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福岡県弁護士会会長日記

カテゴリー:会長日記

                          会 長 田邉宜克 (31期)
【スタッフ弁護士と刑事弁護態勢】
7月29日に「スタッフ弁護士の配置」の件で、全員協議会を開催した。執行部8人以外の出席会員は11名と少数に止まった(積極的反対意見なし)。参加者が少数なのは、会員総体も積極的に反対しない意向であると捉えるべきか。
スタッフ弁護士についての議論は、当会の被疑者被告人国選対応態勢確立の重要性を再確認させる場でもあった。札幌弁護士会は、本年3月末に「被疑者国選対象事件の拡大及び裁判員裁判が一部の会員で担うべきものでないことを共通認識とし、会員の総力で09年態勢を確立する。現時点ではスタッフ弁護士を招聘しない。」との常議員会決議を挙げた。当会においても「被疑者国選対象事件の拡大及び裁判員裁判が一部の会員で担うべきものでないこと」は、当然に「共通認識」であるはずであり、「会員の総力で対応態勢を確立すべき」ことも同様である。筑豊地区や壱岐対馬等の被疑者国選選任の「万が一の場合」に備えた安全装置としてスタッフ弁護士が配置されても、弁護士としての上記基本姿勢に毫も影響はないはずであり、この機会に今一度、国選弁護の原点に帰って、我々弁護士の責務を自覚すべきであると思う。
筑豊地区のバックアップ体制を確実にするために少なくとも40名余の福岡部会員が必要であるとすれば、執筆日現在で福岡本庁事件に専念できる被疑者国選登録福岡部会員数は、240名を割り込む。当会は、「国選弁護拡大ニュース」を連続して発行し、未登録会員に個別に登録要請の手紙を差し上げ、更には、担当者が対象会員に電話や個別訪問をして登録をお願いするなど、被疑者・被告人国選弁護登録拡大運動に全力で取り組んでいるが、未だ充分ではない。一人でも多くの会員の登録を切にお願いする次第である。
【あさかぜ基金法律事務所】
9月からいよいよ、過疎地対応弁護士養成事務所である「あさかぜ基金法律事務所」が活動を開始する。九弁連の事業ではあるが、その運営は、実質的に当会の責務である。正副の指導担当弁護士が、被養成弁護士の指導にあたるが、当会会員全員で育て上げる気概を持つ必要がある。指導担当弁護士以外の会員からもお声かけいただき、被養成弁護士と共同して各種の事件を受任し、できるだけ多く事件処理を共にする中で「養成」することが一番である。
同様に、9月から新スキームで養成されるスタッフ弁護士が、当会に配属される。司法修習終了後、すぐに当会に登録し、あおぞら法律事務所で弁護士活動をスタートする。当地での1年余の養成期間を経て、過疎地に赴任することになるが、当会の一員として、会員が協力して育て上げることが求められている。
更に、法テラス福岡地方事務所や北九州支所のスタッフ弁護士も登録後1年余しか経ていない弁護士であることに変わりない。委員会活動を通じて、あるいは、国選事件や扶助の処理について多くの会員がアドバイスするなどして、合計3名のスタッフ弁護士を当会の仲間として、力を合わせて育て上げる意識が必要である。
多くの会員の理解とご協力をお願いしたい。

福岡県弁護士会会長日記

カテゴリー:会長日記

                         会 長 田邉宜克 (31期)
【徳永賢一先生ご逝去】
6月19日の日弁連理事会中に、元会長徳永賢一先生ご逝去の報に接した。先生は、木曜会の創立メンバーとして会務運営民主化の先頭に立ち、上田国賠訴訟の弁護団の中心を担い、当番弁護士制度創設時の刑事弁護委員長として、当番弁護士出動第1号も務められた大先達であった。日弁連理事の重責は認識しつつも会長職を優先することとし、理事会を途中退席して福岡に戻り、翌20日の告別式に参列して弔辞を献じた。まさに巨星墜つの感あり。
心から徳永賢一先生のご冥福をお祈り申し上げます。
【東北弁連ブロック大会(7月4日)】
九弁連理事として、東北弁連ブロック大会に出席した。
この大会では、司法試験合格者数を年間3000人程度とする政策の変更を求める決議が提案された。審議会意見書が想定した法曹需要の増加の見通しがないこと、裁判官・検察官の増加を含む司法の基盤整備が十分に講じられないまま弁護士人口のみが急増するのは需要との間のアンバランスを生じさせていること、OJTの不足や過当競争により質の低下を招来すること、合格者数を2100人で凍結しても10年後には弁護士数は約4万人に達すること、過疎偏在問題は相当程度改善されていること等の理由から、合格者数を2100人で凍結し、法曹需要の増加・法曹の質の確保の視点から法曹人口のあり方を具体的に検証したうえで、適正な年間合格者数を決めるよう求めるものであった。他方、会場からは「本当に法曹需要はないのか、一般市民が弁護士に頼みたくても頼めない、弁護士が事件依頼を忙しい等で断っている実状にあるのではないか。」「中小企業の法的需要は調査でも相当程度存在しているではないか。」「法曹の質の低下は、未だ検証されていない。」「弁護士過疎問題が現に存在するのに、合格者数減少を打ち出すのでは市民の理解は得られない。既得権保護との非難を免れない。」「ロースクールの学生のことも考えるべきである。」等々の反対意見が出た。裁決は2:1で賛成多数であったが、もう少し、議論の時間が必要だったと思えた。本月報発行時には、既に、合格者数についての日弁連理事会の提言が発表されているはずである。当会でも、本格的に法曹人口についての議論を始めなければならない。
なお、東北弁連では、大会終了後懇親会までの間の約90分に日弁連執行部と会員との意見交換会が実施されている。日弁会長・副会長が全員揃って、国選弁護・裁判員裁判・法テラスとスタッフ弁護士・法曹人口問題について説明し、会員と直接質疑応答するというもので、会員と日弁連の距離を近づける機会として有意義であった。

伊藤和也さん殺害に対する抗議声明

カテゴリー:声明

                      2008(平成20)年9月2日
伊藤和也さん殺害に対する抗議声明
福岡県弁護士会
会 長 田 邉 宜 克
 福岡市に本拠を置く「ペシャワール会」スタッフ伊藤和也さんが,拉致され,その後,殺害された。
 福岡県弁護士会では,5月23日,憲法9条と国際貢献を考えるシンポジウムを開催し,「ペシャワール会」現地代表の中村哲医師にご講演いただいたばかりである。中村医師によれば,日本が過去半世紀以上にわたって一度も海外で軍事行動を起こしていないという歴史的な事実が,アフガニスタンの住民に良好な対日感情を育み,日本人であるがゆえ,身体・生命が守られ,無事,活動を進めることができたとのことであった。その体験談から,我々は、日本国憲法の平和主義が,民間の人道支援活動を実質的に支える意義をも有することを改めて認識することができた。
 伊藤さんは,ペシャワール会現地スタッフとして,献身的に農業技術支援に取り組み,アフガニスタンの多くの民衆から,感謝と尊敬を集めていたとのことである。
 伊藤さん殺害の実行犯やその動機の詳細は未だ明らかではない。しかし,いかなる動機であれ,尊い人命を奪う卑劣な行為を許すことはできない。
 福岡県弁護士会は,伊藤さんの献身的な活動とその実績に対し,深い敬意を表し,謹んで哀悼の意を表するとともに,伊藤さんを殺害した卑劣な行為に強く抗議する。そして,伊藤さんの遺志に報い,民間の人道支援活動を支えるためにも,日本政府に対し,日本国憲法の平和主義を全世界にアピールする活動を推進するよう強く求めるものである。
以 上

大会アピール「消費者庁構想を考えるシンポジウム」

カテゴリー:アピール

 私たち「消費者庁構想を考える〜真に消費者の頼りになる消費者庁実現に向けてシンポジウム」参加者一同は、日本における消費者が置かれている現在の状況を確認した。すなわち、1962年にケネディ大統領が米国連邦議会に送付した「消費者利益保護に関する特別教書」(いわゆるケネディ教書)において、消費者の権利として、安全である権利、知らされる権利、選ぶ権利、意見を聴かれる権利の4つの権利が確認されて以来、消費者は単に事業者を業法で規制した結果保護されるという受動的な存在ではなく、権利主体として積極的に社会に関与すべきものと理解されてきた。
 ところが、我が国においては、未だに産業育成を本来の目的とした産業毎の縦割り省庁が存在するのみであり、消費者の観点から統合的に行政を司る庁は存在していない。この結果、各省庁の縦割り行政のすき間に発生したと思われる消費者被害や、産業育成の観点から監督官庁が、司法判断と異なる業者よりの行政解釈を行った結果、より被害が拡大・深刻化するなどしている。加えて、食の安全や製品の表示に関する偽装は後を絶たず、深刻な社会不安が惹起されている。また、市民にとって身近な相談窓口である地方公共団体の消費者相談窓口において、資金的・人的資源が必ずしも十分ではなく、市民の真のニーズに応えることが困難になりつつあることも指摘されている。
 このような中、政府は、平成20年6月27日に閣議決定した、「消費者庁創設のための消費者行政推進基本計画」において、消費者の視点で政策全般を監視し、「消費者を主役とする政府の舵取り役」として、消費者行政を一元的に推進するための強力な権限を持った新組織を創設することとし、国と地方一体となった消費者行政の強化を行うものとしている。また、民主党も消費者権利擁護官(消費者オンブズパーソン)法案を取り纏め、消費者の立場に立った徹底した権限行使をする行政組織を提案している。
 私たちシンポジウム参加者は、このような現在の深刻な状況を改善していくためには、国民一般と同義語である消費者の視点から行政全般を司る行政組織が必要であること、市民にとって身近な相談窓口の充実拡大が必要であることを理解し、政府与党と民主党の案をより充実させ、来るべき臨時国会において以下の真に消費者のための行政組織を創設することを期待する。また、参加者は、それぞれの社会的な地位において、創設された消費者のための行政組織に対して、司法と行政という枠にとらわれず、消費者の権利の擁護のため、それぞれが最大限の努力を尽くすことを誓い、ここに意見を表明する。
1.速やかに消費者の権利擁護のための実効性ある行政組織を創設すること。
2.市民のための相談窓口である地方公共団体の相談窓口を充実・拡大すること。
3.新組織の運営に消費者が参加し、監督するために、弁護士会や消費者団体に新組織に対し問題業者への調査・勧告権限発動を求める申立権を付与すること。
4.独立した行政組織には、業者が得た違法な収益を剝奪し、被害者に速やかに回復させるための行政手続・司法手続上の権限を付与すること。
平成20年(2008年)7月19日
「消費者庁構想を考えるシンポジウム」参加者一同

福岡県弁護士会会長日記

カテゴリー:会長日記

                      会 長  田邉 宜克(31期)
【定期総会・就任披露宴】
5月22日に福岡県弁護士会の定期総会と役員就任披露宴が開かれた。総会では、予算決算等の審議事項と「より良い刑事裁判の実現を目指して」「あさかぜ基金法律事務所を成功させよう」との二つの宣言(当会HPに掲示)がいずれも承認可決され、就任披露宴も多数の招待者・会員のご参加を得て、盛会裡に終えることができた。
会員の皆さん及び就任披露宴にご出席いただいた方々に心から御礼申し上げます。
また、総会終了後の法テラス埼玉の本所スタッフ弁護士谷口太規氏の講演は、スタッフ弁護士の活動内容とその矜持を知ることができ、大変参考になった。同弁護士に講演内容を敷衍した文章を本号に寄稿していただいたので、是非ともご一読いただきたい。
【あさかぜ基金法律事務所】
5月16日に、あさかぜ基金法律事務所運営委員会に引き続き入所予定の3名の修習生の方との懇談会を行った。現行61期1名、新61期2名、合計3名の予定者に弁護士偏在地区での活動を志した動機や意欲を語っていただいたが、いずれも、あさかぜ基金法律事務所の第1期を委ねるにふさわしい方々で大変心強い思いであった。運営委員会や指導担当弁護士にだけ、その養成を担わせるのではなく、当会の責務として、会員全員に積極的なご協力ご支援をお願いしたい。
【奄美ひまわり事務所引継式】
5月24日に奄美ひまわり基金法律事務所の引継式が開催され、九弁連副理事長として出席した。後任として奄美に赴任した大窪弁護士は、東京の養成事務所を経て、紋別ひまわり事務所で3年間活躍された後、2,100kmの距離をものともせず奄美行きを決断した。彼は、弁護士がより求められている地域で働くことをモットーとし、多重債務ほかの需要に応えるほか、離島である奄美地区(周辺の奄美群島も)の被疑者国選弁護への対応が自らの責務であると語った。その披露宴には、北海道から沖縄まで、全国各地から、多くのひまわり事務所の仲間達が集まったが、意識が高く、熱意溢れる若者ばかりで、弁護士偏在地域を支えている人たちの心意気に感動した。
また、奄美ひまわり事務所は、鹿児島県弁護士会の支援委員会の大変なご苦労があって支えられていることも実感した。あさかぜ事務所から派遣される先の単位会との連携は、極めて重要である。
【柳川地区の零地区解消】
5月27日に同月初め柳川市で開業された三島正寛弁護士の事務所開設披露が行われた。所謂、零地区として、全国で最後に残ったのが、柳川と長浜であったが、三島弁護士の決断に引き続き、6月初めに長浜でも法律事務所が開設され、ついに零地域解消という日弁連の悲願が達成されたのである。日弁連の取組みのシンボリックな意味だけではなく、その地域に弁護士が常駐しているのと、いないのとでは、地域とのつながり、法的需要の掘り起こし、ひいては、その地域での権利の救済の面で、大きな違いがあることは明らかであって、三島弁護士は、何よりも柳川地域の住民に歓迎され、期待されている。今後、柳川地区の司法サービスの中核として活躍されることを願うや切である。
【当番弁護士負担金】
来年5月で当番弁護士負担金の期限が満了する。被疑者国選弁護が開始され、現在の被疑者援助事件の多くが国選となっても、当番弁護士や国選対象外の被疑者援助事件、なにより、少年事件全件付添の全国拡大を目指す付添人援助事業実施のために、同趣旨の負担金継続は必要不可欠であろう。そのために必要な負担金額を含め、会内で広く議論して行きたい。

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