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福岡拘置所小倉拘置支所の現地立替え等を求める要望書

カテゴリー:要望書
平成23年8月26日

内閣総理大臣  菅  直人 殿
法 務 大 臣  江田 五月 殿
法務省矯正局長  三浦  守 殿
法務省福岡矯正管区長 十川 学 殿
福岡県弁護士会
会 長  吉  村  敏  幸
福岡県弁護士会北九州部会
部会長  近  藤  正  隆
福岡拘置所小倉拘置支所現地建替え等を求める要望書

第1 要望の趣旨
 福岡拘置所小倉拘置支所(以下,「小倉拘置支所」という。)を現地にて建替えすべく早急に予算措置を講じること,及び,新小倉拘置支所を建築するにあたっては,無罪の推定を受ける未決収容者の基本的人権に最大限配慮した設計にすることを強く要望する。
第2 要望の理由 
 1.当会は、平成7年2月に小倉刑務所跡地に医療刑務所・小倉少年鑑別所(現福岡少年鑑別所小倉支所)・小倉拘置支所の3施設を移転させるという「北九州矯正センター構想」(以下、「本構想」という)が発表されて以来、本構想に一貫して反対し、本構想の撤回および小倉拘置支所の現地建替えを強く求めてきた。
   その結果,平成21年6月に,当会の主張の通り,本構想に基づく小倉拘置支所の小倉刑務所跡地への移転が断念されたことにより,小倉拘置支所の建替えの方法としては,現地での建替えの方法に絞られた。
 2.かかる状況を踏まえて,当会としては,以下に述べる通り,他の拘置所よりも優先して,小倉拘置支所を早急に建替える必要性が存することを強く主張するものである。
 3.すなわち,小倉拘置支所は1960(昭和35年)に築造された建物で,既に築後50年を経過している。この建物は,旧耐震基準のもと建築されている上,これまで補修・改修工事もほとんど行われておらず,外壁の落下に備えて建物のほぼ全体にネットが張られていることなど,建物外部の老朽化が相当に進んでいることは明らかである。
4.また,小倉拘置支所の建物内部においても老朽化は顕著である。
昨年度の夏・冬に,当会で小倉拘置支所の被収容者に対するアンケート調査を行った(別添の資料ご参照)。同アンケート調査結果によれば,被収容者のうち65%が収容部屋の壁・床・天井に,ひびや,コンクリートが欠けたりはがれたりしている箇所がある,という回答をしている。収容部屋以外の箇所でも,全体の50%近くの被収容者がひび・コンクリートが欠けたりはがれたりしている部分があると回答している。
実際,小倉拘置支所の見学を行った際には,雨漏りのため天井が腐ってしまった部分が多く見られ,使用不能となっている部屋も存在した。
また,蛇口から赤水が出るなどの給水設備の老朽化,収容部屋でダニが出たり,トイレの水の流れが弱いため排泄物がなかなか流れないなどの衛生面で問題があるとの回答もあった。さらに,収容部屋の廊下側にトイレがあり,職員や他の被収容者に見られているというプライバシー権の侵害を訴える回答もあった。そして,夏の暑さや冬の寒さの厳しさを訴える回答も多数あり,冷暖房施設がないことにより被収容者の生活環境が著しく劣悪な状況に置かれていることが判明した。
このように,現在の小倉拘置支所の建物は外部・内部とも老朽化が顕著であり,未決収容者の生活環境が著しく劣悪な状況に置かれていることから,建替の必要性は極めて高い状況にある。
5.御承知のとおり,本年3月11日に東日本大震災が起こり,東北地方は未曾有の被害を受けた。小倉拘置支所の建物は,東日本大震災ほどの巨大地震でなくとも,地震による倒壊の危険を常に孕んでいる。被収容者,拘置支所職員及び面会に来た一般市民の生命・身体の安全を守るために,早急に建替えを行うべきである。
6.そこで,当会としては,改めて,小倉拘置支所を早急に現地で建て替えることを要望し,そのために必要な予算措置を早期に講じるよう強く要望する。
7.また,拘置所に収容された未決収容者には,「無罪推定の原則」があり,その基本的人権は最大限尊重されるべきである。
  しかし,実際は一般人との面会,通信手段が相当制限されており,テレビの視聴もできないなど,未決収容者の収容状況は,既決収容者と比較しても劣後した扱いとも言えるもので,現在の拘置所では,無罪推定を受ける未決収容者の基本的人権に十分な配慮がなされていない。
8.そこで,小倉拘置支所の現地建替えを行う際には,無罪の推定を受ける未決収容者の基本的人権に最大限配慮した建物を建築することを強く要望するものである。
第3 添付資料  ・小倉拘置支所の現地建替えに関する被疑者・被告人アンケート分析論  文(夏・冬)
                              

以上

小倉拘置所の現地立替に関する被疑者・被告人アンケート.pdf

「君が代」斉唱時に起立斉唱を強制しないよう求める会長声明

カテゴリー:声明

1 本年7月14日,最高裁判所第一小法廷は,北九州市立学校の教職員らが,卒業式又は入学式における「君が代」斉唱の際に起立して歌うよう命じた校長の職務命令に反したとして課せられた懲戒処分をめぐる訴訟及び東京都における同種の訴訟の判決において,校長の職務命令は憲法19条に違反しないと判示した。
  これらは,本年5月30日以降,最高裁判所の各小法廷が言い渡してきた同種訴訟の判決における判断を踏襲したものである。
  一連の最高裁判決は,自らの歴史観や世界観との関係で,国旗及び国歌に対する敬意表明に応じ難いと考える者に対して起立・斉唱行為を求めることは,その者の思想及び良心の自由に対する「間接的な制約」となる面があるとしつつ,起立・斉唱行為は,「慣例上の儀礼的な所作」であり,かかる行為を命ずる職務命令は,その目的及び内容,制約の態様等に照らすと許容できるとしている。
2 しかしながら,「君が代」斉唱時の起立・斉唱行為は,「君が代」に対する敬意の表明と不可分であるから,単なる「慣例上の儀礼的所作」とは言えない。「君が代」を是とするか否かは,各個人にとって自己の信条や信仰に深くかかわる問題である。卒業式・入学式における「君が代」斉唱指導が教職員の職務上の義務であるとしても,教職員が自己の信条や信仰を理由として単に起立斉唱しないという行為に対して,懲戒処分という重大な制裁をもって臨むことは,憲法上保障された当該教職員の思想良心の自由ないし内面的信仰の自由の核心部分を直接的に侵害するのであり,憲法19条に違反すると言うべきである。
かかる観点から,当会は,今回の最高裁判決の当事者である北九州市立学校の教職員らの一部による人権救済申立てを受けて,2000年6月28日,北九州市教育委員会に対し,懲戒処分を再考し,以後,同様の懲戒処分をもって教職員に対して「君が代」斉唱時の起立を強制するという運用を改めるよう,警告を発している。
また,国旗及び国歌に関する法律が,国会審議の過程で,同法の制定によって国旗国歌を強制し,義務づけるものではないとの政府答弁がなされた上で可決成立したものであったことをも踏まえれば,上記最高裁判決の結論は容認できるものではない。
3 上記最高裁の各判決を通じては,宮川光治裁判官(第一小法廷),田原睦夫裁判官(第三小法廷)が反対意見を述べ,補足意見も7の多数に上った。このことは,最高裁内部の判断が,決して一様ではなかったことを示している。
殊に,宮川光治裁判官の反対意見が,「憲法は少数者の思想及び良心を多数者のそれと等しく尊重し,その思想及び良心の核心に反する行為を強制することは許容していないと考えられる」とし,厳格な違憲審査基準によって判断すべき旨を述べたことは重要である。
反対意見の外にも,多くの補足意見が,「君が代」の起立斉唱の強制について,慎重な配慮を求めている。
4 本年6月3日,「大阪府の施設における国旗の掲揚及び教職員による国歌の斉唱に関する条例」が制定されたことにみられるように,今後教育行政が教職員に対し学校行事等での「君が代」斉唱時における起立・斉唱を強制する動きが強まることが懸念されている。
  教育現場においては,「能力を伸ばし,創造性を培い,自主及び自立の精神を養う」(教育基本法2条)ことが肝要であり,そのためには教職員の自主性及び自由はきわめて尊重されなければならないものである。
  当会は,思想及び良心の自由の重要性をふまえ,教育行政に対し,教職員に対する「君が代」斉唱時の起立・斉唱を強制することがないよう,また,起立・斉唱をしない者への懲戒処分等の不利益取扱いを行うことがないよう,ここに改めて強く要請する。
                        2011年(平成23年)8月4日     
     
                         福岡県弁護士会            
                         会長  吉 村 敏 幸   

会長日記

カテゴリー:会長日記

福岡県弁護士会会長日記
平成23年度 会 長  吉 村 敏 幸(27期)
福岡家庭裁判所からお濠を隔てた南側に平和台陸上競技場があります。福岡高裁から西側へ約500mの場所です。福岡国際マラソンの開催場所でお馴染みです。
以前、ここでは春から秋にかけて中高生たちの競技会がよく開かれていました。赤いトラックが周囲の緑とフィールドの緑に浮かび上がり、美しいです。芝生の土堤に座って子どもたちの走る姿を見る。するとスタート直後からスッ、スーッと一瞬のうちに集団から抜け出し、あっという間に後続を引き離す選手がいます。この当時は筑紫女学園高校全盛の時代で、速いのは大抵筑女の学生で、圧倒的な差をつけての1位でした。
これが実業団レベルになると、圧勝はあまり見られないと思っていたところ、今年の日本陸上の女子ショートスプリンター福島千里選手はぶっちぎりの優勝でした。為末選手は全くダメ。先天的な能力に優れた選手であっても、努力不足や精神面の不調などから、好不調があるとか。
(今、ほとんどの陸上競技会は「博多の森」へ移っており、平和台ではあまり実施されないとか。残念です)
たまたま先日、東京帰り便飛行機の中で「一瞬の風になれ」(佐藤多佳子著・講談社文庫)を読みました。高校生の陸上競技部の400mリレーを中心とした物語でしたが、バランスの良い走法を作り上げることによって走力がかなりつくことを知りました。その努力のうえに、精神面の充実も伴うという。
私たちの執行部活動も、努力努力の二文字です。
最近は、移動の交通機関の中では女性作家の文庫ばかりを読んでいることに気づきました。男性とは異なる視点やスタイルが多く、あまり考えないで、スーッと読めるのが多いです。
会務報告です。
◆ 毎年、新執行部は3月から5月にかけては、会務引継ぎ、新執行部の課題設定、委員会人事、あいさつ回り、予算、定期総会など、課題山積で、怒涛の毎日を過ごすといわれます。
  今年は大震災と原発事故の対応がさらに重い課題となり、加えて、困難な状況下での給費制の運動があります。
  6月4日の法曹養成を考える市民集会は、給費制をメインテーマとして開催したところ、西日本新聞会館にて約350名の参加者があり(「ホウな話」を読んで参加したという一般市民もおられました)。また警固公園→国体道路→昭和通り→天神交差点→アクロス前公園へと至るパレードにも約130名の参加者が元気一杯で行進し、通りの一般市民のビラ受取りの反応も良く、市民から激励を受けたという会員の報告もありました。
  6月16日、17日、18日は日弁の理事会と法曹人口政策会議ですが、私は市丸前会長と高橋副会長の3名で、福岡県選出の全国会議員あて6月4日給費制市民集会の報告書を携えて、更なる協力依頼のあいさつ回りをしました。
  衆議院18名、参議院8名。早朝8時30分に集合し、10時までに足早に回ります。議員がいるところではじっくり話ができましたが、多くは勉強会や外出中のため、秘書に冊子を渡し「今年8月末日の検討会議(フォーラム)において給費制廃止の結論にならないよう」念押しの口上を申述します。
  時間が足りなかったのですが、市丸前会長は理事会昼食時間に一人で残り全議員を回っていただきました。頼もしい限りです。
  回った限りでは、議員や秘書は問題の所在を概ね理解しておられ、反応も大変良かったとの印象を受けました。
  この視点は、・給費制が戦後間もない昭和22年5月に統一修習制の採用とともに給費制が始まった歴史的経緯、・弁護士、弁護士会の公益性、・修習生の修習専念義務、・ロースクール生、修習生の置かれた現状、などです。これらから金持ちだけしか受け入れない貸与制は廃止すべきことを訴えていきました。
  しかし、フォーラムの第1回議事録(公開)を読む限りでは、桜井財務副大臣の感情的反発などが露わであり、歴史的経緯と現状に対する分析と評価が明確になされるか否かについて議論の行方が懸念されます。まだまだ10月末日まで運動を盛り上げなければなりません。
◆ 当会独自の問題としては、共済規定廃止の問題と、新会館建設に向けた取組みに取りかからなければなりません。
  共済規定については、前年度執行部が3月の臨時総会で成立を目指したものの、会員への周知が不足しているのではないかとの問題提起がなされたため、一旦撤回され、今年度へと引き継がれた課題です。
  現在、共済会費は毎月1,000円をいただいています。この積立金が現在約9,000万円近くに達しています。以前は各部会互助会において積立金から慶弔、退会等の事由に対して一定の金員が支払われてきたわけですが、平成8年4月1日から県弁全体として一本化しました。ところが、会員が1,000名を超えると保険業法の適用対象となることから、大きな単位会はこの規定の改廃を余儀なくされています。
  方法としては、・これまでの積立金の一定割合を返還するのか、・これを一般会計に繰り入れて基金的に運用するために、共済会費は受領せず、従前積立金のみから出損することとして、今後の払戻金を少額とする方式、などです。
  臨時総会で指摘された周知方法については、登録歴30年以上等、一定年限以上の登録会員を対象とした説明会を開催するか、またはアンケート方式とするか、いろいろと方法があると思われますが、ともかく今年中には当会会員数は1,000名を超えることが見込まれますので、早急に皆様にご提案したいと考えます。
◆ 新会館問題
  この問題は、会員の会費負担とも絡んでおり、広く皆様のご意見をお聞きしながら会館の機能と規模を判断していくことになります。
  月報6月号に山口雅司会員のアンケート分析報告がなされていますが、これを受けての新会館委員会の検討結果を踏まえて、秋ごろには一定のご提案を出さなければいけないと考えています。
  現在は、会員の活動が活発で部屋が足りずに執行部は困ることが多く、かといって賃貸も空きがなくて困ることが多いというのが実状です。
  皆様のご理解をよろしくお願いします。

福岡県弁護士会会長声明~秘密交通権侵害に関する福岡高裁国賠判決について~

カテゴリー:声明

 福岡高等裁判所は,本年7月1日,秘密交通権の侵害を理由とする国家賠償請求事件において,検察官が被疑者と弁護人の接見内容を聴取し,その供述調書を証拠として公判で請求したことが,弁護人の秘密交通権を侵害する違法な行為であること認め,佐賀地方裁判所の請求棄却判決を変更し,国に55万円の支払を命ずる判決を言い渡した。
 原審である佐賀地方裁判所は,秘密交通権の権利性を一応は認めたものの,それは捜査機関の捜査権に優越するものではないとし,検察官が接見内容を聴取することが違法かどうかは,「聴取の目的の正当性,聴取の必要性,聴取した接見内容の範囲,聴取態様等諸般の事情を考慮して」判断すべきであると判示した上で,結論において検察官の行為は違法ではない,という結論を導いた。
 これに対し,本判決は,秘密交通権は被疑者の権利であるだけではなく,弁護人の固有権でもあり,そのことは,身体を拘束され取調べを受ける被疑者の防御にとって不可欠な弁護人の援助を実質的に確保する目的によるものだと指摘した。さらに本判決は,取調べで被疑者が接見内容を話し始めたときは,捜査機関は、これを漫然と聴取してはならず,接見内容を話す必要がないことを被疑者に告知するなどして秘密交通権に配慮すべき法的義務も認めた。このように、本判決は,秘密交通権の優先的固有権性を認めた志布志事件の鹿児島地裁判決の延長線上にあるものであり,捜査機関による接見内容の聴取を違法とした高裁レベルの初めての判断として重要な意義がある。
 他方で,本判決は,弁護人が報道機関に対して被疑者の供述の一部を公表したからといって,供述過程を含む秘密交通権が放棄されたとは認められないとしつつも,そのような供述を被疑者がした事実自体の秘密性は消失したとして,検察官が被疑者に対し,報道された供述を弁護人にした事実の有無やそのような供述を弁護人にした理由を尋ねた行為に限っては違法ではないと判示した。
 しかし,被疑者の供述に関する報道機関の情報源が捜査機関の発表に限られており,捜査機関が報道内容を事実上コントロールしている現状のもと,これに対抗して正しい事実を報道機関に公表することは、事件に対する誤った認識を是正するために必要な弁護活動であるところ,本判決の「秘密性の消失」論によれば,報道機関への公表が捜査機関の秘密交通権への介入の口実を与えてしまうことになるため、今後このような弁護活動の委縮を招く事態が懸念されるという問題が残った。
 とはいえ、本件は,佐賀県弁護士会の弁護士が刑事事件の弁護人となり,その弁護活動の過程で秘密交通権を侵害されたことを理由として国家賠償請求訴訟を起こしたものであって,当会を含む九州弁護士会連合会が支援してきた事件であり,ここに、優先的固有権としての接見交通権の重要性を高裁に認めさせるという大きな成果を得た。
 当会は,被疑者・被告人と弁護人との秘密交通権については,「いつでも自由になされ,かつ秘密が絶対的に保障される」ことが必要不可欠であり,この保障があってはじめて被疑者・被告人は安心して弁護人に相談できるものとして,これまでも秘密交通権の確立を訴えてきた。そして,この判決を契機として,検察庁その他の捜査機関に対し,この判決を真摯に受け止め,被疑者・被告人と弁護人との秘密交通権が憲法の保障に由来する最も重要な権利の一つであることを十分に認識し,秘密交通権の侵害が再び繰り返されることのないように強く求めるものである。
2011年(平成23年)7月7日
                        福岡県弁護士会
                        会長 吉 村 敏 幸

会長日記

カテゴリー:会長日記

平成23年度福岡県弁護士会会長日記会 長吉 村 敏 幸(27期)
1、5月になると、風が新緑の薫りを運んできます。
  およそ20年程前であったか、6月上旬ごろ、筑後川下流の土堤下(いわゆる後背湿地という場所です)の家で友人の母親の「えつ」の手料理フルコースをご馳走になったことがありました。淡水と海水のまじりあう付近でとれるカタクチイワシ科の魚で、硬い小骨が多いために、小さくたたいて食べやすくするとか、弱い魚のためすぐ死んでしまい、新鮮さを保って刺身で食べるためには予め漁師に注文しておかなければ入手できない珍品、などとの話を聞きながら、筑後川の土堤を吹き渡ってくる風にえつと城島のお酒がうまく合い、ゆったりと時間を過ごしたことを思い出しました。  ところが、会長になった今、一日中部屋に閉じこもり、会議室で短い休憩時間を取って会席弁当を食べ、またその後会議に没頭するという日常が多くなりました。
2、日弁連理事会についてご紹介します。
1)日弁理事会は月1回開催木曜日 午前10時15分から10時45分まで常務理事会午前10時45分から17時30分ごろまで理事会午後7時から九弁連理事者懇談会金曜日 午前10時から17時30分ごろまで理事会土曜日 午前10時から15時30分ごろまで法曹人口政策会議全体会議(土曜日は偶数月のみ)のスケジュールです。全体で10cmくらいの厚さの資料が配布され、日弁連各委員会から種々の声明、決議文、意見書が提案され、質疑・応答・討論・議決されていきます。
2)5月理事会でも議題はてんこ盛りでした。私の印象に残った議題のうち、次をご紹介します。足利事件に関しての日弁連(公式)調査報告書です。これは、一審弁護人批判および一、二審裁判批判が厳しいです。この報告書をこのまま承認できるか否か、あらかじめ読了し、関係委員等に意見をお聞きして理事会に臨みます。この報告書は追而会員に配布されることになると思いますので、ぜひ皆様も読んでいただきたいと思います。弁護士が陥りやすい誤りと注意すべき点がきちんと指摘してあります。
3)菅家さんは、事件(1990年5月12日)の約1年半後(1991年12月1日)早朝に任意同行を受け、深夜に自白、翌日未明に逮捕。その3日後にF弁護人が弁護人選任届を提出。その6日後に接見。さらにその6日後に再接見。菅家さんは第1回公判前に足利事件以前に発生した別件2件の幼児誘拐殺人事件も自白。 1991年 12月12日 菅家さん足利事件で起訴 12月27日 G弁護士選任 1992年 1月15日 別件のうち1件は処分保留保釈 1月27日 菅家さんはこのころから断続的に「逮捕に納得できない」旨家族あて手紙を書く「自分は無実」 2月13日 足利事件で第1回公判「犯行を認める」 12月22日 第6回公判。家族への手紙が公開されて、菅家さんが犯行を否認(この間、F弁護人が否認撤回(自白)を勧める…後述のとおり) 1993年 1月28日 第7回公判。再び犯行を認める 2月   栃木弁護士会がF弁護人に支援を申し入れるもF氏拒絶 2月26日 別件2件とも不起訴処分 3月25日 第9回公判。結審 5月31日 菅家さんは弁護人あて無実の手紙を書く 6月14日 F弁護人弁論再開申立 6月24日 第10回公判。被告人質問で再度否認 7月7日 無期懲役判決 9月6日 L弁護人、M弁護人を選任 1994年 4月28日 控訴審第1回公判   ~     (控訴審は佐藤博史、神山哲史、岡慎一、上本忠雄ら4人の弁護人) 1996年 5月9日 第18回公判。控訴棄却(判例時報1585号136頁) 2000年 7月17日 上告棄却 2002年 12月20日 日弁連再審支援決定 12月25日 再審請求 2008年 2月13日 宇都宮地裁再審棄却 2月18日 即時抗告 12月24日 東京高裁DNA再鑑定採用 2009年 6月23日 東京高裁再審開始決定 2010年 3月26日 第7回公判。無罪判決以上が大まかな経過です。
4)日弁の調査報告書は、一審の第6回公判時点で菅家さんが犯行を否認した後の弁護人の対応を特に問題としました。  同書27頁・「F弁護人は、公判終了後、新聞記者に対し『信頼関係が崩された気分だ。24日に菅家被告と面会し、もう一度確かめる。それでも起訴事実を否認するなら、辞任もあり得る』(1992年(平成4年)12月23日付朝日新聞栃木版)などと述べた。そして、F弁護人は、同月24日、菅家さんと面会した。菅家さんは、同月25日に、裁判所あてに、犯行を再度認める内容の上申書を提出した。このころ、第6回公判で菅家さんが否認したという報道などを受けて、栃木県弁護士会がF弁護人に弁護活動支援の申入れを行なったが、F弁護人は自白事件であるから支援は不要であると断った」  第7回公判「1993年(平成5年)1月28日の第7回公判で、菅家さんが家族にあてた14通の手紙が証拠物として取り調べられた。しかし、被告人質問において、裁判所、検察官および弁護人から、手紙についての質問がなされた際、菅家さんは上申書に記載された内容のとおり、家族に心配をかけたくなかったので無実と書いたのだと述べた。菅家さんは再び、本件犯行を認める供述に転じた」  F弁護人は、なぜこんなことをしたのか。  私は、菅家さんが逮捕された当日の新聞報道を念のためにインターネットで見てみました。  報道内容は、*幼女誘拐殺人事件の犯人が逮捕された、*DNA鑑定は一千人に1人の確率でほぼ同一人物、*1年半に及ぶ地道な捜査、*14時間の取調べで自供、*自宅からは幼児のポルノ発見押収、という見出しです。  菅家さんの話によると、警察は自宅にやってくるなり肘鉄やひっくり返すなどの暴行を加えたようですが、最初の高裁判決は、警察の暴行の点は認定していません(判例時報1585号150頁)。  F弁護人は最初のDNA鑑定と自白の重みには抗しきれなかったのでしょうか。  また、さらには新聞報道やTVワイドショー等からくる連続幼児誘拐殺人事件の重圧。1件だけなら死刑回避との弁護方針なのか。それでも、第6回公判前に家族にあてた無実との真摯な訴えの手紙をなぜきちんと受け止めなかったのか。  疑問は残るものの、当時の状況におかれた弁護人として、マスコミなど大勢の敵を前にして、唯一の味方として必死に戦う弁護人魂こそが弁護士としての命であることを改めて自覚させられる調査報告書です。  この報告書は、裁判所批判もきちんとしています。  しかし、マスコミ批判はありませんでした(なお「自宅から幼児ポルノ等を押収」との報道も事実無根であったことが後に判明しました)。
5) 私は、当会刑事弁護委員会の船木、林、甲木委員らのご意見を受け、一審弁護人がなぜこのような対応を取ったのかについての背景事情をいくらかでも入れないと、弁護人の対応としては理解しがたい点がある旨、意見を述べたところ、その点は修正されることになりました。  少々くどくなりましたが、日弁連理事会報告の一コマでした。

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