到底容認できない。
 よって、当会は、給費制度をめぐる今日の状況に鑑み、改めて司法修習生への給費制度を今後とも堅持するよう強く求める。

自衛隊のイラクからの即時撤退を求める会長声明

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福岡県弁護士会 会長  松? 隆
 平成16年(2004年)4月20日
 当会は、2003年12月2日、常議員会決議に基づき会長声明で自衛隊のイラク派遣に強く反対する意見を表明した。\n (1)イラク特措法は、一連の有事立法とあいまって、イラクにおける自衛隊の武力行使に繋がるものであり、憲法に違反するおそれが極めて大きいものであること、(2)第二次世界大戦後、国際社会は戦争を違法とし、国連憲章が容認しない武力行使は承認しないという原則を確立した。この原則の侵害を許せば、むき出しの暴力によって支配される社会が出現し、世界中で暴\力の応酬、憎悪の連鎖が生じるおそれがある。日本国憲法は、この国際社会の原則をふまえて、国際紛争の解決手段としての武力行使を放棄したのである。わが国によるイラク復興支援は、国連憲章の原則と憲法の平和原則に従ってなされなければならないが、自衛隊のイラク派遣はその原則に違反する疑いが極めて大きいこと、(3)イラクは未だ戦争状態にあり、その全土が戦闘地域であること等を理由としたものであった。
 いまや、暴力の応酬、憎悪の連鎖という危惧は正に現実のものとなっている。また、イラクはその全土が戦闘地域で、イラクに安全な非戦闘地域が存在しないことはいっそう明らかとなった。戦闘は激化し、米軍等の占領軍に限らず、一般の市民や子どもを含むイラク国民の死傷者が多数生じている。本年4月7日にはサマワの自衛隊駐屯地近くに迫撃砲弾が着弾し、4月17日にはサマワのオランダ軍とイラク人との間で銃撃戦も発生し、派遣された自衛隊が野外作業を中止して宿営地周辺にとどまらざるを得ない状況も生じている。民間の日本人5名が武装勢力に拘束されると言う許し難い事件が生じたが、日本人にとどまらず各国の民間人等が拘束される等の事態が続出している。状況の悪化により、自衛隊が、憲法違反の「武力による威嚇または武力行使」に至る危険性はますます高まっており、自衛隊の派遣は、「非戦闘地域における人道支援」というイラク特措法の要件を満たしていない。\n よって、当会はあらためて、日本国政府が「国連憲章の原則と憲法の平和原則」に従い、自衛隊のイラク派遣を即時中止し撤退させること、を強く求める。

知的財産権訴訟の専属管轄制度に反対する会長声明

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福岡県弁護士会 会長  松? 隆
 平成16年(2004年)4月5日
 平成16年4月1日、改正民事訴訟法が施行された。この改正法には、特許権、実用新案権、回路配置利用権又はプログラムの著作物についての著作者の権利に関する訴えにつき、東日本の事件については東京地方裁判所を、西日本の事件については大阪地方裁判所を、それぞれ第一審の「専属」管轄とする旨の規定が盛り込まれている。この改正は、特許権等に関する訴えについて、原則として、東京および大阪以外の地方裁判所では裁判を受けられなくなることを意味するものである。
 したがって、改正法の下においては、東京あるいは大阪以外の地域に在住し所在する市民や企業は、これらの訴えについては、自らが在住し所在する地域から離れた東京又は大阪の地方裁判所においてその対応を強いられる結果となる。その結果、これらの地域に在住し所在する市民や企業が法的救済を受けようとする場合には、東京や大阪に居住し所在する者に比して、より多くの費用と時間を要する事態となることは避けられず、これらの負担を慮って法的手段を選択することを躊躇ないし回避したりする事態や、さらには、さほど高額とは言えない事件が地方企業と首都圏企業との間で発生した場合には、地方企業が泣き寝入りしてしまうといった事態の発生すら懸念される。
 また、特許権等に関する訴えが東京及び大阪以外の地方裁判所には係属しないことに伴い、これ以外の地域においては特許権等に精通した弁護士等の専門家が減少することが予想され、ひいては、東京および大阪以外の地域に在住し所在する市民や企業が、特許権等について気軽に相談できる体制が崩壊する事態ともなりかねない。\n このように、今回の上記改正は、東京・大阪以外の地域に在住し所在する市民や企業の権利を侵害するものであり、また、東京・大阪以外の地域における知的財産権の発展を阻害する恐れを含むものである。このことは、司法過疎を解消し、
全国どこでも法的救済が受けられるようにしようとする構想(司法ネット構\想等)や近年の司法改革の理念に反し、これらの流れに逆行するものであると言わざるを得ない。
 もとより、特許権等に関する裁判の専門性や国際的戦略の観点から、これら裁判を東京あるいは大阪の裁判所で取り扱うことが相当である場合も存する。しかし、改正前の民事訴訟法の下においても、東京及び大阪の地方裁判所に全国の事件に関する選択的管轄権を認めており、東京あるいは大阪の裁判所で取り扱うことが相当であると思料される事件については,いずれの地域で発生した事件であってもこの両地裁で審理することが可能であったのである。したがって,改正前の制度を変更して,上記両地裁に「専属」管轄を認めるべき合理的理由は見当たらない。\n また、専属管轄の対象となる事件が,今後,商標・意匠・不正競争・コンピュータープログラム以外の著作権関係訴訟,さらにはその他の専門的訴訟にまで拡大していくことも危惧される。
 よって,当福岡県弁護士会は,今回の民事訴訟法改正によって導入された専属管轄制度を廃止する法改正を,できる限り早期に実施することを求めるものである。

消費者保護基本法改正についての会長声明

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福岡県弁護士会 会長  前田 豊
 平成16年(2004年)2月24日
 1968年消費者保護基本法が制定されたが、その後、消費者と事業者との間の情報の質及び量並びに交渉力等の構造的格差が一層拡大し、消費者被害が増大した。本通常国会で、自民党の議員提案により、消費者保護基本法の大幅な改正案が上程される見込である。そこで当会は、自由民主党要綱案(以下「要綱案」という)がそのまま法案化される可能\性に鑑み、以下のとおり、意見を表明する。\n
  消費者保護基本法には、消費者と事業者との間に経済力、交渉力等の構造的格差が厳然と存在することに鑑み、消費者政策の基本理念が、「消費者の権利擁護」であることを明確に定めるべきである。\nこれに対し要綱案は、消費者政策の理念として、「消費者の自立支援」を強調しているが、「消費者の権利」を二次的・補完的なものとして消費者保護政策の縮小・後退を容認するもので、強く反対する。
  消費者には、公正な取引条件・取引方法の提供を受ける権利及び消費者団体を組織して行動する権利があることを明確にすべきである。
要綱案はこの点に触れていない。しかし、公正な取引条件と取引方法の提供がなければ消費者は適切な選択ができない。また、個々の消費者が自らの権利を行使したり、その意見を消費者政策に反映させることは極めて困難であるので、団体訴権を実現する上でも、消費者団体を組織し行動する権利をも明確にする必要がある。
  消費者に「責務」を負わせることは消費者政策の理念に反するので、現行法どおり「消費者の役割」とすべきである。
これに対し、要綱案は、「国及び地方公共団体の責務」「事業者の責務」と並列的に、「消費者の責務」を規定するが、消費者に対し、事業者と対等な「責務」を負わせることは、消費者政策の基本理念であるべき消費者の権利擁護と明らかに矛盾する。要綱案は、行政及び事業者の法的責務を軽減し、消費者政策の後退を容認することになりかねないものであり強く反対する。
  国及び都道府県の苦情処理・紛争解決機能の強化を積極的に位置づけるべきである。\n要綱案は、苦情処理体制として、市町村は苦情の処理のあっせん等に努めなければならないとした上、都道府県は、市町村(特別区を含む)との連携を図りつつ、主として、高度の専門性又は広域の見地への配慮を必要とする苦情の処理のあっせん等を行うものとしている。ところが、国については、直接、苦情処理のあっせん等をすることを予定していない。しかし、広域的な消費者被害への対応や事業者規制権限への連携を強化するためには、国及び都道府県の苦情処理の機能\を拡充することこそが必要である。

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