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生活保護の適正な運用を求める声明

カテゴリー:声明

 本年7月10日、北九州市小倉北区で52歳の男性が自宅で死後1ヶ月経った状態で発見された。新聞報道によれば、この男性は、昨年12月26日から生活保護を受給していたものの、本人から「辞退届」が出されたということで本年4月10日に保護廃止となったとのことであり、2ヶ月後には孤独死したことになる。
 当会では、昨年、日本弁護士連合会において採択された「貧困の連鎖を断ち切り、すべての人の尊厳に値する生存を実現することを求める決議」を受けて、生活保護をめぐる相談・援助体制を構築するためのプロジェクトチームを発足させるなど、生活保護の運用が適法・適正に行われるよう求める活動に取り組んでいるところである。
 ところが、北九州市では、生活保護申請が認められなかった人が孤独死する事件が相次ぎ、本年5月に生活保護行政検証委員会(第三者機関)が設置され、検証・審議が進められているのであるが、今回またしても救済できたはずの人命を孤独死に至らしめたことは極めて遺憾である。また、新聞報道によれば、北九州市に限らず、「辞退届」を提出させ、保護を打ち切るという運用が全国的に蔓延していることも指摘されているが、生活保護法上、廃止を行いうる場面は限定されていることからして、非常に問題のある運用と言わざるを得ない。
 生活保護はあらゆる社会保障制度の中でも最後の砦ともいうべき制度であり、対象者の生命にかかわる問題であるから、一度は要保護性が認められた者の保護を廃止するにあたっては、特に慎重な調査が要求されることは言うまでもない。
 すなわち、たとえ「辞退届」なる書面が提出されたとしても、それが任意かつ真しな意思に基づくものでなければ、生活保護を廃止する理由とはなり得ない。広島高裁(2006(平成18)年9月27日判決)も、要保護状態が解消したのか否かについて必要な調査を行わないまま自立の目途があるとして提出させた辞退届は錯誤によるもので無効であるとした上で、廃止は保護受給権を侵害するとして東広島市の不法行為責任を認めている。
 新聞報道によれば、男性は「働けないのに働けと言われた」等と日記に記していたとのことであり、「辞退届」が真意に基づくものでなかった可能性が強く、小倉北福祉事務所が、男性に自立するための仕事や収入源があるか否かについて慎重な調査確認を行ったとは考えられない。
 報道が事実であるとすれば、このような運用は、人の生きる権利を奪うものであって、生存権を保障する憲法25条に照らしても、絶対に容認できるものではない。
 当会は、北九州市に対し、再びこのような事件が起きることのないよう、早急に徹底的な真相解明を行うよう求めるとともに、生活保護制度の適法・適正な運用のための具体的な改善策を直ちに講じることを強く求めるものである。
2007(平成19)年7月18日
                 福岡県弁護士会
                   会 長   福  島  康  夫

犯罪被害者刑事手続参加制度に関する法律成立に抗議する声明

カテゴリー:声明

2007年(平成19年)6月21日
                  
福岡県弁護士会 会長 福島康夫
 昨日、国会において「犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事訴訟法等の一部を改正する法律」が成立した。この法律は、裁判員裁判対象事件や業務上過失致死傷等の事件について、裁判所に参加を申し出た被害者やその遺族に対し、公判への出席、情状に関する事項についての証人に対する尋問、被告人質問、証拠調べ終了後の求刑を含む弁論としての意見陳述を認める制度であるが、当会は、本年3月8日及び同6月6日の二度にわたって、この創設に反対する会長声明を発した。
 にもかかわらず、同法が成立したことは誠に遺憾であり、強く抗議の意を表明する。
 同法に定められた犯罪被害者参加制度には、
 (1)真実の発見に支障をきたす
 (2)法廷を報復の場にしてしまうのみならず無罪推定の大原則を根本的にゆるがし近代刑事司法の基本構造を根底からくつがえす
 (3)被告人の防御権の行使を困難にする
 (4)少年の刑事事件ではさらに深刻な萎縮効果を及ぼし適正手続きに反する事態を生じる
 (5)事実認定に悪影響を及ぼし裁判員制度が円滑に機能しなくなるおそれもある
などの重大な問題があり、この制度は、我国の刑事裁判に対し、看過し得ない重大な悪影響を及ぼすものである。
 当会は、今後、政府及び国会におかれて、以上のような同法の重大な問題点を徹底的に究明され、裁判員裁判が実施される前に同法の抜本的な改正がなされることを強く求めるものである。

クレジットシンポジウム・アピール

カテゴリー:アピール

〜消費者が保護される安全なクレジット社会を目指して〜
一昨年,埼玉県富士見市で,認知症の高齢者姉妹に必要のないリフォーム工事を次々と契約させ,多額のクレジット債務を負わせた事件が発生し,マスコミでも大きく取り上げられた。また,九州においても,年金生活者などに高額の呉服や布団などを次々と購入させ,支払能力を無視したクレジット債務を負わせるという事件が多発している。
 さらに,福岡で発生した「たく美屋」事件などに見られるような空売り大量名義貸し事件も,相変わらず各地で発生している。
 最近では,暴力団が運営していた絵画レンタル詐欺商法にクレジット会社が与信していたという事件まで発生するに至った。
経済産業省(旧通産省)は,このようなクレジット被害を防止するため,クレジット会社に対して,加盟店管理を徹底するよう求める通達・指導を再三出してきたが,前述のようにクレジット被害は依然多発しており,その効果が上がっていないのが現状である。
このような悪質商法にクレジット会社が与信することで,クレジット会社が悪質商法を助長しているとみられるような事件が後を絶たない。その主な原因は,現行制度上,クレジット会社には悪質商法を行う販売店への与信を打ち切る積極的な動機が働かないことにある。すなわち,割賦販売法30条の4は,未払金債務については支払い拒絶の抗弁を認めるが,既払金については返還義務を課していないため,クレジット会社は販売店の悪質商法を察知しても,加盟店契約を維持したまま立替金の回収を続けることで損失を回避できる。したがって,与信を減らしはしても加盟店契約を直ちに打ち切ることをしないため,その後も消費者が被害に遭うのである。
 このような不適正な与信によるクレジット被害を防止するためには,クレジット会社に既払金返還を義務付け,「悪質商法への与信は損失を伴う」という効果を与えることにより与信の打ち切りを促す制度が必要である。
 過剰与信の防止においても,信用調査を徹底することを義務付け,過剰与信防止義務の違反には行政罰にとどまらず一定の請求権制限となる民事ルールを設けるなど,実効性を持つ制度が必要である。
 このような法整備をすることによって,消費者が安心して利用できるクレジット制度を構築し,クレジット社会の健全な発展を図ることができるものと確信する。
これらを踏まえ,私たちは,次のとおり決議する。
1.クレジット被害の根絶・消費者が保護される安全なクレジット社会の構築に向けて,一致団結して努力していく。
2.その方策として,国に対し,クレジット会社と販売店の共同責任(既払金返還を含む)規定を新設することを求める。
3.また,国に対し,過剰与信を禁止し,これに違反した場合には,クレジット会社の請求権の一部ないし全部を制限する民事的効果を定めた規定を設けることを求める。
平成19年6月9日
九州弁護士会連合会
 福岡県弁護士会
  クレジットシンポジウム参加者一同

多重債務者救済体制整備に関する決議

カテゴリー:決議

 2006(平成18)年の改正により,貸金業法や出資法の上限金利を利息制限法の制限利息とするなど高金利問題は将来に向けては解決に向けて前進した。しかしながら,この改正によって将来貸金業者を利用する債務者は保護されることになるが,現在の多重債務者は救済されず、その支援が急務である。
 政府が設置した多重債務者対策本部作成による「多重債務問題の解決に向けた方策について(有識者会議による意見とりまとめ)」では,現在200万人を超えるともいわれている多重債務者の中で相談窓口やカウンセリングなどにアクセスできているのは2割程度に過ぎないとして,相談窓口の整備・強化の必要性が指摘されている
 当会は4月1日から福岡,飯塚地区において法律相談センターにおける多重債務者無料相談を実施し,さらに6月1日からは全県をあげて多重債務者無料相談を実施することにしている。
 当会が社会問題化した多重債務問題について市民の期待に応えるためには,相談窓口の設置にとどまることなく,多重債務問題を解決するための体制をさらに整備・強化し,会をあげて取り組む必要がある。また,多重債務問題の解決のために, 国や地方自治体その他関係団体と連携していく必要がある。
当会は,すべての多重債務者が平穏に生活できるようにするために,相談センターの無料相談をはじめとして体制を整備・強化し,多重債務問題の解決に向けて全力を傾注することを誓うとともに,国や地方自治体その他関係団体が当会と連携をして多重債務者救済及び発生防止のための諸施策を至急実施することを求める。
 以上決議する。
       2007(平成19)年5月23日
       福岡県弁護士会

被疑者国選弁護制度の対応態勢確立に向けての宣言

カテゴリー:宣言

  
1 昨年10月から被疑者国選弁護制度が始まった。
当会は1990(平成2)年12月全国に先駆けて当番弁護士制度(待機制)を創設し,その後,当番弁護士制度は燎原の火の如く全国に広がった。被疑者国選弁護制度の法制化は,当番弁護士制度(待機制)を創設した私達の悲願であり,長年にわたる運動の成果が実ったものである。当番弁護士の運動は地方から発した司法改革運動であると評価できる。
2 そして,2009(平成21)年には被疑者国選弁護制度の対象事件は必要的弁護事件にまで拡大されて第2段階を迎え,全国的には現在の10倍以上の10万件近くに達することになる。当会においても来るべき2009(平成21)年には被疑者国選弁護事件の対象事件は4000件を超えることが確実視されており,2009(平成21)年に向けての国選弁護の対応態勢作りが急務である。
弁護士の役割に関する原則[1990(平成2)年国連第45回総会決議]は「すべての人は自己の権利を保護,確立し,刑事手続のあらゆる段階で自己を防禦するために,自ら選任した弁護士の援助を受ける権利を有する」としており,被疑者,被告人の弁護人の援助を受ける権利を担保することは弁護士の責務である。
被疑者国選弁護制度の対応態勢を確立し,充実した制度にすることは我々弁護士の責務の履行であることを銘記する必要がある。
3 昨年9月に福岡で開催された第9回国選弁護シンポジウムにおいても,2009(平成21)年に向け,対応態勢の整備に精力的に取り組み,刑事弁護の現場での実践的で全国的な運動を展開していかなければならないことが確認された。
4 当会はあらためて,被疑者国選弁護制度の重要性を確認し,2009(平成21)年の被疑者国選弁護制度の第2段階の実施に向けて,全力を傾注して対応態勢を確立し,充実した刑事弁護を提供できるよう,あらゆる努力をすることを誓うものである。
以上宣言する。
2007(平成19)年5月23日
               福 岡 県 弁 護 士 会

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