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「送還忌避者のうち本邦で出生した子どもの在留特別許可に関する対応方針について」に対する会長声明

カテゴリー:声明

 2023年8月4日、出入国在留管理庁は、「送還忌避者のうち本邦で出生した子どもの在留特別許可に関する対応方針について」(以下「対応方針」といいます。)を発表し、斎藤健前法務大臣が臨時記者会見を行いました。また、小泉龍司法務大臣も、同年9月13日の初登庁記者会見にて、前法務大臣の見解を引き継ぐ考えを示し、「よく実態を見ながら、その制度の包摂性も必要でありますけれども、より多くの子どもたちを救えるように、その家族も一緒に救えるよう」に対応していきたいと述べました。
 この対応方針では、①2023年6月に改正された出入国管理及び難民認定に関する法律(以下「改正入管法」といいます。)の施行時までに、②日本で出生して、小学校、中学校又は高校で教育を受けており、引き続き日本で生活していくことを真に希望している③子どもと、④その家族を対象に、家族一体として在留特別許可をして在留資格(基本的には、子どもは「留学」、親には子どもを監護養育するために就労可能な「特定活動」)を与えるとしています。
 これにより日本に在留する在留資格のない子どもとその家族の一部に在留資格が認められることで、これまで長期にわたり自由を制限されてきた子どもと家族が、普通の生活を送れるようになることを歓迎します。 しかしながら、対応方針には、次のような問題点があります。
1 恒常的、原則的な措置として行い、在留特別許可のガイドラインにも明記すべきこと(前記①の点について)
 対応方針では、改正入管法の施行後には、送還忌避者である親の迅速な強制送還が進み、在留資格のないまま在留が長期化する子どもが減少することを前提として、改正入管法の施行時までに既に在留が長期化した子どもに対し、「今回限り」の一時的、例外的、恩恵的な措置として行うように読めます。
 しかしながら、改正入管法の施行後においても、親の失業等による在留資格の喪失に伴い、子どもが在留資格を失う事態は想定されます。
 そもそも、国が子どもの最善の利益を考慮する義務、家族生活を尊重する義務は、子どもの権利条約や自由権規約に定められた国際法上の義務であって、今回の対応は、国が行うべき当然の措置といえます。そして、この点は、改正入管法の参議院付帯決議でも「在留特別許可のガイドラインの策定に当たっては、子どもの利益や家族の結合、日本人又は特別永住者との婚姻関係や無国籍性への十分な配慮を行うこと」とされているところですので、恒常的、原則的な措置として行い、在留特別許可のガイドラインにも明記すべきです。
2 対象範囲が狭いことについて
(1)本邦で出生したことを要件とすべきではないこと(前記②の点について)
 対応方針によると、「本邦で出生し」たことを在留特別許可の要件としています。しかしながら、日本で生まれた子どもと、幼少期に日本に来た子どもで、日本への定着性に違いはありません。「本邦で出生し」たことについては、要件から削除するべきです。
(2)18歳以上の者についても対象とすべきこと(前記③の点について)
 対応方針は、「子ども」、つまり18歳未満の者を対象にしています。しかし、日本で幼少期を過ごし、成人した者は、より一層、日本に定着性を有し、生活基盤を築いているはずです。日本で幼少期を過ごした18歳以上の者に対しても、在留特別許可を認めるべきです。
(3)諦めて帰国した子どもも対象とすべきこと(前記③の点について)
 対応方針によると、2022年末時点の本邦で生まれ育った在留資格のない子ども201人のうち、「自らの意思で帰国した者を除き」、少なくとも7割に在留特別許可をすることが見込まれるとされています。しかし、自らの意思で帰国した者の中には、これまでの国際人権条約に反する我が国の運用の結果、家族との別離を避けるために、日本への在留を諦めて帰国した者が含まれているはずであり、その救済も図られるべきです。
(4)祖父母やきょうだいについても対象とすべきこと(前記④の点について)
 対応方針では、「対象は、…子どもとその家族」、「家族一体として在留特別許可を」するとされ、父母以外の祖父母やきょうだいの扱いについては不透明となっています。斎藤前法務大臣の臨時記者会見では、対応方針の原則から外れるケースについては「諸般の事情を総合的に勘案して在留特別許可をする場合もある」と述べられていますが、家族結合の観点からは明確に対象とし、在留資格を付与すべきです。
3 親の事情を考慮すべきでないこと
対応方針によると、「親に看過し難い消極事情」がある場合、具体的には、不法入国・不法上陸、偽造在留カード行使や偽装結婚等の出入国在留管理行政の根幹に関わる違反、薬物使用や売春等の反社会性の高い違反、懲役1年超の実刑、複数回の前科を有している場合には、対応方針に基づく在留特別許可の対象から除くとあります。
 しかしながら、日本に定着性を有する子どもは、等しく保護すべきであって、子どもには何の責任もない親の事情によって、差別することがあってはならず、父母の地位、活動等によるあらゆる形態の差別を禁じた子どもの権利条約に違反します。親の不法入国や前科など、親の事情によって対象外とする要件は、いずれも削除すべきです。
 そして、このように子どもに特別在留許可が与えられる場合には、「看過し難い消極事由」のある親のみを強制送還して子どもと分離することも避けるべきです。そもそも、刑事事件については処罰が終わっています。また、対応方針では「看過し難い消極事情」の例として複数回の前科も想定していますが、この点は改正入管法50条1項が在留特別許可の除外事由としている事由に比べても広すぎます。そして、同項が、除外事由がある場合でも「本邦への在留を許可しないことが人道上の配慮に欠ける特別な事情がある」ときには在留特別許可をすることができるとしていることを考えると、上記のような場合には子どもの利益や家族の結合という特別に配慮すべき事情があるものとして、出来る限り親にも同時に在留特別許可が認められるべきです。
 以上のとおり、当会は、全ての子どもが国際人権条約によって認められた基本的人権が尊重されるよう、法務省及び出入国在留管理庁において、これらのことを考慮し、対応方針の実施等について、適切な対応をとるよう求めます。

2023年(令和5年)11月17日

福岡県弁護士会     

会長 大 神 昌 憲

元会員の逮捕に関する会長談話

カテゴリー:会長談話

 当会の会員であった立野憲司(たての けんじ)弁護士(2023年3月31日に第一東京弁護士会に登録換え)が、当会所属期間中に、依頼者からの預り金約840万円を業務上横領したとして、2023年11月16日、逮捕されたとの報道に接しました。
 当会としては、元会員が業務上横領事件で逮捕されたことについて、極めて重大なこととして厳粛に受けとめています。
 被疑事実の真偽につきましては今後の捜査及び裁判の進展を待つことになりますが、仮に事実であるとすれば、弁護士の職務に対する社会的信頼を著しく傷つけるものであり、到底許されるものではありません。
 当会は、基本的人権の擁護と社会正義の実現を使命とする弁護士の職務を全うするため、会員一人一人に対してあらためて弁護士としての自覚と倫理意識の徹底を求めるとともに、所属会員の非行事案に関し迅速かつ適正な処分を行い、弁護士及び弁護士会に対する社会の皆さまからの信頼の回復及び向上に努力する所存です。
                     

2023年11月17日
                          福岡県弁護士会
                           会長  大神 昌憲

「袴田事件」の再審公判において検察官が再審請求審と同じ争点について有罪立証を行う方針を示したことに対し強く抗議するとともに、改めて速やかな再審法改正を求める会長声明

カテゴリー:声明

1 検察官は、本年(令和5年)7月10日、いわゆる「袴田事件」について、東京高等裁判所の同年3月13日の即時抗告棄却決定(以下「本決定」という。)に対し、特別抗告を断念し、再審開始決定が確定していたにもかかわらず、再審公判において、有罪立証を行う方針を明らかにした。
2 「袴田事件」は、1966年(昭和41年)6月30日未明、静岡県旧清水市(現静岡市清水区)の味噌製造・販売会社の専務宅で、一家4名が殺害された強盗殺人・放火事件の犯人とされ死刑判決を受けた元プロボクサーの袴田巖氏(以下「袴田氏」という。)が無実であることを訴えて再審を求めている事件である。 
2020年(令和2年)2月22日の最高裁判所による差戻決定後、第2次再審請求審の争点は、事件の1年2カ月後に犯行現場近くの工場内味噌タンクから「発見された」「5点の衣類」に付着した血痕の色調(赤み)に影響を及ぼす要因という点に絞られていたが、本決定は、この「5点の衣類」が「犯行着衣」であり袴田氏のものであるという認定に合理的疑いが生じたとする2014年(平成26年)3月27日の静岡地方裁判所の再審開始決定を支持したものである。
本決定に至る過程では、検察官は、上記「5点の衣類」について実験などを繰り返し、最高裁による差戻後も、東京高等検察庁が1年2カ月にわたりいわゆる「みそ漬け実験」を行うなどしていたが、これについては、2022年(令和4年)11月1日に東京高裁の裁判官による視察が行われ、血痕の赤みが消えていることが明らかになっていた。
当会は、本決定を受けて、本年3月13日、検察官に対し、不服申立て(特別抗告)を行うことなく、速やかに再審公判に移行させることを求めるとともに、再審公判において、一刻も早く、袴田氏に対し無罪判決が下され、その救済が実現されることを期待する旨の声明を発出したところである。
3 ところが、今般、検察官は、今後開かれる再審公判において、有罪立証の方針を表明した。
しかし、報道によると、検察官が再審公判に提出予定としている245点の証拠のうち、大半は既に再審請求審で提出された証拠であって、新証拠とされる16点についても、再審請求審における争点であった「5点の衣類」の血痕の赤みに関する法医学者による共同の鑑定書等とのことであるから、検察官の有罪立証は、既に決着のついた争点について、蒸し返しをするものに他ならない。
そもそも、本件は、事件発生から57年が経過し、第2次再審請求だけでも約15年間経過している。静岡地裁の再審開始決定がされた後も、検察官の不服申立手続において約9年間もの長期間に渡り審理が行われた。袴田氏が87歳(同氏を支えてきた実姉の秀子氏も90歳)と高齢であることに鑑みれば、検察官が再審請求審と同じ争点について再審公判で有罪立証をするなどということは、袴田氏の迅速な裁判を受ける権利ひいては個人の尊厳を侵害する不当な対応であるといわざるを得ない。
したがって、当会としては、検察官のこのような方針に強く抗議するものである。
4 当会は、本年9月13日に再審法の改正を求める総会決議を行った。この決議でも指摘したとおり、再審請求審が長期にわたることが多いこと、再審開始決定が出されること自体が極めて稀であることの大きな原因は、再審請求手続における手続規定の不備、証拠開示制度の未整備、再審開始決定に対する検察官不服申立てが認められている点にある。
  検察官が確定判決の結果が妥当だと主張するのであれば、本来は、再審請求審ではなく、その立証の機会が保障されている再審公判においてその旨を主張するべきであり、不服申立てを認めるべきではないのである。
袴田事件においても、再審開始決定に対する検察官の不服申立てを許容することにより、約9年間、非公開の再審開始の判断のための審理に長期間を費やすことになったのであるが(手続規定の不備や証拠開示制度の未整備も長期化の原因となっていたことは論を俟たない)、さらに再審公判において検察官が同じ争点を蒸し返してこれ以上長期の主張立証を尽くすことを認める必要はない。
当会は、えん罪被害者の迅速な救済を可能とするため、また、第2の袴田事件を生まないためにも、国に対し、①再審請求手続における手続規定の整備、②再審請求手続における証拠開示の制度化、③再審開始決定に対する検察官による不服申立ての禁止を中心とする再審法の改正を速やかに行うよう求める次第である。

2023年(令和5年)10月25日

福岡県弁護士会     

会長 大 神 昌 憲

再審法の改正を求める決議

カテゴリー:決議

 当会は、国に対し、えん罪被害者の迅速な救済のため、再審に関する諸規定(刑事訴訟法第4編)の改正を速やかに行うよう求めるとともに、改正にあたっては少なくとも以下の事項を盛り込むよう強く求める。
1 再審請求手続における手続規定の整備
2 再審請求手続における証拠開示の制度化
3 再審開始決定に対する検察官の不服申立ての禁止

2023年(令和5年)9月13日

福岡県弁護士会 

決議の理由
第1 はじめに
 えん罪、すなわち誤った有罪判決によって人を処罰することが、国家による最大の人権侵害の一つであることは論を俟たない。刑事裁判も人が行う営みの一つである以上、誤判の危険性は常にある。このような誤判によって有罪の確定判決を受けた者(えん罪被害者)を救済する最終、そして唯一の手段が再審制度なのである。
 それにもかかわらず、日本においては、再審請求審が長期にわたることが多いことに加え、そもそも、再審開始決定が出されること自体が極めて稀なこととなっている。
 その原因は複数考えられるが、大きな原因となっているのが、再審請求手続における手続規定の不備、証拠開示制度の未整備、そして、再審開始決定に対する検察官不服申立てが認められている点である。
第2 再審請求手続における手続規定について
 現行刑事訴訟法上、再審に関する規定(第4編再審)は僅かしか存在しない。
 特に、再審請求審に関しては、刑事訴訟法445条及び刑事訴訟規則286条しか存在しないため、証拠開示、三者協議の実施及び新規証拠の明白性を判断するための事実の取調べ等の具体的な審理のあり方については、裁判所の広範な裁量に委ねられており、手続のあらゆる面で統一的な運用がなされていない。
 そのことが、裁判所によって、手続自体そのものの進め方や、証拠開示に対する対応に甚だしい相違が生じるなど、いわゆる「再審格差」といわれる事態を招いている。
 再審請求手続における再審請求人の手続保障を図るとともに、裁判所の公正かつ適正な判断を担保するためには、後述する証拠開示の制度化に加え、進行協議期日(再審請求手続期日)開催の義務化、事実取調べ請求権の保障等をはじめとする、明確で充実した手続規定を早急に整備することが必要不可欠である。
第3 再審請求手続における証拠開示の制度化について
 通常審においては、2004年改正刑事訴訟法において公判前整理手続及び期日間整理手続に付された事件での類型証拠開示や主張関連証拠開示の制度が新設され、2016年改正刑事訴訟法において証拠の一覧表の交付制度が新設されるなどしており、決して十分とは言えないものの、証拠開示制度は着実に前進している状況がみられる。
 これに対し、現行の刑事訴訟法第4編の再審に関する規定には、証拠開示に関する規定は何ら設けられていない。そのため、再審請求手続において、弁護人の証拠開示請求に応じた証拠開示がなされるか否かは、裁判所の裁量に基づく個別の訴訟指揮及び検察官の対応に委ねられている。しかし、えん罪被害者が救済される唯一の制度である再審請求手続において、裁判所の証拠開示の判断、あるいは検察官の対応によって結論が変わるなどということは、絶対にあってはならないことである。
 この点、布川事件、袴田事件及び大崎事件等多くの再審請求審において、捜査機関の手元にある重要な証拠が開示され、それらが突破口となって再審の扉を開いたものも少なくない。
 また、証拠開示が実現した事件であっても、開示までに不当に長い年月を要したもの、捜査機関が長きにわたり証拠を隠蔽していたと疑われるものなど、迅速かつ適切に証拠開示が行われていたわけではない。
 当会においても、現在、再審請求手続が行われているいわゆる「マルヨ無線事件」において、裁判所からの証拠開示勧告に対し、検察官が「不存在」と回答した証拠が、後になって開示されるといったことがあり、全国的にも大きく報道された。また、いわゆる「飯塚事件」においては、裁判所が、検察官に対し、証拠品のリストを開示するよう勧告したにもかかわらず、検察官が勧告に応じないという事態が生じているとの報告もある。この両事件での問題は、再審請求手続における証拠開示制度の不備に起因する点で共通している。
 このように、適時適切な証拠開示がなされないことが再審請求手続の長期化の一因となっており、ひいては、えん罪被害者の迅速な救済を阻害しているのであるから、充実した証拠開示制度の創設は急務である。
 さらに、2016年改正刑事訴訟法においては法制化には至らなかったものの、附則9条3項では、政府は改正法公布後、必要に応じて速やかに再審請求手続における証拠の開示について検討するものと規定された。しかし、未だに再審請求手続における証拠開示の制度化は実現していないばかりか、新たな証拠が発見された例なども生じ、証拠開示の重要性、必要性が強く認識されたにもかかわらず、検討の緒にすらついていない。
第4 再審開始決定に対する検察官の不服申立ての禁止について
 これまで多くの再審事件において、検察官が、再審開始決定に対して不服申立てを行い、再審開始決定の確定まで長期間を要する事態がみられ、再審請求審が長期化し、えん罪救済が遅れる大きな原因となっている。
 そもそも、再審制度が利益再審のみしか認めていないことに鑑みれば、再審請求手続における検察官の役割は「公益の代表者」として裁判所が行う審理に協力する立場に過ぎず、一度、再審開始の判断が出されたにもかかわらず、検察官に再審開始決定に対する不服申立権を認める理由はないはずである。
 また、再審開始の判断が出された以上、有罪か無罪かの判断は再審公判において行われるべきであり、検察官が改めて有罪の主張を行うのであれば、再審公判においてその旨主張すれば足りる。すなわち、検察官の再審開始決定に対する不服申立てを禁止したとしても、何らの不都合は生じない。
 したがって、えん罪被害者の迅速な救済のためには、法改正によって、再審開始決定に対する検察官の不服申立てが禁止されなければならない。
第5 結語
 以上のとおりであるから、当会は、えん罪被害者の迅速な救済を可能とするため、国に対し、①再審請求手続における手続規定の整備、②再審請求手続における証拠開示の制度化、③再審開始決定に対する検察官による不服申立ての禁止を中心とする再審法の改正を速やかに行うよう求める。

以上

入管法改正法の成立に強く抗議し、国際的な人権基準を満たす 入管行政・難民保護法制の構築を求める会長声明

カテゴリー:声明

2023年6月9日、出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」という)等の一部を改正する法律(以下「改正法」という)が参議院本会議で採決され成立した。当会は、同年3月2日付「入管法改正案の再提出に強く反対し、国際的な人権水準に沿った真の入管法改正を求める会長声明」において改正法の問題点を指摘したところであるが、改めて改正法の成立に対して強く抗議する。
 自由権規約の第7回日本政府報告書審査において出された勧告(2022年11月)では、①国際基準に則った包括的な難民保護法制を早急に採用すること、 ②十分な医療支援へのアクセスを含む収容施設での処遇を改善すること、 ③仮放免者に対して必要な支援を提供し、収入を得るための活動に従事する機会の確立を検討すること、④ノン・ルフールマン原則が実際に尊重され、国際的保護を申請する全ての人々に、(その申請への)否定的な決定について、執行停止効を有する、独立した司法機関に対する不服申立制度へのアクセスを確保すること、 ⑤行政機関による収容措置に対する代替措置を提供し、入管収容における上限期間を導入するための措置を講じ、収容が、必要最小限度の期間のみ、かつ行政機関による収容措置に対して存在する代替措置が十分に検討された場合にのみ、最後の手段として用いられるよう確保することなどが指摘されており、入管法に改正が必要であったことは間違いない。
 ところが、今回の改正法ではこれらの勧告を導入する改正は一切行われなかった。①の勧告のいう国際基準に則った包括的難民保護法制として必要な、入管から独立した難民審査機関の設置への方向性は示されず、②の医療制度について何ら改善策は導入されず、③についての手当もなされず、④については、むしろ、送還停止効に例外規定を設け、3回目以降の難民申請中に申請者を送還できるようにした結果、ノン・ルフールマン原則をさらに侵害する危険性を高め、⑤の求める収容期間の上限は設けられず、いまだに無期限の収容が可能な状態である。このように、今回の改正法は、国際人権水準からさらに後退する内容となった。
 実際、国連人権理事会の移民の権利に関する特別報告者などが本年4月18日に改正法案について提出した共同書簡でも、改正法案が国際的な人権基準を下回っている」と切り捨て、「国際人権法の下での義務に沿うために、徹底した内容の見直しを」と強い口調で求めていたところである。
 このように、今回の改正法の内容には問題が多いが、2023年6月8日の参議院の附帯決議が、改正法案の審議の中で顕在化した問題点を踏まえて、「難民該当性判断の手引」のみならず事実認定の手法も含めた包括的な研修の実施や同手引を定期的に見直し・更新すること、難民審査請求における口頭意見陳述の適正な活用や難民認定に関連する知識等を十分に考慮した上で難民審査参与員を任命すること、送還停止効の例外規定について入管法53条3項のノン・ルフールマン原則に違反する送還を行うことがないようにしその適用状況についてこの法律の施行後5年以内を目途として必要な見直しを検討しその結果に基づき必要な措置を講ずることなどを求めている点は必ず実現されなければならない。
 当会は、入管法が国際的な人権基準を満たしたものとなるよう、引き続き、その 抜本的な改革を求めるとともに、問題点の多い改正法のもとで、本来難民として認定されるべき者が迫害を受けるおそれのある国へ送還されたりすることのないよう、 外国人の人権保障に向けた取組に全力を尽くす所存である。

2023(令和5)年8月2日

福岡県弁護士会

会長 大 神 昌 憲

福岡県弁護士会 〒810-0044 福岡市中央区六本松4丁目2番5号 TEL:092-741-6416

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