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法律によらず顔認証装置を使用しないよう求める声明

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当会の調査によれば、2013年(平成25年)12月に福岡県警察(以下「福岡県警」という。)に顔認証装置が導入され、すでに使用例も存在する。
顔認証装置とは、撮影された画像から人の顔の部分を抽出し、目・耳・鼻などの位置関係等を瞬時に数値化し(この数値化されたデータを「顔認証データ」と呼ぶ)、あらかじめデータベースに登録されている特定人物の顔認証データとの同一性を自動的に照合するものである。
福岡県警は、具体的な組織犯罪が生じた場合に、県警が自ら設置する防犯カメラの画像の他、民間のカメラの画像もその捜査のために収集する予定であると説明している。また、顔認証装置で検索・照合する対象となるデータベースに登録される人物については、組織犯罪を対象とすることからの限定があるという。
 しかし、組織犯罪対策運営規程には、顔認証装置の使用について、使用できる場合としての対象犯罪や、検索・照合の対象となるデータベースに登録される者の属性を限定する明文規定も存在しない。
 そもそも、警察は、捜査目的であっても、罪のない市民の行動に関する情報を無制限に収集したり、検索・照合の対象とする権限があるわけではない。
顔認証データは、おびただしい数の顔画像の中から瞬時に人物の同一性判定が可能であり、指紋よりもいっそう簡便に収集が可能な、高度な生体認証データである。したがって、本来、対象者の同意なしに取得することが許されないセンシティブ情報と捉えるべきである。
 対象者の同意なく使用する以上、あらかじめどのような条件の下に収集、利用、保存が許されるのか、またどのようにして目的外利用を防ぐのかを厳格に定める法律なくして顔認証データを収集・利用・保存するべきではない。
 画像を収集する場面で、以下の問題がある。
 ①福岡県警が自ら設置している中洲・博多地区、天神地区など県内132台の監視カメラで収集される画像については、当会が再三にわたり意見を表明しているところであるが、警察が犯罪多発地帯でないのに直接公共の場所に監視カメラを設置して罪のない市民を無差別録画することは本来許されない。
②コンビニエンスストアなどから限定なく任意捜査で画像を収集すると、撮影される画像の対象は市街地中心部から郊外に至るまでの極めて広範に及ぶ。
 また、顔認証装置を使用し、検索・照合する場面で、以下の問題がある。
③検索・照合する対象となるデータベースの登録者について、限定する内部規定すら存在しないというのでは、目的外利用がなされないための歯止めは期待できない。むしろ、8000万人を超える運転免許証データがデータベースとして用いられる可能性もある。
 ④目的外利用がなされないための独自の物理的、技術的対策、内部及び第三者によるチェック体制も存在しない。
 以上によれば、ひとたびある市民が福岡県警の対象とされた場合には、その行動が丸裸となり、そのプライバシー権を侵害するばかりか、街頭での署名活動、集会やデモ行進など、民主主義社会の基礎となる市民の表現の自由を萎縮させる危険が大きい。
どのような条件の下に収集、利用、保存が許されるのか、またどのようにして目的外利用を防ぐのかをまずもって厳格に定めるべきである。さらに、対象者の同意がなくとも顔認証装置の使用を認める法律が存在しない。このような現状においては、福岡県警は顔認証データを収集、利用、保存すべきではなく、顔認証装置を使用すべきではない。
          
                   2014年(平成26年)年5月27日
                       福岡県弁護士会会長 三 浦 邦 俊

憲法記念日会長声明

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1 我が国憲法は、前文に平和的生存権を定め、第9条に武力による威嚇・武力の行使の放棄、戦力の不保持及び交戦権の否認を規定し、恒久平和主義を宣明している。
また、憲法を最高法規として公務員に憲法尊重擁護義務を課し、政府を憲法の制約の下におく立憲主義をとることにより、個人の尊重と人権保障を図っている。
  これら恒久平和主義と立憲主義は、憲法の基本原理である。
2 これまで政府は、一貫して、憲法の下における自衛権の行使は、我が国に対する急迫不正の侵害(武力行使)があり、これを排除するために他の手段がない場合に、必要最小限度の範囲のものに限って許容されるものであって、直接武力攻撃を受けていない場合に問題になる集団的自衛権の行使は、その範囲を超えるものとして憲法上許されないとの見解をとってきた。
 ところが、政府は、閣議決定で従来の政府見解を変更(解釈改憲)し、集団的自衛権の行使を容認しようとしている。
3 このような憲法の基本原理に関わる事項を閣議決定で変更することは、政府を憲法の制約の下におく立憲主義に反し、近代憲法の存在意義を根本から否定するものである。
4 憲法の恒久平和主義の下では、安全保障は、軍事力の行使によるのではなく、平和的・国際的な施策等により実現さるべきであり、この原理こそが、戦争を排した我が国憲法の先駆的意義である。
  集団的自衛権の行使容認は、恒久平和主義にも抵触するものである。
5 福岡県弁護士会は、政府が閣議決定でその憲法解釈を変更することによって集団的自衛権の行使を容認することに対し、立憲主義及び恒久平和主義に反するものとして、強く反対する。
  憲法記念日にあたり、憲法の立憲主義と恒久平和主義の意義を確認する観点から、特に、以上のとおり声明を発表する。
                       2014年(平成26年)5月2日
                            福岡県弁護士会
                               会長 三浦 邦俊

派遣労働を永続化し,貧困と格差を拡大する労働者派遣法改正に反対する声明

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2014年(平成26年)3月11日,政府は労働者派遣法改正案の閣議決定を行った。政府は今国会で法案を通過させ,2015年(平成27年)4月からの施行を目指しているとされている。
政府の改正案は,2014年(平成26年)1月29日にとりまとめられた厚生労働省労働政策審議会の「労働者派遣制度の改正について(以下,単に「建議」という。)」に基づいて,①政令指定26業務(専門性を理由に派遣期間の制限を受けない業務)の区分を廃止し,②派遣元で無期雇用されている派遣労働者は派遣期間の制限を撤廃し,③派遣元で有期雇用されている派遣労働者は派遣労働者個人単位で上限期間(3年)を設定するが,④派遣先で労働組合等から意見を聴取すれば派遣労働者を入れ替えることで派遣労働を永続的に利用できる,というものである。すなわち,上記建議は,労働者派遣法の根本原則である常用代替防止(派遣労働者をもって直接雇用労働者に代替させてはならない)の理念を放棄し,あらゆる業務・業種において使用者が永続的に派遣労働者を利用できるようにするものである。
そもそも,わが国の戦後労働法制の原則は,職業安定法が労働者供給事業の禁止を明定し,労働基準法が中間搾取を禁止していることからも明らかなとおり,使用者は労働者を直接雇用すべしとすることにある。これは,間接雇用が労働者の立場を不安定なものとさせ,中間搾取が低賃金等の無権利状態を蔓延させた痛苦の経験に基づいている。そのため,1985年(昭和60年)に制定された労働者派遣法は,これまで政令指定26業務以外の業務については,派遣可能な上限期間を設け,上限期間に達した場合はそれ以降の派遣労働の利用を禁止する等して,常用代替防止の理念を堅持し,その後,不十分ながらも派遣労働者保護の規定も追加されてきた。
しかしながら,上記建議は,全ての業務・業種において,常用代替防止の理念を放棄し,派遣労働者に対し何らの保護規定も設けないまま,大量の不安定で低賃金の労働者を市場に出現させることとなる点で到底容認できないものである。
1999年(平成11年)に労働者派遣法が自由化されて以降,貧困と格差が拡大してきた経緯に鑑みれば,本改正が今後のわが国の労働市場に押し及ぼす災禍は明らかであるというほかない。
当会は,常用代替防止の理念を放棄し,派遣労働を永続化し,格差と貧困を拡大する上記建議に基づく労働者派遣法の改正に強く反対するものである。

以上
2014年(平成26年)年3月27日
福岡県弁護士会会長 橋 本 千 尋

死刑執行に関する会長声明

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1 本日、東京拘置所及び大阪拘置所において、それぞれ1名の死刑確定者に対して死刑が執行された。
  2013年(平成25年)9月12日の1名の死刑執行後、わずか3ヶ月での死刑執行であり、本年においては2月21日、4月26日、9月12日に次ぎ4回、8人の死刑執行となる。
2 いわゆる免田事件、財田川事件、松山事件、島田事件という4つの死刑確定事件における再審無罪、いわゆる足利事件、布川事件における無期懲役刑確定事件の再審無罪判決が示すとおり、死刑判決を含む重大事件において誤判の可能性が存在することは客観的な事実である。
のみならず、日本弁護士連合会の2011年(平成23年)10月7日のシンポジウムの宣言でも述べたとおり、死刑はかけがえのない生命を奪う非人道的な刑罰であることに加え、更生と社会復帰の観点から見たとき、罪を犯したと認定された人が更生し社会復帰する可能性を完全に奪うという根本的問題を内包している。さらに、我が国では、死刑に直面している者に対し、被疑者・被告人段階あるいは再審請求の段階に至るまで十分な弁護権、防御権が保障されておらず、執行の段階でも死刑確定者の人権保障の面で多くの問題を抱えている。そして、死刑は人の生命を確実に奪い生命に対する権利を侵害するもので、いかなる執行方法であっても、その残虐性は否定できない。であるからこそ、死刑の廃止は国際的な揺るぎない潮流となっているのである。
3 今回死刑執行された死刑確定者のうち大阪拘置所において執行された死刑確定者は一審から上告審まで殺意を争っていたもので、2012年(平成24年)6月の死刑確定からわずか1年半での死刑執行である。また東京拘置所において執行された死刑確定者も幼少期の虐待が事件の背景事情として存在することから死刑という量刑に争いがあり、再審請求を繰り返していたものである。先に述べた宣言で指摘した問題点が如実に表れている事案であって、正に死刑の是非が問われるべきものである。
4 日本弁護士連合会は、2013年(平成25年)2月12日、谷垣法務大臣に対し、「死刑制度の廃止について全社会的議論を開始し、死刑の執行を停止するとともに、死刑えん罪事件を未然に防ぐ措置を直ちに講じることを求める要望書」を提出して、死刑制度に関する当面の検討課題について国民的議論を行うための有識者会議を設置し、死刑制度とその運用に関する情報を広く公開し、死刑制度に関する世界の情勢について調査のうえ、調査結果と議論に基づき、今後の死刑制度の在り方について結論を出すこと、そのような議論が尽くされるまでの間、死刑の執行を停止することを求めた。2013年(平成25年)2月21日の死刑執行はこの直後に行われたものであった。
今回も、日本弁護士連合会が、死刑制度に関する政府の世論調査の結果について、政府の評価は死刑支持者の割合を過大に表示しており、死刑制度の関する国民の意識について誤解を与える物であるとする「死刑制度に関する政府の世論調査に対する意見書」を2013年(平成25年)12月4日に安倍晋三内閣総理大臣に同月11日に谷垣禎一法務大事に提出した直後に死刑の執行が行われている。
日弁連及び当会は、死刑執行に強く抗議するとともに、一切の死刑執行を停止するよう求めていたのであり、この要請を再度無視した今回の執行は到底容認できない。
5 当会としては改めて政府に対し強く抗議の意思を表明するとともに、今後、死刑制度の存廃を含む抜本的な検討がなされ、それに基づいた施策が実施されるまで、一切の死刑執行を停止することを強く要請するものである。
                    2013年(平成25年)12月12日
                    福岡県弁護士会会長 橋 本 千 尋

特定秘密保護法成立に抗議し同法の廃止を求める会長声明

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2013年(平成25年)12月6日、特定秘密保護法が衆議院、参議院ともに強行採決という形で成立した。
 同法に関し、当会は、従前から(本年10月11日付、同12月3日付の会長声明)、特定秘密の対象範囲が広範かつ不明確であること、指定権者による恣意的運用のおそれがあること、国政調査権やマスコミの取材活動を制限し萎縮させるものであること、広く一般国民まで処罰される可能性があること等々のこの法律が内包する多くの問題点から、国民の知る権利を侵害し、国民主権原理に反するものであるとして、その成立に反対してきた。
同法の成立過程は、政府が唐突に法案提出を表明したことに始まり、募集期間僅か2週間のパブリックコメント、形ばかりの公聴会、国民に不透明な与野党間での修正協議、臨時国会の限られた会期での不十分な国会審議と不整合な政府答弁など、およそ適正な手続きや十分な説明と意見交換という民主主義的プロセスを踏まないものであった。これにより、今後の我が国の国民主権や民主主義などの憲法秩序の維持に関し重大なる危機感を持たざるを得ない。
 当会としては、同法が存続する限り、その廃止を求め、その実現に向けての活動を継続していくとともに、その過程においても国民生活全般の萎縮をもたらさないよう同法の濫用を厳しく監視し、同法による人権侵害が甚だしい場面である同法違反の刑事事件について基本的人権の擁護と社会正義の実現という弁護士の使命にかけて全力で取り組むことを声明するものである。
  2013年(平成25年)12月12日
                        福岡県弁護士会
                          会長  橋 本 千 尋

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