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ハンセン病「特別法廷」最高裁判所調査報告に関する会長声明

カテゴリー:声明

ハンセン病患者が当事者の裁判がハンセン病療養所等の「特別法廷」で行われてきた問題について、全国ハンセン病療養所入所者協議会等が最高裁に検証を求めていたところ、最高裁事務総局は、本年4月25日、有識者委員会意見とともに、検証結果(以下「調査報告書」という。)を公表した。
 調査報告書によれば、ハンセン病を理由とした裁判所外の開廷場所の指定を求める上申が昭和23年から同47年まで96件あり、その内95件を認可し(1件は撤回)、不指定事例はないこと、遅くとも昭和35年以降は、他の疾患と区別すべき状況でなかったのに、定形的にハンセン病療養所等を開廷場所に指定していた運用は、不合理な差別的取扱いと強く疑われ、裁判所法69条2項に違反するもので、ハンセン病患者に対する偏見、差別の助長につながり、ハンセン病患者の人格と尊厳を傷つけたとして、深く反省し、お詫びの意を表明した。
 最高裁が自ら差別的な違法行為を行ったことを認めて謝罪の意を表明し、今後、人権に対する鋭敏な意識を持って、二度と同じ過ちを繰り返さないことを表明したことは、評価できる。
 他方、有識者委員会意見では、「特別法廷」は、ハンセン病患者への合理性を欠く差別として憲法14条に違反し、「激しい隔離・差別の場」であって、最高裁が指摘する掲示等をもってしても、一般の人々に実質的に公開されたというには無理があることから、憲法37条、82条の公開原則に違反する疑いが拭いきれないとし、1960年(昭和35年)以前についてもハンセン病患者への反省と謝罪があってしかるべきと指摘した。
 有識者委員会がハンセン病患者に対する差別・偏見の問題をより深く考察し、「特別法廷」の違憲性を認め、最高裁の責任を追及したことは、まさに正鵠を射ている。
また、有識者委員会は、最後に、弁護士を含む法曹界・法学界の人権感覚と責任を厳しく問うた。
1952年に熊本県で起きた殺人事件で無実を訴えていたハンセン病療養所入所者の被告人が「特別法廷」で差別と偏見に基づく裁判を受け、死刑判決が下され、死刑執行された「菊池事件」について、当会は、2013年5月8日、「『菊池事件』について検察官による再審請求を求める会長声明」を公表し、最高裁の上記調査中、2016年2月13日、シンポジウム「ハンセン病『特別法廷』と司法の責任」を開催した。
しかし、それまでの間、当会は「特別法廷」問題について何らの取組みもしてこなかったのは事実であり、有識者委員会意見は重く受け止めなければならない。
当会は、基本的人権の擁護を使命とする弁護士会として、「特別法廷」の違憲性・差別の問題について、長きにわたり調査・検証を怠ってきた責任を深く自覚して痛切に反省し、ハンセン病患者・元患者、その家族の方々などに、心より謝罪の意を表する。
 今後とも、当会は、真摯な自己検証とともに、ハンセン病患者・元患者、その家族の方々などの被害回復に努力し、ハンセン病問題の全面解決に向けた活動に全力を尽くす所存である。
2016(平成28)年5月12日
福岡県弁護士会会長 原 田 直 子

熊本地震に関する緊急の声明

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4月14日、同月16日の2度にわたって最大震度7を観測した熊本における巨大地震は、その後も余震が断続的に続き、現在もなお予断を許さない状況にあります。

この地震で現在までに亡くなった方48名、行方不明者2名、震災関連死と思われる方が12名に上り、今なお避難生活を余儀なくされている方々が6万人にも上っています。被災者の方々の心身の疲労は極限に達しており、その苦痛と不安は筆舌に尽くしがたいものであると思われます。

震災により亡くなられた方々に心からの哀悼の意を表するとともに、被害に遭われた皆様には心からお見舞いを申し上げます。政府・被災地自治体等による現場支援が十分に発揮され、厳しい環境下におかれている被災者の方々の救助ならびに生活支援が早急になされ、インフラ復旧と被災者の方々のニーズに基づく1日も早い復興を願ってやみません。

福岡県弁護士会は、本日より、緊急の無料法律相談を実施し、被災地熊本県弁護士会とも連携しながら、緊急の電話相談等にも尽力していく所存です。

今後、被災者の皆様の被害回復と権利保護のために、全力を挙げる決意であることを表明いたします。

2016年(平成28年)4月25日
福岡県弁護士会 会長 原 田 直 子

死刑執行に関する会長声明

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1 本日、大阪拘置所と福岡拘置所でそれぞれ各1名の死刑確定者に対して死刑が執行された。
死刑が執行されたのは、2015年(平成27年)6月、12月、そして、本日と1年に満たない間に3回目であって、合わせて5人になる。
2 死刑は、かけがえのない生命を奪う非人道的な刑罰であることに加え、罪を犯した人が更生し社会復帰する可能性を完全に奪うという問題点を含んでいる。のみならず、死刑判決が誤判であった場合にこれが執行されてしまうと取り返しがつかない。これまで死刑事件において、4件もの再審無罪判決が確定しており(免田・財田川・松山・島田各事件)、えん罪によって死刑が執行される可能性が現実のものであることが明らかにされ、また、2014年(平成26年)3月には、死刑判決を受けた袴田巖氏の再審開始と死刑および拘置の執行停止が決定され、いまもなお死刑えん罪が存在することが改めて明らかとされたばかりである。
  国際的にも死刑の廃止は大きな潮流である。世界で死刑を廃止又は停止している国は140か国に上っており、今や死刑を国家として統一的に執行している国は日本のみである。このような状況の下、国際人権(自由権)規約委員会は、2014年、日本政府に対し、死刑の廃止について十分に考慮すること等を勧告している。
このような事態であるにもかかわらず、次々と死刑を執行する姿勢には大きな疑義を挟まざるを得ない。
3 日本弁護士連合会は、2014年(平成26年)11月に、「死刑制度の廃止について全社会的議論を開始し、死刑の執行を停止するとともに、死刑えん罪事件を未然に防ぐ措置を緊急に講じることを求める要請書」を提出して、有識者会議の設置や死刑に関連する情報の公開などを具体的に求め、全国民的議論が尽くされるまでの間、全ての死刑の執行を停止することに加え、死刑えん罪事件を未然に防ぐため、全面的証拠開示制度の整備や再鑑定を受ける権利の確立などを要請した。
  しかし、2010年(平成22年)8月に東京拘置所の刑場が一部マスメディアに公開された後、議論の前提となるべき死刑に関連する情報の公開すら進んでいない。
4 当会は、政府に対して、今回の死刑執行について強く抗議の意志を表明するとともに、今後、死刑制度の存廃を含む抜本的な検討がなされ、それに基づいた施策が実施されるまで、一切の死刑執行を停止することを強く要請するものである。
2016年(平成28年)3月25日
               福岡県弁護士会会長  斉 藤 芳 朗

司法修習生に対する給費の実現を求める会長声明

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 司法修習生は、1年間の修習を終えた後には、三権の一翼である司法の担い手として国民の権利を擁護し、司法制度を支えるという公共的な役割を担うべく、職務としての司法修習に専念する者である。このような公共的役割を持つ存在であることに鑑み、司法修習生に対しては、戦後約65年間にわたり、国家公務員に準じた取扱いがなされ、給与が支給されていた(給費制)。しかし,2011(平成23年)年11月から,この給費制が廃止され,代わって修習期間中に費用が必要な修習生に対しては,修習資金を貸与する制度(貸与制)に変更された。
 当会は、貸与制による経済的負担の増加が、有為な人材が法曹を目指さなくなり、ひいては日本の司法制度の弱体化につながるおそれがあるとして、貸与制の導入以前から、給費制の存続ないし復活も含めた司法修習生に対する経済的支援の必要性を訴えてきた。
 司法修習生に対する経済的支援の具体案である司法修習生への給費の実現(修習手当の創設)については,この間,日本弁護士連合会・各弁護士会に対して,多くの国会議員から賛同のメッセージが寄せられており,先日,同賛同メッセージの総数が,衆参両院の合計議員数717名の過半数である359名を超えた。
 当会としては,まずはメッセージをお寄せいただいた国会議員の皆様に対し感謝の意と敬意を表するものである。
 メッセージを寄せられた国会議員は,与野党を問わず広がりを見せており,司法修習生への経済的支援の必要性についての理解が得られつつあるものと考えられる。このような状況は,これまで司法修習生に対する給費の実現に向けて、市民集会の開催、街頭署名など種々の活動を実施してきた当会としても喜ばしい限りである。
 そもそも,司法制度は,社会に法の支配を行き渡らせ,市民の権利を実現するための根幹的な社会的インフラであり,国はかかる公共的価値を実現する司法制度を担う法曹になる司法修習生を,公費をもって養成するべきである。このような理念のもとに,我が国では,終戦直後から司法修習生に対し給与が支払われてきた。しかしながら、貸与制の導入により修習資金の負担が生じることに加え,大学や法科大学院における奨学金の債務を負っている司法修習生も多く,その合計額が極めて多額に上る者も少なくない。法曹を目指す者は,年々減少の一途をたどっているが,こうした重い経済的負担が法曹志望者の激減の一因となっていることが改めて指摘されているところである。
 こうした事態を重く受け止め,法曹に広く有為の人材を募り,法曹志望者が経済的理由によって法曹への道を断念する事態が生ずることのないよう,また,司法修習生が安心して修習に専念できる環境を整えるため,司法修習生に対する給費の実現(修習手当の創設)が早急に実施されるべきである。
 昨年6月30日,政府の法曹養成制度改革推進会議が決定した「法曹養成制度改革の更なる推進について」において,「法務省は,最高裁判所等との連携・協力の下,司法修習の実態,司法修習終了後相当期間を経た法曹の収入等の経済状況,司法制度全体に対する合理的な財政負担の在り方等を踏まえ,司法修習生に対する経済的支援の在り方を検討するものとする。」との一節が盛り込まれた。
 これは,司法修習生に対する経済的支援に向けた大きな一歩と評価することができる。法務省,最高裁判所等の関係各機関は,有為の人材が安心して法曹を目指せるような希望の持てる制度とするという観点から,司法修習生に対する経済的支援について,直ちに前向きかつ具体的な検討を開始すべきである。
 当会は,司法修習生への給費の実現(修習手当の創設)に対し,国会議員の過半数が賛同のメッセージを寄せていること,及び,政府においても上記のような決定がなされたことを踏まえて,国会に対して,給費の実現(修習手当の創設)を内容とする裁判所法の早急なる改正を求めるものである。
                    2016年(平成28年)1月20日
                      福岡県弁護士会        
                           会長 斎 藤 芳 朗   

死刑執行に関する会長声明

カテゴリー:声明

1 本日、2名の死刑確定者に対して死刑が執行された。2015年(平成27年)6月に続くわずか半年の間の執行であることに加え、そのうちの1名は裁判員裁判による死刑確定者として初めて執行されたものであり、社会に与える影響も小さくない。
 現法務大臣のもとでは初めての執行ではあるものの、現政権の死刑に対する姿勢も踏まえれば、さらなる執行がなされることへの懸念はより一層高まっている。
2 死刑をとりまく問題状況について、従前から当会が指摘している点に何ら変わりはない。すなわち、死刑事件について、4件もの再審無罪判決が確定しており(免田・財田川・松山・島田各事件)、えん罪によって死刑が執行される可能性が現実のものであることが明らかにされた。また、2014年(平成26年)3月には、死刑判決を受けた袴田巖氏の再審開始と死刑および拘置の執行停止も決定され、現在もなお死刑えん罪が存在することが改めて明らかとされたばかりである。
  なにより、死刑は、かけがえのない生命を奪う非人道的な刑罰であることに加え、罪を犯した人が更生し社会復帰する可能性を完全に奪うという問題点を含んでいる。のみならず、死刑判決が誤判であった場合にこれが執行されてしまうと取り返しがつかない。かかる刑罰は、いかなる執行方法によったとしても、残虐性を否定することができない。
 それゆえ、死刑の廃止は国際的にも大きな潮流となっている。
このような問題を看過して次々と死刑を執行する姿勢には大きな疑義を挟まざるを得ない。
3 日本弁護士連合会も、上記のような死刑の問題状況を踏まえ、2014年(平成26年)11月に、「死刑制度の廃止について全社会的議論を開始し、死刑の執行を停止するとともに、死刑えん罪事件を未然に防ぐ措置を緊急に講じることを求める要請書」を提出して、有識者会議の設置や死刑に関連する情報の公開などを具体的に求め、全国民的議論が尽くされるまでの間、全ての死刑の執行を停止することに加え、死刑えん罪事件を未然に防ぐため、全面的証拠開示制度の整備や再鑑定を受ける権利の確立などを要請した。 
4 当会は、政府に対して、今回の死刑執行について強く抗議の意志を表明するとともに、今後、死刑制度の存廃を含む抜本的な検討がなされ、それに基づいた施策が実施されるまで、一切の死刑執行を停止することを強く要請するものである。
                   2015年(平成27年)12月18日
                   福岡県弁護士会会長  斉 藤 芳 朗

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