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会長日記

カテゴリー:会長日記

平成24年度福岡県弁護士会  会 長 古 賀 和 孝(38期)
梅雨本番の頃、早く梅雨明けしないかと期待をするものの、明ければ明けたで猛暑が予想され、しかも、計画停電の実施も告知されるのですから、なお一層の暑苦しさを感ぜずにはいられません。さてこのような季節の中で、一服の清涼剤とも言える体験をしましたので、今月はこのご紹介をします。
 さる、7月2日は在福岡アメリカ領事館主催で独立237回目の祝賀パーティが市内のホテルで開催されました。各種団体の定時総会後のパーティにも呼ばれて参加するのですが、この独立祝賀パーティは、いかにもアメリカ的というか非日本的というか、とても明るく心和むものでした。国旗をもった儀仗兵の行進から始まり、厳かにパーティは始まりました。続いて、ジェイソン・R・クーバス主席領事の歓迎の挨拶となり、まず、スクリーンに写った古いモノクロ写真の解説となりました。写真には男性が写っていますが、誰かよく分かりません。「この人は随分昔にキューバからアメリカ合衆国に渡り苦労に次ぐ苦労の末、アメリカ国籍を取得し、またビジネスで大成功を収めました。」なるほど髪型、シャツ、ズボンの形をみると古き良きアメリカの風情です。写真が家族写真に変わり、「その後、愛し合う妻と出会い、かわいい子どもにも恵まれました。」とのナレーションが続きます。数百名の招待客は、この人物は現代アメリカ史上きっと著名な人物であろうが、残念ながら名前がわからない、もしも回答指名でもされたらどうしようと戸惑いを隠せません。私も無意識に後ずさりしたように記憶しています。しばらく間をおいて、声高らかに「この男性こそ、私のお父さん、そしてお母さん、それに私なのです。」と、誇らしげにアナウンスされた途端、場内はどっと沸き拍手喝采の渦です。何ともいえない和んだ雰囲気となりました。実に素晴らしい。独立記念の祝賀パーティですから公式行事であることは間違いないのですが、そこでも大事な家族のご披露をするところに感動を覚えたものです。家族を核にして生活をエンジョイする姿勢ですね。行事に追われている毎日と比べると、余裕が違います。とても羨ましく思いました。この独立記念日のパーティは毎年コンセプトを変えるとのことで、今年はヒスパニック系をコンセプトとした催しが企画され、テキーラ、キューバン・サンドイッチなどの飲食物が振る舞われ、また、プロダンサーによる官能的なタンゴやサルサなどの踊りも披露されて、とても楽しいパーティとなりました。
 この月報が発刊されている頃は、裏の赤坂小学校のプールから小学生の元気な歓声が聞こえ、きっとあっぱれな夏を迎えていることと思います。 皆様、健康にはくれぐれもご留意を。

「マイナンバー法案」に反対する声明

カテゴリー:声明

           「マイナンバー法案」に反対する声明
 今国会において、「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」(略称「マイナンバー法」)案が提出され、審議がされている。
 この法案は、全ての国民と外国人住民に対して、社会保障と税の分野で共通に利用する識別番号を付けて、これらの分野の個人データ(納税情報、健康保険情報、年金情報等)を、情報ネットワークシステムを通じて確実に名寄せ・統合(データマッチング)することを可能にする制度(社会保障・税共通番号制度)を創設しようとするものである。
 共通番号が用いられる行政分野(年金、労働保険、健康保険、生活保護、介護保険、税務等)の情報は、私生活全般に及び、その中には、障害、病気、貧困、無資力などの極めてセンシティブな情報も含まれている。
 共通番号制度により、これらの情報が名寄せ・統合されると、収集・蓄積された個人の情報が次々と番号で特定され、連結されていくことで、その人物の行動全般を把握し、分析することが可能となり、プライバシー権を侵害するもので、国家による国民監視の道具として利用されるおそれがある。
 本法案では、共通番号の利用範囲については、「政令で定める公益上の必要があるとき」(17条11号)として、行政の判断で共通番号の利用範囲を無限定に拡大することができることとなっており、また、行政機関内での利用にとどまらず、金融機関などの民間分野で共通番号が広範に利用されることが予定されているため、不正アクセスや、本人になりすました犯罪が多発するおそれがある。
 国会議員会館や財務省、国内有数の企業がサイバー攻撃をうけている現在、情報漏洩のリスクは高まっているが、サイバー攻撃から完全に防御できるシステムはないため、個人の収入・資産情報が漏洩し、取り返しのつかない事態になるおそれもある。
 これらの点について、本法案は、「個人番号情報保護委員会」(31条)を設置し、同委員会に、共通番号等の適正な取扱いの確保、必要な指導、助言等を行わせることとしているが、同委員会は、委員長ほかわずか6名の組織であり、しかも委員の内3名は、非常勤であるなど(35条1項、2項)同委員会がどの程度機能するか、又、日本全国の関係機関の監視ができるのかどうかについても疑問があるし、前述のとおり情報漏洩のおそれを完全に除去することはできない。
 従って、「マイナンバー法案」の制定には強く反対する。
                   2012年(平成24年) 8月 7日
                   福岡県弁護士会会長 古 賀 和 孝

死刑執行に関する会長声明

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             死刑執行に関する会長声明
1 本日,東京,大阪の各拘置所において、それぞれ1名の死刑確定者に対して死刑が執行された。
2 我が国では,過去において,4つの死刑確定事件(いわゆる免田事件,財田川事件,松山事件,島田事件)について再審無罪が確定している。また,2010年(平成22年)3月には足利事件について,2011年(平成23年)5月には布川事件について,いずれも無期懲役刑が確定した受刑者に対する再審無罪判決が言い渡されている。これらの過去の実例が示すとおり,死刑判決を含む重大事件において誤判の可能性が存在することは客観的な事実である。
3 しかも,我が国の死刑確定者は,国際人権(自由権)規約,国連決議に違反した状態におかれているというべきであり,特に,過酷な面会・通信の制限は,死刑確定者の再審請求,恩赦出願などの権利行使にとって大きな妨げとなっている。この間,2007年(平成19年),刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律が施行されたが,未だに死刑確定者と再審弁護人との接見に施設職員の立ち会いが付されるなど,死刑確定者の権利行使が十分に保障されているとは言い難く,このような状況の下で死刑が執行されることには大きな問題があるといわなければならない。
4 国際的にも,1989年(平成元年)に国連総会で死刑廃止条約が採択されて以来,死刑廃止が国際的な潮流となっている。1990年(平成2年)当時,死刑存置国は96か国で死刑廃止国は80か国だったのが,2012年(平成24年)6月現在では,死刑存置国は57か国で死刑廃止国及び死刑停止国は141か国となっている(アムネスティインターナショナル)。さらに,2008年(平成20年)12月18日には,国連総会において,すべての死刑存置国に対して死刑執行の停止を求める決議案が採択された。
また,2007年(平成19年)5月18日に示された,国連の拷問禁止委員会による日本政府報告書に対する最終見解・勧告においては,我が国の死刑制度の問題が端的に示された。すなわち,死刑確定者の拘禁状態はもとより,その法的保障措置の不十分さについて,弁護人との秘密交通に関して課せられた制限をはじめとして深刻な懸念が示された上で,死刑の執行を速やかに停止すること,死刑を減刑するための措置を考慮すべきこと,恩赦を含む手続的改革を行うべきこと,すべての死刑事件において上訴が必要的とされるべきこと,死刑の実施が遅延した場合には減刑をなし得ることを確実に法律で規定すべきこと,すべての死刑確定者が条約に規定された保護を与えられるようにすべきことが勧告されたのである。しかも,2008年(平成20年)10月には,国際人権(自由権)規約委員会により,我が国の人権状況に関する審査が行われ,我が国の死刑制度の問題点を指摘するともに制度の抜本的見直しを求める勧告がなされた。
5 日本弁護士連合会は,本年6月18日、滝実法務大臣に対し、「死刑制度の廃止について全社会的議論を開始し、死刑の執行を停止するとともに、死刑えん罪事件を未然に防ぐ措置を直ちに講じることを求める要望書」を提出して、国に対し、直ちに死刑の廃止について全社会的な議論を開始し、その議論の間、死刑の執行を停止することを改めて求めたところである。
6 このような中で,我が国の死刑制度の抱える問題点について何ら改革が講じられることなく,今回の死刑執行が行われたことは極めて遺憾であり,当会としてはここに政府に対し強く抗議の意思を表明するとともに,今後,死刑制度の存廃を含む抜本的な検討がなされ,それに基づいた施策が実施されるまで,一切の死刑執行を停止することを強く要請するものである。
                   
                      2012年(平成24年)8月3日
                  福岡県弁護士会会長 古 賀 和 孝

会長日記

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平成24年度福岡県弁護士会 会長 古 賀 和 孝(38期)
 原稿締め切りにまだ間に合うということで、最初に記させていただきます。本年6月7日、当会春田久美子会員の法教育懸賞論文受賞を祝う会が多数の参加者を集めて催されました。この賞は法教育推進協議会、日本司法支援センター、社団法人商事法務研究会の共催で、法教育普及のための方策を研究した論文に対して与えられるものですが、春田会員は2年連続の受賞であり、しかも今回は法教育推進協議会賞という最高ランクの受賞です。ここのところ当会を取り巻く停滞した雰囲気を払拭し、元気づけるお祝い事といって良く、久しぶりに心躍りました。今後なお一層のご活躍を祈念し、また、当会の対外的評価の向上に寄与していただけるものと期待しております。
 さて、樹木の枝一杯に茂っている濃淡それぞれの葉が美しいこの季節、当会緒方研一会員が受傷されたとの第一報が入ったのは5月22日午前のことです。直ぐに、安否を確認するため種々情報収集に努めるものの、なかなか正確な情報に接することができません。当日、ご本人の安否確認ができたことからまずは安堵しましたが、会長声明を発するには事実関係がはっきりしないので当初は会長談話を発表することとし、なお情報収集に努めることとしました。被疑者は事件相手方として自ら代理人を選任した上で和解解決となった事件の相手方であり、刃物を持って殺傷行為に及んでいるとの情報を確認できたことから、5月29日法治国家にあっては紛争の解決のため暴力を持ってする一切の行為に断固反対するとの会長声明を発しました。
 過年度横浜弁護士会で発生した事件相手方による殺人事件はもとより、当会においても過去会員等に対する暴力行為が発生しています。弁護士業務を行う上では、否応なく相手方が存在することがあります。弁護士、弁護士会は断固このような卑劣な暴力に対しては一切屈服することなく戦って行かなければなりません。不穏な動きがあるときには是非とも所管委員会若しくは執行部に一報いただき、万全を期すよう心がけてください。会員各位におかれましても日常の警備にぬかりなきよう、既に配布済のマニュアルを再読していただければと存じます。
 翌5月23日は定期総会が開催され、その後の懇親会では当会の直面する課題、活動方針につきご挨拶させていただきました。福岡高裁長官から、裁判員裁判を例にとり、市民参加、市民目線を意識した司法制度の在り方について、また、九州経済産業局長からは、ダイナミックに変動する社会、経済情勢の中にあって活躍を期待される弁護士、弁護士会の目指すべき方向性のお話をいただきました。基本的人権の擁護と社会正義の実現を使命としつつ、時代の流れに無関心であってはならず、過去の成功体験に安住せず、国民、社会から求められるところを誠実に受け止め、前向きに進んでいく必要があると再確認した次第です。5月10日、元会員が詐欺容疑で逮捕されるという前代未聞の事件が発生しましたが、毀損された信用を回復する処方箋も、ここにあると確信しています。

貸金業法や利息制限法等の改悪の動きに強く反対する会長声明

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  貸金業法や利息制限法等の改悪の動きに強く反対する会長声明
 2006年(平成18年)12月に成立した「貸金業の規制等に関する法律等の一部を改正する法律」(平成18年法律第115号)が,2010年(平成22年)6月18日に完全施行されてから2年が経過した。同法成立前は,生活の破たんや自殺など,多重債務問題が年々深刻さを増しており,43の都道府県議会と1136の市町村議会が決議を採択したことに見られるように,その解決を求める声が全国に広がっていた。同法は,このような国民の声を受けて,上限金利を引き下げるとともに,返済能力を超える借入れを防ぐ総量規制の仕組みを導入するなど,抜本的かつ総合的な対策を講じたものであった。
 そして,附則66条に基づいて内閣官房に「多重債務者対策本部」が設置され,セーフティネットの拡充強化,多重債務者に対する相談窓口の充実強化など,国全体をあげて,多重債務対策が進められてきた。当会も,法律相談センターでの多重債務相談を無料化し,自治体や関係機関との連携を強化するなど,多重債務問題の解決のために全力を挙げた取組みを続けてきた。
 これに対して,近時,与野党の一部国会議員の中に,「潜在的なヤミ金被害が広がっている。」などとして,法の見直しを目論む動きが見られる。具体的な案としても,総量規制を撤廃し,利息制限法等を改正して年利30%を上限とする変動金利制を導入することまでが提案されているような状況である。
 しかしながら,貸金業法等の成立,施行により,多重債務者対策は大きな成果を上げている。例えば,株式会社日本信用情報機構の統計によれば,5社以上の借入れを有する多重債務者が法改正前の約230万人から約45万人に減少している。同様に,個人破産申立件数も約17万人から約10万人に減少している。そして,警察庁の統計によれば,多重債務による自殺者も1973人から998人と半減している。
 さらに,ヤミ金に関しても,警察庁の統計によれば,検挙人員,検挙事件,被害人員,被害額の全てが減少傾向にあり,金融庁が把握する無登録業者に係る苦情件数,日本貸金業協会が把握するヤミ金被害の苦情照会件数,消費者センターへのヤミ金相談件数,弁護士会へのヤミ金相談の件数も軒並み減少している。ヤミ金被害が広がっているという指摘は客観的根拠を欠いていると言わざるを得ない。
 そのほか,一部国会議員は「貸金業法等が零細な中小企業の短期融資の需要を阻害している。」とも指摘するが,現行法は事業資金貸付を総量規制の例外とするなどの手立てを講じている。また,国は,緊急保証やセーフティネット貸付など多角的に中小企業支援策を講じている。零細な中小企業の資金需要に対して,以前のグレーゾーン金利と同様の高金利による貸付けを許していては,多重債務被害の再燃を来たすことが必至である。
 当会は,貸金業法等の成果を無にしかねない,総量規制や金利規制の緩和,撤廃に,強く反対するものである。
                           2012年(平成24年)7月18日
                                 福岡県弁護士会
                              会 長 古 賀 和 孝

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