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会長日記

カテゴリー:会長日記

平成23年度福岡県弁護士会 会 長 吉 村 敏 幸(27期)
1.1か月毎に会長日記の原稿の催促が来ます。
会長日記だから多少の私事は許されるものと思って冒頭記述しますが、さりとて、当然ながら中心は会務報告となります。
ということで、改めて私事です。
東京からの帰りの読み物は、思想・評論的なものよりも、軽い物語が多くなります。
当会のホームページには「弁護士会の読書」コーナーが開設され「霧山昴」氏の多彩な読書感想文がほとんど毎日のように更新されています。驚くべき速読です。
私は遅読派です。どんな本が好きかと思い返してみると、ファンタジー系でした。最近ではやはりハリー・ポッターシリーズ。上橋奈緒子の「守り人」シリーズ、「獣の奏者」。早逝した景山民夫が20年ほど前に出した「遠い海から来たcoo」も好きな小説でした。ですから、映画も「スターウォーズ」シリーズが最高でした。ファンタジーは子どものころの夢がふくらんで来るような気がします。
2.1)弁護士・弁護士会の夢と希望−新会館に託して
新会館用地取得の臨時総会で、新しい弁護士会館は会員に対してどのような夢を与えてくれますか、との質問が提起されました。夢と希望は抱き続けなければ将来への期待はあり得ません。私は会員だけではなく色々な人々が集う求心力としての広場(フォーラム)、交流空間が新会館に具わると期待しています。
今日のように文化が成熟し、価値観が多様化すると、多くの人が多様な意見をもち、個人主義的傾向が強くなります。しかし、同時に人間として現実社会において寄り添い、集合を求める面も多く期待されます。それを実現する場所が必要です。臨時総会の意見の中には、極論すると、会館のような建物はいらない、インターネット上の会議で充分こなせる、との趣旨の発言もありました。確かに、インターネットによって創造された社会が既に仮想社会という表現を超越するものであることはジャスミン革命の成功によって証明されましたが、ジャスミン革命の成功の可否は、最後は人々が現実に集合し得たか否かにかかっていたと思われます。やはり、現実の社会において何かしらを実現するためには、多様な人々を糾合し、力を溜める場所が大事だと思います。
2)弁護士会の執行部に入り、当会や日弁連の活動を知ると、その活動の多彩さと一般市民から寄せられる期待の大きさと拡がりを知ります。新会館は一般市民のたくさんのNPO活動の情報を集約し、かつ、これを充実拡大させる中心基地としての機能を持たせることも可能とすることが考えられます。私たちが人権に関する交流の空間を創造することも可能となります。福岡県弁護士会にはそれを成し遂げるだけの魅力ある人材が揃っています。
3)私たち弁護士と弁護士会は過去、無人の荒野に残されていた多くの障害を人権・公害環境課題として取り組み、克服してき、またこれらを自らの業務分野として取り組んできました。かつては弁護士の独自の業務分野と認めるには希薄であった数々の依頼事件が、今や弁護士業務として定着しつつあります。多くの消費者事件、中小企業の事業承継、個人の債務整理事件、高齢者等の後見介護事件、家族を巡る様々な事件なども、増加と減少を繰り返しながらも、固有の弁護士業務との認識が定着しつつあります。これからは、海外取引をめぐるコンサル業務、知財、行政にかかる事件、都市問題、個別労働事件、税務・法人設立等も、新規開拓やこれからの需要が見込まれる分野と期待されます。なお、法的需要に関しては、弁護士会という信用力を背景としてアクセスルート(依頼者が弁護士へ辿り着く道筋)を策定し、広報していくことによって産みだされる事柄も多いと考えられますので、これから具体的に協議のうえ、その方策を探っていきたいと思います。前記例示の中には、既にPTとして活動している企画もあり、当会会員の頑張りに期待しています。
4)この月報が出るころには、新会館用地取得の問題については一応の結論が出ていることを期待しています。六本松の旧九大教養部跡地は南側エリアが裁判所、弁護士会、検察(法務)の法曹三者の司法(法曹)ゾーンとして予定されているところです。この弁護士会のエリアは、今購入しなければ、今後の購入や買い増し等は不可能な場所と言われています。私は、六本松は今後劇的に変わるエリアだと思っています。これまでのURとの話し合いで購入可能と考えられる1,000坪を購入し、将来100年先においても、弁護士と一般市民の期待に応えられる広場(フォーラム)としての会館が可能な用地として、今取得すべきと考えています。弁護士会は国民から「基本的人権の擁護と社会正義の実現」の負託を受けて自治権を有しています。この負託に応える機能を新会館に託します。
3.弁護士不祥事
今年度執行部がスタートする直前は、北九州部会の会員が逮捕される事件が発生し、そのために多大の信用が失墜しました。私たち執行部はこれら弁護士の不祥事を未然に防ぐことを最大の課題として取り組んできました。
しかし、とうとう福岡部会のA会員について、会長自ら綱紀委員会に対する懲戒請求(調査開始の申立)せざるを得なくなりました。A会員については、早い時期から色々と接触を図り、市民窓口に対する苦情問題の把握と解決策を探ってきていただけに、大変残念な結果に終わり、慙愧に堪えません。
多くの会員の皆様方は預かり金の分別管理は厳しく励行していただいていることと思いますが、依頼者に対するこまめな報告についても励行をお願いし、依頼者の不安が生じないような努力についても、日々怠ることのないようにお願いします。
4.1年の終わりに
今年も早12月に入り、1年の締めくくりの月がやって来ました。私たち執行部は、あと3か月強の任期となりました。
これからは、今までにやり残した課題を整理して、各委員の皆様とともに実現を目指していきたいと思います。

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平成23年度 会 長
吉 村 敏 幸(27期)
1.ポカ、当会弁護士作家
宮本輝という作家がいます。私とほぼ同時代人であるために、登場する人物の個性や家庭、時代状況が懐かしく憶い出され、好きな作家のひとりです。
泥の河(太宰賞)、蛍川(芥川賞)、優駿(吉川英治賞)と、連続受賞しました。
その後、流転の海という連作物が文庫として出版され、これも文庫化されるのを待って、出版のたびに購入しますが、概ね3年間隔であるため、続刊が出るころには前作を詳しくは憶えておらず、困ります。今回、続刊が出版されたとの新聞広告を見て、高松人権擁護大会への車中の読み物として楽しみに購入しました。博多駅構内の書店には文庫の帯に「新刊」と記してありました。数頁読み進み、前作(第5巻目)のような疑いを抱き、後で確認したところ、続刊は6巻目とのこと、ポカでした。
これだから連続物はやめようと思っていたのに、と悔しい思いを抱きましたが、主人公一家の波乱万丈、清冽な生き方が面白くて、結局また買う破目になります。
小説といえば、当会会員「法坂一広」氏(ペンネーム)作の「懲戒弁護士」が宝島社の「このミステリーがすごい」の今年第1位を受賞しました。「このミス」シリーズというのは、たくさんの読者層を持っているもので、その中の1位は大変に価値あるものです。たとえば、チーム・バチスタの海堂尊も「このミス1位」からです。筑後部会の「剣持鷹士」氏(ペンネーム)も第1回創元推理短編賞を獲得されています。「あきらめのよい相談者」です。
2.タイムチャージ制
今年10月1日から刑事訴訟法廷における「公判時間等連絡メモ」が導入されました。
これは、法テラス対象の国選事件について、裁判の開始時刻、終了時刻を記述し、法テラスに報告するものです。裁判所は、弁護士とは別途、法テラスあて各時刻を報告します。
既に法テラスからお知らせ文書が届いていましたので、ご存知かと思いますが、刑事裁判の費用がタイムチャージ制になったものと理解して、できるだけ正確に記述していただきたいと思います。従来、国選事件は、金銭に関係なく、安い費用でも被告人の権利擁護に尽力すべきと考えられたものでしたが、安い費用はそのままなのに、余計な確認作業だけは増えてメンドウだ、などの愚痴が聞こえてきそうです。
3.弁護士業務とTPP、EPA
TPPとは、Trans-Pacific Partnership(環太平洋戦略的経済連携協定)です。
加盟国間の経済制度(サービス、人の移動、基準認定など)における整合性を図り、貿易関税については例外品目を認めない形の関税撤廃を目指しています。例外がないとすると、この中に弁護士業務等のサービスも入ってくることになりそうです。
10月18日の日弁理事会の冒頭、宇都宮会長報告があり、オーストラリアの関係者からEPAの申し出があり、意見を聞かれたとのことでした。EPA(経済連携協定)とは、物流のみならず、人の移動、知財の保護、投資、競争政策など、様々な協力や幅広い分野での連携と、両国または地域間での親密な関係強化を目指す条約です。具体的な申し入れの内容は、例えばオーストラリア弁護士が日本国内のホテルに90日間滞在して、同所を事業所として弁護士業務を行なうことの認可や、テンポラリーライセンスの取得を認めることなどです。
宇都宮会長の回答は当然「No」(ノー)でした。TPPを受け入れると、あらゆる障壁を撤廃することになるといわれますが、司法制度は国家の基本をなすものですので、弁護士業務がサービス業とはいえ、種々の制度が障壁として撤廃されるなどの事態に至ることは、到底了解できるものではありません。
4.刑務所の老人施設化
人権大会が高松市で開催され、第1分科会「死刑廃止について国民的議論を」の中で、刑罰をどのような視点で捉えるかが議論されました。この点は、応報なのか、更生・教育なのかが、古くから常に議論されています。
この中の浜井浩一龍谷大学教授の話をご紹介します。同氏は法務省出身、矯正施設、保護観察所勤務、法務総合研究所研究官、国連犯罪司法研究所研究員などを歴任。同氏によると「犯罪は従来、若年・壮年世代層が最も多いが、我国は少子高齢化に伴い高齢者層の犯罪者が増加している。本来は社会福祉の面からケアされれば犯罪にしないでもよい事柄が犯罪として立件され、刑務所でメンドウを見なければならなくなってくる。刑務所は福祉施設のようにノーとは言えないところであって、老人施設となっている。刑事政策は社会政策であり、社会福祉と係る事柄である」とのお話です。
これから寒い季節を迎えると、軽微犯罪を起こして刑務所を目指すお年寄りが増えてくるでしょう。地域生活定着支援センターが各地に設置されていますので、高齢者の生活支援を求めていく必要があると思います。
また、エリスキルスセン教授は、ノルウェー刑務所の解放処遇政策の成功をお話しされ、憎しみよりも融和を目指そうということを強調されていました。
5.福岡−釜山フォーラム
9月2日〜3日と2日に亘って、第6回福岡−釜山フォーラムが開催されました。
福岡県弁護士会と釜山地方弁護士会が今回から新たにメンバーとして加わり、福岡で開催されたものです。これは、日韓海峡圏の将来像を模索する、として成長戦略を語るものです。今回は、東日本大震災・原発事故が日韓に与えた影響を中心に意見交換がなされました。詳しくは、松井副会長の報告に譲ります。
6.給費制の闘いと全件国選付添の要請
給費制の闘いが昨年と同じような展開を辿っています。国会議員には、与野党ともに理解と支援をいただいていますが、お役所の抵抗が強いようです。
しかし、10月18日〜19日と2日間に亘り私たち(市丸信敏、_橋直人、吉村)は、熊本の高島会長、野口九弁連理事長らと粘り強く議員要請活動を続けています。
10月18日は当会の大谷、尾_大会員らとともに議員会館へ、少年身柄事件の全件国選付添人化の要請も行ないました。この問題についても、衆参議員から今後かなりの支援を得られるものとの感触を得ました。

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平成23年度福岡県弁護士会会長日記会 長吉 村 敏 幸(27期)
今月も月報原稿締切に遅れ、日弁理事会の後、東京のホテルで会長日記を書いています。いつの間にか、会長就任後、半年が経とうとしています。
1.原発問題日弁連では震災・原発関係の議論、決議が多く、また現実の東京行動は給費制運動に時間を多く割いています。当会の原発問題としては、弁護士・弁護士会のエネルギー問題として問題提起がなされています。弁護士・弁護士会は、人権、公害、環境等につき、かねてより先駆的活動や少数者の人権擁護活動に取り組み、時代を切り開いてきました。在野にあり、旺盛な批判的精神を発揮してきました。他方、内なる弁護士個々人の人権、環境意識についてはやや弱かった点も認めざるを得ません。皆様は、身近な環境問題について、どのように考えてこられましたか。今、新会館建設にあたって、公害・環境委員会から「脱原発を目指し、環境に配慮した新会館を作っていただきたい」との意見書があげられています。既に日弁連は脱原発へ向けた決議を出していますが、当会としても日弁連と同様に脱原発に向けた環境エネルギー政策への転換を求める以上、自らの環境意識を変えるべきであるということです。そのためには、六本松への移転、新会館建設にあたっては、再生可能エネルギー(自然エネルギー)の利用を可能な限り促進すべきであるとの立場です。九弁連大会決議案として、当初は太陽光発電の設置を求めるとの具体的内容が盛り込まれていましたが、高層の裁判所ビルが南側、法務検察ビルが東側に位置する状態で、低層の当会弁護士会館としては、太陽光発電は効率および費用負担からも現実的ではない、との批判もあり、現時点では具体的内容には入らず、今後、可能な範囲内で環境エネルギーに配慮していくとの努力目標となったものです。内なる環境意識といっても、現実に生活様式を変更することは容易ではありません。私の若いころの理想とする環境・生き方は、脱エネそのものでした。「野原ノ松ノ林ノ蔭ノ小サナ萱ブキノ小屋ニヰテ」(宮沢賢二「雨ニモ負ケズ風ニモ負ケズ」)、「煙たなびく苫屋こそ我がなつかしき住家なれ」(「われは海の子」文部省唱歌)です。しかし、このような苫屋は田舎の一人暮らしであれば可能であっても、お年寄り、子どもを含めた家族の生活は到底成り立たないのが現実です。都会暮らしの人間にとっては、精々電気をこまめに消すとか、紙を節約するとかの実践しかないのかなと思います。当会の公害・環境委員はKES(環境エネルギー)システムを事務所として取り入れているとの報告もありました。初期費用はかかるとしても、省エネルギー効果が果たせるのであれば、一考に値すると思われます。因みに私は、今年の夏もエアコンなしで就寝しました。エアコンなしの夏の夜は3年目になりました。人間の力では制御不可能な現実を実態として目の前で確認できた今回の福島第一原発事故のこの恐怖感を大事にしていきたいです。
2.新会館の規模、機能、概要について-大阪会館の教訓新会館建設問題については、現在の会費以上の負担は新たに求めないという強い決意で臨むつもりです。大阪弁護士会、広島弁護士会と当会の三会交流会が広島の会館で行なわれました。広島は既に会館を所有していますが、手狭になったために近所の角地を購入して新会館を建設予定とのことでした。大阪弁護士会は平成18年に新会館を建設しました。この時も、賛成派と反対派に分かれて激論が交わされたそうです。反対派は、新会館の規模が大きすぎることを理由としていたということでした。当会の月報6月号23頁、7月号27頁に会員アンケートの結果の記載があり「大阪弁護士会館では現状空き室が多い」との記述があります。この点について福岡から大阪の会長にお尋ねしたところ、中本会長は驚いて「新会館を作るときは、当然反対はあったけれど、今は全員喜んでくれており、さらにこの会館でさえも既に手狭になっているため(研修が年に300回ないし400回)、もう少し大きな会館を作っておくべきだったと言われているくらいです。部屋が余っているとか批判が多いなどの話は全くありませんよ」ということを強く話されました。大阪は平成18年7月に新会館建設、新会館は地下2階、地上14階建て、建築面積2,276.90・、延床面積17,005.29・、建設費約55億5,000万円ということでした。太陽光発電も設置しているとのことです。
3.給費制8月31日に政府の法曹養成フォーラムは給費制を廃して、貸与制移行を打ち出しました。しかしそれ以前の8月23日、民主党の法曹養成に関するPTは、給費制のみを先行して結論付ける点には反対であって、法曹養成に関する全体議論が終了するまでは、給費制を暫定的に存続させる方針を打ち出していました。その後、野田新内閣が発足し、財務、法務、文科の新大臣も新たに決まって、今後の行方も予断を許しません。しかし、当会は引き続き日弁連と一体となって、給費制を勝ち取るまで闘い続ける覚悟でいます。今後は、国会での戦いになります。また法曹養成問題としては、いよいよロースクール問題へと議論が及びつつあります。今後、弁護士会はつらい決断をしなければならないでしょうが、ロースクール生は既にこれまでに、もっとつらい立場におかれ続けてきたということも言えるような気がします。
4.人権プレシンポ・死刑シンポ人権大会プレシンポとして、 9月 5日 死刑シンポ 9月 10日 患者の権利シンポ 9月 17日 生存権シンポが開かれました。いずれのシンポも100名前後の一般市民や会員の参加があり、熱心な討論がなされました。私は九弁連や日弁理事会と重なったため、残念ながら死刑シンポしか出席できませんでした。死刑については、日弁連は平成14年11月に死刑執行停止の理事会決議をしていますが、今回は「死刑廃止について国民的議論を」をテーマに高松市で開催されます。死刑制度は弁護士としても思想、信条にかかわる事柄であって、容易に結論が出せる課題ではありません。諸外国でも死刑廃止決議や死刑執行を事実上停止した時代的背景としては、ほとんどすべての国で死刑賛成派が60%~80%の国民世論でした。それを時の政治家がリーダーシップによって、死刑廃止なり死刑執行停止を断行したということです。国民世論は自然的感情や素朴な正義感から死刑賛成派が多数を形成します。それにも拘わらず国会議員として死刑制度に異を唱えることは、選挙にとってはマイナスにしか働きません。諸外国はそれにも拘らず、なぜ死刑廃止・執行停止を断行できたのか。それにはまず、議論を巻き起こし、次に政治家のリーダーシップにより断行するという諸外国の例にならうことが必要だといわれています。千葉景子元法務大臣は、死刑を執行して議論を巻き起こすという誤ったリーダーシップをとりました。今後の平岡秀夫法務大臣(弁護士/山口県弁護士会所属)は死刑制度について「執行するかしないかだけでなく、制度を国民と一緒に考えたい。国民的な問題提起をどう受け止めるかも考えたい」と述べています。今後の新大臣の言動が注目されます。

当会会員に対する有罪判決に関する会長声明

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 本日当会会員である渡邉和也弁護士に対する業務上横領事件における判決がなされました。裁判所の認定した事実は、概略以下の内容です。
 「裁判所から相続財産管理人として選任されていた渡邊会員が、平成18年から同21年にかけて、自ら管理していた被相続人名義の預金口座から合計13回にわたり現金を引き出し、他事件において自らその支払義務を負担していた清算金の支払原資や事務所経費、生活費等に費消するなどし、合計金1945万円を横領した。」
上記事実に対する判決内容は5年間の執行猶予付きの懲役3年(未決算入30日)の有罪判決でした。
このように有罪判決が言い渡され、量刑理由において金銭管理の杜撰さや行為の悪質性が指摘されたたことについて、当会といたしましては、弁護士に寄せられた社会の信頼を損ねたことに対する裁判所の厳しい判断として重く受け止めております。また、関係者及び市民の皆さまにご迷惑やご心配をおかけしたことについて、同会員の所属弁護士会として、深くお詫び申し上げます。
 なお、渡邉会員については、当会においても平成23年3月4日に弁護士会として懲戒申立を行い、本年8月18日、綱紀委員会で懲戒相当との議決を経て、同会員は現在懲戒手続中であります。
当会としては、各会員において本件事件の重みを肝に命じてもらう一方、倫理研修のより一層の充実を図りつつ、会として与えられた権限の適切な行使を通じて、今後こうした事犯の再発を防ぎ、市民の方々の信頼・信用を保持することができるよう努めてまいりたいと思います。
                                         以上
              平成23年10月18日
               福岡県弁護士会 会長 吉 村 敏 幸

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平成23年度福岡県弁護士会 会 長吉 村 敏 幸(27期)
1. 今日は、仙台で日記を書いています。8月19日金曜日に日弁理事会が終わった足で、夜、仙台に赴き、8月20日土曜日、仙台からJR仙石線(センセキ線)と石巻線に乗り継いで、被災地石巻市と女川町に行ってきました。今年5月の県弁総会で報告をいただいた石巻市の前田拓馬弁護士が3月11日の講演時、被災した施設(健康センター)はかろうじて残っていましたが、他はすべて瓦礫と化し、女川町の中心部はまさに無人の土地でした。グーグルでも状況を見ることが可能です。JRも寸断され、途中、代行バスに2回乗り換えて、仙台から女川町の避難所(高台の総合体育館。ここには今でも体育館の中で約160人の町民が避難生活をしておられました。他に約15か所の避難所あり)まで片道4時間要します。線路は赤さびて途中のバス道路から見える建物も壁が壊れ、朽ちています。女川町の避難所にはボランティアの医師やNPOの若者たちが数人残っており、運動場で4~5人の若者がトランペットやサックス等で演奏の練習をし、その横で7~8人の若者がダンスのドール踊りなど練習をしています。お年寄りは数人が体育館の玄関に出て、この練習風景を眺めているだけで、多くは施設の中のようです。施設の中は小さくパーテーションされ、たくさんの衣服やタオル等が無造作に掛けられています。町の中心部の廃墟、重機だけが動いている様子とは、対照的でした。思い立ったのは、7月の生存権委員会の合宿のときに井上英夫金沢大学教授から「絶対に被災地に行きなさい」と強く言われたことが心に残っており、やって来ました。もともとは、当会の震災復興本部としても、東北三県の弁護士会と提携して法律相談活動の支援をする必要があるだろうと考えて、震災対応の研修を行なってきたものの、東北三県からは自前の対応のみで手一杯であり、他の多くの単位会の支援要望に応える体制が作れないために、すべて謝絶され、結局、当会は現地の支援に赴く必要性がなくなってしまいました。もっとも、福岡県における被災移住者の集いや交流会には委員会から積極的に出かけて行って、自治体やNPOと連携しての相談活動を始めています。東京を出るときに、福島で震度5弱の地震があり、仙台に来てからも日に数回の地震が続いています。このような中で、石巻線沿線や女川町の瓦礫を取り除いた後、町はどのように再興がなされていくのでしょうか。今までと同じ仕事と安心できる住居の確保がなされることを願っています。仙台駅にはカメラを抱えた若者が多く、ボランティア受付のブースもあります。途中の矢本町はちょうど夏祭りのため若者が多く、浴衣姿の女性たちがたくさん談笑しています。子どもや若者たちの屈託のない笑顔と元気にホッとしました。
2. さて、給費制の問題がまたもや国会の中で活発になっています。政府の「法曹養成に関するフォーラム」は、当初から貸与制の問題についてのみ議論し、8月末までに結論を出すことになっていましたが、8月4日の第4回フォーラムでは貸与制を前提とした佐々木座長の取りまとめがなされました。これについては、直ちに地元の国会議員要請活動を福岡および東京の議員会館でも行ないました。ビギナーズネットは連日国会周辺で給費制存続を求めた朝のビラ配りを行なっています。全国的に国会議員の給費制に対する理解も進んでおり、8月2日、18日と、相次ぐ私たちの訪問についても快く応じていただき、また、院内集会への参加者も多く、積極的な発言がなされています。昨年と同じような時間切れにならないよう、また、仮に時間切れになったとしても、給費制が存続されるまで戦い続けるとの強い覚悟でいることをお伝えします。
3. 法曹人口問題政府のフォーラムは給費制だけではなく、法曹養成にかかる問題全体について議論する場です。この期間としては概ね2~3年くらいではないかと予想されています(ただし正確な情報ではありません)。したがって、日弁連としても、それ以前に一定の方向性を打ち出す必要があります。当会としてもこの問題について広く会員の意見を取りまとめる必要から、11月上旬に法曹人口問題シンポジウムを開催予定です。現在、シンポ準備会の中で連続勉強会を開いています。最終的に重要な事柄は「市民にとって適正な法曹人口」は如何にあるべきか、その判断要素は何か、ということだと思います。これが大変に難物です。かつて司法改革審議会において法曹人口5万人、毎年3000人合格説が主張された根拠は、フランス並みにということだったと聞いています。しかし、この根拠は、・法律関連の隣接職種を加算していないことの誤り、・法曹需要-事件数比較がなされていないことの誤り、があります。隣接関連職種は、司法書士(2万人)、行政書士(4万人)、税理士(7万人)があります。対象の諸外国には、これらの隣接関連職はありません。米英独仏日弁護士人口(2010年)110万人12万人15万人5万人2.8万人関連職司法書士2万人行政書士4万人税理士7万人事件数比較(2009年)1837万件194万件163万件155万件90万件人口10万人あたりの事件数5,8383,1601,9932,500708日本を1とした場合8.24倍4.46倍2.81倍3.53倍1以上から明らかなように、我国では事件数から見て諸外国のように法曹需要は存在しないということがいえます。また、我国の隣接法律関連職業人口を加算すると、司法書士を加えて、フランス並みのおよそ5万人となります。

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