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監視社会を招かないためのルール確立を求める宣言

カテゴリー:宣言

1 今、全国各地で、治安悪化対策を理由に生活安全条例が制定され、監視カメラの設置がすすめられている。
しかし、犯罪防止は、貧困や差別など犯罪の根本原因を取り除くための福祉施策の充実も含め、総合的な防止策を多角的に検討すべきであり、市民に対する監視の強化が有効な手段であるかは甚だ疑問である。
かえって、警察等による市民監視や不透明な個人情報の収集・利用は、個人のプライバシー権を侵害するばかりか、民主主義社会を支える言論・表現の自由に対する重大な萎縮効果をもたらす危険がある。
そもそも、犯罪検挙のための警察権の行使であれば、対象者の人権を制約するものであるから、犯罪の発生を待って、具体的犯罪の嫌疑に比例した限度でしか許されないというのが原則であり、基本的人権を制圧する捜査手段は、法令の根拠を必要とし、令状がなければ原則として行えないというのが憲法以下の法令の考え方である。
犯罪防止のための監視が一定の場合に許されるとしても、具体的にその場所で起こり得る犯罪の軽重や蓋然性を度外視し、抽象的な「安全」や、単なる主観にすぎない「安心感」のために人権を制約することまで許されているのではない。
従って、警察や自治体は、防犯対策を図るうえで、必要最小限度を超えて個人の自由を侵害することのないよう万全を期すべき義務があり、警察や行政機関が、適正な手続に基づかず個人情報の収集・利用をしないための措置をとる必要がある。
2 福岡市の場合、本年度中に中洲地区に設置されようとしている監視カメラの設置・運用は極めて不透明である。
  監視カメラの設置を承認した中洲地区安全安心まちづくり協議会には、博多警察署長が副会長、県警の担当者3名が会員として参加し、福岡市は、同協議会の事務局を務め、自ら600万円を支出する予定であるのに、福岡県弁護士会人権擁護委員会の聴き取りに対しては「中洲地区における犯罪率等のデータは持っていない。監視カメラの詳細は設置主体である商店街に聞いてほしい。」等と回答しており、公金を支出する自治体としての説明責任を果たしていない。
 また、福岡市の上川端商店街(調査当時)に設置された監視カメラにおいては、警察が要請して頻繁に監視カメラのビデオ画像を取得していたという経過がある。
  警察自身による監視カメラの設置の場合は、京都府学連事件判決(最判昭44.12.24)、山谷ビデオカメラ判決(東京高判昭63.4.1)、西成ビデオカメラ判決(大阪地判平6.4.27)など、令状主義を重視する判決があり、これらの判決によれば、?犯罪の現在性または犯罪発生の相当高度の蓋然性、?証拠保全の必要性・緊急性、?手段の相当性がある場合を除いて、警察が自ら公道に監視カメラを設置することは認められない。
警察自身の設置ではない場合でも、市民の自由が確保されるべき公道に設置する監視カメラは、真にその場所における犯罪を防止する必要性が認められ、かつこれにより侵害される通行人の人権よりも上回る利益が得られる場合に限られるべきである。
 従って、そのような監視カメラの設置に関する基準をはじめ、捜査機関に自由に情報が提供されないよう、適正な手続きを定めてプライバシー権を保障する条例の制定が必要不可欠である。
3 以上の観点から、当会は、警察や自治体等に対し、防犯対策等の策定にあたり、以下の事項に留意するよう提言する。
(1) 防犯対策等の策定にあたっては、制圧される人権の侵害を必要最小限度にするため万全の対策を行うべきである。
(2) 警察や自治体が、直接・間接に市民情報を網羅的に取得したり、取得した情報を統合するなどして、市民生活を監視することを防止するため、条例により、警察や自治体から独立した個人情報保護機関を設置し、同機関に警察や自治体の個人情報の収集・利用のあり方をチェックする権限を付与すべきである。
(3) 公道への監視カメラの設置・運用には、警察が関与すべきではない。
  警察が、監視カメラを設置している団体に対して任意に情報提供を求めうる範囲は、少なくともそこで起こった犯罪に限定し、その他の場所で起こった犯罪のための情報は、令状に基づいて取得されるべきである。
(4) 福岡市は、監視カメラの設置・運用等に関し、適正手続やプライバシー権に十分配慮した条例を定めることなく、街頭への防犯カメラの設置・運用を自ら行ったり公金を支出すべきではない。
  以上、宣言する。
   2007年7月21日
    福岡県弁護士会
   九州弁護士会連合会

刑事弁護における弁護人の責務についての理解と弁護活動の自由の確保を求める声明

カテゴリー:声明

広島高等裁判所に係属中の殺人事件(いわゆる「光市母子殺害事件」)に関して、先日、日本弁護士連合会宛に「元少年(被告人)を死刑に出来ぬなら、元少年を助けようとする弁護士たちを処刑する」などと記載された脅迫文書が届き、さらに同様の脅迫文書が新聞各社にも届いたとのことである。
 憲法第37条3項は「刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる」とし、国連の「弁護士の役割に関する基本原則」(以下「基本原則」という)も、「すべて人は、自己の権利を保護、確立し、刑事手続きのあらゆる段階で自己を防御するために、自ら選任した弁護士の援助を受ける権利を有する」(第1条)と定めている。このような被告人の権利は、刑事裁判において被告人に十分に防御の機会を与えることによって被告人に対し適正な裁判を受ける権利を保障するものであって、歴史的に確立されてきた大原則である。
 弁護人は、被告人のこのような権利を守るために最大限の努力をする責務を負っている。
 ところが、今回の日本弁護士連合会や弁護人に対する脅迫行為は、被告人が弁護人の援助を受ける権利を否定し憲法の保障する適正手続きを根幹から揺るがす行為である。
 基本原則16条も「政府は、弁護士が脅迫、妨害、困惑あるいは不当な干渉を受けることなく、その専門的職務をすべて果たし得ること、自国内及び国外において、自由に移動し、依頼者と相談し得ること、確立された職務上の義務、基準、倫理に則った行為について、弁護士が、起訴、あるいは行政的、経済的その他の制裁を受けたり、そのような脅威にさらされないことを保障するものとする」と定めている。
 当会は、今回の脅迫行為に強く抗議する。
 さらに、当会は、こうした弁護士や弁護活動への妨害や脅迫行為が、被告人の弁護人の援助を受ける権利を否定し適正手続きを保障した憲法の理念に反するという認識を広く市民と共有できるよう最大の努力をするとともに、刑事弁護における弁護人の責務について理解を求め弁護活動の自由を確保するために、全力を尽くす決意である。
2007年(平成19年)7月18日
              福岡県弁護士会
              会  長  福  島  康  夫

生活保護の適正な運用を求める声明

カテゴリー:声明

 本年7月10日、北九州市小倉北区で52歳の男性が自宅で死後1ヶ月経った状態で発見された。新聞報道によれば、この男性は、昨年12月26日から生活保護を受給していたものの、本人から「辞退届」が出されたということで本年4月10日に保護廃止となったとのことであり、2ヶ月後には孤独死したことになる。
 当会では、昨年、日本弁護士連合会において採択された「貧困の連鎖を断ち切り、すべての人の尊厳に値する生存を実現することを求める決議」を受けて、生活保護をめぐる相談・援助体制を構築するためのプロジェクトチームを発足させるなど、生活保護の運用が適法・適正に行われるよう求める活動に取り組んでいるところである。
 ところが、北九州市では、生活保護申請が認められなかった人が孤独死する事件が相次ぎ、本年5月に生活保護行政検証委員会(第三者機関)が設置され、検証・審議が進められているのであるが、今回またしても救済できたはずの人命を孤独死に至らしめたことは極めて遺憾である。また、新聞報道によれば、北九州市に限らず、「辞退届」を提出させ、保護を打ち切るという運用が全国的に蔓延していることも指摘されているが、生活保護法上、廃止を行いうる場面は限定されていることからして、非常に問題のある運用と言わざるを得ない。
 生活保護はあらゆる社会保障制度の中でも最後の砦ともいうべき制度であり、対象者の生命にかかわる問題であるから、一度は要保護性が認められた者の保護を廃止するにあたっては、特に慎重な調査が要求されることは言うまでもない。
 すなわち、たとえ「辞退届」なる書面が提出されたとしても、それが任意かつ真しな意思に基づくものでなければ、生活保護を廃止する理由とはなり得ない。広島高裁(2006(平成18)年9月27日判決)も、要保護状態が解消したのか否かについて必要な調査を行わないまま自立の目途があるとして提出させた辞退届は錯誤によるもので無効であるとした上で、廃止は保護受給権を侵害するとして東広島市の不法行為責任を認めている。
 新聞報道によれば、男性は「働けないのに働けと言われた」等と日記に記していたとのことであり、「辞退届」が真意に基づくものでなかった可能性が強く、小倉北福祉事務所が、男性に自立するための仕事や収入源があるか否かについて慎重な調査確認を行ったとは考えられない。
 報道が事実であるとすれば、このような運用は、人の生きる権利を奪うものであって、生存権を保障する憲法25条に照らしても、絶対に容認できるものではない。
 当会は、北九州市に対し、再びこのような事件が起きることのないよう、早急に徹底的な真相解明を行うよう求めるとともに、生活保護制度の適法・適正な運用のための具体的な改善策を直ちに講じることを強く求めるものである。
2007(平成19)年7月18日
                 福岡県弁護士会
                   会 長   福  島  康  夫

犯罪被害者刑事手続参加制度に関する法律成立に抗議する声明

カテゴリー:声明

2007年(平成19年)6月21日
                  
福岡県弁護士会 会長 福島康夫
 昨日、国会において「犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事訴訟法等の一部を改正する法律」が成立した。この法律は、裁判員裁判対象事件や業務上過失致死傷等の事件について、裁判所に参加を申し出た被害者やその遺族に対し、公判への出席、情状に関する事項についての証人に対する尋問、被告人質問、証拠調べ終了後の求刑を含む弁論としての意見陳述を認める制度であるが、当会は、本年3月8日及び同6月6日の二度にわたって、この創設に反対する会長声明を発した。
 にもかかわらず、同法が成立したことは誠に遺憾であり、強く抗議の意を表明する。
 同法に定められた犯罪被害者参加制度には、
 (1)真実の発見に支障をきたす
 (2)法廷を報復の場にしてしまうのみならず無罪推定の大原則を根本的にゆるがし近代刑事司法の基本構造を根底からくつがえす
 (3)被告人の防御権の行使を困難にする
 (4)少年の刑事事件ではさらに深刻な萎縮効果を及ぼし適正手続きに反する事態を生じる
 (5)事実認定に悪影響を及ぼし裁判員制度が円滑に機能しなくなるおそれもある
などの重大な問題があり、この制度は、我国の刑事裁判に対し、看過し得ない重大な悪影響を及ぼすものである。
 当会は、今後、政府及び国会におかれて、以上のような同法の重大な問題点を徹底的に究明され、裁判員裁判が実施される前に同法の抜本的な改正がなされることを強く求めるものである。

クレジットシンポジウム・アピール

カテゴリー:アピール

〜消費者が保護される安全なクレジット社会を目指して〜
一昨年,埼玉県富士見市で,認知症の高齢者姉妹に必要のないリフォーム工事を次々と契約させ,多額のクレジット債務を負わせた事件が発生し,マスコミでも大きく取り上げられた。また,九州においても,年金生活者などに高額の呉服や布団などを次々と購入させ,支払能力を無視したクレジット債務を負わせるという事件が多発している。
 さらに,福岡で発生した「たく美屋」事件などに見られるような空売り大量名義貸し事件も,相変わらず各地で発生している。
 最近では,暴力団が運営していた絵画レンタル詐欺商法にクレジット会社が与信していたという事件まで発生するに至った。
経済産業省(旧通産省)は,このようなクレジット被害を防止するため,クレジット会社に対して,加盟店管理を徹底するよう求める通達・指導を再三出してきたが,前述のようにクレジット被害は依然多発しており,その効果が上がっていないのが現状である。
このような悪質商法にクレジット会社が与信することで,クレジット会社が悪質商法を助長しているとみられるような事件が後を絶たない。その主な原因は,現行制度上,クレジット会社には悪質商法を行う販売店への与信を打ち切る積極的な動機が働かないことにある。すなわち,割賦販売法30条の4は,未払金債務については支払い拒絶の抗弁を認めるが,既払金については返還義務を課していないため,クレジット会社は販売店の悪質商法を察知しても,加盟店契約を維持したまま立替金の回収を続けることで損失を回避できる。したがって,与信を減らしはしても加盟店契約を直ちに打ち切ることをしないため,その後も消費者が被害に遭うのである。
 このような不適正な与信によるクレジット被害を防止するためには,クレジット会社に既払金返還を義務付け,「悪質商法への与信は損失を伴う」という効果を与えることにより与信の打ち切りを促す制度が必要である。
 過剰与信の防止においても,信用調査を徹底することを義務付け,過剰与信防止義務の違反には行政罰にとどまらず一定の請求権制限となる民事ルールを設けるなど,実効性を持つ制度が必要である。
 このような法整備をすることによって,消費者が安心して利用できるクレジット制度を構築し,クレジット社会の健全な発展を図ることができるものと確信する。
これらを踏まえ,私たちは,次のとおり決議する。
1.クレジット被害の根絶・消費者が保護される安全なクレジット社会の構築に向けて,一致団結して努力していく。
2.その方策として,国に対し,クレジット会社と販売店の共同責任(既払金返還を含む)規定を新設することを求める。
3.また,国に対し,過剰与信を禁止し,これに違反した場合には,クレジット会社の請求権の一部ないし全部を制限する民事的効果を定めた規定を設けることを求める。
平成19年6月9日
九州弁護士会連合会
 福岡県弁護士会
  クレジットシンポジウム参加者一同

福岡県弁護士会 〒810-0044 福岡市中央区六本松4丁目2番5号 TEL:092-741-6416

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