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福岡拘置所小倉拘置支所の現地建替えを求める要望書

カテゴリー:意見

2010(平成22)年8月6日

内閣総理大臣 菅 直人殿
法務大臣 千葉景子殿
法務省矯正局長 尾﨑道明殿
福岡県弁護士会
会 長  市丸信敏
福岡県弁護士会北九州部会
部会長  服部弘昭

   福岡拘置所小倉拘置支所の現地建替えを求める要望書

第1 要望の趣旨
   福岡拘置所小倉拘置支所(以下,「小倉拘置支所」という。)を現地にて建替えすべく,早急に予算措置を講じることを要望する。

第2 要望の理由
 1,当会は、平成7年2月に小倉刑務所跡地に刑務所・小倉少年鑑別所(現福岡少年鑑別所小倉支所)・小倉拘置支所の3施設を移転統合させるという「北九州矯正センター構想」(以下、「本構想」という)が発表されて以来、本構想に一貫して反対し、本構想の撤回および小倉拘置支所の現地建て替えを強く求めてきた。
 2,その後,平成21年6月に,当会の主張の通り,本構想に基づく小倉拘置支所の小倉刑務所跡地への移転が断念されたことにより,小倉拘置支所の建て替えの方法としては,現地での建て替えの方法に絞られた状況にある。
 3,かかる状況を踏まえて,当会としては,以下に述べる通り,他の拘置所よりも優先して,小倉拘置支所を早急に建て替える必要性が存することを強く主張するものである。

すなわち,小倉拘置支所は,1960年(昭和35年)に築造された建造物であるが,築後50年を経過し,我が国の拘置所の中でも指折りの古い建造物となっており,建物自体の老朽化は著しいものがある。
   ところが,小倉拘置支所は,本構想に基づく小倉刑務所跡地への移転が計画されていたため,他の拘置所と比較して,必要な補修又は改修工事が長期間ほとんど実施されずに放置されてきた。そのため,建物の老朽化による建物の安全性が強く懸念される状況にある。
   具体的には,拘置所の建物の周囲を通行する際には,建物の外壁が剥がれて落下する危険があり,万が一,建物の外壁が剥がれ落ちて歩行者を直撃した場合には甚大な被害が生じることが危惧される。
   また,現在の小倉拘置支所の建物は,旧耐震基準で建築され,現在の耐震基準を満たしておらず,建物の耐震補強工事も全くなされていない。かかる状況で大地震等の自然災害が発生すれば,建物自体の脆弱性故に,建物の中に拘束された被疑者・被告人や拘置支所の職員および面会に来た一般市民の生命・身体の安全が危険にさらされることになる。
さらに,建物の老朽化により,被疑者・被告人の生活環境も著しく劣悪な状況に置かれており,他の拘置所の被疑者・被告人と比べて著しい不均衡が生じている。
 4,当会としては,平成21年12月にも小倉拘置支所の現地建て替えおよびそのための予算措置を早急に講じることを求める要望書を提出したところであるが,残念ながら,現時点では当会の要望を踏まえた対応が全くなされていない。
 5,そこで,当会としては,改めて,小倉拘置支所を早急に現地で建替えることを要望するとともに,そのための必要な予算措置を早期に講じることを強く要望する次第である。
                          
以 上

死刑執行に関する会長声明

カテゴリー:声明

1 本日,東京拘置所において2名の死刑確定者に対して死刑が執行された。
2 我が国では,過去において,4つの死刑確定事件(いわゆる免田事件,財田川事件,松山事件,島田事件)について再審無罪が確定している。また,昨年6月にも,無期懲役刑が確定した受刑者に対する再審開始決定がなされ(足利事件),これを契機に精度の低いDNA鑑定に依拠した裁判の問題点が指摘されるという事態も生じている。これらの過去の実例が示すとおり,死刑判決を含む重大事件においても誤判が存在することは客観的な事実である。
3 しかも,我が国の死刑確定者は,国際人権(自由権)規約,国連決議に違反した状態におかれているというべきであり,特に,過酷な面会・通信の制限は,死刑確定者の再審請求,恩赦出願などの権利行使にとって大きな妨げとなっている。この間,2007年(平成19年),刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律が施行されたが,未だに死刑確定者と再審弁護人との接見に施設職員の立ち会いが付されるなど,死刑確定者の権利行使が十分に保障されているとは言い難く,このような状況の下で死刑が執行されることには大きな問題があるといわなければならない。
4 国際的にも,1989年(平成元年)に国連総会で死刑廃止条約が採択されて以来,死刑廃止が国際的な潮流となっている。1990年当時,死刑存置国は96か国で死刑廃止国は80か国だったのが,昨年(2009年)現在では,死刑存置国は58か国で死刑廃止国及び死刑停止国は139か国となっている。さらに,2008年12月18日には,国連総会において,すべての死刑存置国に対して死刑執行の停止を求める決議案が採択された。
また,2007年(平成19年)5月18日に示された,国連の拷問禁止委員会による日本政府報告書に対する最終見解・勧告においては,我が国の死刑制度の問題が端的に示された。すなわち,死刑確定者の拘禁状態はもとより,その法的保障措置の不十分さについて,弁護人との秘密交通に関して課せられた制限をはじめとして深刻な懸念が示された上で,死刑の執行を速やかに停止すること,死刑を減刑するための措置を考慮すべきこと,恩赦を含む手続的改革を行うべきこと,すべての死刑事件において上訴が必要的とされるべきこと,死刑の実施が遅延した場合には減刑をなし得ることを確実に法律で規定すべきこと,すべての死刑確定者が条約に規定された保護を与えられるようにすべきことが勧告されたのである。しかも,2008年10月には,国際人権(自由権)規約委員会により,我が国の人権状況に関する審査が行われ,我が国の死刑制度の問題点を指摘するともに制度の抜本的見直しを求める勧告がなされた。
5 このような中で,我が国の死刑制度の抱える問題点について何ら改革が講じられることなく,今回の死刑執行が行われたことは極めて遺憾であり,当会としてはここに政府に対し強く抗議の意思を表明するとともに,今後,死刑制度の存廃を含む抜本的な検討がなされ,それに基づいた施策が実施されるまで,一切の死刑執行を停止することを強く要請するものである。
                    2010年(平成22年)7月28日
                           福岡県弁護士会
                           会長 市丸 信敏

犯罪被害者給付金不支給裁定取消し判決について控訴断念を求める会長声明

カテゴリー:声明

1 福岡地方裁判所は,平成22年7月8日,小倉監禁事件の犯罪被害者遺族である被害女性が犯罪被害者給付金不支給の裁定の取り消しを求めた裁判において,同裁定の違法性を認め,これを取り消す判決を言い渡した。
2 小倉監禁事件は,平成14年に被害女性が監禁状態を脱して,その被害などを申告することによって発覚した事件であり,現在も刑事事件は最高裁判所に継続中である。
  平成17年,福岡地方裁判所小倉支部において刑事事件の一審判決がだされ,その後,被害女性は代理人を通じて犯罪被害者給付金の申請を行ったが,福岡県公安委員会,国家公安委員会はいずれも被害女性の父親の死から7年が経過していることを理由として給付金は不支給であると判断していた。
3 福岡地方裁判所の今回の判決は,被害女性において,処分行政庁に対する裁定の申請を事実上可能な状況のもとに,その期待しうる程度に犯罪行為による死亡の発生を知ったのは,被告人らに対する刑事事件の第1審判決書が作成された平成17年10月5日の時点と認められるとした。よって,被害女性はこの時点から2年以内である平成18年2月21日ころに給付金の申請をしているので,申請権は時効により消滅したということはできないとした。
  また,死亡から7年という除斥期間についても,判決は,除斥期間の経過前の時点において,当該権利の行使が客観的に不可能であるといえるか,又はこれと同視すべき申請権を行使しなかったことが真にやむを得ないといえる特別な事情がある場合には,当該特別な事情がやむまでの間,及び民法の時効の停止に関する規定に照らし,同事情がやんだ後から6ヶ月の間は除斥期間の経過による効果は生じないものと解するのが相当とした。本件においては,被害女性は,平成17年10月5日の刑事事件の判決書が作成されたときから6ヶ月以内に申請をしていることから,申請権は除斥期間により消滅したということはできないと判断されたのである。
4 当会は,平成12年3月に犯罪被害者支援センターを設置して犯罪被害者のための電話相談,面接相談に応じると共に,同年11月には犯罪被害者支援基金を創設して,刑事贖罪寄付を受け入れ,そこから犯罪被害者支援に関する支援活動を行う団体に対する援助や犯罪被害者の被害回復に関する訴訟等への費用の援助を行っており,本件の被害女性の平成18年2月以降の申請及び本件提訴に関しても,同基金より援助金を交付して支援を行ってきた。当会は,本件の被害女性の救済に向けた支援を通じて,犯罪被害者に対する途切れのない支援の必要性や,制度の重要性が周知されることを目的として支援してきたものであるところ,本件において,福岡地方裁判所が犯罪被害者の救済を重視した適切な判断をしたことは,犯罪被害者等の視点に立った施策を講じ,その権利利益の保護が図られる社会の実現に向けた新たな一歩を踏み出すという犯罪被害者等基本法の精神にのっとるものであり,高く評価するものである。
5 そこで,当会は,福岡県公安委員会に対し,控訴することなく本判決を確定させることを要請するとともに,判決確定の後,被害者への給付金の支給に向けた手続を進め,犯罪被害者の救済が速やかに実現されることを強く求める。
              2010年(平成22年)7月14日
                     福岡県弁護士会
                      会長 市 丸 信 敏
                             

老齢加算廃止違法判決に対する会長声明

カテゴリー:声明

2010(平成22)年6月18日
福岡県弁護士会
会長 市丸 信敏
1 福岡高等裁判所第1民事部は、2010年6月14日、北九州市内在住の74歳~92歳の生活保護受給者39名が、老齢加算の段階的廃止に伴う保護変更決定の取り消しを求めた裁判において、同決定の違法性を認め、これを取り消す判決を言い渡した。
  老齢加算の段階的廃止をめぐっては、全国8カ所の裁判所(4地裁、3高裁、1最高裁)において約100名の原告により裁判が闘われているが、本判決は初めての原告側勝訴判決である。
2 老齢加算は、高齢者に特有の生活需要を満たすために、原則70歳以上の生活保護受給者に対して、1960年の老齢加算制度創設以来、40年以上にわたり支給されてきたものである。
  しかし、国は、2004年に、その段階的廃止を決定し、2006年にはこれを全廃した。
3 福岡高等裁判所の今回の判決は、生活保護の受給が単なる国の恩恵ではなく法的権利であるとした最高裁昭和42年5月24日大法廷判決を確認し、生活保護の受給が法的権利である以上、保護基準が単に改定されたというだけでは生活保護法56条にいう「正当な理由」があるものと解することはできず、その保護基準の改定(不利益変更)そのものに「正当な理由」があることが必要であるとした。
  その上でまず、老齢加算について廃止の方向で見直すべきであるとの中間取りまとめを行った「生活保護に関する在り方専門委員会」(以下「専門委員会」という。)での議論をはじめ、廃止に至る判断・決定の経過を詳細に検討している。そして、専門委員会が中間取りまとめのただし書きで求めた「高齢者世帯の最低生活水準が維持されるよう引き続き検討する必要がある」との部分や、同じく専門委員会が指摘した「被保護世帯の生活水準が急に低下することのないよう、激変緩和の措置を講じるべきである」との部分を、老齢加算の廃止という方向性と並んで重要な事項であると指摘している。
  その重要な事項について、①中間取りまとめが発表されたわずか4日後に、国は老齢加算の段階的廃止を実質的に決定したこと、②老齢加算の段階的廃止が決定された過程において、中間取りまとめのただし書きが求めた「高齢者世帯の最低生活水準が維持されるよう引き続き検討する必要がある」という点については国により何ら検討されていなかったこと、③同じく激変緩和措置についても、被保護者が老齢加算の廃止によって被る不利益等を具体的に検討した上で決定されたという形跡はないとの事実を認定した。
  これらの事実を前提として、本判決は、老齢加算の段階的廃止は考慮すべき事項を十分考慮しておらず、又は考慮した事項に対する評価が明らかに合理性を欠き、その結果、社会通念に照らし著しく妥当性を欠いたものであるということができるとし、保護受給権とも称すべき原告らの法的権利を正当な理由なく侵害したこととなり、生活保護法56条に違反し違法であるとの判断を下したものである。
4 当会は、生存権の擁護を急務と考え、生活保護の受給要件を充たすにもかかわらず受給できていない市民に対し生活保護申請手続の援助を行うなど、生存権擁護と支援のための取り組みを強めてきた。
  そして、2009年5月14日、今日の世界同時不況という事態の下で現在我国において雇用不安、貧困・生活窮乏などが一層深刻化していることにより、生存権、人間らしく働き生きる権利、ひいては個人の尊厳など本来日本国憲法によって保障されている重大な権利が危機的な状況にあることに鑑み、すべての人が個人の尊厳をもって人間らしく働き生活していけるようにするために、生存権の擁護と支援に必要な諸活動を行うことを目的として、当会に「生存権の擁護と支援のための緊急対策本部」を設置した。さらに、同年5月25日に開催した定期総会においては「すべての人が尊厳をもって生きる権利の実現をめざす宣言」を採択し、高齢者はもとより非正規雇用労働者・母子・障害者家庭等の貧困の拡大と生活の窮乏化が進行している一方で、これを補うべき社会保障分野のセーフティネットも崩壊状況にあり、極めて深刻な社会不安が広がっていることへの危惧を表明し、国及び地方自治体に対し、社会保障費の抑制方針を改め、また,ホームレスの人も含め社会的弱者が社会保険や生活保護の利用から排除されないように、社会保障制度の抜本的改善を図り,セーフティネットを強化することを強く求めてきた。
  今日の貧困の広がりの中、国は社会保障を強化することこそあれ、安易な切り下げを行うことはあってはならない。
  この点で、当会は、福岡高等裁判所が安易な切り下げを認めない判断をしたことを高く評価するものである。
5 そこで、当会は、北九州市に対しては、上告することなく本判決を確定させることを要請する。また、厚生労働大臣においては、原告ら対象世帯の高齢化が一層進んでいることを深刻に受け止め、老齢加算を元に復するための措置を速やかにとることを要請する。
                              以  上 

横浜弁護士会所属会員殺害事件に関する会長声明

カテゴリー:声明

本年6月2日午後2時40分頃、横浜市において横浜弁護士会に所属する前野義広弁護士が、事務所を訪ねてきた男に襲われ、サバイバルナイフのような刃物で胸や腹を刺され、搬送された病院で死亡するという痛ましい犯罪が発生した。
 事件後に犯人が逃走したために、現在も犯人の特定はなされておらず、事件の背景や犯行の動機などは、今後の適正かつ厳格な捜査を待つ以外ないが、法律事務所において、昼の執務時間帯に、業務遂行中の弁護士を襲撃したことから、今回の犯行は、弁護士業務に関連したものである可能性が高いと考えられる。
 このような行為は、民主主義社会において決して許してはならない蛮行である。また、基本的人権の擁護と社会正義の実現を使命とし、市民の権利の護り手である弁護士の業務に対する重大な挑戦であり、このような業務妨害や暴力行為は、いかなる理由があっても許されるものではない。
 当福岡県弁護士会は、横浜弁護士会、そして日本弁護士連合会や全国の弁護士会とともに、今後とも、いかなる暴力行為に対してもひるむことなく毅然として対処し、弁護士の使命を全うしていく所存である。
     2010年6月9日
                  福岡県弁護士会
                   会長 市 丸 信 敏

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