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福岡県弁護士会会長日記

カテゴリー:会長日記

会 長  田 邉 宜 克(31期)
【被疑者国選弁護5月21日問題について】
本年度、国選弁護対応態勢確立推進本部を設置し、被疑者被告人国選弁護人の契約者の拡大に取り組みました。未契約会員に切々たる登録依頼の手紙をお送りし、本部委員に担当を割り付けて、「しつこい!」と言われてもめげずに繰り返し面談・電話で国選契約をお願いし、国選弁護の意義や重要性を再認識していただくため、登録会員の生の声を載せた「国選弁護拡大ニュース」を発行して行きました(読めば、ぐっと来るような「声」ばかりです。HPにアップしていますので、未読の方は是非お読み下さい)。その結果、相当数の会員に国選契約を締結していただくことができましたし、新規登録者への勧誘もあって、2月6日現在で福岡部会の被疑者国選弁護人契約者数も350人に達しました。
会員間の負担の平等化の為には、なお一層、契約者の増加を目指して活動を続けて行く必要があると感じています。
さて、本題の「5月21日問題」とは、ご存じの会員も多いとは思いますが、被疑者国選弁護人選任の告知は、5月21日以降に勾留された対象犯罪の被疑者だけではなく、この日以前から勾留されている対象犯罪の全被疑者、即ち、5月21日時点で勾留満期まで後1日2日しかない被疑者(5月初めに勾留のついた者)から、5月21日に勾留された者まで全てにしなければいけないと規定されていることを指します。
仮に、5月21日一日で一挙に「告知」がなされ、対象の被勾留者が被疑者国選弁護人の選任を求めたときには、速やかに被疑者国選弁護人を推薦することは困難と言わざるを得ないため、どのような対応をとるべきかが問題となっているのです。この混乱を回避するための方策は、4月末頃からの当番弁護士出動に当たり、被疑者国選弁護対象事件については、会員各位が、5月21日問題を意識して、被疑者にもこのことを丁寧に説明し、弁護士会の刑事被疑者援助制度を利用して、被疑者弁護人を積極的に受任していただくことに尽きます。途中で国選に切り替わることがあっても手続の問題で「人捜し」は不要になります。幸い当会の被疑者援助事件受任率は他会に比べ高いので、会員各位が意識を一段と高めることで、十分に対応が可能だと考えています。是非ともご協力下さい。
【国選付添人契約の拡大について】
これまでも、任意の国選付添人制度があり、被疑者援助事件として弁護人となった会員が、付添人援助の登録はしていても国選付添の契約をしていないと、家裁から国選付添人の選任を求められても当然には推薦できませんでした。同一の弁護士が、弁護人から引き続き付添人となることが、望ましいことに異論はないので、国選未登録の会員には、その都度、国選付添人への登録をお願いしたうえで国選付添人として推薦することが少なくなく、やむを得ない場合に、別の登録会員に国選付添人をお願いする対応でしたが、速やかな対応のために、事務局には、大変ご苦労をかけることにもなっていました。 
昨年12月から犯罪被害者の審判傍聴制度が導入され、これが認められると必要的に国選付添人を選任すべきとなりましたので、この問題が一層顕在化することになります。被疑者援助を経て、家裁送致後、付添人援助となり、さらに同事件が被害者傍聴事件と決定されると途中から国選付添事件となるので、継続性の要請はより大きくなるのです。
当会では、国選付添人制度に対応する名簿搭載者の数は未だ十分とは言えず、法テラスが管理運営する付添人援助事業における付添人援助名簿と前記国選付添人名簿の登載者が一致していませんが(法テラス名簿には登載していても国選名簿には登載していない)、上記の問題を解決するには、これを一致させることが求められています。多くの会員の皆さんが付添人の国選名簿に登録していただければ、会員間の負担も平等になり、国選名簿登録者だけに「重い事件」が回ることもなくなるのですから、従前の負担感と大差はないはずです。国選付添人契約に是非ともご協力下さい。

福岡県弁護士会会長日記

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会 長 田 邉 宜 克(31期)
【会員数会820名へ】
新61期の新入会員54名を迎え、当会の会員数は、820名を超えました。
当会では、会員数が増える中で、委員会の諸活動、月報やオール・エフベン、HP等での会内広報、若手会員の刑事弁護や付添人研究会の実践等で、今何が問題で、誰がどんな活動をしているのか、どれほど頑張っているのか、の情報を会員に提供し、認識を共通にすることで、公平・平等に会員に公益活動を担っていただくことに繋げたいと考えて対応策を講じてきました。
今後、会員数が更に増えて行けば、会員間に「公益活動は、自分がやらなくても誰かがやってくれる」という意識が広がっていくことも十分考えられるところですが(東京や大阪の弁護士会では、既に会員の公益活動の義務を規定化しています)、ここ福岡では、会員の皆さんが、弁護士としての矜持を胸に、刑事被疑者弁護を始めとする公益活動を実践する中で、一丸となって取り組むという伝統は、今も息づいているはずです。
今年は、被疑者国選弁護の拡大、そして裁判員制度の実施を迎え、これを担いきれるか否かで、弁護士・弁護士会の鼎の軽重を問われることになります。
正に、弁護士会として踏ん張りどころですが、特に、この5年間で会員数の30%を占めるに至った新入会員の皆さんには、自分達こそが弁護士会を支えているという心意気をもって、刑事被疑者弁護を始めとする公益活動の実践に、積極的に取り組んでいただくようお願いいたします。
【民法(債権法)改正の動きについて】
現在、「民法(債権法)改正検討委員会」において、民法の債権編の抜本改正についての検討が進められています。先般来の日弁連のFAXニュースでも広報されましたが、この検討委員会では、本年1月から3月まで毎週全体会を開催し、3月末に議論を取り纏め、4月下旬にシンポジウムを開催し、4月下旬以降、速やかに法制審での審議が始まる可能性もあるとのことです(試案を発表し、各界の意見を聞くとしても、法制審を開始するまで1年を置くというのは現実的ではない、との関係委員の発言があります)。
この検討委員会は、学者主導の私的なものとの位置づけですが、法務省が実質的に関与し民法改正作業を視野にサポートして来たことは否定し難いところであり、重大な民法改正作業に、実務家たる弁護士がしっかりと反映させる、その為に弁護士会の意見を積極的に発信することが重要であり、次年度の重要な課題になっていくものと思います。
これまでの判例理論を民法の条文に取り入れるほか、私たちがこれまで学び理解してきた規定が大きく変わる可能性がありますので、是非とも、この動きを注視していただくようお願いしたいと思っています。
【ロースクールの定数削減】
中教審は、法科大学院教育の質の向上のための改善方策の中間まとめを発表しました。日弁連は、法科大学院の定数削減を打ち出した姿勢を評価するものの、単に、定数削減を求めるだけで具体的な数値を出さなければ、文科省の強い指導力が及ぶ地方の公立の小規模校の削減に止まり、全国の法科大学院全体の改革が実現できないままに終わることを危惧し、全国定員数を4000人程度に削減すべしとの意見書を採択しました。また、教員態勢や合格率にのみに準拠して、この改革を押し進めるならば、地方の小規模校のみが統廃合・定員縮小を求められることにもなり、地域に根ざす法曹を要請し、日本の隅々に法の支配を行き渡らせるとの司法改革の理想に逆行することになるので、地域的な適正配置に留意し、「大規模校の定員を100人程度削減すること」も合わせて求めることにしました。特に、7校の法科大学院を抱える九州沖縄地区では、この問題は深刻であり、重大な危機に瀕しているといっても過言ではありません。地域の弁護士会には、今こそ法科大学院を支えていくことが求められており、会員の皆さんにも強い関心を持っていただきたいと思います。

福岡県弁護士会会長日記

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福岡県弁護士会会長日記
会 長
田 邉 宜 克(31期)
新年明けましておめでとうございます。
私ども執行部も、会員の皆様のご協力を得て、無事新年を迎えることができ、残すところ3か月となりました。
最後まで職責を全うすべく、全力を傾注いたしますので、今後とも会員の皆様のご支援ご協力をお願いいたします。
さて、弁護士会の取り組むべき課題は、多岐にわたりますが、私ども執行部が年度内にと考えている課題を幾つかご紹介したいと思います。
【裁判員制度・被疑者国選の対応態勢】
北九州部会・筑後部会では、1人14、15件にもなろうかという負担を部会員が公平に分担する態勢をとられています。
福岡部会では50%の方々に被疑者国選登録をしていただきましたが、筑豊地区のバックアップ問題や裁判員制度のバックアップ問題もあり、なお、一部の会員に重い負担をお願いせざるを得ない状況にありますので、更なる国選登録を是非ともお願いいたします。
裁判員制度対象事件は、被疑者国選担当者に引き続きお願いすることになります。弁護士会の裁判員対応態勢も詰めの段階にあります。裁判員対応を含む刑事弁護の研修会等に積極的にご参加下さい。
【少年刑事援助事件の特別負担金】
昨年12月の日弁連臨時総会で、これまでの当番弁護士基金(月額4,200円)を平成21年6月以降、少年刑事事件基金に衣替えし、当番弁護士(付添人)・国選対象外の刑事被疑者援助事件・少年付添援助事件のために月額3,100円の負担を会員にお願いすることが決まりました。
当会は、これまで当会独自のリーガル基金負担金(月額5,000円)を主たる財源として、日弁連の基礎金額(刑事7万円、少年8万円)に刑事1万円、少年2万円を上積みしてお支払いしています。
今回の新基金で日弁連からは、被疑者援助8万円、少年付添援助10万円、即ち、従前の上積み額加算後と同額が支給されることになりますが、未だその支給額は低額であること、被疑者援助・少年付添援助事件を一層拡充すべきこと等を勘案し、平成21年6月以降も当会の上記上積支給を継続すべきではないか(刑事9万円、少年12万円)と考えています。具体的には、平成21年3月で期限の来るリーガル基金の継続という形で、会員の皆様にお諮りすることになります。
【対外広報・TV等CM】
本年度は、2,400万円余をTV・ラジオのCM(主として多重債務、今後、交通事故相談のCMも予定)に充て、各センターの手数料収入は、大幅増の昨年度を更に上回る見込みです。CMと相談数の相関関係も確認できており、次年度以降もTV・ラジオのCMを積極的に実施すべきだろうと考えています。本年度その方向性についてご検討いただき、次年度の予算審議という形で会員の皆様にお諮りすることになります。
【会館移転問題】
いよいよ九大六本松跡地への移転問題が具体的に動き出します。土地取得費、会館建設費、新会館の維持管理費等の負担を会員の皆様にお願いすることになりますが、会員の皆様のご理解を得るためにも、今後、可能な範囲で会館移転問題に関する具体的情報を提供して参りたいと思います。

ストリートビューサービスの中止を求める声明

カテゴリー:声明

                   
                  2008年(平成20年)12月1日
                 福岡県弁護士会 会 長 田 邉 宜 克
 
 本年8月5日から、Google(グーグル)社は、「Street View(ストリートビュー)」機能サービスの提供を開始した。
 これは、東京、大阪など12都市について、グーグル社のホームページ上で、地図の道路上のある地点を指すと、同社が撮影専用自動車で移動しながら撮影したその地点での360度の画像が見える機能で、主要道路に限らず、住宅街の狭い道路をも対象とした広範囲の画像が撮影・公表されている。そのような撮影を意識しない多数の市民が写っており、中には、ラブホテルに入る寸前のカップル、立ち小便をしている男性、路上でキスをする学生等も含まれていた。
 これらは、原則として正面の顔画像はぼかしがかかっているものの、撮影場所が明確に特定できるため、対象者を知っている人には、対象者の特定が可能である。また、顔にぼかしがかけられていない人の画像も散見されるほか、カメラの位置が歩行者の視点より約1メートルも高いため、通常であれば塀によって遮られる民家の中をのぞき見る形式の画像も散見される。
 しかし、わが国においては、公道での様子であっても、個人の私生活上の自由の一つとして、何人も、その承諾なしに、みだりにその容ぼう・姿態を撮影されない自由(プライバシー権の一種である肖像権)を有する(最判昭44.12.24,京都府学連事件判決、東京地判平7.9.27等)。
グーグル社の行為には、撮影の場面において?都市のほぼ全域にわたる広範かつ無限定の多数の市民の肖像を根こそぎ撮影していること、?高い位置からの撮影のため、撮影対象が家屋内にも及んでいること、?事前に公表目的での撮影を行うことを説明していないこと、また、公表の場面において、?問題のある画像を事前に個別チェックしていないこと、?テレビのニュース番組等のように一時的・背景的に映像が流れる場合と異なり、撮影場所が特定できる状態で長期間画像がさらされること、?電子データの特性上、画像が容易かつ半永久的に第三者により2次利用されうるという問題点がある。これらの点を、グーグル社のホームページ自体がきわめて多数の市民の目にさらされる強力な媒体であることと考え合わせれば、プライバシー権侵害の程度は大きい。
これに対し、ストリートビューは、遠隔地の画像が簡単に見られるという便益をもたらすものの、このような多数の市民に対するプライバシー権侵害を強いても仕方がないといえるほどの対立利益があるとは言えない。
 ユーザーの申告によって後から削除する仕組みによっても、すべての被害者が問題画像に気づく保証はなく、また、削除されたとしても2次利用の被害があり得るし、最初からプライバシー権侵害がなかったことにはならない。
グーグル社は、上記?〜?の問題点の抜本的解決を早急に図るべきであり、それができない場合には、このような画像の収集及びサービスの提供を中止するよう強く求める。

福岡県弁護士会会長日記

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                      会長 田邉 宜克(31期)
【9月度新入会員】
9月に入会された会員の皆さんを心から歓迎いたします。
さて、この新入会員の中に今次の司法改革の申し子的な三人の会員がおられます。
佐藤哲也さんは、東京での養成期間を経て法テラス北九州にスタッフ弁護士として赴任されました。登録会員1人当たり年間14、5件といわれる北九州部会の拡大後の被疑者国選の一翼を担っていただくことになります。
上加世田嘉隆さん(現行61期)も法テラスに雇用されたスタッフ弁護士ですが、所謂新スキームでの養成事務所であるあおぞら法律事務所で、登録初年度から1年間活動された後、独り立ちしたスタッフ弁護士として他所へ赴任されます。
井口夏貴さん(現行61期)は、あさかぜ基金法律事務所で、登録初年度から1年半ほど弁護士としての経験を積まれた後に、九弁連管内の過疎地の法律事務所(ひまわり公設・法テラス4号・独立開業等)に赴任されます。
三人ともに、しっかりとした、そして、過疎地での弁護活動や刑事弁護に強い意欲を持った方ですが、弁護士経験零ないし1年の若い会員であることに変わりはありません。無論、法テラス、養成事務所、運営委員会・指導担当者がサポートしますが、会員の皆さんには更に進んで、当会の仲間として、委員会活動や事件処理を通じ、また、種々の機会に相談に乗り助言するなど、会員全体の力で育成していく積極的な意識を持っていただきたいと思います。
【新司法試験合格者発表】
9月11日に新司法試験合格者2065名が発表されました。例年、設定目標の下限付近の合格者数でしたが、これを下回ったことはなく(今年の司法試験管理委員会の設定目標下限は2100名)、かつ、受験者の蓄積もあって、合格率が33%と昨年より7%下がった点が、注目されました。また、法科大学院別の合格者数において首都圏集中、地方と首都圏の格差の問題も指摘されているところです。当然、法曹人口の問題にもリンクしますが、やはり、法科大学院の統廃合や定員整理の問題に要注意です。特に、福岡県内4校、九弁連管内7校の法科大学院については、私達に続く後輩達の養成問題として、真剣に考えていく必要があります。私は個人的には、全国的に、統廃合、少なくとも法科大学院の定員の削減は避けられないのではと思っています。合格者数上位を残して下位校を切り捨てるのか、そうなると九州はその影響を避け得ません。一律に一定率で減員するのか、地方を重視し中央の大規模校の定員整理を求めるべきではないか、今後、この問題が、どのような流れになるのか、弁護会としての意見を出すべき時期が来るものと思います。
【新検察審査会法の施行】
検察官が独占していた公訴権行使のあり方に民意をより直截に反映させるために、検察審査会法が改正され、裁判員制度と同様、平成21年5月21日に施行されます。この改正法では、弁護士の関与が制度的に予定されています。
審査会が起訴相当を議決した事案を検察官が再び不起訴処分にした場合に、審査会が再び起訴相当を議決したときは、起訴すべき法的拘束力が発生します。その起訴と公判維持は、「指定弁護士」が行います。また、審査会は、その審査を行うにあたって法律に関する専門的な知見を補うため「審査補助員」を委嘱することができるとされ、弁護士がその任にあたることになります。指定弁護士はさほどの件数はないでしょうが、補助審査員は、一定数の委嘱要請があると考えられ、弁護士会としては、適切な弁護士を推薦するため、研修や推薦名簿の要否等の検討が必要になります。犯罪被害者問題を含め、刑事司法のあらゆる面に弁護士の関与が求められる時代だということもできるでしょう。

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