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「消費者安全法改正に伴う関係内閣府令(案)及びガイドライン(案)」に関する意見書

カテゴリー:意見

2015年(平成27年)2月10日
福岡県弁護士会 会長 三浦邦俊

第1 意見の趣旨

1 消費者安全法改正に伴う関係内閣府令案について

(1) 消費者安全法施行規則(以下「施行規則」という。)第7条第1項第1号後段及び同第2項第1号後段において,それぞれ「特定非営利活動促進法第2条第2項に規定する特定非営利活動法人若しくは一般財団法人その他都道府県知事が適当と認める者であること(但し営利団体は除く)」,「特定非営利活動促進法第2条第2項に規定する特定非営利活動法人若しくは一般財団法人その他市町村長が適当と認める者であること(但し営利団体は除く)」とする内閣府令にすべきである。

(2) 施行規則第7条第1項第1号前段及び第2項前段は,「委託を受ける事務を消費者の権利の尊重及びその自立の支援の観点からみて公正かつ中立に実施できるものであって」とする内閣府令にするべきである。

 地方公共団体が消費生活相談事務を委託する場合,内閣府令において,地方公共団体内に受託者に関する苦情窓口を設置することを義務付けるべきである。

 地方公共団体が消費生活相談事務を委託する場合,内閣府令において,都道府県及び市町村に対し,消費者が相談するに先立ち,受託者が相談を受けること及び受託者に関する苦情窓口を委託者である地方自治体が受け付けていることを周知する義務を負わせるべきである。

 地方公共団体による受託者への適切な監督・監視について,消費生活相談事務を委託する場合,内閣府令において,都道府県及び市町村は,消費生活審議会等を設置し,事務の委託について,審議を経ることを義務付けるべきである。

 改正消費者安全法の実施に係る地方消費者行政ガイドライン(案)(以下「ガイドライン案」という。)Ⅱ1.(1)エ「消費者生活相談等の事務の委託」について

(1) 以下の趣旨の記載を加えるべきである。

施行規則第7条第1項第1号及び第2項第1号の基準に適合するか否かの地方自治体の判断に際しては,以下の点に留意し,実施すべきである。

  • ・法人の目的ないし活動方針に鑑み,消費者トラブルに直接的な利害関係を有する者又は有する可能性がある者であるかどうか。
  • ・過去の活動実績が消費者の権利の尊重及びその自立支援に資する者であったかどうか。
  • ・積極的にあっせんの処理を行う意思があり,かつ態勢が整っているかどうか。
  • ・委託先の選定理由を明示すること

(2) 本文中「効果的かつ効率的に事務を実施できるといった効果が期待される一方で」を削除すべきである。

(3) 消費生活相談等の事務の委託により期待される効果と問題点(13ページ)につき「(1)事務の民間委託により期待される効果」を削除すべきである。

(4) 消費生活相談等の事務の民間への委託の際の留意点(14ページ以下)につき,「(1)事務の実施に関して」において,受託団体の責任者を通じた連絡調整しか許されないとの誤解が生じない記述とするべきである。また,受託者の監視につき,利益相反の有無及び自治体との連携等,具体的な監視項目を明示すべきである。

(5) 消費生活相談等の事務の民間への委託の際の留意点につき,「(4)消費生活相談等により得られた情報の活用に関して」において,受託者が,消費生活相談事務により得られた情報を自らの業務のために利用することは,地方公共団体の了解があったとしても認めるべきではない。

第2 意見の理由

1 意見の趣旨1(1)について

施行規則第7条第1項第1号後段及び同第2項第1号後段では,団体の属性に関し,「特定非営利活動促進法第2条第2項に規定する特定非営利活動法人若しくは一般財団法人」という例示をしておきながら,「その他」として,特段何らの制限もなく,地方公共団体の首長が適当と認める者を含めており,このままでは,団体の属性に着目した基準が骨抜きにされるおそれがある。そうならないためには,地方公共団体の首長が適当と認める者の範囲について,例示の趣旨に沿うように制限を設け,これを明記しておくべきである。

そして,その範囲に関してであるが,営利団体を除外すべきと考える。

当弁護士会は,福岡市に対し,2014年(平成26年)3月12日付「消費生活相談業務についての意見書」において,消費生活相談業務の委託先については,消費生活相談業務の趣旨を理解するとともに,十分な専門知識を有し,公正かつ信頼性のある立場において業務を執行することのできる団体に限定すべきであって,少なくとも営利団体への業務委託は不適切であり,改善すべきである旨の意見を述べているところであり,施行規則第7条第1項及び第2項の基準においても,上記意見書の趣旨と同様,営利団体を委託対象から除外すべきと考える。

上記意見書でも述べているが,除外すべき理由は,次のとおりである。

消費生活相談等の事務は,本来的に収益事業として成り立つ性質のものではない。にもかかわらず,営利団体がこれを受託しようとする場合には,営利を目的とする以上,何らかの利益が得られることを前提としているはずであるが,業務の性質上,消費者からの利益は想定できない。そうすると,その利益は事業者に由来するものといわざるをえない。消費者の立場からすれば,このように事業者に由来する利益が背景に存在すると受け止めるだけで,公平性・中立性に疑念を抱かざるをえない。これは,現に業務委託を受けた営利団体がその公平性・中立性の確保にいかに努めようとも避けることができないものである。したがって,その性質上必然的に公平性・中立性の確保が不可能な営利団体は,委託する際の基準において,あらかじめ除外しておくべきである。

また,このような制限を設けることにより,特定非営利活動法人や一般財団法人といった非営利団体を例示列挙した趣旨をより一層明確にし,徹底することにもつながり,その意味でも妥当である。

2 意見の趣旨1(2)について

営利団体を除外した上でなお,施行規則第7条第1項第1号前段及び第2項前段の「公正かつ中立」という要件は,非常に重要であり,これを要件とすること自体には賛成である。ただし,このままでは抽象的すぎるので,より具体的に示すため,「委託を受ける事務を消費者の権利の尊重及びその自立の支援の観点からみて」との文言を加えるべきである。

3 意見の趣旨2について

地方公共団体が安易に消費生活相談事務を外部委託することを防止する必要があり,また委託した場合には,受託者に対する適正な監視が求められるところ,適正な監視を行うには,監視・監督する側が,受託者に関する十分な情報を入手できる仕組みが必要である。そこで,受託者に関する苦情を委託者である地方公共団体が受け付けることとし,地方公共団体自身が必要な監督を行えるようにすべきである。また,地方公共団体が,受託者に関する情報を入手・保管すれば,議会や情報公開,審議会等を通じて,後日の検証が可能になる。

4 意見の趣旨3について

消費生活相談は,類型的にプライバシーに関わる内容が含まれる。そのような通常第三者へ知られたくない情報を消費者が申告する背景には,消費生活相談事務が,中立的・公益的な地方公共団体によって運用されていること,公務員が守秘義務を負うことに対する強い信頼感が前提として存在する。

ところが,消費生活相談事務が委託された場合,一次的に消費生活相談事務を取り扱う者は,地方公共団体及び公務員であるという前提を欠くことになる。そこでこの点を消費者へ予め知らせた上で,どのような個人情報を申告するのか,決定権を与えるべきである。

5 意見の趣旨4について

消費生活相談事務の受託者の監視は,適正な事務の執行に欠かせないものとして必要性が認められるところ,委託者による受託者の監視は,慣れ合いの危険が高い。そこで,客観性を担保するために第三者によるチェックを地方公共団体に義務付けるべきである。この点,新たに第三者機関を設置することは,地方公共団体の負担が大きいことから,既に多くの自治体で設置・運用実績がある消費生活審議会の審議事項にすることで,負担の軽減を図ると同時に,委託者と受託者の慣れ合いを一定程度防止することが可能である。

6 意見の趣旨5について

(1) 施行規則第7条第1項第1号及び同第2項における委託の基準をより具体的に示すため,ガイドライン案により詳細な判断基準を記載する必要がある。

例えば,その目的や活動方針に照らし,消費生活相談の当事者となる可能性があるような法人等については,受託開始時は利益相反のおそれがなかったとしても,受託期間中に利益相反が発生するおそれがある。そして,そのような事態が発生した場合,当該案件の処理が混乱するほか,消費生活相談の中立性・公正性に疑義が生じ,消費者行政全般に大きなマイナス要因となる。したがって,このような法人等が受託することがないよう,消費生活相談業務の受託者の基準を明確に記載する必要がある。

また,業務を受託した者が,真に消費者の権利の尊重及びその自立の支援の観点から業務を行うかどうかは,過去の活動実績も含めて判断することがより適切と考えられるため,当該要素をガイドライン案に加えることが望ましい。

さらに,効率性を重視し,相談業務を形式的に行い,あっせん処理を行わない委託先もありうる。しかし,消費者の権利実現の観点からはむしろあっせん処理を原則として考えるべきであり,あっせん処理を行わない委託先が相談業務に不適当であることは明らかであるため,「積極的にあっせん処理を行う意思があり,かつその態勢が整っているかどうか」という基準をガイドライン案に加えるべきである。

(2) ガイドライン案Ⅱ1.(1)エでは,「(1)事務の民間委託により期待される効果」として「地方公共団体の公務員以外の多様な人材が事務に従事することにより,人材及びサービス内容の多様性が確保される」,「委託期間は原則として1年単位であり,業務の実施状況により受託者が変わる可能性があることから,競争性が確保され,結果として効率的な事務の実施が可能となる」と指摘している(13ページ)。しかし,前者は,消費生活相談員という専門的な資格を有する者を配置すること自体が,一般職公務員以外の専門的かつ多様な人材を確保する目的で導入された人的体制であり,民間委託によって期待される効果ではない。また,後者は,消費生活相談業務は消費者問題に関する専門的な知識と実務経験の積み重ねによって得られる技能が必要であることから,再任回数の一律の制限(いわゆる「雇い止め」)を設けることがないよう,担当大臣及び長官による通知を繰り返し発してきたことと矛盾する。

このように,民間委託については,様々な問題が懸念されているほか,委託期間の限界から消費生活相談員の地位の安定が図られないという本質的な問題も存在する。このため,国は民間委託を推奨しているかの誤解を与えるような記載を控え,地方自治体は住民に説明できる委託先の選定理由を明示するべきである。

(3) ガイドライン案Ⅱ1.(1)エにおいて,「受託者において,地方公共団体の消費者行政担当部局との連絡調整を担当する(中略)責任者から偽装請負の疑いを排除すること」との記述は,消費者行政職員と受託団体の消費生活相談員・職員との連携が受託団体の責任者を通じてのみ行うことが許されるかのように受け止められるおそれがある,したがって,このような誤解が生じないよう表記を工夫する必要がある。

また,民間への事務の委託に関して,「地方自治体による受託者への監視を適切に実施するとともに,適切な監視(モニタリング)を定期的に行うこと。」とされているが,利害相反のおそれや自治体各部署との連携等具体的な監視項目を明示すべきである。

(4) 消費生活相談等により得られた情報の活用に関しては,受託者が,PIO-NETに接続することで,全国で発生するあらゆる消費者取引に関する情報を瞬時に何らの対価を必要とせずに入手できることを十分に考慮すべきである。営利団体の場合,自らの業務とは,営利追求を意味するが,地方公共団体が行う消費生活相談事務で得られた情報を特定の団体が営利目的で利用することについて,国民的なコンセンサスが得られているとは考えられない。税金で運用される消費生活相談事務が特定の受託者の営利に用いられる可能性については,慎重に検討されるべきである。

なお,本意見は,営利団体が自己の営利事業に消費生活相談事務の受託で得られた情報を利用することを制限する趣旨であるから,内閣府令7条に定める受託先の範囲から営利団体が除外された場合には,設ける必要はない。

以 上

産業構造審議会商務流通情報分科会割賦販売小委員会中間的な論点整理に対する意見書

カテゴリー:意見

2015年(平成27年)1月26日
福岡県弁護士会 会長 三浦邦俊
第1 意見の趣旨
1 加盟店契約会社(アクワイアラー)及び決済代行業者の加盟店調査義務の内容として、苦情発生時の調査義務の内容を具体的に定めるべきである。
2 マンスリークリア取引のカード発行会社(イシュアー)にも、消費者の苦情発生時の適切処理義務を認めるべきである。
3 マンスリークリア取引について、販売業者に主張できる事由をクレジット会社に対抗できる抗弁接続規定を適用すべきである。
第2 意見の理由
1 現在のクレジットカードを使った取引では、翌月一回払い(以下「マンスリークリア取引」という。)が大半を占めている。また、カード発行会社(以下「イシュアー」という。)と加盟店契約会社(以下「アクワイアラー」という。)の間に決済代行業者が介在する決済方法が増えており、この場合にはイシュアーがカード利用加盟店を直接管理できない仕組みとなっている。
このような状況のなかで、いわゆるサクラサイトなどの悪質なサイト業者が、マンスリークリア取引を使い、決済代行会社を介在させて決済させる方法を使って、被害を発生させている事例が当県においても多数見受けられるところとなっている。
2 このような被害発生状況をうけて、経済産業省産業構造審議会商務流通情報分科会割賦販売小委員会による「中間的な論点整理」では、加盟店契約を締結するアクワイアラー及び決済代行業者(以下「アクワイアラー等」という。)に対し、マンスリークリア取引及び包括クレジット取引を含めて、国内の加盟店との取引を対象とする場合は登録制及び加盟店調査義務等の法規制を課す方針を示しており、この点は賛成すべきところである。
しかし、アクワイアラー等の加盟店調査義務の内容が曖昧なものとなっている。これでは、実際に苦情が発生した場合に、その調査が十分に行われず、悪質な加盟店を排除することができないおそれがある。苦情発生時の調査義務の要件及び内容は具体的に定めるべきである。
3 また、「中間的な論点整理」では、マンスリークリア取引のイシュアーに対しては、顧客の苦情が寄せられた場合にアクワイアラーに情報提供する仕組みを検討する方針を示すにとどまっている。
先に示したような悪質なサイト業者の被害事例でもそうであるが、イシュアーは、消費者から販売業者との取引について苦情申立を受けた場合に、決済代行業者は加盟店ではないから確認できないなどとして、イシュアー側でアクワイアラーを通じて販売実態の調査をしようとする姿勢が見られないのが現状である。
イシュアーは、決済代行業者が入ることによってクレジットシステムを利用できる取引を拡大し、利益を受ける立場にある。現在、包括クレジット取引については、不適正取引排除義務の一環として、イシュアーに対する顧客の苦情発生時に苦情の適切かつ迅速な処理のため必要な措置を講じる義務(適切措置義務・割賦販売法第30条の5の2)が規定されている。イシュアーのクレジットシステムにおける地位やクレジット取引の構造上の特徴は、包括クレジット取引とマンスリークリア取引で異なるものではない。
そのため、情報提供というだけではなく、イシュアーを不適正取引排除義務の主体として位置付けた上で、マンスリークリア取引においても、イシュアーに対し、苦情発生時の適切措置義務を課すべきである。
4 さらに、クレジットを利用した取引における悪質な加盟店の排除と消費者被害救済の実効性を確保していくためには、不適正な販売行為によるリスクを消費者が負担するのではなく、イシュアーが負担する民事的ルール、すなわち抗弁接続制度を規定する必要がある。
近年のクレジットカードは、マンスリークリア取引と包括クレジット取引の機能を併用するカードがほとんどであるが、代金決済時にマンスリークリア方式を選択した後に、リボルビング方式(包括クレジット取引)を選択できるカードが多数を占めている。このような現状においては、包括クレジット取引とマンスリークリア取引で、消費者保護の内容に格差を設ける合理性は認められない。
したがって、マンスリークリア取引においても、抗弁接続規定を適用すべきである。
以 上

改めて特定秘密保護法の廃止を求める会長声明

カテゴリー:声明

本日、特定秘密の保護に関する法律(以下「本法」という。)が施行された。
 当会は、本法の法案段階から、同法の成立に反対し廃止を求める旨の会長声明を三度にわたり発表した。また、本法の問題点を市民と共に考えるシンポジウムを三度開催し、そのほか多数回に及ぶ街頭宣伝活動を展開してきた。
 そもそも、国が扱う情報は、最終的には国民の財産として国民に公表・公開されるべきものであると考える。ところが、本法は、①行政機関が秘密指定できる情報の範囲を広範かつ曖昧にしている点、②第三者による実効的なチェック体制を備えていない点、③それどころか、チェックをしようとする国民、国会議員、報道関係者などを重罰規定によって牽制する点で、およそ情報公開の理念に逆行するものとなっている。
 そのため、当会は、本法によって、主権者である国民が正しい意思決定を行うために必要な情報にアクセスできなくなり、国民の知る権利を侵害し、民主主義の根幹の破壊に繋がることが懸念されるとして、上記の各活動を展開してきたものである。なお、同様の懸念は、本法に関して、2014年7月26日に国際人権(自由権)規約委員会から日本政府に対して出された勧告意見中でも表明されている。
 そして、これらの懸念は、本法に関する「施行令」や「特定秘密の指定及びその解除並びに適正評価の実施に関し統一的な運用を図るための基準」等によっても、何ら払しょくされていない。
 また、政府は、本法の制定過程において、罰則強化や人的管理を内容とする立法の必要性について主権者たる国民に対して十分な説明をしていない。そのため、本法に関しては、国民的な議論が尽くされたとは到底言えず、これでは主権者たる国民の信認を得たものとはおよそ評価できない。
 従って、当会は、政府に対して、改めて本法を廃止し、制度の必要性や内容について、あらためて一から国民的な議論を行うことを強く求める。併せて、当会は、引き続き本法の廃止のための活動を行っていく所存である。
                                   以上
                   2014年(平成26年)12月10日
                      福岡県弁護士会 会長 三浦邦俊

「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案」(いわゆる「カジノ解禁推進法案」)に反対する会長声明

カテゴリー:声明

1 国際観光産業振興議員連盟(通称「IR議連」)に所属する国会議員によって、「特定複合観光施設区域の整備に関する法律案」(以下「カジノ解禁推進法案」という。)が国会に提出され、衆議院において継続審議となっている。

カジノ解禁推進法案は、刑法第185条及び第186条で処罰の対象とされている「賭博」に該当するカジノについて、一定の条件の下に設置を認めるために必要な措置を講じるとするものである。

しかしながら、経済効果のみが喧伝され、深刻な社会に対する影響等についての検討がなされていない。また、賭博であるカジノを合法化するような正当な理由は何ら認められないため、到底容認できない。

2 そもそも、カジノが合法化されることにより、「暴力団員その他カジノ施設に対する関与が不適当な者の関与」、「犯罪の発生」、「風俗環境の悪化」、「青少年の健全育成への悪影響」、「入場者がカジノ施設を利用したことに伴い受ける悪影響」(カジノ解禁推進法案10条)等の弊害が生じることが確実に予想される。

ギャンブル依存症の問題も深刻である。ギャンブル依存症は、経済的破綻をもたらすのみならず、自らを死に追いやる危険性もある重篤な疾患である。

ギャンブルをするために借金を繰り返す者が現れることも必至であり、多重債務者問題対策が一定の効果を上げているにもかかわらず、これに逆行して、再び多重債務者が増加する可能性が極めて高く、多重債務問題と共にヤミ金問題の再然も大いに危惧されるところである。

合法的賭博が拡大することによる青少年の健全育成への悪影響も看過できない。カジノができることにより、住環境、教育環境の悪化は避けられず、賭博に対する抵抗感を喪失させることにつながりかねない。

さらに、資金源獲得を目的とする暴力団の関与を完全に排除することは極めて困難であるといわざるを得ない。

仮に、カジノ解禁推進法の成立だけを理由に、日本人のカジノ利用や規制については別の法案で定めるとの修正がなされたとしても、その内容も不明確である上に、以上の問題点が払拭されることは無い。

3 刑法が賭博を禁じている主な趣旨は、「勤労その他正当な原因によらず、単なる偶然の事情により財物を獲得しようと他人と相争うものであり、国民の射幸心を助長し、勤労の美風を害するばかりでなく、副次的な犯罪を誘発し、さらに国民経済の機能に重大な障害を与えるおそれがあることから、これを社会の風俗を害する行為として処罰すること」(第186回国会衆議院内閣委員会における政府参考人の答弁)にあるところ、カジノ推進法案が成立すれば、刑事罰をもって賭博を禁止してきた立法趣旨が損なわれ、様々な弊害が生じることは必至である。

よって、当会は、カジノ解禁推進法案に強く反対の意見を表明し、カジノ解禁推進法案の廃案を求めるものである。

2014年(平成26年)10月15日
福岡県弁護士会
会長 三浦邦俊

福岡刑務所尿道カテーテル事件控訴審判決に対する会長声明

カテゴリー:声明

2014年(平成26年)9月19日、福岡高等裁判所は、2010年(平成22年)4月当時福岡刑務所の受刑者であった控訴人が、腰痛の訴えに対して尿道カテーテルを挿入・留置されたことを理由として国に損害賠償を求めた裁判において、国に慰謝料等の支払いを命ずる判決を言い渡した。
一審の福岡地方裁判所は、強い腰痛の訴え等当時の状況に照らし、一時的安静・転倒防止のために尿道カテーテルを挿入・留置した医師の判断には合理性があるとして請求を棄却していたが、このたびの控訴審判決は、刑事施設内における医療も、社会一般の医療水準に照らして適切なものであるべきことを前提として、①医師の腰痛に対する診療が医療水準にしたがったものとはいえないこと、②本件は尿道カテーテル使用に関するCDCガイドラインの適応条件を充たさないこと、③福岡刑務所以外の刑事施設では腰痛患者に対して尿道カテーテルを使用することなく他の方法で対応していることを指摘し、一審判決を取り消し、本件カテーテル使用の違法性を認めたものである。
当会は、福岡刑務所における本件同様のカテーテル使用につき、控訴人を含む福岡刑務所内の受刑者6名からの人権侵犯救済申し立てを受け、2010年(平成22年)9月、福岡刑務所長に対し、腰痛患者に対する尿道カテーテル留置が憲法13条及び刑事被収容者処遇法56条に違反する重大な人権侵害であり、この侵害行為に関与した医師らに厳正な措置を採るとともに再発の防止を徹底すべき旨の警告を、また法務大臣に対し、刑事収容施設内における診療体制の強化やそれに必要な予算の構築も含めた適切な再発防止策を講ずべき旨の勧告を発している。
福岡刑務所は、当会の警告に対して、「医療措置に問題なし」とコメントし、国は本件訴訟においても尿道カテーテル使用の正当性を主張し続けてきた。今回の福岡高裁判決はそのような考え方に理由がないことを明らかにしたものであり、刑事施設被収容者の基本的人権の擁護の観点から高い評価に値する。
国に対しては、この高裁判決を重く受け止め、自ら非を認めて上告を断念するとともに、改めて、当会の警告及び勧告に沿った再発防止策を実現するよう強く求めるものである。
                         
                    2014年(平成26年)10月1日
                              福岡県弁護士会
                             会長 三浦 邦俊

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