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会長日記

カテゴリー:会長日記

福岡県弁護士会 会長日記
平成21年度 福岡県弁護士会会長  会 長 池 永   満(29期)
その10  <「新しき華」のかおりを窺いつつ、自らに号令かけて> 12月14日~1月14日 熱烈歓迎 ‘大連市律師協会代表団’ ご案内のとおり大連市律師協会代表団(張耀東会長ほか18名)が2月26日来福し、翌27日、当会との姉妹提携協定の調印式と歓迎レセプションがホテル・ニューオータニ(福岡市)で開催されます。 当会においては昨年12月14日に代表団歓迎実行委員会(実行委員長・清原雅彦会員、委員長代行・伊達健太郎国際委員会委員長、事務局長・冨山敦県弁総務事務局長)が活動を開始し、第1日目に代表団が訪問する北九州部会では独自の歓迎体制(中野昌治実行委員長)も整えており、会を挙げて歓迎したいと思います。 長い交流の歴史がある日本と中国、その中でも文化的・経済的・地政学的にも極めてゆかりの深い福岡県と大連市において活動する両弁護士会が、従前の断続的交流により培われた信頼関係を基礎とし、「基本的人権の擁護と社会正義の実現」という法律家としての共通目標を掲げた交流協定を調印して継続的・安定的交流へとステップを進めることは、社会的にも国際的にも意義深いものがあります。 歓迎行事への多数の参加を始め、今後における両会の交流の発展のために会員各位のお力添えを宜しくお願いいたします。     始まった新旧交代の時期 年末も押し迫った12月28日定年まで若干の期間を残して依願退官された仲家暢彦・前福岡地裁所長が弁護士会館に退官挨拶にこられました。仲家前所長には、裁判員裁判の実施準備や法曹三者による検証協議会の立ち上げのために、毎月開催された四庁会(地裁・家裁・地検・弁護士会)における意見交換のみならず互いに直接行き来する等して、フランクな協議の機会を設定していただき、最終的な合意を形成する上で大変お世話になりました。この場を借りてお礼申し上げます。年が明けた1月7日新任の山口幸雄地裁所長の就任挨拶を受けました。山口所長からは、弁護士会との協力関係は裁判所にとっても一番重要なことであるという認識が表明されましたが、あわせて応接室に陳列している各国弁護士会からの記念品等を前にして、当会における国際交流の状況に関しても強い関心を示されていました。四庁会等でご一緒できる機会は3月までですが、裁判員裁判が本格化する時期でもあり、山口新所長と意見交換の機会が持てることを楽しみにしています。 また福岡高等検察庁においても、有田知徳・前検事長が退官され、三浦正晴・新検事長が着任されました。検事長の退任と就任の挨拶については前田豊九弁連理事長とともにお受けしましたが、有田前検事長からは福岡県弁護士会の活動に対する高い評価が、三浦新検事長からはこれから本格化する裁判員裁判に取り組む検察庁としての抱負等をお話しいただきました。  「市民のための司法改革」のバトンタッチ 当弁護士会においても、新年早々の1月6日、次年度役員の選挙が公示され、会長立候補者の所信が配布されました。その所信は、同時に進行している日弁連会長選挙候補者による政策表明に比べても、地に足の着いた論理と丁寧な語り口で「市民のための司法改革」を推進する立場を堅持してきた当会の基本方針の継承を鮮明に打ち出されておられ、候補者自身の会務に関する慧眼を十二分に窺い知ることのできるものでした。 仮に定数以内の立候補者であれば、立候補受付期間が終わる1月18日には次期執行部予定者の顔ぶれが確定し、次期執行部としての事実上の活動を開始することになります。 そこで、選挙公示日に先立つ1月5日、新年初めての執行部会議において、私たちは、次期執行部予定者が確定次第直ちに次期執行部としての会務方針策定や委員会構成等の検討作業に着手できるように、必要な情報提供の準備を行うとともに引継ぎマニュアルの作成作業を急ぐことを確認しました。 それとともに、現執行部や委員会が作業中の重点課題や常議員会で甲論乙駁の議論が進行している協議題については先送りするのではなく、可能な限りの手だてを尽くして会内合意の形成に努め、3月11日に予定している現執行部としては最後の臨時総会を目途に着地点を見いだし、次期執行部に引き継ぐ「宿題」を極力最小化するために、担当副会長を先頭に執行部が一丸となって努力することを決定しました。 どこまで首尾よく果たせるかは予断を許しませんが、自らにも号令をかけ、新旧ともに晴れやかな気持ちで「政権交代」を行えるようにがんばりますので、会員の皆様のご協力をよろしくお願いいたします。 (1月14日記) 

ストリートビューに関する要請書

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要請書
福岡市長  殿
                    2010年(平成22年)3月10日
                      福岡県弁護士会 
                     会 長  池永 満
要請の趣旨
1 福岡市個人情報保護条例を改正し、市民の肖像などの情報が大量にインタ ーネット上に流出しない措置を講じて下さい。
2 それまでの間、個人情報保護審議会において、グーグル社のストリートビ  ューサービス等の多数の人物・家屋等を映し出すインターネット上の地図検 索に関する調査を実施するとともに、事業者に対し、不適切な市民のプライ バシーの収集・利用を行わないよう指導、是正勧告等の必要な措置(福岡市 個人情報保護条例52条)をとって下さい。
要請の理由
 当会は、2008年12月、Google(グーグル)社の「Street View(ストリートビュー)」機能サービスに対し、プライバシー権保護の観点から、問題点の抜本的解決を早急に図るよう求め、それができない場合には、このような画像の収集及びサービスの提供を中止するよう強く求める会長声明を発しました。
 それは、東京、大阪など12都市について、グーグル社のホームページ上で、事前の同意なしに広範に撮影された何万という市民の肖像が、地図情報と連動する形で突然公開されたためです。
当会は、グーグル社の行為に対し、撮影の場面において、①都市のほぼ全域にわたる広範かつ無限定の多数の市民の肖像を根こそぎ撮影していること、②高い位置からの撮影のため、撮影対象が家屋内にも及んでいること、③事前に公表目的での撮影を行うことを説明していないこと、などの問題点を指摘しました。
しかしながら、グーグル社は、これらの問題点に対処することなく、2009年12月、福岡市全域を含む福岡県の市民のプライバシー情報を公開しました。
すでに全国約40の地方議会において、これらの行為に対する対処を求める意見書が採択されています。
日本弁護士連合会も、本年2月3日に、第三者機関を設置する条例の改正や、個人情報保護審議会によるそれまでの対処を自治体に求める意見書を関係機関に送付しました。
福岡市においても、市民のプライバシー権を保護する観点から、市民情報が密かに撮影され、住宅地など、公開する必要性の乏しい地域を世界中にさらす行為を繰り返されないよう、所要の条例の改正をなされるとともに、それまでの間、個人情報保護審議会において直ちに調査に着手し、プライバシー権保護のために必要な措置を講じられるよう求めます。

会長日記

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福岡県弁護士会会長日記
平成21年度会 長 池 永   満(29期)
その9 
<「こうあるべき世界を目指し」つつ、新年を展望する>
        11月13日〜12月13日
新年あけましておめでとうございます。
自身が「2つの戦争のただ中にある国の軍最高司令官という事実」の中で、「戦争を平和に置き換える努力についての難問」を弁明しつつも、「核なき世界」を求める努力を放棄しないことを鮮明にしたオバマ大統領は、昨年12月10日、オスロでのノーベル平和賞受賞演説をこう結んでいます。
「ガンジーやキング牧師のような人々がとった非暴力は、いかなる状況でも現実的で可能なことだとはいえなかったかもしれない。しかし、彼らが説いた愛——人間の進歩に関する彼らの根源的な確信、それこそが、常に我々を導く北極星であるべきなのだ」「我々には出来る。なぜなら、それこそが人間の進歩の物語であるからだ。それこそが全世界の希望だ。この挑戦のとき、それこそが、この地球で我々がやらなければならない仕事なのだ」
今、マスコミの多くが普天間基地の移転問題で「北極星」を設定しないままに「早期決着」を求めていますが、日本防衛ではなく海外への殴り込みを目的とし、沖縄県民に対する暴行凌虐やヘリコプターを大学に墜落させるなど危険きわまりない普天間基地の米海兵隊は、沖縄から即時無条件に撤退させるという視点こそ「1丁目1番地」ではないのでしょうか。今から42年前の1968年6月2日、在学中の九州大学にベトナム帰りのファントムが墜落し、全学と県民挙げての怒りと運動の中で板付基地撤去を実現した経験を持っている私には特にそう思えるのです。
2010年は日米安保改定から50年。折しも九弁連大会(10月22日)が沖縄で環境問題を主テーマとして開催されます(福岡での九弁連大会には沖縄弁護士会から80名を超える参加をいただきました。福岡からも沖縄大会に大挙して参加しましょう)。戦後60年余が経過したにもかかわらず、沖縄を始め首都東京を含む全土に外国軍隊が駐留し続けている日本。世界では軍事同盟は縮小の一途をたどり、非軍事の平和条約機構が急速に拡大しています。その中心となりつつある「東南アジア平和機構」(TAC)は「外圧に拠らずに国家として存在する権利」「締約国相互での内政不干渉」「紛争の平和的手段による解決」「武力による威嚇または行使の放棄」など日本国憲法9条と同様の平和主義理念を掲げています。日本は2004年にTACに加入しており、2009年には域外のEUとアメリカの加入も承認され、今や、東南アジアを中心として地球を一周する帯のように27カ国・組織による巨大な平和友好地帯が出現しているのです。  
そうした激動する国際情勢の中で、いつまでも軍事同盟中心の日米関係で良いのか、鳩山政権は何を道標として、アジアにおける日本の信頼を高め、対米交渉を進めるのかについても、交渉相手のオバマ大統領にならって理想を掲げた挑戦を続けて欲しいものです。
先輩法曹と若手が一堂に会した忘年会
ところでオバマ受賞演説の日は、ちょうど福岡部会の忘年会の日でもありました。2009年に米寿と喜寿を迎えられた9名、在職50年と40年の表彰を受けられた7名の先輩法曹がおられますが、忘年会の冒頭に行う恒例の表彰式には、米寿を迎えられた司法修習1期、法曹経験50年を超える松村利智先生、弁護士在職40年の九弁連表彰を受けられた司法修習21期の半田萬、大原圭次郎、髙木茂の各先生が出席いただきました。記念品贈呈の後に、皆さんから語られた簡潔の中にも含蓄があるお話とあふれる気概にふれて、参加者一同笑いと元気をいただきました。
引き続く懇親交流会も楽しい福引きをはさみながら、先輩、同僚、若手が隔てなく互いの労をねぎらい、新年に向けた弁護士業務や弁護士会活動の展望を語りながら、激励し合い、杯を交わすという福岡らしい忘年会の姿が再現され、個人的にも晴れ晴れとした「望年会」となりました。
私たちの任期も余すところ3ヶ月です。やりかかっている作業課題を確実に結実させ、次期執行部に過大な宿題を引き継がないようにがんばるつもりですので、会員の皆様のご協力をよろしくお願いいたします。
新63期の受け入れ準備と実務修習の開始
昨年11月14日、新63期生の実務修習開始を前にして、5年目になる福岡県弁護士会主催の合同事務所説明会が開催され、過去最高の110名を超える修習予定者が全国各地から参加したことは、月報12月号で伊藤功示会員(司法修習生就職問題及び新規登録弁護士支援対策室長)が既に報告しているとおりです。参加いただいた14事務所と情報提供いただいた7事務所に感謝しますとともに、次年度に向けて参加事務所の拡大についても会員の皆様の積極的な協力をお願いいたします。
福岡を修習地とする新63期生82名については、11月25〜26の両日、弁護士会主催の事前研修を行い、27日から司法修習が開始されました。司法修習委員会や多くの指導担当弁護士の会員各位には、ご苦労をおかけしますが、修習生の進路に関する助言や支援を含めて、よろしく御指導のほどお願い申し上げます。
なお、新62期の新規登録(12月17日付け)は54名を予定しており、全員が登録されれば福岡県弁護士会の会員数は880名となります。
裁判員裁判検証・運営協議会始まる
昨年12月1日、裁判所・検察庁・弁護士会の法曹三者による「裁判員裁判検証・運営協議会」が正式にスタートしました。これに先立って、常議員会は11月の2回にわたる審議をへて、「裁判員裁判検証・運営協議会設置要綱」を採択しました。
裁判員裁判は、日本の刑事司法にとって歴史的な改革の実行であり、法曹三者にとっても全く新しい経験ですから、従前の議論や想定の範囲を超えて色んな問題や解決すべき課題が生起するであろうことは言うまでもありません。裁判員法自身も付則において3年後の制度見直しを予定しています。
従って、実際に裁判員裁判に取り組んでいる現場において都度の検証を行いながら、必要な制度の改善や改革を提言し実施していく必要があります。問題によっては、制度改革を待つまでもなく、法曹三者がそれぞれの立場から運用を改善することにより、裁判員裁判の充実を図ることが出来ることも少なくないでしょう。そうした意味において、法曹三者が具体的な経験を通して都度の検証活動を行う意義は極めて大きいと思います。設置要綱を文書で確認して公式に協議会を立ち上げたのは九弁連管内では始めてですが、全国的にもモデル的な役割を果たすことが期待されています。
弁護士会としては、この協議会に協議員を出す関連委員会を、裁判員本部、刑事弁護等委員会、子どもの権利委員会、犯罪被害者支援委員会等とすることや協議の内容と結果を会員に周知する方法等に関して、常議員会申し合わせ事項も採択していますが、実際に裁判員裁判の弁護人として活動された会員の皆さんが、積極的に協議題等を提起していただき、裁判員裁判の運用改善や制度改革につながるようご協力いただければ幸いです。
また、この協議会では、裁判所からは最高裁が集約している裁判員に対するアンケート調査の結果が都度報告されるとともに、弁護士会が実施している市民モニターによるアンケート結果の内容についても随時情報提供して協議の参考に供することにしています。
なお、設置要綱や申し合わせ事項については、全文を本月報に掲載していますが、設置要綱第6項において、「協議の結果、各庁会の意見が一致したものについても、個々の訴訟活動、弁護活動、訴訟行為等を制約するものではない」ことが確認されていますので、念のために申し添えます。
多重会務の解消とリーガルサービス活動
の強化に向けて
昨年12月1日、第3回委員長会議を開催しました。
テーマの一つは、本年度執行部が採用した「多重会務の解消と全員野球による委員会活動の活性化」を目的とする委員委嘱方針等の検証でした。会員自身の希望を基本として1会員につき2〜3委員会の委嘱を原則としましたが、その後の委員会からの追加委嘱希望との調整もあり、上限5委員会に達している会員も相当数残っています。データ的には、委員会への出席会員数も出席率も共に昨年度より向上している委員会が多数に昇っており、多重会務の解消についても一定の成果はあげていますが、幾つかの委員会からは、委員会推薦で対外的な業務に従事していた会員が上限に達していたために委員に追加委嘱されなかったために善後策で困難があったこと等も報告されました。但し、そのことによって委員会活動自体に具体的な支障が起こったとの報告はなく、多重会務の解消に向けての取り組みは継続的に実施されなければ元の木阿弥になりかねない性質のものだから、少なくとも3年は継続したうえで検証することが大切であるとの意見も出されました。
現執行部としては意見交換の結果を次期執行部にお伝えし、委嘱方針を策定する上での参考に供したいと思います。
第2のテーマは、委員会が関与して実施されている第三者に対するリーガルサービス活動(面談や電話による法律相談、学校や団体に出向いての講師活動等)については、原則として担当会員に対して日当を支払うことにしたいという執行部方針に関する意見交換を行うものでした。
執行部が、そうした方針を検討している背景としては、面談による法律相談では原則として担当者に対する日当が支払われているのに、11月30日に行ったハローワークにおけるワンストップサービスなどのように日弁連等の要請で全国的、臨時的に取り組まれる出張相談等の場合には全く支払いがないものもあること、逆に電話相談では多くの場合支払いはなされていないが、一部には日当が支払われているものもあること、外部団体における講師活動等では、相手方からの支払いがあることも多く、原則として担当者に対する日当支払いがなされているものが多いが、相手方の予算措置が困難な(学校や団体での)講師活動等には支払いがないものもある等、担当者に対する手当の仕方にアンバランスが生じていることがあります。
そうしたアンバランスを解消したいとする執行部方針については、多くの委員長から概ね賛成の意見が出される中で、担当者に日当支払いを行って相談活動を行うのであれば相談後に受任に至った場合には負担金の納入を求めるべきであり、そのためには相談記録等の作成による事件管理を行うことが不可欠であること、日当支払いをすることにより委員会が適宜実施しているホットライン等の活動が自由に出来なくなるのは良くないとする意見等も出されました。
また、法律相談や講師活動など直接的なリーガルサービス活動ではないが、一部の会員に過度な負担を強いている会務、例えば人権擁護委員会の調査活動等に対する手当を同時に行うべきであるという意見も出されました。
執行部としては、上記の意見交換をふまえて、以下のような方針を固めました。
即ち、直接的なリーガルサービス活動にたいしては、前述のとおり既に原則として担当者に対する日当等の支払いが行われていますが、その出所は法律相談センター特別会計やリーガルサービス基金特別会計、或いは県弁一般会計等まちまちであり、その支払い基準についても必ずしも統一されていないので整理する必要があること、日当支払いを行う場合には、その支払額や、支払いの対象とする活動を認定する基準や手続を定めるとともに、委員会が実施を予定しているリーガルサービス活動で、事件管理システムを確立した上で担当者に対する日当支払いを行うことを希望する活動の規模をあらかじめ集約して予算規模のシミュレーションを行うなど、年間予算を策定するための作業が不可欠であること、従前のリーガルサービス活動のカテゴリーに含まれていなかった、つまり日当等の支払いを想定していなかった会務の一部に対する支払いを行うとすれば、出所となる会計規定等の改正やその財源を確保するための機構財務の改革も行う必要があること等、いくつかの検討課題をふまえた執行部案を作成した上で、新年明け可及的速やかに常議員会に提起して3月までに新たなルールの策定につき会内合意を得て、次年度からの全面実施をすすめたいと考えております。
なお今年度においては、11月以降2010年3月までの間、担当者に対する日当支払いを行うことについて委員会からの事前の要請があり、執行部において支払いが相当であると判断されるリーガルサービス活動に対しては、執行部の責任において県弁一般会計の特別活動費から支払いを行うこととし、既に執行を始めました。支払いの基準は、法律相談活動については現在支払われている相談活動日当の最低額と同額の時給計算とし、講師活動については現在実施されている講師料の最低保証額と同額とします。
これらの措置が、委員会が主催するリーガルサービス活動の一層の活性化と、多少なりとも担当会員の活動に対する支援になればと考えています。
(12月13日記) 

会長日記

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福岡県弁護士会会長日記
平成21年度会 長 池 永   満(29期)
No453 その6 
<多事争論、そして実りの秋へ> 8月17日~9月15日
<裁判員裁判の公判始まる> 遂に裁判員裁判の公判が始まりました。第1号事件(9月9日~11日)第2号事件(15日~18日)にむけた検証体制を議論する中で市民モニターに加えて弁護士モニターも配置することを決定したことに伴い2席以上の傍聴席を確実に確保するために、裁判員本部のみならず福岡市内の会員弁護士と事務職員の皆さん、市民モニターに登録されている皆さんにも傍聴整理券確保のために協力をいただきました。おかげで連日の法廷の全てを、2名のモニターはもとより執行部や裁判員本部の弁護士等も傍聴でき、やはり模擬裁判とは異なる緊張感あふれた裁判員裁判の公判をリアルに体感することができました。感謝、感謝です。 とりわけ市民モニターの視点は裁判員裁判の検証を進めるにあたり有効性が高いということでマスコミをはじめ各方面から注目されており、他の弁護士会においても設置する動きが始まっています。
<動き出した地域司法計画> 7月号月報で報告しました「福岡地域司法計画(第2次案)」(2008年2月作成)の取り扱いについては、第2回委員長会議(7月29日)における意見交換を踏まえた上で、8月27日の常議員会において、弁護士数や相談センターの活動状況等に関する最新データを補充するとともに第2次案作成後に進展した制度改革や弁護士会の取組みを紹介する内容の「前文」を付した上で第2次案本文はそのままの形で確定し公表することが承認され、9月1日付で会員各位や関係機関等に送付されました。 常議員会は同時に「福岡地域司法計画推進室」の設置規則を制定しました。推進室(室長・牟田哲朗会員)の眼目は、第2次地域司法計画の内容について、関連委員会に対し担当分野の課題を計画的に推進するための「年次計画案(計画の補正や新規追加を含む)」の提出を求めるとともに、担当委員会がない分野(例えば弁護士過疎対策等)に関しては自ら年次計画を作成し、これらを集約して執行部に提案し、「福岡地域司法計画」の進行状況を検証しつつ着実に推進していくための活動を行うところにあります。 現在日弁連のもとで全国の単位会や地方弁連における第2次地域司法計画の集約作業が進められていますが、これを検証・推進する体制を確立したのは当会が全国で初めてのようです。 地域司法計画の推進に関連して既に具体的な取組みも始まっています。一つは相談センターの充実です。天神相談センターについては、相談時におけるプライバシーの保護やゆとりのある相談室や事務室、或いはADR室や待合室の配置等を実現するための移転拡充計画が準備されています。また北九州部会においては、従前会議室を都度借用して相談活動を行っていた豊前市において、通常日は毎日相談担当弁護士を配置する「豊前相談センター」を新設します。これらは各部会集会における議決を経て10月末の県弁臨時総会に必要な補正予算案が提出される予定です。 また地域司法計画を推進する上では、民事法律扶助のアクセスポイントの拡大(契約弁護士事務所における直接受任を推進するための広報活動)をはじめ弁護士会と法テラスとの連携強化も重要な課題になっています。とりわけ法テラス・スタッフ弁護士との関係では、従前の国選対応に関する補完協力に止まらず、弁護士会が推進している生存権支援活動、或いは労働、社会福祉分野等における多面的な人権救済活動において連携した活動を強化する必要があります。 この点で、法テラスの今年度におけるスタッフ配置計画案(福岡事務所にプラス1名、北九州事務所にプラス2名)を検討するため全員協議会を開催しました(8月26日)。北九州では既に部会集会で承認されていましたが、福岡においては従前全員協議会で協議して回答していたため、これを踏襲したものですが、スタッフ増員についての反対意見はなく、今後はいちいち全員協議会を開催することなく、基本的には県弁執行部と法テラスとの間の協議により対応すべきであるとの意見が大勢でした。 執行部としては前述したように法テラスとの総合的な連携強化という観点に立って、既に飯塚部会の要請として法テラスに提出されている平成22年度における筑豊地区(特に田川)へのスタッフ弁護士の配置等について協議を始めています。
<大連市律師協会との安定した友好交流へ> 大連市律師協会との交流のため9月1日から4日まで中華人民共和国の大連市を訪問しました。当会と大連市律師協会との交流は10数年の歴史がありますが、釜山地方弁護士会とのように正式な姉妹提携がなされていないため、その時々の執行部の判断で断続的なものになっており、今回は3年ぶりの訪問でした。 実は以前、大連市律師協会から両会の交流を促進するために『合作交流意向協議書』の締結が提案されたことがあります。それは、両会の相互交流に加えて、双方が1年程度滞在する数名の留学生を受入れ、その滞在費を受入側が負担するというような重厚な内容を含むものでした。当会としては、そのような財政負担力もありませんでしたし、緩やかではあっても息の長い友好交流関係を樹立することが適切であると判断して、当時、既に姉妹提携を結んでいた釜山方式を提案しました。これに対して「貴会が提案された意見は、両会の交流を進めるために有益であり、ふさわしいものだと当会も考えます。貴会と釜山弁護士会が署名した『交流に関する合意書』のモデルを参考にして当会と貴会の提携合意書に署名することに同意します。具体的な事柄については、当会が派遣する代表団が訪日した際に改めて協議させていただきたいと思います」との返事が寄せられました。1999年4月29日付のものです。 つまり当会が提案した釜山方式による姉妹提携につき相手方も同意され、大連側の訪日団との間で協定調印の実務作業に入ることが予定されていました。ところがその後に行われた大連市律師協会の役員人事異動のために代表団の訪日が延期され、双方の執行部も交替する中で、協定書調印にむけた実務作業が進められないまま今日に至ったというわけです。 今回、大連市律師協会との協議会において、「日本における外国研修生の法的位置」や「日本企業が中国に投資するに際しての中国法上の留意事項」などあらかじめ設定されていたテーマに関する意見交換を終えた後、今後の交流の進め方に関する協議が行われました。その際、当方からは前述の経過を確認的に紹介したうえで、これからの10年にむけて、より安定した交流関係を促進するために、10年前に両会で合意されている協定書の調印にむけた実務作業を進めることについて双方で検討してはどうかと提案しました。もちろん私としては相手方のお国柄を考え、「ご返事は、今日ではなく後日連絡いただければ結構です」と付加えることを忘れませんでした。 これに対して大連市律師協会の張燿東会長は即座に応えました。「当方の事情で調印作業が進まなかったことをお詫びする。私としては今直ぐにでも調印したい気持ちである。9月末に開催する役員会で検討するので協定書のモデル案を送って欲しい」。その日の夜、当方が主催したお礼の宴席で、張会長は更に「私は戦時中でも日記を習慣にするような方がいる几帳面な日本民族を尊敬しています」「できれば来年の2月頃にでも福岡を訪問して協定書の調印をしたい」と申し出られました。 幼少時を大連で過ごされたことのある清原雅彦先生(今回の視察団長)は、大連側の迅速かつ心温まる対応に大きく感動され、何度も杯をかわしながら得意のハーモニカを披露されました。この10数年、一貫して大連側とのパイプ役をされてこられた大塚芳典先生も感慨無量の様でした。 今回の訪問に出かける前の執行部会議では、今後の交流の進め方について議題になる場合には前述のような提案を行うことについての話はしていたものの、相手方から即答されることを想定していなかった私は、帰国の道すがら伊達健太郎国際委員長や服部弘昭北九州部会長始め視察団の面々と対応方針を協議し、帰国直後の執行部会議(7日)と常議員会(9日)において経過を説明して、とりあえず9月末の大連会の役員会に間に合うよう協定書のモデル案として釜山との合意書の中文訳を送付することについて了承をいただいたのです。突然の上程であり手続上問題があることは承知しつつ、対外関係を重視して了承をいただいた常議員会の皆さんに感謝、感謝です。 この月報が発行される10月中には大連側からの回答があり、両会の安定した友好交流にむけて新しい局面が展開していくかもしれません。
<日弁連60周年に「日本の立ち位置」を考える> 日弁連60周年記念式典が東京で開催されました。偶然ではありますが、この日は「9・11」の8周年記念日でした。「日弁連は、こんな日に記念式典をやるなんてすごいですね」と言いながら記念講演をされた寺島実朗さん(財団法人日本総合研究所会長)のテーマは「世界の構造転換と日本の立ち位置」。豊富なデータを示しながらの講演で、極めて示唆に富むものでした。 まず驚いたのは、9・11以来、アメリカが引き起こしたイラク戦争等による米軍戦死者は丁度8年後の本年9月10日までに5、161名(アフガンでの死者822名を含む)に達し、累積戦費の額は実に7,119億ドル(現在でも月60億ドル以上の消耗)。昨年来のアメリカ経済崩壊の原因には良く語られるサブプライム問題のみではなく「巨大な浪費として経済の根幹を消耗させているイラク戦争」があるということです。 日本の貿易構造も大きな変化を。米国との貿易総額の比重は27.4%(90年)、18.6%(04年)、17.5%(06年)、16.1%(07年)、13.9%(08年)、13.6%(09年上半期)と年々逓減。これに対して、対中貿易比重は3.5%(90年)から20.5%(09年上半期)へと大きな伸びを示しており、今やアメリカを抜いています。その背景には、もちろん中国自身の経済成長があります。中国のGDP世界ランキングは1990年10位から2007年3位、2010年には日本を抜いて2位になる見込み。「陸の中国」(中国本土)に「海の中国」(香港・台湾・シンガポール)を加えた「大中華圏」では、2008年GDP(5.1兆ドル)で日本(4.9兆ドル)を凌駕しているそうです。 そうした中で国際的物流にも大きな変化が。2008年世界港湾ランキング(コンテナ取扱量)は、1位シンガポール、2位上海、3位香港、4位深_、5位釜山と並んでおり、福岡とも関係の深い釜山のハブ化が注目されています。私は知りませんでしたが、最近のアメリカから中国へのコンテナの大半は、九州の南方からではなく津軽海峡を通過して日本海を経由し釜山や中国の港湾に入っているそうです。そのため、日本では太平洋側港湾が空洞化し、日本海側が港湾への物流シフトが始まっており、「日本海物流時代」とも言うべき変化が起こっているとのこと。 こうした「構造転換」を前にして、寺島氏は最後に、「太平洋の先のアメリカを通してしか世界を考えられない風潮を改める必要がある」「戦後60数年が経過してもなお外国の軍事基地があることは普通ではない」「偏狭なナショナリズムではなく普通の状態の国家にするための努力をしなければ、日本は世界の人々から尊敬されない」(ドイツではベルリンの壁が崩壊後、米軍基地の撤去に関する話し合いが進められたそうです)と結びました。
<新政権の発足と弁護士会> 明日(9月16日)、日本に新しい政権が誕生します。私たちも、ようやく選挙で与党政権を退陣させるという貴重な政治体験をしました。連立政権合意文書には、「生活保護母子加算の復活」や「労働者派遣法の抜本改正」など当会の総会や常議員会で採択された会長声明等の内容が取り入れられているにとどまらず、最終節の「憲法」は「唯一の被爆国として、日本国憲法の『平和主義』をはじめ『国民主権』『基本的人権の尊重』の三原則の遵守を確認するとともに、憲法の保障する諸権利の実現を第一とし、国民の生活再建に全力を挙げる」と結ばれています。 弁護士会としても、司法制度の改善や基本的人権を擁護し社会正義を実現するという責務に照らして一層活発に社会的提言を行うとともに、それらをストレートに実現させるための政治への働きかけを行うことにやりがいを感じる時代が到来したのかも知れません。もちろん相当な力仕事であることは覚悟の上で。 (9月15日記)

福岡拘置所小倉拘置支所現地建替えを求める要望書

カテゴリー:意見

                     2009年(平成21年)12月10日
内閣総理大臣  鳩山由紀夫 殿
法務大臣    千葉景子 殿
法務省矯正局長 尾﨑道明 殿
                        福岡県弁護士会
                         会 長  池 永  満
                        福岡県弁護士会北九州部会
                         部会長  服 部 弘 昭
福岡拘置所小倉拘置支所現地建替えを求める要望書
第1 要望の趣旨
   福岡拘置所小倉拘置支所(以下,「小倉拘置支所」という。)を現地にて建替えすべく,早急に予算措置を講じることを要望します。
第2 要望の理由
 1 福岡拘置所小倉支所は1960年(昭和35年)に築造された建物で,既に築後50年近く経過して老朽化が著しく,建物の各所に塀の倒壊や外壁の落下の危険がある状況です。
また,耐震基準を満たしているのか否か懸念されるところでもあります。
そのため収容者や拘置所職員,および面会に来る市民の生命・身体の安全を守るためには,この建替えは緊急の課題です。
 2 また平成21年6月に,北九州矯正センター構想(以下,「矯正センター構想」という。)に基づく小倉拘置支所の移転が中止となったことを受け,小倉拘置支所の現地での建替えの必要性は,益々高まっております。
   さらに,平成21年5月より始まった裁判員裁判においては,短期間の集中審理方式による迅速な刑事裁判が求められ,これまで以上に弁護人が被疑者・被告人と頻繁に接見を重ね,充分な打合せをする必要があり,裁判所の隣の現地にて建替えることは,被告人の防御権保障の観点からも,非常に重要であります。
 3 当会は,かねてより矯正センター構想に反対し,小倉拘置支所を現地にて立替えるよう2008年(平成20年)7月にも要望書を提出していますが,矯正センター構想に基づく小倉拘置支所の移転が中止になった今,再度,小倉拘置支所の現地建替えと,建替えのための早期の具体的な予算措置をとられることを要望申し上げる次第です。
 4 なお,貴省は福岡県内において,既に福岡拘置所久留米拘置支所を,検察庁との合同庁舎として現地建替えを完了しておられますが,小倉拘置支所においても,同様な方法で現地建替えを実現することは充分可能であると思料します。
   そして,「えん罪の温床」等と,海外からの批判も強い代用監獄を廃止する必要性は,益々高まっておりますが,代用監獄を廃止しても,被拘禁者を収容するに十分な規模の拘置所を現地にて建替えることを希望します。
 5 以上,当会としては改めて福岡拘置所小倉支所を早急に現地で建替えするよう,早急に予算措置を講じることを要望する次第です。

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