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カテゴリー: 決議

法科大学院における経済支援に関する決議

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 2004年5月25日   福岡県弁護士会 会長 前田 豊
 「法科大学院の教育と司法試験法との連携等に関する法律」は、質・量ともに豊かな法曹があらゆる場所で活躍し、社会の隅々にまで法の支配を行きわたらせるため、法科大学院を法曹の養成のための中核的な教育機関と位置付け、そのための施策実施に必要な財政的措置を取るべきことを国の責務として明記した。
 ところで、日弁連が本年1月10日から24日に行った法曹志望者に対するアンケートの結果、奨学金等の貸与制度がない場合には、法科大学院の授業料が年間100万円を超えると志望者の5割が法科大学院進学を断念すること、そのような制度があっても年間授業料が200万円とした場合には、奨学金貸与額が年間200万円であったとしても3分の1の志望者が進学を断念することがわかった。
 法科大学院進学希望者が経済的な理由で進学を断念することがないようにするために、また法科大学院に様々なバックグランドを持った学生が入学して法科大学院ひいては法曹の多様性を保持するために、法科大学院に関する財政支援が不可欠である。
 よって、政府ならびに文科省、法務省及び各政党に対し以下の事項を要望する。
 法科大学院に対し、その年間授業料を100万円以下にできるように運営 助成金・交付金を充実すること。
 公的奨学金制度の充実、及び政府保証ローン創設などによる民間金融機関 による教育ローンの充実を図ること。

公的付添人制度の実現を求める決議

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 2004年5月25日   福岡県弁護士会 会長 前田 豊
 現在司法制度改革推進本部において、公的刑事弁護制度の導入及び整備について検討がなされ、同時に、少年審判手続における国費による少年の付添人制度(公的付添人制度)の導入についても検討がなされている。
 福岡県弁護士会は、当番弁護士制度発足以来、逮捕された少年にはできるだけ当番弁護士を派遣し援助を行ってきたが、さらに、2001年2月1日、日弁連及び法律扶助協会からの資金援助に加えて、会員から特別会費を徴収するなどの自助努力により、付添人の選任を希望する少年全員に対して付添人を選任するという「全件付添人制度」を発足させ、今日まで実施してきた。
 そして、福岡家庭裁判所の理解と協力を得て、2002年には、観護措置を受けた少年の54%(家裁送致時に弁護人がいたケースを含む)の少年に付添人が選任された。この割合は、福岡家庭裁判所本庁に限れば84%に及ぶ。
 付添人に選任された弁護士は、非行事実の存否に争いがある場合には非行事実が存在しないことを証明するための活動を行い、非行事実の存在に争いがない場合においては少年の立ち直りのために必要な様々な活動をしてきた。
 後者の場合、付添人は、少年に被害者の気持ちや被害者の現状を知らせ、少年が行った非行による重大な結果を認識させ、被害弁償を試み、親子の関係の修復を試み、少年が学校や職場に復帰できる環境を整えるなどして、少年が自らの力により立ち直るためのあらゆる援助、努力をしてきた。そして、多くの事件において、付添人がいたからこそ少年が更生できたり、あるいは
被害弁償ができて被害者の感情も宥和されるなどの実績をあげてきた。
 福岡県弁護士会は、これまでの実績を踏まえて、今後もこの全件付添人制度を継続して実施し、さらに充実させる所存である。
 しかし、全国のすべての少年に対し、付添人の選任を希望すれば付添人を選任することができるという制度を実施するためには、公的付添人制度が不可欠である。
 非行を犯した少年が一人でも多く立ち直ることは、当該少年にとって必要であるだけでなく、非行及び犯罪をこの国から減少させ、国民の安全を図るうえでも極めて有益であり、ここに国費を投入することは、われわれ大人の責務であると考える。
 よって、早急に公的付添人制度を発足させ、充実させることを求める。

取調の全過程の録画・録音による取調の可視化を求める決議

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 2003年5月27日   福岡県弁護士会 会長 前田 豊
 日本国憲法及び刑事訴訟法は、被疑者・被告人に黙秘権を保障し、自白の強要を禁止している。しかし、実際の取調べは、密室で行われ、暴力、脅迫、利益誘導等によって被疑者・被告人の権利が侵害・形骸化され、様々な冤罪事件や誤判事件の温床となってきたことは周知の事実である。また、現行の刑事訴訟法が、伝聞法則を徹底していないために、密室での取調べによって作成された自白調書の任意性・信用性をめぐって、刑事裁判の長期化が生じている。\n
 このような弊害を排除するためには、伝聞証拠の排除を徹底する必要があり、また自白偏重・自白強要を排し捜査を適正化するためには、その過程を容易に検証できるように、取調べの全過程を録画・録音する、いわゆる取調べの可視化が必要不可欠である。
 イギリスでは、17年前から取調べ状況を録音する取調べの可視化が法制化されている。また、国連の規約人権委員会(自由権)は日本政府に対し、代用監獄における被疑者取調について「電気的手段により記録されるべきことを勧告」している。
 現在ではCD、DVD等の記録媒体の急速な進歩により、大量の情報を記録して保存することが可能となっており、そのためのコストも安価なものとなっている。この意味でも取調べ過程の可視化はより実現性の高い制度である。これが実現すれば、取調べ等の適正化、裁判の充実・迅速化に大きく寄与することは明らかである。\n
 また、今国会では「裁判迅速化に関する法律案」が提出されている。さらに、司法制度改革審議会では、市民が刑事裁判に参加する裁判員制度が議論されている。裁判の迅速化の促進は当然であるが、審理の充実が損なわれてはならないこともまた当然である。市民にわかりやすい裁判を迅速かつ充実して行うためには、争点に応じた集中的な審理が求められ、事件の実体判断にこそ、より集中した審理が尽くされるべきであるが、そのためにも、取調べ過程の可視化は不可欠の要請である。
 以上のように、憲法・刑事訴訟法の基本理念である人権の擁護と迅速かつ充実した裁判の実現のためにも、警察官・検察官による取調べの全過程を録画・録音することが制度化されるべきであり、当会はその実現を強く求めるものである。

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