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ストリートビューサービスの中止を求める声明

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                  2008年(平成20年)12月1日
                 福岡県弁護士会 会 長 田 邉 宜 克
 
 本年8月5日から、Google(グーグル)社は、「Street View(ストリートビュー)」機能サービスの提供を開始した。
 これは、東京、大阪など12都市について、グーグル社のホームページ上で、地図の道路上のある地点を指すと、同社が撮影専用自動車で移動しながら撮影したその地点での360度の画像が見える機能で、主要道路に限らず、住宅街の狭い道路をも対象とした広範囲の画像が撮影・公表されている。そのような撮影を意識しない多数の市民が写っており、中には、ラブホテルに入る寸前のカップル、立ち小便をしている男性、路上でキスをする学生等も含まれていた。
 これらは、原則として正面の顔画像はぼかしがかかっているものの、撮影場所が明確に特定できるため、対象者を知っている人には、対象者の特定が可能である。また、顔にぼかしがかけられていない人の画像も散見されるほか、カメラの位置が歩行者の視点より約1メートルも高いため、通常であれば塀によって遮られる民家の中をのぞき見る形式の画像も散見される。
 しかし、わが国においては、公道での様子であっても、個人の私生活上の自由の一つとして、何人も、その承諾なしに、みだりにその容ぼう・姿態を撮影されない自由(プライバシー権の一種である肖像権)を有する(最判昭44.12.24,京都府学連事件判決、東京地判平7.9.27等)。
グーグル社の行為には、撮影の場面において?都市のほぼ全域にわたる広範かつ無限定の多数の市民の肖像を根こそぎ撮影していること、?高い位置からの撮影のため、撮影対象が家屋内にも及んでいること、?事前に公表目的での撮影を行うことを説明していないこと、また、公表の場面において、?問題のある画像を事前に個別チェックしていないこと、?テレビのニュース番組等のように一時的・背景的に映像が流れる場合と異なり、撮影場所が特定できる状態で長期間画像がさらされること、?電子データの特性上、画像が容易かつ半永久的に第三者により2次利用されうるという問題点がある。これらの点を、グーグル社のホームページ自体がきわめて多数の市民の目にさらされる強力な媒体であることと考え合わせれば、プライバシー権侵害の程度は大きい。
これに対し、ストリートビューは、遠隔地の画像が簡単に見られるという便益をもたらすものの、このような多数の市民に対するプライバシー権侵害を強いても仕方がないといえるほどの対立利益があるとは言えない。
 ユーザーの申告によって後から削除する仕組みによっても、すべての被害者が問題画像に気づく保証はなく、また、削除されたとしても2次利用の被害があり得るし、最初からプライバシー権侵害がなかったことにはならない。
グーグル社は、上記?〜?の問題点の抜本的解決を早急に図るべきであり、それができない場合には、このような画像の収集及びサービスの提供を中止するよう強く求める。

伊藤和也さん殺害に対する抗議声明

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                      2008(平成20)年9月2日
伊藤和也さん殺害に対する抗議声明
福岡県弁護士会
会 長 田 邉 宜 克
 福岡市に本拠を置く「ペシャワール会」スタッフ伊藤和也さんが,拉致され,その後,殺害された。
 福岡県弁護士会では,5月23日,憲法9条と国際貢献を考えるシンポジウムを開催し,「ペシャワール会」現地代表の中村哲医師にご講演いただいたばかりである。中村医師によれば,日本が過去半世紀以上にわたって一度も海外で軍事行動を起こしていないという歴史的な事実が,アフガニスタンの住民に良好な対日感情を育み,日本人であるがゆえ,身体・生命が守られ,無事,活動を進めることができたとのことであった。その体験談から,我々は、日本国憲法の平和主義が,民間の人道支援活動を実質的に支える意義をも有することを改めて認識することができた。
 伊藤さんは,ペシャワール会現地スタッフとして,献身的に農業技術支援に取り組み,アフガニスタンの多くの民衆から,感謝と尊敬を集めていたとのことである。
 伊藤さん殺害の実行犯やその動機の詳細は未だ明らかではない。しかし,いかなる動機であれ,尊い人命を奪う卑劣な行為を許すことはできない。
 福岡県弁護士会は,伊藤さんの献身的な活動とその実績に対し,深い敬意を表し,謹んで哀悼の意を表するとともに,伊藤さんを殺害した卑劣な行為に強く抗議する。そして,伊藤さんの遺志に報い,民間の人道支援活動を支えるためにも,日本政府に対し,日本国憲法の平和主義を全世界にアピールする活動を推進するよう強く求めるものである。
以 上

少年法「改正」法案成立に対する会長声明

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 本年6月11日、参議院において、政府提出にかかる少年法一部「改正」法案が、民主、自民、公明三党により修正されたうえで可決成立した。
 当会は、本年2月13日、法制審議会少年法(犯罪被害者関係)部会が、少年法「改正」要綱(骨子)を採択し、同年3月7日、少年法「改正」案が閣議決定され国会に上程された時点で、同「改正」法案は、少年の健全な育成を目的とするという少年法の理念を没却し、ひいては、社会全体の安全にも悪影響を及ぼすとして同法案に強く反対の意見を表明した。しかも、当会のみならず、日弁連及び全国の多数の弁護士会が、同様の反対の意見表明をしてきたにもかかわらず、十分な審議もなされず短期日のうちに成立に至ったことに対して、遺憾の念を禁じ得ない。
 今回の「改正」法は、国会の審議の過程で、被害者傍聴の要件として、「少年の健全育成を妨げるおそれがない」ことを明記したうえ、12歳未満の少年の事件は傍聴対象事件から除外し、12歳、13歳の少年事件の被害者傍聴については、少年が精神的に特に未成熟であることを十分考慮しなければならないとの修正を施すなど、少年法の理念と目的の重要性に一定の配慮がなされたことは意義がある。
 しかし、被害者による審判傍聴を許すにあたって、予め弁護士付添人の意見を聴かなければならないとし、少年に弁護士付添人がないときは、家庭裁判所が弁護士付添人を付さなければならないとしつつも、その例外を設けるなど不十分な点は否めないうえ、被害者が少年審判を傍聴することに対する根本的な問題点は、依然として払拭できない。
 すなわち、審判を被害者等が傍聴することになれば、精神的に未成熟な少年は、事実に関する自己の率直な意見や心情、気持ちをそのまま発言することを躊躇し、審判に関わる関係者からの少年の問題に迫った更生への働きかけができなくなるおそれがある。また、被害者にとっても、少年審判は心理的な動揺が収まっていない状況で開かれることが多いため、被害者が傍聴する少年審判廷は必然的に非常に緊張度の高いものとなり、上記少年法の理念に基づく審判の実践はおよそ困難となる。さらに、プライバシーの観点から、少年の家庭生育環境や生い立ちなどに遡って非行の原因を掘り下げ、少年の適切な処分を選択するということができなくなる。以上の結果、少年に対して適切な処分が不可能となり、そのことはひいては社会全体の安全にも悪影響を及ぼすことになる。
 当然ながら、犯罪被害者等の権利利益の保護が図られなければならないことは言うまでもないが、この点に関して今なすべきことは、各関係機関が被害者等に対し、2000(平成12)年少年法「改正」で導入された、被害者等による記録の閲覧・謄写(少年法第5条の2)、被害者等の意見聴取(少年法第9条の2)、審判の結果通知(少年法第31条の2)の各規定の存在をさらに丁寧に知らせ、これを被害者等が活用する支援体制を整備すること、さらには、より抜本的に犯罪被害者に対する早期の経済的、精神的支援の制度を拡充することである。
 当会としては、今回の「改正」が再度見直されることを求めると共に,家庭裁判所に対して,少年法の理念を損なうことのないよう,厳格な運用を強く求める。
              2008(平成20)年7月2日
                      福岡県弁護士会
                       会  長   田 邉 宜 克

消費者行政の一元化と地方の相談体制強化を求める会長声明

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 近年,こんにゃくゼリーによる窒息死事故や「船場吉兆」による一連の食品偽装表示事件が発覚し,また輸入冷凍餃子への毒物混入事件等により食品の安全・表示分野に対する消費者の信頼は著しく損なわれ,深刻な社会不安が広がった。また,ガス湯沸かし器一酸化炭素中毒事件,シュレッダーによる指切断事件,住宅の耐震構造偽装事件により,製品や住宅の安全性が大きな問題となった。更に,取引分野においても,年々巧妙化する振り込め詐欺,サラ金の違法取立,次々販売・モニター商法等に代表される悪質商法被害,英会話教室NOVAや福岡県に本店を置く株式会社エフエーシーの破産手続の開始等による消費者トラブルなど,多種多様な消費者被害が次々と発生ないし顕在化している。これに対し,従来の産業・業界別の縦割行政では,業界の育成を第一義としており消費者被害への対応が後手に回っている上に,それぞれの管轄と法的手続が複雑に分岐・錯綜しているために,これらの消費者被害の発生防止や被害救済の面において不十分である。
 一方,各地の消費生活センターなど地方自治体の相談窓口による相談・あっせん解決は,消費者にとって身近で頼りになる被害救済手段として重要である。ところが,自治体の地方消費者行政予算は,ピーク時の1995年度には全国200億円(都道府県127億円)であったものが2007年度は108億円(都道府県46億円)に落ち込むなど年々削減されており,地方の相談窓口は,十分な相談体制がとれない,あっせん率が低下している,被害救済委員会が機能していないなど,多くの問題を抱えている。
 地方自治体における法律相談関連予算の規模も拡大することは望めない状況にある。
 また,各消費生活センターにおいても,人件費削減のために相談員の有期雇用化が進み,そのため経験を積んだ相談員が退職していく上に,相談員の研修費用が削減されており,相談のノウハウの承継が困難となっている。
 このような状況下において,2007年10月,福田康夫内閣総理大臣は,就任直後の所信表明演説において「生産第一という思考から,国民の安全・安心を重視し真に消費者や生活者の視点に立った行政に発想を転換し,消費者保護のために行政機能の強化に取り組む」と述べ,2008年1月18日の第169回通常国会での施政方針演説では「各省庁縦割りになっている消費者行政を統一的・一元的に推進するための強い権限をもつ新組織を発足させ併せて消費者行政担当大臣を常設する。新組織は国民の意見や苦情の窓口となり,政策に直結させ,消費者を主役とする政府の舵取り役になるものとする」旨表明した。
 これを受けて自民党消費者問題調査会は,本年3月19日,「産業育成官庁から独立し,消費者・生活者目線で他省庁に指令を出す『消費者庁』の新設(強い監督権限)」,「地方消費者行政の充実」,「違法収益のはく奪」,「相談窓口の一元化」などを骨子とする最終取りまとめを行なった。また,民主党も消費者庁の創設に加えて,消費者保護官(オンブズパーソン)構想を提言するなど,野党各党も検討を進めている。3月27日には国民生活審議会総合企画部会が部会報告において消費者・生活者を主役とした行政への転換を提言し,4月2日には政府の消費者行政推進会議が発足した。
福田康夫内閣総理大臣は,本年4月23日,消費者行政推進会議において,「消費者を主役とする『政府の舵取り役』としての消費者庁(仮称)を来年度から発足させる」との意向を明らかにし,消費者に身近な問題を取り扱う法律は消費者庁に移管することや,地方消費者行政の強化を打ち出した。そして,消費者行政推進会議は,本年6月13日に,消費者に身近な30の法律を主管或いは共管することを明記したほか,消費者庁の果たす役割として,所管庁に対する指示・勧告権限など縦割り・すき間行政の弊害に対し迅速に対応するための諸権限や新規立法権限を持つ,司令塔の役割を求める最終報告を取りまとめたところである。
 当会は,この方針を高く評価するものである。消費者が主役の実効性ある制度とするためには,新組織に消費者行政を一元化し,十分な権限を与えるとともに,都道府県・市町村など消費者に身近な地方相談窓口において,人的及び物的体制を十分に確保することが必要である。よって,当会は以下のような新組織や制度の創設を強く求める。
1.新組織が消費者政策の企画・立案を行なうとともに,消費者被害が多発する主要な分野については事業者に対する規制監督権限を直接行使できるよう,関係法の所管を新組織に移管し,かつ縦割りを排除した横断的・一元的な規制監督権限を付与すること。
2.新組織が消費者の権利擁護の理念の下にその責任を果たせるよう,消費者団体に新組織に対する調査・勧告権限発動を求める申立権を付与し,新組織の運営に消費者が参加し監督することが可能な組織とすること。
3.新組織に消費者・事業者・公益通報者等からの被害関連情報を一元的に集約し,調査・分析・公表する権限を与えた上,この権限に実効性を持たせるため,被害の原因究明等のための機関を設置すること。
4.消費者行政は地方自治そのものであるという視点に立った上で,消費者の苦情相談が地方自治体の消費者生活相談窓口で適切に助言・あっせん等により解決されるよう,地方の相談体制の充実,情報の集約と発信,国と地方の連携等の施策を強力に推進できるような制度・体制を構築し,そのために必要な予算を国の責任で確保すること。
5.新組織ないし関係省庁が調査把握した情報に基づき,違法収益の機動的な凍結及びはく奪を行ない,適正な手続のもとで被害者に分配する制度を導入すること。
2008年6月16日
                           福岡県弁護士会     
                              会長  田邉宜克

少年法「改正」法案に反対する会長声明

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法制審議会少年法(犯罪被害者関係)部会は、本年2月13日、少年法「改正」要綱(骨子)を採択し,さらに,3月7日少年法「改正」案が閣議決定され国会に上程された。
この「改正」案は,?犯罪被害者等による少年審判の傍聴規定を新設するとともに,?犯罪被害者等による記録の閲覧及び謄写を認める要件を緩和しているが,以下の理由により,当会は,同法案に強く反対する。
1 法案は,少年審判における犯罪被害者等の権利利益の一層の保護を図ることを理由に,審判の傍聴規定の新設を提案する。当然ながら,犯罪被害者等の権利利益の保護が図られなければならないことは言うまでもない。
しかしながら,そもそも少年審判に関しては,少年の健全な育成を目的とするという少年法の理念(少年法1条)の下,懇切を旨として和やかに行わなければならないと定められる(同法22条)など,裁判官,調査官,付添人ら関係者が少年に対して何よりも受容的に接したうえ,教育的・福祉的な働きかけを行うことにより,少年がその犯した非行事実に真摯に向き合い内省を深める場となることが強く期待されている。その場合,少年の率直な発言をきっかけに,少年の持つ問題性を浮き彫りしに,その未熟さを自覚させ,真の健全育成のための働きかけを行っていくことが重要である。
ところが,こうした審判を被害者等が傍聴するということになれば,精神的に未成熟な少年は,事実に関する自己の率直な意見や心情,気持ちをそのまま発言することに躊躇を覚え,必然的に被害者を意識した建前の発言に終始し,結果として,審判に関わる関係者からの少年の問題に迫った更生への働きかけができなくなるおそれがあるだけでなく,真実の発見にも悪影響を及ぼすことも危惧される。
また,非行の原因や少年の処分は,少年の家庭生育環境や生い立ちなどに遡って総合的に考えることが必要であるところ,被害者等の傍聴が許されるならば,プライバシーの観点から,こうした部分を審判において明らかにすることが躊躇され,非行の原因を十分に掘り下げることができず,かつ,適切な処分を選択することができなくなる。
さらに,多くの場合,審判は,刑事事件に比べても事件発生から間もない時期に開かれるため、少年のみならず、被害者にとっても、心理的な動揺が収まっていない状況で開かれることが多い。にもかかわらず、被害者が少年審判を傍聴することになれば、当該審判廷は必然的に非常に緊張度の高いものとなり、上記少年法の理念に基づく審判の実践はおよそ困難となる。
加えて,犯罪被害者等による少年審判の傍聴については,現行制度においても,少年審判規則第29条に基づき,裁判所が認める範囲で審判への在席が認められる場合があるのであるから,この規定に加えて「改正」案のような規定を設ける必要性は認められない。
2 同様に,犯罪被害者等の権利利益の一層の保護を図るという理由から,記録の閲覧・謄写を認める要件を緩和する点については,その対象範囲を法律記録の少年の身上経歴などプライバシーに関する部分についてまで拡大することになるが,少年の更生に対して悪影響を及ぼすおそれも懸念されるところであり,この拡大は認めるべきではない。
3 犯罪被害者等の権利利益の一層の保護を図るという理由から,今なすべきことは,各関係機関が被害者等に対し,2000(平成12)年少年法「改正」で導入された,被害者等による記録の閲覧・謄写(少年法第5条の2),被害者等の意見聴取(少年法第9条の2),審判の結果通知(少年法第31条の2)の各規定の存在をさらに丁寧に知らせ,これを被害者等が活用する支援体制を整備すること,さらには,より抜本的に犯罪被害者に対する早期の経済的、精神的支援の制度を拡充することである。
以上
2008(平成20)年3月26日
福岡県弁護士会
会 長  福  島  康  夫

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