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カテゴリー: 声明

教育基本法改正に反対する会長声明

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2006年11月15日
福岡県弁護士会 会長 羽田野節夫  
1 教育基本法の改正法案が臨時国会で審議されており,政府は改正案成立を強く企図していると伝えられている。
同法は,日本国憲法と同時期に憲法の理念を実現し,教育の中立性を守るために制定されたものであって,名宛人を国家又は公権力とする点で準憲法的な性格を有し,国際条約との間の整合性を確保する必要性も高い。従って,その改正の要否を含め,慎重な調査と広く国民の議論を経たうえで審議を行うべきである。しかし,これまで国民に向けて開かれた議論が行われたとはいいがたい。
例えば,先般,教育改革タウンミーティングにおいて,政府が同法改正への賛成発言を出席者に依頼していたことが発覚した。これは政府みずからが,教育基本法改正について国民に向けて開かれた議論の場を設けてこなかった証左というほかない。
2 もとより,現在多発するいじめや少年の自殺,不登校など現在の教育が抱える深刻な問題を改善するために現行法が支障となるのであれば,早急な見直しが必要であろう。しかし,政府の国会答弁でも,これらの問題点が現行法に起因するものでないことは,明確に述べられているところである。
そして,当会は,これまでも市民集会やシンポジウムを開催し,さらに,11月10日には150名を越える参加者による市民集会を開催するなど,広く市民に呼びかけて教育基本法改正を議論する場を設けてきた。そうした中で,戦前の教育への国家介入がもたらした惨禍を防ぐために,個人の尊厳を重んじ,真理と平和を愛する人間の育成を根本原則と定めた現行教育基本法が果たして来た役割を再認識し,同法の理念を今後も堅持することを,多くの市民が望んでいることも判明しているところである。
3 さらに,政府の改正案においては,公権力の教育への不介入を定めた現行法10条の改正によって,政党政治の下で多数決によってなされる意思決定に基づく教育が正当化され,教育の自主性・自律性が損なわれかねない。しかも,改正案2条に教育の目標として「徳目」を掲げることにより,子ども達に一方的な価値感が植え付けられ,憲法で保障された思想良心の自由がないがしろにされる恐れもある。
そもそも,「新しい時代に即した教育理念を教育基本法に盛り込まなければならない」との政府の改正目的については,必ずしも国民全体が納得して共有しているとはいえないばかりか,仮にこうした理念を教育基本法に盛り込むのであれば,いっそうの開かれた国民的議論が不可欠である。
4 このように,将来の教育のあり方を定める根本原則を改正するにあたり,未だ十分な調査や議論がなされたとは言い得ない状況にあり,かつ政府の改正案は教育の中立性を損なう重大な問題があると言わざるを得ない。
そこで,当会は,改めて,衆参両院に「教育基本法調査会」を設置し,教育基本法改正の要否を含めた十分かつ慎重な調査と議論を行うことを求めるとともに,政府案に基づく教育基本法の改正には,強く反対の意思を表明するものである。
                                 以    上

NHKに対する国際放送命令に反対する会長声明

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2006年(平成18年)11月15日
福岡県弁護士会 会長 羽田野節夫
菅義偉総務大臣は,今月10日,日本放送協会(以下「NHK」という。)に対して,放送法33条に基づいて,短波ラジオ国際放送で,北朝鮮による拉致問題を重点的に取り扱うことを命じた。
従前,NHKに対して放送事項等を指定して国際放送を命じることができる旨の放送法33条の規定に基づき,総務大臣によって,「時事」,「国の重要な施策」及び「国際問題に関する政府の見解」という3点の抽象的な事項を対象とした放送命令がなされてきた例があるが,この度の放送命令は,上記のとおり個別具体的な施策を特定して放送を命じたものである。
そもそも,放送命令制度は,国による放送に対する直接の介入という性格を有するものであるから,この制度自体が,NHKの放送の自由(同法1条),番組編集の自由(同法3条)などの基本原則を侵害し,ひいては憲法が保障する表現・報道の自由(21条)の根本原則をも侵害する問題性を孕むものであるところ,この度の個別具体的事項を特定した放送命令は,この問題性を顕在化させたものであり,その違憲性は看過できない。
そして,今回の事態は,国によるメディアへの介入という側面を持つものであることから,決してNHKだけの問題として矮小化することはできない。
よって当会は関係各機関に対して,以下の事項を求める。
1 総務大臣は,今回の放送命令を撤回すること。
2 政府及び国会は,放送法33条を,憲法が保障する表現・報道の自由を侵害しないように改正する検討を開始すること。

いかなる特例も認めない上限金利の引下げと利息制限法の厳守を求める緊急会長声明

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2006年(平成18年)9月13日
福岡県弁護士会会長 羽田野 節夫
 本年7月6日の自民党と公明党の「貸金業制度等の改革に関する基本的考え方」により、出資法の上限金利の見直し等を検討していた金融庁及び法務省は,9月5日,その内容を明らかにした。これによると、現行グレーゾーン金利を4年間存続させるとともに、その後、「少額短期特例」,「事業者向け特例」として,いずれも年利28%の新グレーゾーン金利を認め,しかも、現行の利息制限法の金額区分を変更して、元本10万円の定めを50万円に、元本100万円の定めを500万円に変更するというものである。これによると、元本10万円以上50万円未満のものについては、従来の18%から20%に、元本100万円以上500万円未満のものについては、従来の15%から18%に引き上げとなる利息制限法の大改悪である。
 しかし、今回の法改正の目的は、最高裁判所が貸金業規制法43条(グレーゾーン金利)の適用を否定して利息制限法による債務者救済を図る判決を相次いで示したことを踏まえ、金融庁の「貸金業制度に関する有識者懇談会」や7月6日の自民党と公明党による前述の「基本的考え方」が、深刻な多重債務問題を解決するために、出資法の上限金利を利息制限法の水準まで引き下げるという基本方針にもとづき行われているものである。
 ところが、この度、金融庁及び法務省が明らかにした前記内容は、「特例」という形で利息制限法による金利の一本化までに最長で9年間程度を要する上、特例の高金利の恒久化すら懸念され、しかも利息制限法の改悪を行おうとしているものである。これは、深刻な多重債務問題を解決するため、312万人を超える高金利引下げを求める署名や、39都道府県、880を超える市町村議会(福岡県においては、県議会をはじめ54議会)の意見書に現れた、多重債務問題の早期かつ抜本的な改革を強く望む国民の声に逆行するものである。
 よって当会は、重ねて政府及び国会に対し、直ちにグレーゾーン金利を廃止し、出資法第5条第2項の上限金利を利息制限法第1条の制限金利まで引き下げ、少額短期特例や事業者特例を設けず、また利息制限法のいかなる改悪も行わないよう改めて強く求めるものである。
以 上

「政治家の思想・言論の自由を封殺する一切のテロ行為を断固として許さない」会長声明

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2006年(平成18)年9月13日
福岡県弁護士会 会長 羽田野節夫
1、本年8月15日早朝、小泉首相は、国の内外から反対の声が強かった靖国神社への参拝を全国民注視の中で、実行した。
自民党の元幹事長で山形県選出の衆議院議員加藤紘一氏は、かねてより小泉首相の靖国神社への参拝を批判し、終戦記念日の参拝に反対し、当日の小泉首相の行動に対し、マスコミを通じ批判していた。
加藤紘一議員が自己の信念に基づき小泉首相の言動を批判するのは、思想、言論の自由が保障されている現代社会において、政治家として当然のことである。
2、然るに、本年8月15日夕刻、山形県鶴岡市に所在する、加藤紘一議員の実家と事務所が放火により全焼するという事件が発生した。新聞報道によれば、この放火事件は、小泉首相の靖国神社参拝についての加藤紘一議員の批判発言に対して、放火という暴力行為によって抗議しようとした、右翼団体に所属する男性の「政治的テロ行為」であることが明らかになった。
このような政治家の身辺に対するテロ、暴力行為は、それによって、他の政治家や他の諸団体、更には、国民の言論の自由や、政治活動の自由をも牽制し、健全な批判精神は元より、自由な意見発表などの言論活動を萎縮させる効果をもたらし、ひいては、マスコミの報道の自由に対してさえも著しく悪影響を与えるおそれがある。
3、とくに、今や、自民党の総裁が交代し、新政権の発足が予定され、憲法改正が具体的政治日程にのぼっている頃である。
当然ながら、憲法改正問題は、民主主義国家としての我が国最大の政治課題である。
今後、憲法改正の是非が国民の間で自由に、徹底的に論議されなければならない。
このような時にこそ、政治家に対してはもちろん、国民も、マスコミも、等しく、思想、言論、表現、報道の各自由が保障されるべきことは言うまでもない。自由で徹底的な議論や論争によってしか、真に国民の自由と権利を守る憲法は誕生しえないからである。
4、今回のような、政治家の言論をテロ、暴力によって封殺するような行為を断固として許してはならない。
福岡県弁護士会会員一同は、我が国の民主主義を守るためには、憲法で保障された思想、言論の自由、そして、政治活動の自由を絶対に保障すべきものと考える。
今後、再び、思想、言論の自由を封殺する一切のテロ行為を断固として許さない意思を内外に明らかにし、この声明によって、思想、言論の自由、及び政治活動の自由の大切さを強く表明するものである。
以上

例外なき金利規制を政府に強く求める会長声明

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平成18年9月1日
福岡県弁護士会 会長 羽 田 野 節 夫
多様な現在の貧困の原因のうち,高金利が貧困問題の重大な原因であることがかねてから指摘されていた。すなわち,1962年に米国で発表された消費者利益保護に関するケネディ教書において,「消費者の所得を増加させようと努力するよりも,同じ努力をするのならば,消費者の所得をできるかぎり有効に使う努力の方が,多くの家庭の福祉の増進に大きく寄与することができる」とされているとおり,消費者の利益を保護するためには,家計にとって完全な冗費である高金利の支払いを許容し続けるべきではない。ところが,我が国は,未だ高金利を認めているために,2000万人にも及ぶサラ金・クレジット利用者の日々の生活・生存が危機に直面し、経済苦を理由とする自殺者が年間8000人とも言われる事態にあること,国民の健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を保障すべき生活保護行政においても,高金利を原因とする多重債務問題が大きな問題を投げかけていることを認識できる。
政府与党は、平成18年7月6日、「貸金業制度等の改革に関する基本的考え方」をまとめたが、その内容は、少額短期の貸付や事業者に対する貸付につき特例金利を認める余地を残しているなど、未だ極めて不十分な内容であると言わざるを得ない。
その後金融庁は、貸付金利の上限を引き下げるのに併せ、少額短期の貸し付けについては、上限金利の上乗せを認める方向で検討に入ったと報道されている。当会は、断固としてこれに反対し、改めて社会的・経済的弱者の生存権の保障・救済という観点に立ち、以下の内容を含む例外なき金利規制を政府に強く求めるとともに、今後、多重債務問題に苦しむ市民を行政・司法といった枠にとらわれず,できるだけ広く救済していくために最大限の努力を尽くすことを誓い、ここに声明する。
1.出資法の上限金利年29.2%を、利息制限法で定める年15%から20%の制限金利まで引き下げること。
2.貸金業の規制等に関する法律第43条(みなし弁済)を撤廃すること。
3.「日賦貸金業者及び電話担保金融に対する特例金利」を直ちに廃止すること。
4.少額短期の貸付や事業者に対する貸付も含め全ての貸付について特例金利を認めないこと。
5.保証料・振込手数料については、利息概念に含めること。

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