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会長日記

カテゴリー:会長日記

平成23年度 福岡県弁護士会 会長 吉 村 敏 幸(27期)
1.冠雪の富士山と人口政策会議の議論の応酬
福岡では、2月中旬からずっと雨天続きでした。2月15日の夜から上京したところ、東京でも曇天が続いたのですが、やっと18日の土曜日から快晴になりました。
いよいよ、土曜日は法曹人口政策会議の第8回全体会議(今年度最終日)が四谷の主婦会館で開催されました。日弁連の正副会長、各地単位会会長や委員ら、110名ほどの人員の会議です。
冒頭、議長代行が「窓の外には富士山が見えますので、カーテンを開けました。議論疲れの折は富士山をご覧ください」と発言されました。昼食の後、冠雪の富士山をくっきりとみることができました。なぜかしら、心が浮き立ちます。
ところが、その後の会議は激しい議論のやりとりが続きます。当会は司法試験合格者数について「段階的1500人説」を採択していましたので、日弁連案の「まず1500人説」に大筋賛成であり、34会は日弁連案に賛成でした。しかし、12ないし16会は「1000人説」の意見を提言していましたので、これをどのように日弁連案に取り入れてまとめるのかが議論になりました。しかし、現状2000人合格者に対して1500人へと減員することすら困難が予想されるのに、一挙に1000人へと減員を提言することは到底現実的な対応とは考えられず、私は「1000人説は単なる量的減員ではなく、質が異なる。よって1000人説は提言の趣旨の中に入れるべきではない。せめて、入れるならば理由中である」と述べました。この見解は、静岡、和歌山、京都、沖縄、一弁等の会長も同旨であり、激しい議論の応酬があり、結局最終的には多数決をとって、日弁連の原案賛成多数(賛成76・反対28・棄権5)により採択されました。これが、人口政策会議の最終とりまとめとして3月の日弁理事会に正式提案されることになりました。
2.未成年後見人の責任軽減の提言
2月16日の日弁理事会において、子どもの権利委員会から「未成年後見人の業務は身上監護と財産管理があるが、身上監護については被後見人の不法行為に基づく損害賠償責任が過大であるために、受け皿となる弁護士人員が準備できないでいる。よって、未成年後見制度を改正して、この責任の軽減を求める」という趣旨の意見書の提案が出され、採択されました。
昨年の東日本大震災により、両親のうちどちらか一方の親を亡くした子ども(ただし18歳未満)は、岩手、宮城、福島の被災三県で1,295人(2011年7月29日現在)、両親を亡くした子ども、あるいは一人親を亡くした子ども(いわゆる震災孤児)は229人(同日現在)といわれているところ、弁護士も未成年後見人になっているとのことでした。
岩手県弁護士会の会長は「自分も未成年後見人になっている。子どもは施設に入っているが、ときどき会って身上監護をしている」との発言をされました。
3.「養育費・婚姻費用の簡易算定方式・簡易算定表」に対する意見書(案)について
2003年3月、東京・大阪養育費等研究会が、判例タイムズ1111号で発表した「簡易迅速な養育費の算定をめざして―養育費・婚姻費用の算定方式と算定表の提案」(以下「研究会提案」といいます)は、弁護士ならば皆様ご存知のことでしょう。
この算定表は、その目標どおりに迅速な算定という結果をもたらし、実務に定着しました。しかし、その表の根拠となった計算方法は多々問題点が指摘されていました。つまり、算定される養育費額が、最低生活水準にすら満たない事案を多数生み出し、母子家庭の貧困を固定又は押し進め、特に子どもの教育環境を両親家庭に比して著しく低い水準に固定化し、事案によっては離婚を契機に就学を断念するなど教育の機会を失わせる酷な結果をもたらす一因となっていたのです。この意見書(案)が提案され、3月理事会で審議されることになりました。以下、意見書(案)を抜粋します。
「1年間の間に両親の離婚を経験する未成年子は、252,617人(2010年人口動態統計)であり、この10年、この数字は横ばいの状況にある。2011年の年間出産数は、約106万人であり減少の一途をたどっているから、すべての子の4分の1近くが両親の離婚にさらされる傾向にあるといっても過言ではない。成人化に20年を要することから、単純に20年を乗ずると、両親が離婚している未成年子が約500万人存在することとなる。
一方、その約8割は母が親権者となっており、この点もここ10年変化がない(同人口動態統計)。しかし、その母子家庭の平均就労収入は、171万円であり、全世帯の平均年収564万円の3割にすぎない(2006年度全国母子世帯調査)。未成年子を監護する母子世帯の2010年の貧困率は48%にも及んでおり(国立社会保障・人口問題研究所)、養育費額の公正な算定は、多くの子の成長発達の保障、子の福祉の増進に不可欠であるだけでなく、教育力は国の力の基本となるものであることを考慮すると日本の将来を決するほど重要なものといえる。そこで、当連合会は、次のとおり提言する。
1 当連合会を含め、裁判所及び厚生労働省等の養育費実務関係機関は、子どもの成長発達を保障する視点を盛り込んだ、研究会提案に変わる新たな算定方式・算定表を作成すること。
2 養育費等に関わる実務関係者は、研究会提案の簡易算定方式・簡易算定表の仕組みと問題点を認識し、新たな算定方式・算定表が作成されるまでの間、研究会提案の簡易算定表を慎重に使用するものとし、同簡易算定方式の考え方(双方の総収入について、標準化した公租公課・職業費・特別経費を控除して、各基礎収入を算出しその合計額について、指数化した生活費指数を用いて按分する考え方)を流用する場合には、子どもの福祉の視点を踏まえ、少なくとも公租公課を可能な限り実額認定し、特別経費を控除しないなどの修正を加えて算定すること。
3 新たな算定方式・算定表が作成されるまでの間、研究会提案の簡易算定方式・簡易算定表の問題点について、裁判所及び養育費相談支援センター等厚生労働省の事業等での周知を図ること。」
私も上記提言の趣旨は実感として抱いていたために、早急に当会の両性の平等委員会において算定表の修正点についての検討をお願いし、会員に使い勝手のよい提案をしていただきたいと願っています。
4.帰途の日本アルプス
2月19日日曜日の午後から、県弁会館で新旧執行部の引継会があるため、早朝、帰福しました。飛行機から見る富士山は頭を雲の上に出し、あたりを睥睨しています。
意外にも中央アルプスの峻険な稜線にはわずかな雪しか残っておらず、太陽の光に照らされて美しいです。ところが、中国地方、九州は厚い雲に覆われていました。前日まで大雪が降ったとのことでした。
あと1か月余で会長職も終わりとなります。

秘密保全法案に関する会長声明

カテゴリー:声明

1 政府は,平成24年1月24日に招集された第180回通常国会において秘密保全に関する法制の整備のための法案(以下「秘密保全法案」という)の提出を意図し,同法の制定に向けて審議を始めようとしている。
  しかし,同法案は,「国益」の名の下に,以下に述べるとおり多くの憲法上の諸権利を侵害するものであって,到底容認できるものではない。
2 「知る権利」に対する不当な制約
  同法案は,行政機関が①国の安全,②外交,③公共の安全及び秩序の維持の分野で「特別秘密」に指定した情報の公開制限を定めるが,かかる「特別秘密」の指定権者は,「特別秘密」を作成・取得する各行政機関とされており,当該行政機関にとって都合の悪い情報を「特別秘密」に指定するなどの恣意的な運用がなされるおそれがある。国政上いかに重要な情報であっても,一旦「特別秘密」に指定された情報は不開示となり,国民の知る機会は奪われ,その結果,憲法上の権利であり,国民主権原理の要請でもある「知る権利」が不当に制約されることとなる。
3 「取材の自由,「報道の自由」,「学問の自由」等に対する不当な制約
  「特別秘密」の定義は不明確且つ広範である上,処罰対象となる「特定取得行為」の概念も不明確であることから,報道機関は,取材活動や報道活動が処罰対象となるか否かを予測できない。さらに共犯処罰規定も設けられているところ,これでは記者が「特別秘密」を保有する取材対象者に秘密を尋ねる行為すら「教唆」や「扇動」として処罰されかねず,報道機関の取材の自由への規制の程度及び萎縮効果は計り知れない。
  また,「特別秘密」の対象には,民間事業者や大学等が作成・取得するものについても含まれているところ,これらの有する情報でも「特別秘密」の指定権者は各行政機関であるから,行政の管理の名の下に学問の自由が侵害されるという危険性もある。
4 罪刑法定主義等の理念に反する
  同法案は,「特別秘密」の概念自体が極めて不明確なままに,その漏えい行為等を処罰対象とするが,これは罪刑法定主義の理念とは到底相容れない。
  また,独立教唆行為についての罰則規定は,基本たる本犯の実行行為がないにもかかわらず処罰するものであり,刑法の基本原則である行為責任主義に明らかに反するものである。
  さらに,共謀行為についての罰則規定は,現行法では例外的に処罰されることとなっている予備・準備行為のさらなる前段階で処罰するものであり,過度の萎縮的効果をもたらすものである。
  その上,罰則についても懲役刑の上限を10年に引き上げることが検討されているが,このような重罰化は,前記の萎縮効果をさらに強めるものである。
5 プライバシー権,思想信条の自由を侵害する適性評価制度
  同法案は,特別秘密を取り扱う者を管理するためとして,住所歴・国籍などの人定事項のみならず,信用状態や外国への渡航歴,懲戒処分歴,犯罪歴などの事項を,本人の同意を得た上で調査し,評価するという適性評価制度の導入を図っている。その調査対象は,取扱者の周辺の者,医療機関,金融機関と広範に及んでいる。
  しかし,このようなセンシティブ情報を行政機関・警察によって収集利用されること自体,重大なプライバシー侵害である。
  さらに,評価基準は非公開とされ,適性評価の判断も実施権者たる各行政機関の長の裁量に委ねられるなど,恣意的な評価がなされる危険性は否定できず,特定の思想信条を持つ者を排除,差別する運用がなされるおそれがある。
6 未だに情報公開制度が十分に機能しているとは言い難い我が国の現状からは,国民の知る権利の十分な保障こそ急務である。
  それに逆行するどころか,憲法上保障されている諸権利を不当且つ多大に制約する秘密保全法案の制定に対し,当会としては,断固として反対する次第である。
                  2012年(平成24年)3月12日
                   福岡県弁護士会会長 吉 村 敏 幸

会長日記

カテゴリー:会長日記

平成23年度 福岡県弁護士会 会長 吉 村 敏 幸(27期)
1.日比谷公園点描・心字池のカワセミ
今日も日弁会館まで日比谷公園の中を歩いています。
空は快晴、大勢の通勤者たちと足早に歩いていると、ふと、心字池にカワセミがいるという記事が数日前に写真付きで掲載されていたことを思い出し、しばらく目を凝らしますが、探しきれません。望遠レンズを構えた写真家も一人いました。
木立ちの中を歩くと、テニスコートでは早朝からすべての面が埋まっていて、練習やら試合やらをしています。一見してかなりの高齢者のダブルス試合を見ていると、ワンバウンドではなくてツーバウンドで返球していてゲームを続行しています。「なるほど。これはいい」。
樹々の下はカラスや鳥の糞がたくさん落ちているので、少し避けて歩きます。修習生のころの春に、噴水の横のベンチで眠ってしまったことを憶い出し、あれから40年にもなるかと思って、一気に老けてしまいました。
2.義捐金と絆の感動
昨年の漢字はきずな「絆」。(誰がこんなことを始めたのかしらん、と思います)
遅々として進まない復旧復興支援策を見るにつけ、絆が色あせて見えます。
我が福岡県弁護士会は昨年12月に、東弁の学資金募金に共催の形で当時の震災義捐金の残額422万円余を全額送金していました。口座はゼロになっていました。その後、新1年生は卒業まで学資募金が続かないために募金の継続をお願いしたところ、なんと今年に入り、1月中旬までに85万円余の義捐金が大勢の会員から入金されていました。
これはまさに、絆の感動です。これで高校1年生の学資期間の延長が可能となります。福岡の会員は凄いです。また、私たちのチラシや月報の記事にきちんと目を通していただいていることに感謝いたします。
3.新執行部の立候補
平成24年度の新執行部の方々の立候補が出揃ったようです。
今の会務は相当にハードであって、質・量ともに私が副会長をしていた平成7年とは、今昔の感があります。
日弁連は国の各行政分野の事案ごとに対応委員会が課題を検討する体制づくりをしていると聞いたことがあります。したがって、日弁連の本部と各種委員会は大変に大きな組織となっています。そこから各地の単位会や関連委員会あて意見照会がなされます。ですから、いわゆる人権族、業務族、消費者族等の○○族という専門家がいなければ充分対応できないことが多いのです(ただし逆に専門家は専門家であり過ぎるための弱点を抱える場合もあります)。
したがって、県弁会長、副会長、事務局長はこれら○○族がバランスよく構成されていれば申し分ありません。とはいっても、執行部は全くのボランティアであり、負担が重いので、なかなかなり手がいませんから、ぜいたくも言えません。不得手な分野や知識不足の部分は色々と勉強し、教えをいただきながら協力し合って乗り越えていかざるを得ません。しかし、同時に執行部が慣れ合いで重要なテーマについてあまり議論を尽くさないままに常議員会に議題を上程すると、疑問や意見が百出し、恥を露呈することになります。ですから、執行部会議の中で厳しい意見のやり取りは本来大いに歓迎されるところです。私たちは当初そのように臨んだのですが、毎回の執行部会議は議題が大変多くて充分ディスカッションの時間が取れなかったことが残念でした。次年度の会長、副会長、事務局長ら名前が挙がっている方々はいずれも熱心に会務をこなしてきておられた方たちばかりで、しかも論客揃いです。困難な議題が山積している中で、多くの会員の意見を取りまとめ、当会丸の誤りなき舵取りがなされることが期待されます。昨年、私の不徳の致すところで、副会長や事務局長のなり手がないために、いろいろと苦労したことを思い出しました。執行部の先生方には大変感謝しています。
4.君が代、日の丸訴訟事件の停職・減給処分について−自由な風を−
最高裁判所(第1小法廷・金築誠志裁判長)は平成24年1月16日、国歌の起立斉唱命令に従わず、東京都教育委員会から懲戒処分を受けた公立校の教員らが都に処分取消と損害賠償を求めた事件の上告審判決で、戒告処分は妥当とする一方、過去数回の不起立のみで停職・減給とするのは処分による不利益の大きさを考慮すると重すぎて違法との判断を初めて示し、停職1か月(61歳女性)、減給1か月・10分の1(61歳女性)の処分を取り消しました。
これについて弁護士出身の宮川光治裁判官は「不起立は不作為に過ぎず戒告でも重すぎる」との意見を述べ、行政官出身の桜井龍子裁判官は「都による加重処分の機械的適用は問題」との補足意見を述べたとの報道です。
昨年相次いだ君が代、日の丸訴訟事件においては、起立斉唱命令が「特定の思想を強要するものではない」として最判は合憲判断を示しており、その流れの中で大阪府議会は分限免職規定を含む条例案を準備しているとの報道があるだけに、私としては今後の流れに重大な関心を寄せていました。東京都では管理職が教員の口元に耳を寄せて、君が代斉唱の際にどの程度の声量を出しているのか、あるいは「口パク」だけではないか、などのけん責までしているとの報道を見るにつけ、思想統制の「いつか来た道」に危惧を抱いていました。ですから、やっとスタート台に立つことができたという思いと同時に、今後の司法に幾ばくかの期待を抱くことができて、嬉しく思いました。
5.当面の課題
1)インターネット上の情報流出について−再チェックを要請します。
  東弁の北千住パブリック法律事務所が作った弁護団情報がインターネットを通じて第三者に流出していた件について、日弁連から各会員あて再チェックおよび流出しないよう対策を講じていただきたい旨の要請がなされました。各会員および事務局の方々は点検をお願いします。
2)新年早々、福岡県選出の全国会議員あて、弁政連を通じて、①給費制実現の運動、②少年身柄事件全件国選付添人実現に向けての取り組みとして、平成24年2月4日福岡シンポ、平成24年3月10日北九州シンポへの参加および支援の要請、③東日本大震災等被災者に対する法的支援活動のため、法テラスの資力要件撤廃を求める特別措置法制定の取組みの要請、をお願いしました。そのほか、旧スパイ防止法と実質的に同視されるものとして秘密保全法も国会へ上程される恐れがあり、反対の運動に取り組む必要が出てきます。
  これらについても、皆様のご支援とご理解をお願いします。

監視カメラを法律なしに設置・運用しないよう求める声明

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 警察庁は、福岡市の中洲地区に犯罪防止効果の検証を目的に42台の監視カメラを設置し、本年1月から福岡県警が常時録画する運用を開始した。
 しかしながら、警察の捜査活動でさえ、具体的な嫌疑を前提として許されるものであり、その場合にも、人権保障を図る観点から、基本的人権を制約する場合には法令の根拠を必要とし(強制処分法定主義)、令状がなければ原則として行えないというのが憲法以下の法令の考え方である。
現在では、監視カメラで撮影された膨大な集積画像の中から、顔認識システム(被写体から人の顔の部分を抽出し、目・耳・鼻などの位置関係等を瞬時に数値化し、あらかじめデータベースに登録された特定人物の顔データベースと自動的に照合するもの)を使って、特定人物の検索・照合することも可能となっている。具体的な法益侵害の行われていないはるか前段階で、警察が市民全体を対象とする監視を行い、地引き網のように市民の行動履歴を収集することは、個人のプライバシー権を侵害するばかりか、民主主義社会における市民の自由を萎縮させる危険が大きい。
 警察自身による監視カメラの設置は、京都府学連事件判決(最判昭44.12.24)、山谷監視カメラ判決(東京高判昭63.4.1)などによれば、①犯罪の現在性または犯罪発生の相当高度の蓋然性、②証拠保全の必要性・緊急性、③手段の相当性がある場合を除いて、警察が自ら公道に監視カメラを設置することは認められない。
 西成監視カメラ判決(大阪地判平6.4.27)では、「特段の事情がない限り、犯罪予防目的での録画は許されないというべきである。」として、犯罪予防目的での監視カメラの設置を明示的に禁止している。
 中洲地区は必ずしも犯罪多発地帯ということが証明されているわけではく、県警は、想定される犯罪として客引きを挙げつつも、当会の聴き取りに対し、「その実態はよく分からない」と回答するなど、監視カメラ設置の必要性に乏しく、他方で、歓楽街におけるプライバシー権制約の程度は大きいことからすれば、犯罪予防目的での撮影や録画が許容されるべき特段の事情はない。
 そもそも、プライバシー権を保障するために監視カメラの設置・運用を規制する法律の制定が必要不可欠である。
 当会は2007年以降、同様の意見を述べているが、なんら法律が制定されないまま警察主導で街頭監視カメラが増設されていることに対し強く遺憾の意を表するとともに、適切な法律が制定されるまでの間は、中洲地区における監視カメラの設置・運用を中止するよう強く求める。
         
               2012年(平成24年)2月9日
                 福岡県弁護士会会長 吉 村 敏 幸

会長日記

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平成23年度福岡県弁護士会 会 長 吉 村 敏 幸(27期)
1.新年あけましておめでとうございます。
昨年の私たち執行部活動の中心課題は、何といっても、給費制実現の運動と、発足直前に発生した3.11東日本大震災と原発事故の復興支援対策です。この二つが一番大きく心にのしかかっていました。震災問題は、被災者復興支援対策本部において何度も法律問題の研修を繰り返し、相談と応援の体制づくりを行ない、また義捐金を募集しました。金額は早い期間で1,000万円を超えました。このうち東北三県(岩手、宮城、福島)の各単位会に各200万円ずつ送金し、残422万円余を震災で父親や母親を亡くした高校生140名の学資として一人当たり毎月15,000円を送ることにしました。これは、東京弁護士会が当初40名程度を考えて高校生の選定にあたったものの140名もの応募があったため、全員を救済することとし、改めて会員に追加の募金をお願いしていたものです。当会は東弁の企画に共催の形で支援することになりました。これにより、高校1年生、2年生の学資金の支給期間が当初予定されていた平成24年8月から大幅に延長可能となったとのことでした。子ども達のお礼の言葉を次に記します。
☆(ご本人からの手紙)
私は今回の特別義援金支給決定をうけ本当に感謝しています。これから高校生活を始めるにあたり一生懸命に勉強、部活に打ち込み、高校生活を有意義なものにしていきたいと思っています。今回の義援金支給の決定ありがとうございました。
☆(ご本人からの手紙)
この度は義援金を支給していただくことになり、誠にありがとうございます。今はとても大変な時ですが、日々勉強に励んでいきたいと思います。本当にありがとうございます。
☆(ご本人からの手紙)
特別義援金の支給、ありがとうございます。今回の震災で家族4人が津波に流され亡くなりました。父、姉、祖父、祖母です。家族が一度にいなくなり、悲しい、寂しい毎日ですが、母と妹と3人で仲よく暮らしています。将来、看護師を目指して勉強中です。家計の不安もあり、少しでも母の助けになればとアルバイトを始めました。今回、義援金を給付いただけることになり、うれしく思っています。本当にありがとうございました。
☆(ご本人からの手紙)
この度は義援金を支給いただきまして、ありがとうございました。私は母親と二人暮らしで生活していました。この震災で母親が亡くなり、一人になってしまいました。でも今は、祖父母の家で叔母と一緒に暮らしています。叔母は会社から解雇になってしまい、生活面で困っていました。このような支援をして頂きまして、すごく助かり感謝しています。本当にありがとうございました。
☆(ご本人の叔母様からの手紙)
このたびは色々とご配慮いただき、大変ありがとうございました。○○(本人・姪)になり代わりまして、お礼申し上げます。震災後は体調を崩すこともありましたが、現在は毎日、部活動の吹奏楽にいっしょけんめい取り組んでおります。家庭環境も変わり心理的にも困難な状況の中でも、前向きに努力する姿に、私どもも微力ながら協力していこうと考えております。
東弁でも引き続き募金を継続して、できるだけ期間の延長をはかろうとしています。福岡県弁としてもこれを機会に改めて募金のお願いをし、親を亡くした東北の子ども達を支援していきたいと考えています。皆様の募金をよろしくお願いします。
被災者を中心とする法律相談については、会内の相談センターでの体制づくりをしてきましたが、平成23年4月以降、12月18日の集中相談研修までに22件となっています。他方、被災地への応援については現地からの要請はありませんが、東京三会が中心となって行なっている原発問題支援機構が福島県等における訪問相談チームを編成して被災地に出向いています。しかしながら到底弁護士の人手が足りないことから、西日本地区からの応援を求めているとのことでした。現在、対策本部に検討をお願いしているところです。
2.残り3か月の課題
私たちに残された課題はたくさんありますが、とりあえず次の諸事項を掲げます。人権、司法制度、会内問題、業務問題です。
①給費制実現へ向けた運動の拡大
②法曹人口問題についての当会の方針の策定
③少年身柄事件全件国選化へ向けた運動の展開
④被疑者国選拡大(全件化)の運動
⑤原発賠償問題へのバックアップ出張体制の実現
⑥自死問題についてのネットワークの構築
⑦共済制度の具体化
⑧リーガルサービス基金の期間延長
⑨県弁会計システムの変更
⑩消費者事件のアクセスルート構築
⑪国際取引PTの今年度のまとめ
⑫福岡・釜山フォーラムの日韓海峡圏における取引障害事例の研究着手
⑬福岡市医師会とのパートナーシップ活動の具体化
⑭法律相談センターの充実のために(チケット制等の一層の拡大へ向けて)
もちろん、上記以外にもたくさんの課題があることは承知していますが、各委員会の皆様とともに網羅的に取り組みたいと思っています。
3.矛盾のなかの合意
日弁連の法曹人口政策会議は先鋭な意見の対立する場です。私たち各単位会の会長は当然委員になっており、各単位会の意見を反映できるような建付けになっています。現状は約2000人の司法試験合格者のところ、裁判官、検事の任官者採用者数は全く伸びておらず、当初の司法制度改革審議会意見書は前提事項(司法基盤の整備、法的需要など)が達成されないまま、弁護士数のみが増加する最悪の事態となっています。そのような中で、司法試験受験者の質の低下、弁護士登録しても就職できない新人の激増、法科大学院を目指す若者の激減などから、新人弁護士の逼迫感も高まっています。ここで、日弁連の法曹人口政策会議では、司法試験合格者の数を1500人や1000人へと減少させるべきとする意見が表明され、また、これまでに各単位会や日弁連の決議・声明が相次いで出されました。私は、現状の2000人合格者を段階的に1500人減員とする案を「已む無し」論として、個人的に意見表明しました。しかし、合格者1000人説の人たちの強い反発もあり、今後の行方は予断を許しません。私としては、現状2000人合格者を1000人あるいは1500人のいずれかとして打ち出すのは、数の面において両立し得ない質的相違であると考えます。しかし、減少する方向は一致しているのですから、このような矛盾的見解においてこれを許容する論理を承認したうえで、まずは1500人説を採用して、ここからの運動を創造することが大事だと思いました。しかし、1000人説の方々の舌鋒は鋭く、困難を極める状況です。それでも、3月末までにはきちんと日弁連の意見集約、すなわち矛盾のなかの合意をはかることができるように努力したいと思います。
4.大いなる夢と希望を抱いて
今年一年、辰歳がスタートしました。
弁護士の将来には魅力を感じないとする声もあります。しかし、弁護士とは本来、職人的なものであると思います。労を惜しまず、現場に出て活動すると、必ず何かが見つかります。そして、自分を必要とする人たちの力になることができますし、引いてはその活動の延長で制度や法律を変えることができます。弁護士の公益性・公共性です。
これらの信念を固く信じ、大いなる夢と希望を抱いて、この一年も努力していきたいと思います。

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